夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

プリティが多すぎる 原作 あらすじ・感想 ドラマとはまったくの別物?

こんばんは、紫栞です。
今回は大崎梢さんの『プリティが多すぎる』をご紹介。

プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)

2118年10月18日から日本テレビ系でスタートする連続ドラマの原作本ですね。

 

あらすじ
新見佳孝は仙石出版に勤める新米編集者。新卒で入社後、「週間仙石」に配属され二年間、いつかは文芸部門の仕事をと夢見て頑張ってきた。しかし、春の異動で申し渡された部署は「ピピン編集部」。対象年齢中学生女子のローティーン向け月刊誌だった。
「プリティ、ポップ、ピュア、ピピン。女の子はPが好き」
チープでかわいい洋服やケバケバしい小物に溢れた編集部、くせ者揃いのスタッフや年下のモデル達。
まったく興味の持てない“カワイイ至上主義”の世界に放り込まれた男性編集者の悪戦苦闘の日々が始まる。

 

 

 

 

 

 

 


お仕事小説
ドラマ化されるのとファッション雑誌編集の舞台裏に興味があったので読んでみました。
上の画像は文庫の表紙ですが、私は単行本で読みました。単行本も6体の人形が出て来たりしてなかなか装丁が凝っています。あと、柔らかくて読みやすいです(^^)

 

プリティが多すぎる

プリティが多すぎる

 

 

読む前はてっきり10代後半~20代前半が対象年齢のファッション雑誌編集部が舞台だと思い込んでいたので、ローティーン向けと知って驚いた・・・と、いうか思っていたのと違った(^^;)勝手に勘違いしていただけなんですけど。
しかし、女子中学生が対象年齢の雑誌が舞台のお話ってのは珍しいですよね。この年齢の子達を相手にしているからこそのエピソードが描かれていて新鮮です。
大崎梢さんの作品を読むのは初めてなのですが、率直な感想としては非常に読みやすくってスイスイとページがめくれることと、6話構成で1話ごとに仕事上でのトラブルや編集者としての成長が描かれるので、非常に連ドラにしやすそうなお話だなぁと。
小説の各章は「PINK」「PRIDE」「POLICY」「PAPTY」「PINCH」「PRESENT」と、すべて頭文字が「P」でまとめられています。ドラマもサブタイトルはこの法則でまとめてくれるかな?と思うのですが、どうでしょう。

 

 


ドラマとの違い
ドラマのキャストは以下の通り
新見佳孝千葉雄大
佐藤利緒佐津川愛美
佐藤美枝子小林きな子
市之宮祐子矢島舞美
森野留美池端レイナ
レイ黒羽麻璃央
キヨラ長井短
美麗森山あすか
近松吾郎中尾明慶
三田村詩織堀内敬子
柏崎龍平杉本哲太

はい。あの、主人公はおいといて、原作通りなのは副編の佐藤美枝子さんぐらいで他は原作での容姿とは違いますね。

 

いえ、そもそも設定が原作とだいぶ違うので何とも言いがたいのですが。
まず大きな違いとしては、ピピン」がローティーン向け月刊誌から原宿系ファッション誌に変更されているところですね。
原作では女子中学生モデル達のこの年代のモデルならではの事情や葛藤がお話の中心となっているので、モデルの年齢が上がるとなると原作通りのお話の進め方はまず無理だと思います。ドラマの視聴者層に合わせて扱う系統を変えたってことですかね。

そして、主人公の佳孝の設定も週刊誌に配属されていた新米編集者から文芸編集部のエースという設定に。なので、近松柏崎の所属も文芸編集部に変更されています。
これはまぁ、文芸部のエースでエリート意識とプライドの高い男がいきなり女の子雑誌に異動のほうが話的にわかりやすいからですかね。強弱をつけやすいというか。確かに原作読んでいると、佳孝はまだ新米編集者のくせに馴染めない部署だからっていつまで心中でふて腐れているんだとかちょっと思うので、文芸部のエースだったという設定の方が説得力は出るかも知れないですね。
編集長の三田村が女性になっているのも、女性ばかりのところに男性一人という図の方がより困惑度合いが増すからだと思われます。

原宿のカリスマショップ定員で佳孝に何かとアドバイスするとかいう「レイ」なる人物はドラマオリジナルですね。

 

 

 

 

以下すこ~しネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


少女モデル達の裏側
この『プリティが多すぎる』なんですが、新米編集者の成長物語だと思いきや、年少モデル達のお話が多いというか大半を占めています。年少モデル達ならではの現場の雰囲気やオーディションの内容、未成年ならではの経済的問題やメーカーとの専属契約、モデルの知らないところで交わされる“大人の約束事”・・・などなど。
若干、少女だからってこんなにどのモデルも純粋で素直だろうかと疑問を感じてしまいうところはありますが(^^;)、小説的にはこの少女モデル達の裏側の部分を読めるところが特色になっていると思います。モデルの世界が描かれる物語は多いですが、“少女モデル”となるとまた事情が違ってくるのだなぁと驚きました。ありそうでなかった題材で面白かったです。

 

 

成長物語?
さて、少女モデル達の物語とは裏腹に、あまり興味をそそられないのが主人公・佳孝の編集者としての成長物語ですね。

モデル達の裏事情の方が積極的に描かれているからとゆうのもあるとは思いますが、どうも主人公に魅力を感じることが出来ないのが難点。最初の1章2章ぐらいでしたらまぁ、文芸部志望で“カワイイ”とは無縁な人生をおくってきた男子がローティーン向け月刊誌にいきなり配属されれば、馴染めずに腐ったりするのも必然だとは思いますが(そうでなくても女性特有の世界というのは男性の理解の範囲外でしょうからね)、お話が後半に入っても1章と同じような心持ちでグチグチするのは読んでいてしつこいというか、「まだそんな事言ってんのか」と思ってしまいますね。大手出版社勤務で新米なんだから贅沢言うなって気もしますし。最後まで読んでも「これ、成長してるのか・・・?」と疑問なまま終わってしまったなぁと。


しかしまぁ、主人公に感情移入出来ないのは私が女性で“カワイイ”が好きだからかもですが。やはり“カワイイ”という女性性を否定されるといい気がしないですからね。好きになれとは言いませんけど、否定ばっかりじゃなくって受け入れる姿勢をみせてくれたって良いじゃないの、と、文句言いたくなる(笑)

 

編集部の他の皆さんもあまり描かれていなくって残念な気がしますね。面白そうな人達が揃っているのに勿体ないような。同僚達とのあーだこうだって「お仕事小説」の醍醐味だと思うんですけど。

 

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最後の6章に「ピピン」のファンである小説家の水科木乃が出て来るのですが、サラッと終わってしまって・・・もっと話膨らまして欲しかったです。(水科木乃はドラマにも登場するみたいですが。清水くるみさんが演じるみたいです)

終盤、佳孝のミスのせいで一人のモデルの前途が大きく変わってしまうトラブルが起こるものの、お話としては全体的にあまり盛り上がらないままだった印象を受けます。もっと強弱が欲しかったと物足りなさも感じてしまいますね。

 

 


ドラマに期待!
と、まぁ佳孝に負けないぐらいグチグチと書いてしまいましたが(^_^;)
でも何というか、幾らでも面白く出来る要素が詰まっているお話だと思います。ドラマでどの様に味付けされるのか楽しみですね。ドラマは原宿系ファッション誌が舞台で別物になるぶん、小説もドラマも個々に楽しめると思います。少女モデルの裏側に興味のある方は是非。

 

プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)

プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)

 

 


ではではまた~

『インド倶楽部の謎』感想 "有栖川版"国名シリーズ、13年ぶりの第9弾!

