夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

映画『氷菓』の評価

こんばんは、紫栞です。
ただいま公開中の映画『氷菓』観てきました~。

【チラシ付き、映画パンフレット】氷菓 HYOUKA 監督  安里麻里

なので少し感想をば。

氷菓の原作小説や古典部シリーズ〉については前にこちらの記事でまとめましたね↓

 

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米澤穂信さんの〈古典部シリーズ〉がとうとう実写映画にまで・・・と、いった感じで何だか感慨深い。数日前に斉木楠雄のΨ難を観てきたばっかなので↓

 

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ピンク頭じゃないのに逆に違和感覚えたり、最初の方の“語り”部分で斉木君を連想したりしてしまった(^_^;)
状況的に山崎賢人のファンみたいになっているけど別にファンな訳ではないです(嫌いな訳でもないですが)日本は俳優が不足しているのか?とか思ってしまうぐらいに俳優かぶりが多いですよね・・・。たまたまなのでしょうけど、少し拗ねたくなる(笑)

 

さて、映画『氷菓』はネットなどの前評判では結構さんざんな言われようでしたが(^^;)自分で実際に映画観てみての率直な感想としては「そんな言うほど悪くない。むしろ誠実に作られた映画だ」と感じました。原作にも割と忠実でしたしね。

 

 

駄目かしら?
では何故批判的な意見が多いのかってのを考えてみるに、第一に俳優さん達がどうしても16歳学生には見えないというのがあるかと。


主要人物4人のキャストは


折木奉太郎山崎賢人
千反田える広瀬アリス
福部里志山岡天音
伊原摩耶花小島藤子


で、皆さん23・4歳の方々がそろっていますね。


ドラマや映画の中で20代前半の俳優が学生役をするのは別段めずらしい事でもないですが、『氷菓』はコメディやファンタジーとは違い、直球の等身大青春ほろ苦物語なので、見た目から“まだ大人になれてない未熟さ”が感じられないとお話との違和感・ズレを感じてしまうんだと思います。
制服がブレザーじゃなくって学ランとセーラー服ってのがまたね・・・コスプレ感漂いますし。私服のシーンもありますが、ぶっちゃけ社会人に見える(-_-)

ところどころアニメの見た目に寄せているのも比べちゃってアレですね。アニメはかわいらしい絵柄でしたからねぇ~。アニメ最初観たときは〈古典部シリーズ〉をこんなかわいい絵でやっちゃうのか・・・とか思ったもんですが。慣れって恐ろしいものですね(^^;)

 

氷菓 限定版 第1巻 [Blu-ray]

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氷菓 通常版 第1巻 [DVD]

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あと、これは私個人の感覚なのですが、16歳と17歳との間には大きな隔たりを感じるんですよね。17歳設定は多少成人した見た目でも容認出来るが、16歳で高校入学したばっかり、つい最近まで中学生でしたって言われるとどうしても受け入れがたいというか・・・う~ん・・・一般的にはどんなもんでしょう?そう感じるの私だけかしら?


第二の要因は端的に言って“お話が地味”なところでしょうかね。やっぱり。
実写映画化されると聞いた時から個人的に懸念していたことですが、『氷菓』は学園ミステリーとはいっても、殺人事件などは起きない“日常の謎”ものなのでまぁ派手さは無いです。

ささやかな謎解きなのでアニメの30分でやるのにはちょうど良いですが、映画で2時間やるにはどうしても間延びしちゃいますね。90分映画とかで良いんじゃないかなぁ。または深夜のドラマ枠とか。
学園ミステリーだからとエンターテインメント作品的な面白さを求めて観ると肩すかしを食らうかもしれません。

 


原作との違い
はぼはぼ原作に忠実に作られていましたが、それでも何点かは違う箇所がありますね。

大きな違いでは古典部の文集のバックナンバーを探すお話に出て来る、壁新聞部部長・遠垣内先輩の登場とエピソードが映画では丸々カットされています。尺の都合ですかね。確かにこのエピソード入れると映画としてまとまりが悪くなるかなぁと思います。奉太郎のプチ脅迫シーンがあって見物なんですが。


あと、お話のキーパーソンである千反田の失踪した叔父・関谷純(本郷奏多)の真相部分の設定が異なります。

原作より悲劇性が増していますね。これは映画の設定の方がラストの真相に納得がいくので悪い変更では無いと思います。“優しい英雄”って言葉とか、最後に奉太郎が千反田に「関谷純は、ベナレスにいる」って言うのも、冒頭の奉太郎の姉・折木供恵(貫地谷しほり※声のみの特別出演です)から送られてきた『ベナレスからの手紙』に繋がってお話として綺麗にまとまっていていいなぁ~と。


個人的には関谷純が出て来るシーンは総じて良かった。古い学生帽が似合っていますね。出番は少ないですが存在感が凄いです。

 

この映画は『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実を探るお話で、学生運動の頃の事情が出てきます。
「ん?三十三年前で学生運動?」と引っかかると思いますが、実はこの映画は2000年が舞台。原作が発売された年に合わせているみたいですが、ここは別に原作に忠実にしなくっても2017年現在の設定で良かったと思うんですよね。2000年にこだわる理由ないし、観ていてちょっと混乱します。まぁ“叔父さん”設定が厳しくなっちゃうからこうなのかな。

 


最後に
上記の点を踏まえて、こういう“静かな雰囲気”を楽しむ映画だと思って楽しんで下さい。注意事項としては内容に派手さが無いぶん、眠気に襲われやすいかな~と思われますので十分な睡眠を取ってある状態での鑑賞がオススメ(^^)