こんばんは、紫栞です。
今回は今月の7日に発売された有栖川有栖さんの『インド倶楽部の謎』をご紹介。

インド倶楽部の謎 国名シリーズ (講談社文庫)

 

あらすじ
神戸の異人館街の外れ。〈インド亭〉と呼ばれる屋敷では、家主である実業家の間原郷太を中心に毎月一度、インド好き同士の七人が集まり例会と称して食事を楽しむ会を開催していた。
ある日、例会の余興として、前世から自分が死ぬ日までのすべての運命が記されているというインドに伝わる「アガスタティアの葉」の公開リーディングをすることに。対象者の過去を次々と言い当て、前世での人となりや名前、自身が死ぬ日を手帳に書いて貰うなどし、その度の例会はつつがなく終了したが、後日「アガスタティアの葉」のリーディングを仲介したコーディネーターの出戸守が遺体となって発見され、さらにリーディングを受けた例会のメンバーの一人が殺害される。現場に残っていた手帳には被害者が死亡したと思われる日付と同じ日にちが記されていた。まさかこの死は予見されていたのか?
犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖は捜査(フィールドワーク)を開始するが、調べていく中で例会の七人のメンバーは“ある絆”で結ばれていることが明らかになって――。

 

 

 

 

 

13年ぶり!
2005年に発売された『モロッコ水晶の謎』以来、13年ぶりの有栖川版【国名シリーズ】です!
※【国名シリーズ】について、詳しくはこちら↓

 

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これで9作目となります。私はというと待ち望んでいたくせに一週間ほど発売されたことを知らずに過ごしていたのですが。なんたる不覚・・・!


こんなにも期間が空いてしまったことに対して、あとがきで有栖川さんは
「あれ、時間が経つのが早いな。えっ、なんで?」と思っているうちに歳月が流れていたのだ。感嘆。
とのこと。


まぁ【国名シリーズ】が出てなかったってだけで「作家アリスシリーズ(火村英生シリーズ)」はコンスタントに各出版社から刊行されていましたからね(^^;)

短編集が多い【国名シリーズ】ですが、今回は長編です。作者の有栖川さん曰く、「作家アリスシリーズ」は短編作品が多いので、数年前から長編を増やそうとしているとのこと。確かに『鍵の掛かった男』『狩人の悪夢』と長編作品が続いていますね。
他記事でも書いていたように、私個人は海外旅行を期待していたのですが、夢叶わず(笑)。

 

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今回は神戸が舞台です。
「作家アリスシリーズ」には大阪、京都、神戸とそれぞれお抱え(?)の捜査班がありますが、神戸が舞台って事で今回は樺田班。個人的に樺田班が好きなので嬉しかったです。他の班の人達が寛容で親切な刑事さんばかりなので、野上さんみたいに二人に嫌味言ってきたりする人がいると新鮮なんですよね。メリハリが利いた樺田班。今回は嫌みは控えめでしたけど。今作は野上さん視点のところもあります。毎回思うけど、野上さんってやっぱりツンデレ(笑)

 


有栖川ミステリ
『インド倶楽部の謎』という題名はエラリー・クイーンが書こうとしてやめた作品の題名から頂いているとのこと。作中に詳しい解説があるんですけども。そんなわけで、題名先行で書かれたお話らしいですが、読んでみての感想としては凄く有栖川さんらしいミステリだなと思いました。
インドという事で「アガスタティアの葉」だの前世だの荒唐無稽な事柄を扱っていますが、ロジックによって犯人にたどり着く過程や、犯人の一筋縄では理解しにくい動機、余韻が残る終わり方などなど。凄く有栖川作品らしさが溢れていますね。


そして、やっぱり火村とアリスの二人でのやり取りや捜査過程が抜群に面白いです。今回は最初っから最後までコンビで行動していて嬉しい。作品によっては火村が後半まで出て来なかったりするものもあるんですが、このシリーズは二人揃っているのがやっぱり楽しいし面白いですね。読む度痛感します。


今作は捜査(フィールドワーク)が始まってからは先が気になって一気読みって感じでした。犯人にたどり着くロジックも綺麗で個人的に好みです。

 

 


カレーを呼ぶ男
今作は長期シリーズならではの、長年読んでいるファンが楽しめる仕掛けがいつも以上に多かった気がしますね。「作家アリスシリーズ」は「学生アリスシリーズ(江神二郎シリーズ」のアリスが執筆しているというパラドックスな設定ですが、

 

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「作家アリスシリーズ」のアリスもフィールドワークに立ち会うたびにそれぞれの事件に名前をつけていたとか言って火村に軽い衝撃を与えるシーンがあります。今までの事件を振り返っての話がバーと続くのとかなんだかサービス精神を感じました。


“永遠の34歳”設定ということもあり、時事ネタも随所にあります。北朝鮮のミサイル話とかRADWIMPSの「前前前世」の話が出て来たりとか。「学生アリスシリーズ」とは違い、今現在が舞台なんだと強調されていますね。(「前前前世」は今作の“前世話”からのしゃれっ気でしょうけど)


そして、他作品でもやたらとカレーばっかり食べている火村とアリス。今作は題名に“インド”とついているだけあって、カレーは外せないっ!って感じで満を持して(?)作中で二回食べています。
「宇宙が誕生した瞬間から、お前と俺は今日これを食べると決まっていたみたいやな」
と、アリスも言っています。火村も「ここに至るには必然性があった」とか返している(笑)
今作は食事シーンが多かったですね。出だしも居酒屋でのシーンからでしたし。出て来るメニューがいちいち美味しそうでした。グルメ推理小説

 

 

 

 

 

 

 

以下若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前世
「アガスタティアの葉」って、私は何とな~く聞いたことがあるような無いようななボンヤリしたもので馴染みは全然無いのですが、世代によってはインドとイコールで連想するものなんですかね。「アガスタティアの葉」についてはお話の導入に使われていて、重要なのは〈インド倶楽部〉の七人が皆“前世で同じ時を生きた”という共同幻想で結ばれているという点です。


いい歳しした大人が七人も集まって何をバカな・・・って感じですが、この共同幻想は幻想を植え付けていた被害者の本性が明かされても最後まで揺らぐことはありません。被害者の坊津は相当上手いストーリーテラーだったらしく、色々と空恐ろしい限りなのですが(ホント、他にも色々と恐ろしいが被害者でした・・・)、犯人は坊津が信じ込ませた“前世”を理由に犯行に及んだ訳なので、悪趣味の一環で上手くやりすぎたせいで自身が命を落すことになったのは何とも皮肉な結果ですよね。

 

前世なんて火村はもちろん、アリスも真っ向否定の立場だろうってのはファンは了解しているところですが、〈インド倶楽部〉のメンバーの一人・佐分利が、輪廻転生の話の中で

「まさにそうです。転生を信じられたら、人は生き方を誤りにくくなります。凶悪事件のニュースを聞いた時、私たちは被害者に深く同情します。『気の毒に。どうしてそんな目に遭わなくてはならなかったのだろう』と。あれは因果応報というもので、理不尽な事件で命を落す人は、前世で理不尽に人を殺しているんですよ」

と、いうのを聞いてアリスが怒りを露わにするのですが。


私も読んでいて凄い腹が立ちましたね。もう怒っているアリスの意見に完全同意で。アリスはいつも作中で私の意見を代弁してくれて、もう大好きなんですけども(笑)


しかし、ここで語られている転生話は転生することが希望や救いになるといった言い方なので、輪廻転生からの「解脱」が最終目的の仏教の考え方とは別で、インドの原始宗教によせたものなんでしょうね。輪廻転生と言われると仏教のイメージが強いですけど、仏教では転生し続けることが苦しみだという考え方なので、上記の佐分利の意見とは真逆になる。

 

輪廻転生の話の延長でソウルメイトの話が出て来ます。火村とアリスがそう見えると。“ソウルメイト”とか出て来てちょっとビビっちまったんですが(笑)
あ、やっぱり初対面の人から見ても二人はそういう、ただならぬかんけ・・・いや、絆が深そうに見える・・・の、か(^^;)

 

 

 

物語を完成させるのは
ソウルメイトはともかく、近年の「作家アリスシリーズ」は読む度に「アリス~。なんて友人想いなんだ。感動するぞ」とか思います。前作の『狩人の悪夢』なんて泣きそうになりましたからね私。

 

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近年の作品では語り手のアリスの役割が前面に出されているものが多いように感じますね。今作でも事件関係者に

 

「謎を解くのは先生で、あんたが物語を完成させるんかな。それがコンビを組んでいる理由や」

 

と言われています。


それから、逮捕後の犯人に
「あんただけは、判ってくれるだろう」といった旨のことも。
通常の推理では到達出来ないであろう部分を、アリスは感じ取ることが出来るということなんですね。そして、火村はアリスのそういう部分を確りわかっているんだけど、アリス自身はまったくの無自覚でやってのけているという。
ただ名探偵の活躍を記する語り手ではなく、探偵役を、物語を、補っている登場人物の一人。侮れない(笑)

 

 


今回の『インド倶楽部の謎』もそうですが、やはり長編作品はシリーズ内での重要度が高いって気がしますね。シリーズのファンならばやはり必見。長編は外せません。(短編ももちろん面白いですけど)
是非『鍵の掛かった男』『狩人の悪夢』『インド倶楽部の謎』と続けざまに読んでシリーズの深みを味わって欲しいです。

 

ではではまた~

 

 

 

 

 

『純平、考え直せ』小説 あらすじ・感想 映画との違いなど~

こんばんは、紫栞です。
今回は奥田英朗さんの純平、考え直せを御紹介。

純平、考え直せ (光文社文庫)

9月22日から公開される映画の原作本ですね。

 

あらすじ
坂本純平、21歳。歌舞伎町の早田組という組に所属の下っ端やくざ。ハンサムで気がよく、男相手には喧嘩っ早いが女には弱い。歌舞伎町を歩くと三十メートルごとに声がかかるちょっとした人気者だ。
そんな純平はある日、親分に対立する組の幹部の命を獲ってこいと命じられる。“これで男になれる。本物のやくざになれる”と気負い立ち「やります」と即答した純平は、親分から数十万円を渡され、決行までの三日間、自由な時間を与えられる。
決行し、捕まればしばらく娑婆とはお別れとなる。悔いなく過ごそうと気ままに楽しむ純平だったが、何故か行く先々で人にかまわれ、あてにされ、さらには行きずりの女にこれから自分が“鉄砲玉”になることをふと告白してしまったことから、ネット上には純平にたいして数々の無責任な意見が飛び交い・・・。
三日間の儚い“青春”。その末に純平が選ぶ選択は――?

 

 

 

 

 


青春小説
巧みな人物描写と、一気読みするしかない文章で読者をグイグイ引っ張ってくれる奥田英朗作品。犯罪が絡んだスリリングなお話や

 

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多視点で展開するお話なども多いですが、

 

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純平、考え直せ』はひたすら純平の一視点でお話が展開します。やくざの下っ端が対立する組の命を獲るよう命じられる、いわゆる“鉄砲玉”を扱った作品で犯罪絡みではありますが、このお話では描かれているのは犯罪部分ではなく、一人の若者の青春。雰囲気も全体的にコミカルで所々クスッと出来る箇所もある青春娯楽小説になっております。

 

 


映画との違い
映画のキャストは純平役が野村周平さんで、上記のあらすじにある“行きずりの女”・加奈役が柳ゆり菜さん。
映画の公式サイトには他のキャストも出ているのですが、どの人がどの役なのか分からないので割愛。


さて、公式サイトによるとあらすじに

ふたりの青春、あと三日!?

とか

孤独と不安を慰め合ううちに、ふたりは惹かれ合っていく・・・。

とか書かれているんですが。


コレが、原作よんだ人間からすると・・・え?何の話ですか???
ってなもんでして(^^;)


もうなんか、原作が違うんじゃないかとか思うぐらいなんですけども。

映画の公式サイトですとラブストーリー路線で、ポスターとかも完全に恋愛が主体の雰囲気のつくりなんですが、原作では加奈はホント、行きずりの女って役割での人物で、お話の中での重要度は純平以外の他登場人物達と大差ないです。歌舞伎町の様々な人達の中の一人ですね。


映画は加奈を相手役にして純平と加奈、ふたりのラブストーリーに作りかえているみたいですね。加奈役の柳ゆり菜さんはグラビアで有名な方なんだそうで、激しいラブシーンなども映画の見所となるようです。

 

原作を読んだ身としては、気になるのは作中に登場するジイサン・西尾圭三郎なのですが、映画のキャストも見た限り、そういった年齢の方がいないので、何だか登場しなさそうですね。原作では良い味が出ているジイサンで、出番も多めだし、作品の中での重要度も加奈より高いって思うのですが。ジイサンのくだりを丸々カットして加奈とのやり取りをお話の中心にしているんですかね・・・(-_-)
なんにせよ原作とは別物と考えた方が良さそうです。

 

2014年に舞台作品にもなっているみたいですね↓

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


バカしか出て来ない
この小説なのですが、堅気の人生を歩んでいる人から見れば軒並みバカしか出て来ません。

「男になれる」だの言って人殺しを即答でOKして、認めてもらえているだの舞い上がる純平はもちろんですが、「若いうちだけだから」「退屈だから」と不用心に無茶な遊び方をするOL の加奈、「ぼくは定年退職とともに、グレルことに決めたんだ」とか言う元大学教授の西尾のジイサン、鉄砲玉をするというのを聞いて心から純平を尊敬するテキ屋の信也・・・そして、ネット上で無責任に盛り上がる人々。

 