 

※原作はこちら↓

 

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

 

 漫画もあります↓

 

氷菓(1) (角川コミックス・エース)

氷菓(1) (角川コミックス・エース)

 

 解説本も出たようです。書き下ろし短編が収録されているのですよ・・・↓

 

米澤穂信と古典部

米澤穂信と古典部

 

 ではではまた~

松本清張『点と線』 あらすじ・ドラマ・トリック~・・・諸々まとめ

こんばんは、紫栞です。
今更ながら松本清張『点と線』を読んだので少しまとめようかと思います。

点と線 (新潮文庫)

あらすじ
割烹料亭「小雪」の女中二人と「小雪」の常連客で機械工具商会を経営している安田辰郎の三人は、東京駅の13番線ホームから向かいの15番線ホームに同じ「小雪」の女中“お時”が男性と夜行特急列車【あさかぜ】に乗り込む姿を目撃する。
数日後、“お時”とその男性・佐山は香椎の海岸で情死体となって発見された。
博多の刑事・鳥飼は、佐山が持っていた車内食堂の受取証が“御一人様”になっていたことから情死事件に疑問を持ち、一人捜査を開始する。
佐山は現在捜査中の産業建設省汚職事件の関係者だった。汚職事件を追っていた本庁の刑事・三原は佐山の情死事件を調べに福岡署に訪れ、鳥飼と対面。
三原は事件を追ううち、13番線ホームから15番線ホームを見通せるのは、一日のうちでたったの四分しかないという事実を知り、目撃者の安田に疑いを持つが、安田には完璧なアリバイがあった。

 

 

 


社会派推理小説
『点と線』は昭和33年の作品で、松本清張推理小説としては初の長編連載。『点と線』とほぼ並行して『目の壁』も連載中だったみたいですが。

 

 

 

本格推理小説汚職事件などのリアリティを持ち込んだのが当時は斬新だった(らしい)です。『旅』雑誌に連載で、実在する列車や舞台を作中に登場させているのも当時の読者には読んでいて楽しかったのではないかと。
松本清張横溝正史などを筆頭とする「お化け屋敷」的本格推理小説に批判的だったのだそうな。

 

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現実的じゃないと。私は「お化け屋敷」的小説も好きですけどね~。非現実感を楽しむのも一興なのですよね、アレは。まぁ“色々な形の推理小説があってしかるべきだ”って事なのだと思います。
探偵小説界に“社会派”という新たなブームをもたらした有名作ですね。

 

 

 

 

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映像化作品
『点と線』レベルの超有名作ともなると、読まないうちにトリックや真相を知ってしまっているってな状態が起こりますよね。私もそのうちの一人でして、読む前からお話のだいたいの筋とトリックはテレビなどを通して知っていたのです。

最初に観たのはNHKのドキュメンタリードラマ『点と線を追え!推理・松本清張の頭脳 4分間の空白・トリックの秘密とは?社会派推理小説はこうして生まれた』でした。観たのはかなり幼少の頃だったのでうろ覚えですが(^^;)面白かったと記憶しています。

 

次に2002年制作のアニメーション動画ドラマをBSでたまたま観て、

 

点と線/国鉄黄金期「点と線」のころ [DVD]

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ビートたけし主演のテレビドラマも観ました。

 

 アニメは一風変わった作りで主演二人の声を西田敏行緒形直人がやっていました。お二人とも声に味があって良かった(と、記憶している^^;)。


テレビドラマは一夜・二夜と2時間ずつわかれての放送で、わりかしとシンプルなお話の『点と線』をよくこんなに長い話に膨らまして作ったなとか思いましたね。推理ドラマというより人間ドラマの側面が強いです。

 

アニメもドラマも現在に直したりせずに、小説が書かれた当時の時代設定のままです。あの当時が舞台でないと成立しないお話ですからね・・・。

1958年の映画はさすがに観られてないです。

 

点と線 [DVD]

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以下がっつりとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空白の四分間
『点と線』にはアリバイ崩しの様々なトリックが出てきますが、その中でも魅力的で印象に残るトリックはなんと言っても、この〈空白の四分間〉。
しかし、このトリック、疑問点が多くて発売当初からミステリマニアの間で物議をかましてきたんだそうな。新潮文庫版で解説を書かれている平野謙さんもこのトリックの不備について指摘されています。

私の手持ちの小説、有栖川有栖の「学生アリスシリーズ」の短編集『江神二郎の洞察』に収録されている「四分間では短すぎる」の作中で

 

 

 

〈空白の四分間〉について「学生アリスシリーズ」の主要人物、信長さん(織田)とモチさん(望月)が議論している部分があるので、この部分を参考に疑問点を簡単に挙げてみると・・・

 

犯人は実際には深い仲ではない“お時”と佐山をさも情死行に旅だったように見せ掛けるため、〈空白の四分間〉を利用して二人が連れ立って列車に乗り込むのを女中二人に目撃させるのがトリックなのですが――

 

●問題の四分間に女中たちをホームにさりげなく誘導させるのが容易ではない


●四分間に“お時”と佐山を15番線ホームに立たせるのも難しい。どうやって二人をコントロールしたのか、作者はまったく書いていない


●女中たちは四時には店に出なければならない、とかいう設定になっているが、午後三時半から「晩飯」は早すぎる!(笑)


●四分間に“お時”、佐山、自分、女中が所定の位置に立たない限り、トリックは成立しない。そんな困難に挑まずとも、14番線ホームから女中に見送ってもらったほうが良かったのではないか?