バカばかりなんですけど、しかし、皆どこか憎めないような人物なんですよね。純平の短絡的ですぐに調子に乗るところとか、兄貴の真似してかっこつけようとしたりとか、人に頼られると大口たたいて面倒ごとを引き受けちゃったりとか、読んでいて「バカだなぁ」と思うんですけど、何だか微笑ましい。
ネット上の人々の無責任な盛り上がりも、完全に突き放しているものではないです。面白がって悪戯に冷やかしたり、暴言を吐いたりする中でも、縁もゆかりもない赤の他人のために真剣に説得しようとしたり、心配する人もいる。「純平、考え直せ」と言ってくる。
幼少の時点で自分の人生を諦め、期待していなかった純平も
案外世界はいいところかもしれない
と、考え直したくなる訳です。

 

 

 

考え直してくれない
21歳の純平はずっと不良で、地元にいたときはひたすら喧嘩、新宿に来てからは丁稚のように組の部屋住みで、若者らしい遊びとはとんと縁がない生活をしてきた。決行までの三日間、やくざになってから始めて組から自由になり、今までいかに自分が狭い世界で生きてきたのかを実感します。


西尾のジイサンの話を聞いて、自分がただの猪突猛進の兵隊であること、殺し殺されのような状況下でも、すぐに開き直ったりすることが出来るのは若くってなにも知らず、価値があることもわかっていないからだと痛感もします。


三日間で今までにない出来事や人に遭遇し、純平の中で価値観も変化したかな?と思うのですが、やはりバカなので、鉄砲玉をやることを考え直してくれません。


色々な人から「考え直せ」と言われても、組仲間から尊敬する兄貴は純平をただ利用しようとしているだけだと聞かされても、考え直しません。


兄貴に電話して、明るくやさしい声をかけられただけでもう満足して“自分の信じることが真実だ”と娑婆とおさらばする決意をかためてしまいます。バカなので。


結局、どんな体験をしても純平が決意を鈍らせることはないままに最後、対立する組の幹部に拳銃を発砲するところで物語は終わっています。発砲して、その後どうなったのかはわからずじまい。
この小説では犯罪部分は重要ではなく、ただただ一途な純平という若者の三日間の青春を切り取った作品なんだとこのラストも物語っていますね。

 

読者的には純平が最後に決行してしまうのは残念な気持ちもありますが、読んでいるなかで純平の人となりを知ってくると、鉄砲玉を投げ出してどっかに逃げるという選択はまずしないのだろうなぁとわかってくるので、この結末も「やっぱりそうですよね」といった感じでストンと受け入れられます。

 

映画はストーリーを大幅に変えているみたいなので、結末もまったく違うものになっているかもしれないですね。原作ですと、加奈は何回か止めるものの、最後には説得をあきらめてただ無事を祈るのみになっていますが。
後、やっぱり西尾のジイサンがいないってことなら映画観た人には是非とも原作小説読んでジイサンを知って欲しいです。ホント、ナイスなジイサンなので(笑)知らないままじゃ勿体ない。

原作を読んでから映画を観ても、逆でも、どちらも十分に楽しめると思いますので、気になった方は是非。

 

純平、考え直せ (光文社文庫)

純平、考え直せ (光文社文庫)

 

 

ではではまた~

『八つ墓村』小説 ネタバレまとめ 実話がモデル? 映画・ドラマとの違いなど~

こんばんは、紫栞です。
今回は、作品名は日本人の大半が知っている名作、横溝正史八つ墓村をご紹介。

八つ墓村 (角川文庫)


あらすじ
八つ墓村には八つの墓がある。
永禄九年、村に八人の武者が落ちのびてきた。はじめは快く落武者たちを迎えた村人たちであったが、毛利方の提出した褒美の金と、落武者たちが備えていた三千両の黄金に目が眩んだ村人たちは八人の落武者を惨殺。その後、村人たちは武者たちが携えていたはずの三千両の黄金を必死で探すが、探索の間に怪事があいついで、結局ありかはわからずじまいに。祟りを恐れ、村人たちは八人の落武者の死骸を丁寧に埋葬しなおし、八つの墓を立て、「八つ墓明神」とあがめ奉ることにした。そして村は“八つ墓村”と呼ばれるようになったという――。
大正×年、この八つ墓村の名が全国の新聞に喧伝されるような、世界犯罪史上類例がない事件が起こった。落武者襲撃の首謀者・田治見庄左衛門の子孫であり、狂疾で村人から恐れられていた要蔵が、妾の鶴子が子供を連れて村から逃げ出したことで発狂、一晩で三十二人の村人を虐殺して山へ逃げ込み、その後行方知らずとなったのだ。
この事件から二十数年後、鶴子の息子・辰弥は、母も養父も失い天涯孤独の身となっていた。そんな辰弥のもとに田治見家からの使者が訪ねて来る。辰弥に八つ墓村に帰ってきて田治見家を継いで欲しいと使者に告げられるが、直後にその使者は辰弥の目の前で毒殺されてしまう。
戸惑いながらも八つ墓村を訪れた辰弥だったが、辰弥がやって来てからというもの、村ではさらに恐ろしい事件が立て続けに起こり――。

 

 

 

 

 


日本ミステリの代表作
八つ墓村』は金田一耕助シリーズ】の長編4作目。おそらく、横溝正史の作品の中ではダントツに知名度のある作品だと思います。(犬神家の一族も有名ですけど)

 

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「日本独自のミステリの舞台設定といえば?」と聞かれたら、「横溝正史風の、村で殺人が起こるヤツ」とか答える人は多いと思います。
横溝正史風”ってのは、具体的に言うなら『八つ墓村』と『犬神家の一族』のイメージが大半を占めているのだと思いますが。


昭和で、村が舞台で、因習や異常な人間関係、名家の複雑すぎる一族構成、骨肉の争い、「祟りじゃ~!呪いじゃ~!」と事あるごとに叫ぶ気が触れた老人が出て来る・・・・・・などなど。


これらの要素は定番として扱われていて、テレビ番組などでネタみたいに使われていたりしますよね。
とにかく、後世の日本ミステリに多大な影響を与えていることは明らかです。推理小説でありながら現実感が希薄な舞台設定や、怪奇小説的なおどろおどろしい雰囲気が読んでいて癖になるんですね~。

 

 


映画・ドラマ
八つ墓村』は2019年現在で映画が3本、ドラマが7本と合計で10回映像化されています。これは横溝正史作品の中では最多のようです(次が『犬神家の一族』)。これだけ映像化されていれば、たいていの人が一回はテレビで見かけたことがあるだろうって感じですね。(世代によってわかれるだろうとは思いますが)

 

ちなみに映画は
●1951年 東映 金田一役:片岡千恵蔵
●1977年 松竹 金田一役:渥美清(主演は萩原健一
●1996年 東宝 金田一役:豊川悦司

 

ドラマは
●1969年 NET系列 金田一役:金内吉男
●1971年 NHK総合 金田一役:なし
●1978年 TBS系(連続ドラマ版) 金田一役:古谷一行
●1991年 TBS系(2時間ドラマ版) 金田一役:古谷一行
●1995年 フジテレビ系 金田一役:片岡鶴太郎
●2004年 フジテレビ系 金田一役:稲垣吾郎

●2019年 NHK BSプレミアム 金田一吉岡秀隆

 

と、現在これだけのの役者さんが金田一耕助を演じていることに。

 

ドラマの1969年版だと金田一耕助は登場しない作りになっているんだそうな。「なんて大きな改変だ」と、思われるかも知れないですが、実は『八つ墓村』は終始辰弥の一視点でお話が語られていて金田一耕助の出番は少ないので、端折っても作れるだろうなとは思います。

 

 

私個人は金田一耕助といえば古谷一行さんってイメージが強いです。

 

八つ墓村 上巻 [DVD]

八つ墓村 上巻 [DVD]

 

 

TBS系の金田一耕助シリーズドラマが再放送盛んにしていたのでそのせいですね。特に2時間ドラマ版の『八つ墓村』は何回も再放送していた記憶があります。

 

金田一耕助シリーズ】の映画でお馴染みなのは市川崑監督と石坂浩二さん主演のシリーズですが、

 

 『八つ墓村』に関しては70年代に映画化の話があったものの、製作間でのゴタゴタがあって石坂浩二さん主演では撮られずじまいになったようです。その後、96年に豊川悦司さんを主演にして市川監督が映画化しています。

 

八つ墓村 [DVD]

八つ墓村 [DVD]

 

 

 

実話・モデル
横溝正史は戦時下に岡山で疎開生活をしていた経験から、岡山が舞台の作品を何作か書いています。『八つ墓村』はその“岡山もの”の代表作で、この作品より以前に刊行されている長編『本陣殺人事件』『獄門島』『夜歩く』の三つは、いずれも岡山が舞台となっています。特に『八つ墓村』の直前の事件である『夜歩く』は作中でも言及されている箇所が何回かあるので『八つ墓村』を読む前に読んでおくと良いかも知れません。

 

夜歩く (角川文庫)

夜歩く (角川文庫)

 

 (お話的には知らなくっても支障はありませんけどね)

 

八つ墓村』は冒頭で語られている要蔵の村人三十二人の惨殺シーンがなんとも強烈な印象を与える作品なのですが、ここの部分は昭和13年に岡山で実際にあった「津山事件」がモデルになっています。
一人の男が一晩で同村の村民を三十人殺害したという世界犯罪史に残る信じがたい事件ですが、日本が戦争に向かっていた時代だった事や、関係者がほとんど死んでおり、詳細は分からずじまいな点が多い事などから、これ程の大惨事にしてはさほど事件自体の知名度は高くないです。
で、知っている人も何で知ったかっていうと、『八つ墓村』のモデルに使われた事件だって事で知ったって人がほとんどだと思います。事件後、戦争も終わって随分経ってから『八つ墓村』という小説・映像化作品によって「津山事件」が有名になったって感じですかね。

 

モデルにしていると言っても、原作では第一章の前“発端”で語られているだけで、「津山事件」との共通点は

一人の男が一晩で同村の村民を三十人あまり殺害したところ、一番の標的を取り逃がしているところ、その凶行の際のいでたち

その男は詰襟の洋服を着て、脚に脚絆をまき草鞋をはいて、白鉢巻きをしていた。そしてその鉢巻きには点けっぱなしにした棒形の懐中電灯二本、角のように結びつけ、胸にはこれまた点けっぱなしにしたナショナル懐中電灯を、まるで丑の刻参りの鏡のようにぶらさげ、洋服のうえから締めた兵児帯には、日本刀をぶちこみ、片手に猟銃をかかえていた。

が、酷似しているところぐらいで、他は小説としての創作ですね。


ドラマや映画などではこの格好で殺戮をするシーンが強烈で恐ろしくって、『八つ墓村』といったらこのイメージが強くなっていると思うのですけども。
小説の方は狂疾の暴君がある日発狂して村人を見境なく殺してまわったといったものですが、実際の「津山事件」の動機は怨恨によるもので、かなり計画的な犯行だったようです。

 

「津山事件」を小説という形で詳しく知りたいのなら、島田荘司さんの『龍臥亭事件』を読むのがオススメ。かなり“モロ”に、ページ数もだいぶ使って、詳細に「津山事件」について書かれています↓

 

龍臥亭事件〈上〉 (光文社文庫)

龍臥亭事件〈上〉 (光文社文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

以下がっつりとネタバレ~(犯人の名前も明かしているのでご注意)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪奇小説
この『八つ墓村』、日本ミステリ界に一つのジャンルを確立させた作品といっても過言ではない小説ですが、小説自体は当事者の辰弥視点でずっと描かれているために捜査過程や探偵の出番も少ないので、実際読んでみるとミステリ色はさほど強くありません。


トリックも“動機を誤魔化す”といったアガサクリスティのABC殺人事件

 

ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

 

坂口安吾『不連続殺人事件』

 

不連続殺人事件 (新潮文庫)

不連続殺人事件 (新潮文庫)

 

 

などから着想を得たもので(まぁ巧妙は巧妙なんですが)、アリバイ工作や物理トリックも出て来ませんし、お話としては主人公・辰弥の怪奇冒険譚って感じですね。鍾乳洞の中で色々な事が起こるというのもソレっぽい。
私が読んだ角川文庫の裏表紙の説明でも“現代ホラー小説の原点”と書かれています。“ホラー小説”と書かれると、ソレもまたちょっと違うかな?と思いますが(^^;)まぁ全体的に怖いっちゃぁ怖いですけど。

 

大衆娯楽雑誌での連載ということでこのような冒険譚な小説になったのだと思いますが、そのお陰というか、そのせいでと言うか、探偵小説では一番の見せ場になるであろう犯人と探偵との対決も、語り手の辰弥が知らぬうちに犯人・森美也子は死んでしまうので、実質ありません(ほんの少し触れられてはいますが)。事が全部終わってから金田一耕助がサササと事件のあらましを解説して終わり。美也子の事については

 

「恐ろしい女でしたな。昼は美貌と才気であらゆる男を魅了しながら、夜はうば玉の闇の衣を身にまとい、殺人鬼となって、洞窟の奥から奥へと彷徨する。天才的毒殺魔であると同時に、天才的殺人鬼でもあったわけです。ああいうのを女妖というのでしょうか」

と、言い表して、もう死にましたって言って終了。


まるで化け物扱いですが(^_^;)

この小説では犯人は“怪奇冒険譚における化け物”といった役割なんでしょうね。掘り下げて描く必要はないというか。
映画やドラマだとお話自体が金田一耕助視点に変えられていたりするので、美也子と直接対決しているものも多いのですけどね。

 

 

映像化作品との違い
得体の知れない犯人の影におびえ、暴徒と化した村人から逃げ惑いつつ、宝探しをしたりする、スリリングな娯楽要素が多めのお話なので、娯楽小説では欠かせない「里村典子」という一途で可愛く、たくましいヒロインも出て来ます。


辰弥を取り巻く環境自体がかなり殺伐としているので、この典子と辰弥が段々と打ち解けていき、「典ちゃん」とか連呼するようになる過程は作中での唯一のオアシス的部分なのですが、残念ながらこの「典ちゃん」、映像化作品ですと1951年と1996年の映画以外の作品では人物ごとカットされてしまっています。ヒロインなのに・・・。

 

※2019年追記

2019年のNHKドラマ版では登場してくれました。原作の流れとは違い、辰弥が森美也子に夢中になるというストーリーが加えられていましたが、一応終盤では典子がヒロインに(?)なってた。