●そもそも、偽装工作自体に意味が無い。二人の死体が発見された時点で地元の刑事達は即座に情死という見方をしたのだから。無用の工作をしたがために、かえって疑われる結果を招いたのではないか


などなど。いちいちごもっともなんですけれども(^_^;)

 

この「四分間では短すぎる」の作中でも言っていますが、このトリックは駄目でもともと。上手くいかなくとも、それで殺人計画が破綻するわけではないので、「やってみて、上手くいったらいいなぁ~」という、病床で時刻表を見ながら空想に浸るのが趣味だった犯人の、言わば“空想の延長のお遊び”だったのではないかと思います。上手くいって刑事に疑われてしまったのは結果論だと。


※「四分間では短すぎる」の作中では議論の最後にまた違った案を提示しています。そういう見方もあるか~って感じで面白いですよ。信長さんとモチさんのやり取りもコミカルで笑えます。もちろん他に収録されている短編も面白いです。オススメ(^_^)

 

 

 

※『点と線』文春文庫版だと解説を有栖川さんがしているみたいです。読みたい・・・

 

 

 

 

 

最後に
社会派推理小説ブームの先駆けと言われる作品ですが、汚職事件などのリアリティを書いている一方で、このようなファンタジックな雰囲気漂うトリックを用いているのが作品の魅力になっているのかな~と思います。
アリバイ崩しに重点を置かれて書いてある作品ですが、最後の三原が鳥飼に宛てて書いた手紙の中で明かされる真相は犯人の微妙な心理や状況など、想像すると空恐ろしいようなやるせないような気分にさせ、人間ドラマとしても面白く読めました。

『点と線』で登場する刑事、鳥飼と三原が再びアリバイ崩しに挑む続編『時間の習俗』という小説があるみたいですね。

 

 

 

こちらの作品も是非読んでみたいと思います。

 

 

ではではまた~

 

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西遊記 どの翻訳本を読む?

こんばんは、紫栞です。
今回は有名すぎるほど有名な西遊記原作の翻訳本まとめをしたいと思います。

西遊記〈1〉 (岩波文庫)

西遊記は《中国四大奇書》(三国志演義水滸伝西遊記金瓶梅)の内の一つで、日本でも題材にした小説・ドラマ・漫画と派生作品が多数存在する作品です。


或る日「『西遊記』関連作品を読みあさろう!」と、思い立ち「まずはとにかく原作からね!」と、いきり立って原作を読もうとしたのはいいものの、超有名作品だけあって翻訳本が溢れていて当時調べるのに苦労したので、これから読まれる方に少しでも参考になるように、自分なりにまとめてみようと思います。


近年集めやすくて全巻出ているものですと下記の通り(注:私自身が読んだのは岩波文庫版と平凡社版です。他はネット等で調べてみたまとめですので悪しからず)


岩波文庫 西遊記 全十巻 訳・中野美代子

 

西遊記〈1〉 (岩波文庫)

西遊記〈1〉 (岩波文庫)

 

 

岩波文庫 西遊記 一~三巻 訳・小野忍

 

西遊記〈1〉 (1977年) (岩波文庫)

西遊記〈1〉 (1977年) (岩波文庫)

 

 

完訳で読めるといったらまずはこの岩波文庫版ですが、こちらの完訳・岩波文庫版は注意が必要でして、最初に岩波文庫で訳者をされていたのは小野忍さんなのですが、文庫(三)が刊行された後にご逝去されてしまい、後任訳者で中野美代子さんが文庫(四)~(十)まで(話数でいうと『西遊記』第三十一回~第百回まで)翻訳されています。
その後、文庫(一)~(三)も中村美代子さん訳で出し直しされていますので、訳者を統一させて全巻読みたい方は中村美代子さん訳のものを選んで読んで下さい。(私は一~三は小野忍訳、四以降は中野美代子訳で読みました)
訳の違いとしては
小野忍さんの方は古風で格調高い。
中野美代子さんの方は現代的で簡潔。
中野さんの方がサクサクと読める文体ですが、普通に「ボディー・ガード」などの横文字が出てきたりするのでちょっとビックリします(^^;)原作の時代雰囲気を楽しみたい人は小野さん訳の方がオススメですね。三巻までしか読めませんけど。

 

 

平凡社 西遊記(奇書シリーズ4)上・下巻 訳・太田辰夫/鳥居久靖

 

西遊記 上 (奇書シリーズ 4)

西遊記 上 (奇書シリーズ 4)

 

完訳です。 こちらは手に入れるなら古本でになりますね~。岩波文庫版の方だと玄奘三蔵法師の出生話が抜けているので、完訳もので出生話が読みたければこの平凡社版を読むしかない。

上巻の

「第九回 陳光蕋 任に赴いて災いに会い 江流の僧 讐を復して本に報ず」

が三蔵の出生話にあたります。

同じ“完訳”なのに何故このようなことが生じるのかというと、『西遊記』にはテキストが多数存在するので、どれを翻訳するかで違うとのこと。
上・下2冊で完訳が読めるのは良いのですが、いかんせん本がデカイ。縦およそ22㎝、横15㎝あって通常の本棚には縦に入れられない。2冊で第百回までの話を入れているため段組してあり、字も小さいので・・・まぁ辞書読んでいる感覚ですかね。
本の最初に主要人名表があるのが助かる。
文章自体は時代雰囲気を壊すことなく、それでいて読みやすいという印象。個人的には中野美代子さんの訳より好みです。