原作は登場人物が多くって人物相関が一読ではよくわからない程入り組んでいるので、事件自体に関係ない人物は時間の制限がある映画やドラマなどでは省いてしまうんですね~。しょうがないことなのかもですが残念です。ドラマなどでしか『八つ墓村』を知らない人は是非、原作読んで「典ちゃん」を知って欲しいですね。


このように、映像化作品ではヒロインの存在を省いていたり、金田一耕助の視点で過去の出来事が明かされていく過程が描かれていたりするので、落武者を村人たちが惨殺する非道さ、要蔵の狂人ぶりや、その要蔵に軟禁されて無理矢理妾にさせられてしまう「鶴子」の悲惨過ぎる境遇などが全面に押し出されて描かれているものが多いので、必要以上にホラーで淫靡な作品だと勘違いしている人も多いかな?と、思います。
小説ですと辰弥と典子で思いのほかハッピーなエンドなんですが・・・。

 

“超”がつくほど有名な『八つ墓村』ですが、ドラマや映画で完全に理解した気にならず、原作小説も読んで映像化作品との違いを実感して欲しいですね。「典ちゃん」も可愛いですし、オススメです(^^)

 

 

八つ墓村 (角川文庫)

八つ墓村 (角川文庫)

 

 漫画もある↓

 

八つ墓村 (講談社漫画文庫)

八つ墓村 (講談社漫画文庫)

 

 

 

 

※JET さん作画のものですと所々改変ありでやっぱり「典子」はカットになっているようです↓

 

 

なんとゲームもある

 

八つ墓村

八つ墓村

 

 

 


ではではまた~

 

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映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』感想

こんばんは、紫栞です。
只今公開中の銀魂2 掟は破るためにこそある』を観てきました~。

映画ノベライズ 銀魂2 掟は破るためにこそある (JUMP j BOOKS)

ので、少し感想を。

 

2017年に公開された第1弾の感想もこのブログで書きましたが↓

 

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続編作られるの、早いですよねぇ。まだ1年しか経ってない・・・。やっぱり色々と凄いな、ジャンプは。と、思う訳ですが(^^;)


かなりツメツメの制作期間で作品水準は下がらないのかしら?とか観に行く前は若干の不安があったのですが、まったくの杞憂でした。今回も非常に愉快な痛快娯楽映画でしたよ(^^)泣くほど笑いました(笑)

 

 

今回は原作の真選組動乱篇」(19~20巻収録)と「将軍接待篇」(15・27巻収録)がミックスされたお話。第1弾は真選組が一応登場するものの、お話の都合上出番が少なかったので、第2弾で「真選組動乱篇」をやるのはまぁ順当な感じ(dTVでミツバ篇やりましたけどね)。

 

 

「将軍接待篇」は原作の人気エピソードで「将軍かよぉぉ!!!」のツッコミがやたら有名ですよね。忠実に再現してくれています。
お話の作りとしては前半「将軍接待篇」でギャグパート、後半「真選組動乱篇」でシリアスパートって感じですね。第1弾よりギャグパートとシリアスパートが綺麗に別れていると思います。シリアスパートのときもちょこちょこ銀魂らしいギャグ入りますけどね。
「将軍接待篇」は「ここまでやっちゃうんですね・・・」ってくらい原作を完コピしていました。ほんと、忠実に再現してくれています。そこまでやらなくても良いですよって言ってあげたいくらい(^_^;)

 

 

 

 


役者さん達
第1弾での豪華キャストは変更になることもなく、そのまま続投で嬉しいかぎりですが、第2弾はこれにさらに豪華キャスト投入。主演レベルの役者さんを惜しげも無くチョイ役で使っていて、ジャンプの力と福田監督の人望を感じる(笑)


今回の新キャスト、お登勢さん(キムラ緑子)と猿飛あやめ(夏菜)の再現率が異様に高いのですが、出番が少しで残念。ほとんど友情出演ってレベルでしたね。次回があったらもっと登場させて欲しいです。


シリアス担当で伊藤鴨太郎(三浦春馬)と河上万斉(窪田正孝)。この二人はギャグパート皆無でシリアス一色。伊藤演じる三浦春馬さんが、良い意味で三浦春馬っぽくなくて良かったです。もうシリアスパートはこの人が主柱。万斉はひたすらかっこよかったですね。なんか衣装も凝ってたし(笑)個人的なことですが、“ござる”口調だとどうしてもるろ剣思い出す・・・。剣心も幕末四大人斬り河上彦斎がモデルなんですよね。


あと、将ちゃん(勝地涼)と松平片栗虎(堤真一)。将ちゃんは原作同様、無表情演技で笑わしてくれます。堤さんは福田組なので第2弾あったら出すだろうなとは第1弾観たときから思っていたので“やっぱり”な、と。なんかハマリすぎでしたね(笑)しかし、出てくるたび「役者贅沢に使ってんな」とか思ってしまう(^^;)
それと、個人的に山崎役を演じている戸塚純貴さんが凄くピッタリ!でした。

 

他、前回から続投の(岡田将生)は前回はシリアスパートのみでしたが、今回は原作における通常のヅラの役割(つまりギャグ担当)を遺憾なく発揮していましたね。念願の(?)カツラップもやってたし!他キャストにも言える事ですが、イケメンがすまし顔で変なことしてるのってやっぱ面白い(^o^)
真選組動乱篇」は土方さん(柳楽優弥)の出番が多いお話なんですが、“トッシー”はさすがの演技分けでしたね。原作のゴチャゴチャした台詞、ちゃんと言ってた(笑)

 

 


以下すこ~しネタバレ

 

 

 

 

 

第1弾のオープニングはCDTVのパロディでしたが、今回はアニメ版でよくやるオープニングを踏襲しています。アカデミー賞ネタいじり。小栗旬さんってアカデミー賞取ってなかったんですね。なんか勝手にもう取っているように思っていたので以外。尺の関係か、前回よりオープニングに割いている時間は少なめ。
エンディングで何故か『踊る大捜査線』のパロディ。夏休み中で映画館は十代の子たちが多かったので、学生にこのネタわかるのかな?とか心配になりました(^_^;)私は世代がドンピシャなのでもの凄く忍び笑いしましたが・・・。

私個人で一番ウケたのは、源外さん(ムロツヨシ)のところですね。第1弾も源外さんのところで一番笑ったんですけど。前回はガンダムネタで、今回はエヴァネタ。一人でかなり大ウケしていたら、一緒に行った先輩はエヴァのことはほとんど知らないらしく、「凄いウケてて、どうしたのかと思った」とか後で言われてしまいました(^^;)

あ、六角さんも前回同様登場してくれましたよ。またコスプレで顔がよくわかんない感じでしたけど・・・。
そして、今回もジブリネタあります。ジブリはどうしてもやりたいみたいですね・・・。

 

 


ギャグパートについてばかり書いてしまいましたが、今回は前回よりシリアスパートが確り描かれていて見ごたえがありました。アクションシーンも多い。銀さんと万斉のアクションシーンにやたらスローが多くって「普通の早さでやればいいのに」とか思ってしまいましたけど。個人的にアクションにスローが入るのあまり好きじゃないので・・・。