 

 

 

●現代教養文庫 完訳西遊記 上・中・下 訳・村上知行

 

西遊記 上―完訳 (現代教養文庫 921)

西遊記 上―完訳 (現代教養文庫 921)

 

 表紙に完訳と書いてあるが完訳じゃない。なんという紛らわしさ!ご注意下さい(^^;)
原作の量が膨大なので、かなり飛ばして上・中・下の3冊にまとめられているとのこと。「成人向けの訳で読みたいけど、10冊も読んでらんないよ~!」てな人には3冊でいいとこ取りで読めるので良いのでは。訳も読みやすいみたいです。

 

 

 

児童向け書籍


岩波少年文庫 西遊記 上・中・下 編訳・伊藤貴麿

 

西遊記〈上〉 (岩波少年文庫)

西遊記〈上〉 (岩波少年文庫)

 

 児童書とはいえ成人でも持ち歩きやすい装丁で良いのでは。文庫だし。中学生以上対象で3冊にまとめられている。岩波文庫中野美代子訳・全10冊をいきなり読むのはちょっと・・・と、いう人にまずコレを読んでみて段階を踏むと良いかも。

 


学研教育出版 西遊記(10歳までに読みたい世界名作) 編訳・芝田勝茂

 

西遊記 (10歳までに読みたい世界名作)
 

 

読みやすそうですね(笑)
“10歳までに~”と書いてあるのでかなり幼少向けに作られているみたいです。なんとこの1冊で始まりから終わりまでをまとめている。全31章で短く、50点以上ものカラーイラスト掲載。

 

 

●副音館文庫 古典童話 西遊記 上・中・下 訳・君島久子

 

西遊記(上) (福音館古典童話シリーズ)

西遊記(上) (福音館古典童話シリーズ)

 

 単行本。瀬川康夫さんによる表紙や挿絵が素晴らしく、本の作りも丁寧。小学校高学年から対象。

 

 

 


取りあえずはこんな感じですかね。児童書などはまだまだいっぱいありますが、“訳”“編訳”の境目が微妙なところですね。
正当に、完璧に完訳で読みたい人は岩波文庫平凡社になりますね。平凡社版はオススメなんですが、持ち歩きに不向きなのと古本でしか手に入れられないのがイタいところ。読みやすいし、文庫だし、まずは岩波文庫版からって気もします。しかし、私も全10冊読むのは骨が折れましたがね・・・。
完璧に読めなくっても大まかにつかめれば良いって人は他のもので・・・。

 

派生作品が多い『西遊記』ですが、どの派生作品よりも大元の原作が一番とんでもないお話だという気がします。読んでみると驚きの連続で愉快ですよ(^_-)ドラマや漫画などで興味持った方は是非一度“本物の西遊記を読んでみて下さい。


ではではまた~

伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』 今読みたい!ケネディ暗殺事件がモチーフの小説~

こんばんは、紫栞です。
今、ケネディ暗殺事件の機密文書公開で色々と取り沙汰されていますね。真相がどの程度明らかにされるのか気になるところではありますが、今回はこの流れにあやかって(?)一冊の小説をご紹介したいと思います。
伊坂幸太郎さんのゴールデンスランバーです。

 

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

 

第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞受賞作。2010年に実写映画化もされた伊坂さんの代表作の一つですね。

 

ゴールデンスランバー [DVD]

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あらすじ
「おまえ、オズワルドにされるぞ」
仙台市では金田首相の凱旋パレードが盛大に行われていた。テレビ中継も入っているパレードの最中、教科書倉庫ビルの上空から降下してきたラジコンが金田首相の乗るオープンカーに接近、爆発した。首相が暗殺されたのだ。

犯人として浮上したのは元宅配業の青柳雅春。数年前に仕事中偶然、暴漢からアイドルの凛香を助けたことでメディアに取り沙汰され、地元では顔を知らない人はいない、ちょっとした有名人だった。
当の本人である青柳雅春は首相暗殺の数分前、数年ぶりに大学時代の友人・森田森吾に呼び出されていた。森田はいつになく真剣な顔で「金田はパレード中に暗殺される」「おまえは陥れられる」「とりあえず、逃げろ、いいから」と告げる。
何が何だかわからず混乱する青柳だったが、直後に首相は暗殺され、首相暗殺の犯人として青柳は大々的に報道され始める。
巨大な陰謀によって首相暗殺の濡れ衣をきせられた青柳は、暴力も辞さぬ警察などの追手から必死に逃げる――!

 

 

 

 

 


構成
この小説は五部構成です。
第一部「事件の始まり」は首相のパレード中継を蕎麦屋で見ている樋口晴子(青柳の大学時代の元カノ)の視点。
第二部「事件の視聴者」で暗殺後の報道を見ている、とある病院の大部屋の人々が描かれ、
第三部「事件から二十年後」でノンフィクションライターによる調査書の提示、
第四部「事件」で当事者である青柳の逃走劇が描かれます。
第五部「事件から三ヶ月後」はお話のエピローグですね。

この構成が面白いですね~。第四部の「事件」がお話の大半を占めていますが、その前の一~三部までの間にすでに沢山の伏線が張られているので要注意。

 

 

 

 

ケネディ暗殺事件
巻末の謝辞にて
『この本における暗殺事件は、言うまでもなく、ジョン・F・ケネディの暗殺事件を重ね合わせています。第三部で描かれる事件の内容、背景については、参考文献を下敷きに作り上げたもので、首相公選制が存在する、現実の日本とは異なる日本を描いています』

と、書かれている通り第三部「事件から二十年後」の内容はケネディ暗殺事件についての数々の陰謀説と類似・・・て、ゆーか、ほぼほぼ同じですね。暗殺事件自体を日本に置き換えてのお話なので、最初読み始めたときはアメリカのケネディ暗殺は無かったという世界での話なのかと思ったのですが、第四部の序盤で普通に「ケネディ暗殺が~」「オズワルドが~」と話題に出しているのでそういう事では無いのだな、と(笑)

上記のあらすじにあるだけでも“パレード”“教科書倉庫ビル”“首相暗殺”ですから少しでも知識のある人なら「ケネディ暗殺が下敷きのお話なんだな」と気がつくと思います。
私は実録事件の追及番組とかテレビでよく観ていたので、ケネディ暗殺事件もテレビ特集で繰り返し観たことがあり、だいたいの、ぼん~やりとした全体像は把握しているって感じでした。なので、第三部「事件から二十年後」の調査書内容はケネディの暗殺事件との符合点やどのように日本版に置き換えているのかを探すのが面白かったです。

この小説で参考文献にされたのは

 

ケネディを殺した副大統領 その血と金と権力

 

 

 

JFK暗殺―40年目の衝撃の証言

 

 

 

この二冊が主に暗殺事件の陰謀説に対しての参考・引用に使われているようです。

 

青柳と森田は大学時代、サークル仲間とケネディ暗殺で犯人に仕立て上げられたオズワルド(公式にはオズワルドの単独犯だと今でもされていますが)について議論したことがあり、森田はこの大学時代の思い出の中にあった知識から、青柳が今まさに陥れられようとされている事に気づき、忠告をして「逃げろ」と言うのです。
森田のこの“有り難い忠告”がないとお話の全体が始まらないので、出番は少ないですが森田の役回りは重要で、かつ印象的です。タイトルのゴールデンスランバーについての話も森田が話しますしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


他者に助けてもらいながらの逃走劇
第四部「事件」で青柳は必死に逃げ回る訳ですが、孤独に逃走しながらも大学時代のサークル仲間や元カノ、元同僚やひょんな事から知り合った人々などに助けられながら追手の追求を躱していきます。
“善良な一般市民が、或る日突然暗殺事件の犯人に仕立て上げられる”という、これ以上無いほど不条理状況を描いている作品ですが、人とのささやかな絆・繋がり・信頼などがお話の随所に描かれているので、さほどの悲壮感も感じず、どこか“あたたかな気持ち”にさせてくれる作品です。

読みながら「青柳、人徳が相当あるのだなぁ~」とかしみじみと思っちゃいましたけど(笑)やっぱり日頃の行いが大事なのね。


とはいえ監視社会・マスコミによる情報操作などの描写は読んでいて恐ろしくなりますけどね(^^;)
青柳の協力者の中に連続刺殺犯のキルオ(三浦)が出て来るのも面白いところですね。こういう少し外した感じというか、意外性をついた協力者の出し方はいかにも“伊坂作品ちっく”だなぁと。

 

 

 

 

ビートルズ
タイトルのゴールデンスランバービートルズの十一番目のアルバムアビイ・ロードに収録されている曲「ゴールデン・スランバー」から取られています。

 

アビイ・ロード

アビイ・ロード

 

 

 「アビイ・ロード」はビートルズが最後に録ったアルバムで、すでに分裂状態だったバンドをポール・マッカートニーがどうにか取りまとめたのだとか。アルバムの後半八曲はそれぞれ別々に録音された曲を、ポール・マッカートニーがつなげ、壮大なメドレーに仕上げているとのこと。


作中、青柳を追い詰める警察庁佐々木一太郎は顔立ちがポール・マッカートニーに似ているという設定です。これを踏まえると、お話のヒール役である佐々木が図らずも、今はバラバラになってしまったかつての青柳の仲間達を繋ぎ逢わせる役割を担っているように感じさせます。

「ゴールデン・スランバー」は直訳すると“黄金のまどろみ”ですが、上記のことを踏まえると、このタイトルにも意味や比喩が込められているのでしょう。これはお話の結末を読んだ後に是非考えてみてください。


ビートルズの事についてはこの他にも作中の所々で出て来るので、ビートルズファンは読むと楽しめると思います。

 

 

 

 

最後に
第三部「事件から二十年後」の最後には“青柳雅春が、首相殺害の犯人であると信じている者は、今や一人もいないだろう”と書かれています。
実際のケネディ暗殺事件でもオズワルドの単独犯だと信じているアメリカ国民はほぼいないみたいです。前に某海外ドラマを観ていたとき、ドラマの登場人物が「オズワルドが犯人だと信じているヤツはいないだろ?」と皮肉交じりに定説のように言っているシーンがありました。まぁ不自然な点が多すぎますからねぇ。もはや“陰謀は隠されていない”と信じる方が無理な状態ではありますが。