ここまでくると第3弾も絶対やるのではって気がしますね。次は月詠さんとか出してくるんじゃないかと期待しているのですがどうでしょう。次作も楽しみに待ちたいと思います。

パンフ、面白いのでオススメです↓

 

 


ではではまた~

 

 

 

映画ノベライズ 銀魂2 掟は破るためにこそある (JUMP j BOOKS)
 

 

 

『極北クレイマー』『極北ラプソディ』まとめ 世良、速水・・・その後の物語

こんばんは、紫栞です。
今回は海堂尊さんの【極北編】『極北クレイマー』『極北ラプソディ』の2冊をまとめて御紹介。

 

極北シリーズ【全2冊合本版】 (講談社文庫)

 

 

ブラックペアンから始まる【バブル三部作】に続くシリーズで、【バブル三部作】で主な語り手を担っていた世良雅司のその後が出てくるシリーズとなります。『スリジエセンター 1991』から18年ほど後のお話ですね。


極北クレイマー

 

 

あらすじ
北海道・極北市。人口十万、地方産業に乏しく、観光誘致に失敗したこの市では「このままでは極北市は財政破綻するかも」と冗談のように囁かれていた。
極北市には“赤字五ツ星”があって、極北市民病院はそのうちの1つに数えられている。今中良夫は非常勤外科医として極北市民病院にやって来た。不十分な設備、院長と事務長との対立、不衛生な病室、ずさんなカルテ管理・・・。この病院では医療は崩壊していた。
唯一の救いは市民や病院内からも人徳があり、必死で地域医療に貢献している産科医師の三枝久弘だか、三枝医師には以前手術中に妊婦が死亡した件で医療事故の疑いがもたれていて――。
今中の地道な努力や、派遣としてやってきた皮膚科医・姫宮香織のもたらした“嵐”などによって病院は少しずつ変わっていくが、野心をもった医療ジャーナリスト・西園寺さやかの水面下での暗躍により、事態は思わぬ展開に。病院閉鎖の危機がおとずれる――。

 

 

 

 


文庫
大前提の話ですが、【極北編】は『極北クレイマー』が先、『極北ラプソディ』が後です。1とか2とかついていないので、順番を間違えないように注意が必要ですね。(【バブル三部作】は年号がタイトルについていたので分かりやすかったんですが)
「クレイマー」と「ラプソディ」で結構作品雰囲気が違うので単体でも楽しめる・・・・・・ような気もするようなしないような~・・・ですけども(笑)
「クレイマー」は次作の「ラプソディ」への長い序章って印象もありますので、順番通りに読まないと駄目かなぁと個人的には思います。
私は2冊とも単行本で読んだのですが、「クレイマー」は文庫版だと上下巻分冊で刊行されているものと、

 

 

『新装版 極北クレイマー』と題した1冊で収録されているものとあるようです。

 

 

紛らわしいですね・・・(^^;) “新装版”となっているし、1冊ですむし、今から買って読むなら『新装版 極北クレイマー』が良いのだと思います。※「ラプソディ」の方は分冊での刊行はされていないみたいです。

 

※追記・2019年2月15日に講談社から文庫が刊行されました。

 

 

 

 “2008”と西暦がついていますけど内容は同じ。こちらは上下巻で分けずに1冊でまとめられていますね。

『極北ラプソディ』も3月15日に講談社から刊行されました↓

 

 

三枝久弘の事件
この【極北編】は地域医療問題がテーマ。終始、地方病院のとんでもない実態が描かれています。かなり劣悪な病院だと感じますが、田舎に住んでいる身としては、ド田舎だと病院もこういった状況に陥るだろうなぁというのは想像に難くないです。都会の常識は田舎では通用しないんですよね。ホント。
「クレイマー」の方では産婦人科医の医療事故疑惑“三枝久弘の事件”が序盤から匂わせで後半からは主で展開します。“三枝久弘の事件”は海堂さんの別作品ジーン・ワルツ

 

 

イノセント・ゲリラの祝祭

 

 

の作中で間接的に触れられているらしいです(私は未読ですが)。

この“三枝久弘の事件”ですが、福井県立大野病院産科医逮捕事件(大野病院事件)」という実際の事件がモデルになっているのだとか。少し調べたのですが、手術内容などは違いますが、事件の顛末などはかなりそのままですね。日本の医療界に多大な影響を与えた事件だったようです。
他の科と違って、患者やその家族が希望に満ちた予測しかしていないから、産科では訴訟件数が他の科より多いっていうのを他所で聞いたことがあります。それを聞いたときも「なるほどなぁ」と思ったのですが、この本を読んでさらに強く思いましたね。病気になって病院に行くのと、お産で病院行くのとでは気持ち的に真逆ですもんね。この事件のせいで訴訟を恐れて産科医師を希望する学生が減ったなんてことも言われていたりするんだそうな。
『極北クレイマー』ではだいぶ三枝医師に対して肯定的な書き方になっていますね。

 


姫宮香織
お話に唐突に出て来て唐突に退場する姫宮先生。まさに“嵐がすぎていった”って感じで、読んでいて「ポカン」だったのですが。何だったんだみたいな(笑)【田口・白鳥シリーズ】の白鳥さんの部下なので読者サービス的な感覚なのですかね?(白鳥さんは登場しそうな空気を出しつつも結局登場せずじまいでしたが)しかし、知らない人には散々強烈な印象を突き付けといて脈絡も無く途中退場とはどういうことだと混乱すると思います。最後までいて欲しい・・・。


他にも今作で登場するやたら意味深な医療ジャーナリスト・西園寺さやかは、別作品螺鈿迷宮』に関係している人らしいです。

 

 

そして最後の最後に『ブラックペアン』世良雅志・・・・・・。

 

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もう作品の繋がりだらけでこんがらがってきますね(^^;)


ドラマ観ていた人は渡海が出て来るのか気になると思いますけど、【極北編】では一切登場しません。渡海先生のその後が描かれている作品については詳しくはこちら↓

 

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クレイマー

 

「メディアはいつもそうだ。白か黒かの二者択一。そんなあなたたちが世の中をクレイマーだらけにしているのに、まだ気がつかないのか。日本人は今や一億二千万、総クレイマーだ。自分以外の人間を責め立てて生きている。だからここは地獄だ。みんな医療に寄りかかるが、医療のために何かしようなどと考える市民はいない。医療に助けてもらうことだけが当然だと信じて疑わない。何と傲慢で貧しい社会であることか」

 

終盤の世良のセリフですが。

まぁこういった問題提起をしたいお話なんでしょうけど、小説として纏まっているかというと正直微妙です。最後まで読んでも色々と半端な印象を受けるんですよね。で、次作を読んで『極北クレイマー』は1冊丸々序章だったんだなぁ~と思う訳ですが。ですので、「クレイマー」を読んだら速やかに「ラプソディ」へ↓

 

 

 

 

 

 

 

極北ラプソディ

 

 