この『ゴールデンスランバー』では暗殺事件の黒幕の正体は最後までハッキリ明かされないのですが、副首相の海老原克男がおそらく黒幕なのだろうと匂わせています。ケネディ大統領時、副大統領だったリンドン・ジョンソンにあたる人物ですね。上記の参考文献などからそうなったのだと思いますが、実際のケネディ暗殺事件は様々な陰謀説が現在も次々と出てきていますから「これこそが真相だ!」とは断言出来ない状態ですね。機密文書が全面公開されても、当時の関係者はほとんど亡くなっているので“本当の真相”なんて、いつまで経ってもわからないのだと思います。(“可能性が高い”って事実は出て来るかも知れないですけどね)

 

ケネディ暗殺事件でのオズワルドは移送途中にジャック・ルビーという男に銃殺されてしまいますが、こちらの青柳雅春はどうなるか――読んでお楽しみ下さい。

 

 

 

映画も良作で評価が高いのでオススメ

 

 

※スティーブン・キングもケネディ暗殺事件をモチーフにした小説を書いているようです↓ 

 

 

 

ではではまた~

 

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映画『斉木楠雄のΨ難』みてきました~

こんばんは、紫栞です。
ただいま上映中の映画『斉木楠雄の際Ψ難』(さいきくすおのサイなん)を観てきました~。

斉木楠雄のΨ難 映画ノベライズ みらい文庫版 (集英社みらい文庫)

せっかくなので少し感想をば。

『斉木楠雄の際Ψ難』週刊少年ジャンプで連載中の漫画です。

 

 

私は原作の読者なのですが、超能力がテーマの作品は“どのように能力を生かすか”が描かれるのが常ですが、この作品は“いかに能力を隠すか”に主人公が駆使している様子が描かれているのが秀逸なギャグ漫画。

このたび福田雄一監督で実写映画化されました。福田監督は銀魂に続いての劇場作品ですね~。

 

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この『斉木楠雄の際Ψ難』の映画化は福田監督自身の持ち込み企画なんだそうな。


同じジャンプ連載漫画の実写映画で公開期間が近く、しかも同じ監督なので、『銀魂』と地続きな感じで観てしまいますね。それでなくても福田監督作品は特色が強いですから・・・(^^;)
銀魂』に対し、こちらの『斉木楠雄の際Ψ難』はシリアスなシーン一切なしの、全シーンギャグのみのコメディ映画です。笑うためだけに観る映画ですね。まったく中身の無い“笑い”のみの映画という前提で作られたものなので、もはやストーリーが~うんだらかんたら~と文句を言うのは間違いです。笑えればそれでいい。なので、何も考えずに気楽に観るのが正解だと思います。まぁそんな映画があっても良いじゃないの(^_^)

 

 

 

以下ネタバレ~(を、気にするような映画ではないですが)

 

 

 

 


全体的に再現率が高いです。
原作では主人公の斉木君(山崎賢人)は狂言回しの役で、実際に喋る箇所は省略されているので映画ではどうするのだと思っていましたが、普通に喋っていました。登校して、教室でクラスメイトと一般的な雑談するのが原作読者からすると最初だいぶ違和感ありましたね(^^;)ピンクの頭より違和感がある。ピンクの頭、実写でやったらさすがに変だろうと危惧していたのですが、見ていると慣れてくる・・・と、いうか、むしろ“様になっている”ように感じてくるから不思議。福田ワールドのなせるワザかしら。

燃堂(新井浩文)は特殊メイクのかいもあって、38歳にして完全に原作のビジュアルを再現していましたが、中身は原作とはちょっと違う感じですね。あんなに無気力っぽいキャラクターじゃないんですけど・・・。
海藤君(吉沢亮)は中二病全開でした。原作ではヘタレ部分と半々(?)に描かれているのですが、この映画ではとにかくダークリユニオン一色。演じきった吉沢さんは凄い。
窪谷須(賀来賢人)は原作そのまんま。予想より出番多くて良かった(笑)賀来賢人さんの期待通りのコメディ演技が観られて個人的には満足です。
灰呂(笹原秀幸)はどうしても修造さん・・・とか思ってしまいますが(笑)原作の灰呂を見事に再現なさっていましたよ~。

福田作品常連のムロツヨシさんと佐藤二朗さんも出演場面は少ないですが、さすがの存在感でした。

この映画はラブストーリーとして作ったとのことで、照橋さん(橋本環奈)が全面に押し出された内容になっています。照橋さんの出番が多く、かなりのセリフ量でビビります(ちょっと独特の声していますよね)。橋本環奈ちゃんの変顔にもビビりますね(笑)怪演です。よくここまでさせるな~と感心します。いろんな意味で「おっふ」ですね。ファンは必ず観るべき(いや、観ない方が良いのかな?)

照橋さんが可愛いのはもちろんですが、ママ(内田有紀)も可愛すぎましたね。パパ(田辺誠一)と共にもうちょっと登場してほしかったな~(^_^)

 

文化祭が舞台でしたが、他にも原作の様々なお話やギャグが盛り込まれていました。原作の序盤頃のエピソードが中心なので観ていて懐かしかったです。役者さんが演じることでネタがパワーアップしている箇所が多々あり、とにかく笑えました。コメディもの観ると「役者さんって、スゲぇな」としみじみと思いますよね・・・。

 

コメディを骨の髄まで楽しみたい人にオススメです。如何でしょう。

 

 

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ではではまた~

秘密―トップ・シークレット2巻「露口絹子事件」あらすじ・解説

こんばんは、紫栞です。
前回に引き続き、今回は清水玲子さんの『秘密―トップ・シークレット』

 

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2巻に入っている「鎌倉一家惨殺事件(露口絹子事件)」についてご紹介。

 

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あらすじ
妻、次女、義母を殺害、その後遺体を損壊した殺人犯・露口浩一の死刑は、事件の残虐性の高さなどの理由で発生からわずか三年というスピードで執行された。
青木は「特捜」で罪状と事実に間違いがないか確認する作業を命じられる。事件当時の露口浩一の脳映像を確認する青木だったが、そこに映し出されたのは行方不明の、浩一に殺されたとされていた長女・絹子が家族の遺体を前に凶器を持って血塗れで佇む姿だった。
三人を殺害した真犯人は絹子であり、浩一は娘を庇う為に遺体の損壊・偽装工作・嘘の供述をしたのだ。
後日、行方知れずだった露口絹子が交番で保護される。しかし、執行された刑は覆らないことから、「鎌倉一家惨殺事件」において絹子は無罪放免となる。
やり切れない思いを抱きつつも、青木は「特捜」の作業を続けるのだが――。

 

 

 


2巻には二つの事件が収録されていて、前半に「天地奈々子誘拐事件」

 

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後半にこの「鎌倉一家惨殺事件(露口絹子事件)」が入っています
「露口絹子事件」はシリーズの中でも随一のお話で、ミステリー的にも非情に完成度が高いです。事件捜査の過程でのキャラクターの内面描写も痛切に描かれています。

2016年公開の実写映画では

 

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この「露口絹子事件」と「貝沼事件」↓ 

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がベースになっていました。二つの事件が混ざっていたのですが・・・まぁ混ぜるようなものじゃないですよ普通に考えればわかると思いますが・・・混ぜるなキケン。

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事への葛藤
青木は父親が他界、葬儀を済ましてきたばかりで「特捜」の仕事を命じられます。青木の家族が出て来るのはこのお話が初ですね。
青木の母親は青木の「第九」での仕事をあまり快く思っていない。ハッキリと口に出す訳ではないですが、態度に透けて見えてしまうのですね。

葬儀の席で「お父さんの脳みそとって見たりしないわよね?」と長女に聞かせたり、親戚に息子の仕事内容を隠していたり、あげくに「お父さん・・・・・・あんたの仕事好かんかったと」と口に出してしまう始末。※お父さんは生前、青木に「おまえの仕事は立派な仕事だ」と言っていました。
このように、青木の母親はMRI捜査への世間一般の感覚を体現している存在ですね。


で、30年連れ添っていた母親も書いていた事すら知らなかった“父親の日記”を青木に託していく。「私は見たくない」「あんたの好きに処分していいから」と言って・・・。なんって悩ましいブツを持ち込んで来るんだ、こんな時に!って感じなんですが(^_^;)

 

青木は「特捜」で露口浩一の脳を見る訳ですが、浩一は娘の絹子が複数の男と情事を重ねる姿を日々盗み見ており、“犯行の動機につながる”とのことで捜査上、青木は浩一が見ていた絹子の情事を全て見なくてはいけないのですね。

母親の呟きを聞かされた後の青木にとってはこれ、かなり辛い仕事ですよ。絹子の「私より 今あんたのやっている事の方がずっと恥ずかしい事よ ゲス野郎」のセリフが痛いほど突き刺さるのです・・・ツライ。

結局“父親の日記”を読まずに焼却処分することにした青木ですが、が・・・あ~・・・もう、ここのシーンがですね、なんともはや・・・で(T_T)個人的には一番と言っていいほど感慨深いシーンです。必読!

 

 

 

 


絹子
この事件を印象強くしているのは、なんと言っても“絹子”でしょう。美少女の殺人犯ってだけで、もうある種の魅力があるのですが“絹子”という古めかしい名前もまた印象的。美少女に絡んだ淫猥な人間関係・事件内容や和服を着ている人物がいたりなど、どこか日本の古典ミステリーを連想させます。本当は近未来SFミステリーなんですけどね。ここら辺のさじ加減が『秘密』シリーズの特色だと思います。

実写映画だと、絹子の犯行動機が改変されていますが(改変・・・というか、意味わかんなくなっていますが^^;)

原作では、絹子は幼少期に父親の浩一に襲われかけたことがきっかけで男を憎むようになり、自分と関係を持った男達を次々と殺していったというものですね。
浩一は全ての元凶は自分だと絹子の犯行を偽装しつつも、死ぬまぎわまで“絹子を殺さなかったこと”を後悔していたのです。

 

 

 

 

盲目の少年
捜査の最中、絹子と道で会うと少し会話をするような間柄だった「平井学」という少年が交通事故で死亡します。平井少年が何か見ているかもしれない!とMRI捜査への強力を申し出にいくのですが、実は平井少年は全盲。絹子もそれを承知で“ある場所”に案内していた訳ですが・・・。まぁ、ガガーン!って感じですよ。


もう事件を追うのは諦めるしかない・・・!

と、なったところで道路の死体があったところの痕跡を見て、平井少年の飼い犬で盲導犬の役割を果たしていたZIPの脳を見ることを思いつく(ZIPも平井少年と一緒に死んでいました)

で、事件は急転直下解決に。

読んでいて「あ、そうかそうか」と納得の驚きをさせてくれる解明方法ですね。素晴らしいです。

 

 

 

最後
お話の最後はZIPの脳映像―やさしさと愛情にあふれた世界―を見ながら、
“本当に世界がこんなに美しいのなら、一冊だけ燃やさずに残した父の日記もいつか読めるかもしれない”
と青木が思うところで終わります。

 

構成の巧さはもちろんですが、「鎌倉一家惨殺事件(露口絹子事件)」は青木の仕事への葛藤が全面に描かれており、その後もこの葛藤はシリーズ内で付きまといますので、その点においてもこのお話は重要だと言えると思います。
ファンはとにかく必読!また、この事件単体で読んでも十分面白いお話ですので、映画観て「ようわけわからんかったわ~」てな人にもオススメ。映画はとにかくダメダメでしたからね・・・是非是非、原作読んで下さい!

 

 

 

ではではまた~

秘密―トップ・シークレット2巻 「天地奈々子誘拐事件」あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。
今回は清水玲子さんの『秘密―トップ・シークレット』

 

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 2巻に収録されている「天地奈々子誘拐事件」をご紹介。

 

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あらすじ
渋谷連続少女誘拐事件捜査中の「第九」にクール便が届く。中には人間の脳、“SEARCH MY BODY”(私の体を探して)と書かれたメッセージカードと天地奈々子の写真が同封されていた。
天地奈々子は「第九」に配属された新人。三日前から無断欠勤が続いていた。
検視の結果、脳は天地のものと判明。送られてきた脳は大脳皮質のみで生命維持に必要な小脳・脳幹はないので、「脳死状態」で生存している可能性がある。天地の“体”を一刻も早く見付けるため、「第九」で天地の脳をMRI捜査にかけることになったのだが――。

 

 

 

 

 

2巻にはこの「天地奈々子誘拐事件」「鎌倉一家惨殺事件(露口絹子事件)」の二つの事件が収録されています。


前後を「貝沼事件」

 

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と「露口絹子事件」にはさまれているためか、何となくシリーズ内での印象が薄い・・・ような気がする「天地事件」ですが(^^;)

新人とはいえ「第九」の捜査員の脳が送られてきて、皆でその同僚の脳映像見て捜査しようってんだから見方によってはこれ以上無くショッキングで過酷な事件。しかも青木は天地と交わした最後の会話がイライラしての八つ当たりでしたからね・・・(怒鳴りたくなる状況下でしたが)かなり精神的にやられて、悪夢に悩まされていましたね。

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

「天地」について

天地はこのお話で「第九」に配属されてきて、この事件で死んでしまうので、原作ではホントにこのお話のみの登場キャラクターなのですが、アニメや映画だと最初から捜査員の一人として登場しています。


映画では捜査上のセリフを言うだけの登場でしたね。まぁストーリー上しょうがないのかと思いますが。木南晴夏さんが演じていました。

 

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アニメだと天地が青木の先輩になっていて(原作だと青木が先輩)、犯罪心理学の専門家になっているみたいです。性格も原作とはだいぶ異なるみたいですね。

 

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アニメの23話・24話の「SEARCH MY BODY」が原作の「天地奈々子誘拐事件」にあたります。原作だと三つ目の事件ですが、アニメはだいぶ後半に持ってきていますね。

 

 

何故アニメや映画だと原作の設定を無視して天地を登場させているのかというと、(これは私が勝手に思っているだけですが)天地が女性だからだと思います。
「第九」は男の捜査員のみですからね~(女性みたいな上司はいますが)。映像にする際には女性も一人くらいはだして少し変化をつけたいのだと思います。(他の実写化作品でも男ばっかだと原作にいない女性キャラクター増やしたりしますよね)

 

原作の天地は他人のオーラや霊が見えると公言する変わり者で、MRIの映像を見て背徳的な悦びを感じるなど、だいぶエキセントリックなキャラクターです。ナイスキャラで面白いので、この話のみの登場で死んじゃうのは惜しいよなぁとか思いますね。

 

「夢」を見る

お話としては「夢」(寝ているときに見る方の夢です)をMRIで見て捜査するってのがメイン。

天地は凶行の間ずっと眠っていて手がかりが無いので、「夢」の内容に天地が置かれている状況が反映されているかもしれないとMRIで見てみるのですね。
スケールの大きい「夢」を見ることが多いとか、でもほとんど忘れてしまうって話は読んでいて驚きでした。


最終的には死んでしまう天地ですが、大脳をとられたあと残された小脳と脳幹で約三日間生きていたとのこと。
置かれた状況が特殊なのと、天地が霊感体質女なこと、「夢」を見るなどのストーリー内容のためか、シリーズの中では超自然的力の気配が強く漂っている事件でもあります。天地が青木のジャケット掴んでいたのもオカルト的ですよね。
終盤で青木が見る天地との「夢」、(脳を頭に押し込むシーンはシュールでちょっと笑ってしまいましたが^^;)「薪さんに怒られる!」って理由で現に戻ってくる青木、さすがだ(笑)

 

薪さんが青木に発信器つけた理由や、最後の天地が死ぬ直前に見た「夢」が切なさ・やり切れなさに拍車をかけますね。

 

 

“彼女の頭の中でつくられたオレの笑顔が いつまでも画面にうつってオレを苦しめた”

 


・・・・・・しかし、同僚の皆に「夢」見られるのは嫌だなぁ(^^;)

 

それにしても、天地の霊感体質が本当なら、薪さんは青木に生き霊を飛ばしているのだろうか。岡部さんも薪さんに生き霊飛ばしているみたいですけど(笑)“生き霊”っていう仰々しいものじゃなく、“相手を気にかけている思い”が見えるってことなのかな。『秘密』は奥が深いですね!

 

 

 

 

 

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ではではまた~