あらすじ
財政再建団体に指定された極北市。極北市民病院では大半の職員が病院を出て行ってしまい、医師として一人残った今中と、赤字を立て直すために院長に就任した病院再建請負人・世良雅志との二人体制で病院をまわす日々。病院としての健全運営など到底不可能な状態にまで追い込まれていた。
世良が新院長に就任して半年。世良は人員削減、薬剤費抑制、救急患者受け入れ拒否の三つの方針を断行。病院には入院患者がいなくなり、外来患者の数も極端に減ってしまった。仕方の無いことだと思いつつも、信頼と活気が病院から失われてしまったように感じ、今中は世良の改革に戸惑いを抱く。
そんな中、とある事件が発生。極北市民病院は再び世論の非難に晒され、病院は絶体絶命の危機に。しかし、世良はこの状況下で今中にドクターヘリが配備されている雪見市・極北救命救急センターへの出向を命じる。そこは“将軍”速水晃一が仕切る過酷な医療現場で――。

 

 

 

 

世良
「クレイマー」の終盤で“救世主”として華々しく登場した世良。「ラプソディ」では前作同様に主な語り手である今中と一緒に病院再建・・・している・・・のか・・・?(笑)


とにかく人員不足で病院として出来る事は「クレイマー」の頃よりさらに少なくなっているので、病院再建がウンヌンというような立て直しストーリーの雰囲気からは何だか遠い・・・。市長相手に色々と奮闘とかはするんですけどね。
さて、【極北編】に登場する世良ですが、【バブル三部作】の“ジュノ(青二才)”と呼ばれていた頃からは想像出来ないほど人柄が変わっています。

 

「昔、僕の故郷に、さくらの樹を植えようとした人がいた。そして僕はその樹の下で一生、花守をしていくんだと信じていた」

「そのさくらの樹は、花開くことはなかった。さくらを名前に冠する街なのに、皮肉なものだ。あれほど、さくらという言葉が似合わない街を、僕は他に知らない」

 

上記のこのセリフは【バブル三部作】の最終作『スリジエセンター 1991』を読むと詳細が分かるものです。
やはり天城先生との事は世良の人生に大きな影を落したのだなぁと今作を読むと痛感しますね。天城先生に心酔していたぶん、絶望も深かったようです。
病院再建請負人として改革を強行している世良だが・・・・・・で、後半は世良が色々と吹っ切れるまでの再生物語(?)が描かれます。後半、お話自体が病院再建じゃなくって世良の再生が主みたいになっている謎(^^;)

 

 

以下若干のネタバレ~(直接的には書いていません)

 

 

 

 

 

 

 

 

世良・花房・速水
中盤で救命救急センターに出向した今中の視点をとおして救命救急、ドクターヘリの詳細などが描かれています。救命救急はドラマなどで多く扱われる題材なので、結構知っている知識も出て来ますが(特に、ドクターヘリに関してはこの間まで『コード・ブルー』盛んに再放送したりしていましたしね)、現役医師作家さんですのでより突っ込んだ内容になっているかなと思います。


しかし、ジェネラル・ルージュこと速水晃一の操縦士への要求はもう「ホント無茶苦茶過ぎるな、コレ」って思っちゃいましたけど。コレで報告しないで丸く収まるとか、都合が良すぎてチョット・・・・・・でしたが、そこら辺は確りけじめが付く結末になったので「やっぱりそうよね」と。操縦士さんへの残念な気持ちはありつつも、なんだか安心しました。

 

ところで【田口・白鳥シリーズ】や【バブル三部作】にも登場する花房ですが・・・・・・ちょっと感情の変化が突飛でついていけないのですが・・・あんなに速水よりだったのに一体何故・・・これも海堂さんの他作品を読めばわかるんですかねぇ。まぁ、この三角関係(?)は今作で決着がついたという事なんでしょうか。しかし、釈然としないなぁ・・・・・・(^_^;)

 

 

 


結末
病院再建がまだ途中なんじゃ・・・ってところで終わるので、さらなる続編があるのか?と思ってしまいますが、作者の海堂さんは【極北編】はこれで終了だと明言されているみたいです。


う~ん。なんだかこの【極北編】、他シリーズとの穴埋めとか繋がりとかの為の作品って感じで、単体で楽しめるものではないかなぁと思いますね。ファンは繋がり見付けて余白埋まってく過程を楽しめるけど、ご新規さんにはちょっと・・・。意味が分からないところが多いかと(私は「ブラックペアン」からの流れでそのまま読んだクチですけど)。両作品とも主人公にあたる今中の存在感が薄いですし、特に「ラプソディ」の方は世良と速水が書きたかったんですねって印象が強いです。ミステリ的な面白味も別に無いですしね。
しかしまぁ、海堂さんの“桜宮サーガ”を追っている人は飛ばしていけないシリーズだとは思います。


この【極北編】、『極北ラプソディ』の題名でNHKにて2013年に実写ドラマ化されています。

 

 

 私は未視聴ですが、公式であらすじを見る限りではかなりオリジナル要素が強めの作品みたいですので、こちらは別作品として楽しめるようになっているのではと思います。地域医療問題を描いた小説なので、いかにもNHKで原作に選びそうな・・・って気がしますね。


まぁ色々釈然としないなぁとは思ってしまいますが(^_^;)
“ジェネラル・ルージュ”の速水や、“ジュノ”だった世良のその後が知りたい方は是非。


ではではまた~

 

 

 

 

 

 

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『dele(ディーリー)』小説 まとめて紹介 ドラマの原作ではなく”原案”小説?

こんばんは、紫栞です。
今回は本多孝好さんの『dele(ディーリー)』『dele(ディーリー)2』をまとめてご紹介。

dele (角川文庫)

dele2 (角川文庫)

2018年7月27日からスタートするテレビ朝日系連続テレビドラマの原案(?)小説ですね。


あらすじ
「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除する。それがうちの仕事だ」
フリーランスガキの使い』を自称し、その時々に仕事をしてきた真柴祐太朗は、次の仕事として『dele.LIFE(ディーリー・ドット・ライフ)』を選び、採用された。仕事内容は所長であり、唯一の所員である坂上圭司の“足”として動く小間使い――主に依頼人の死亡確認をする事。
淡々と依頼をこなす圭司に対し、祐太朗は死者の記録をこの世から消し去るような仕事に割り切れなさを感じていた。
仕事をする中で、二人は思わぬ真相や事件に直面していく。死にゆく者が削除(dele)を願った記録(データ)。依頼に込められた想いとは?記録と記憶をめぐる、驚愕と感涙のミステリ。

 

 

 

 

文庫
2017年7月に単行本『dele(ディーリー)』が刊行され、

 

dele ディーリー

dele ディーリー

 

 

今年2018年5月に加筆修正の上、文庫化。続けて6月に続編として『dele(ディーリー)2』が文庫で刊行されました。2の方は最初から文庫での刊行なので単行本は無し。一般文芸でも最初から文庫での刊行って最近多いですよね。単行本より文庫の方が気軽に買いやすいですから、本屋に2冊並べて置いてあると、ドラマで気になった人は「ちょっと読んでみようか」となりやすい・・・・・・てか、私もまさにソレで読んだんですけど(笑)


本多孝好さんの作品は前にこのブログで『チェーン・ポイズン』の記事を書きましたが↓

 

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今作も、人と人との繋がりが描かれたヒューマン色が強いミステリとなっております。
連作短編形式で『dele(ディーリー)』は5話、『dele(ディーリー)2』では3話収録。“2”の最後の「チェイシング・シャドウズ」は昔、新薬の治療中に死んだ祐太朗の妹・鈴(りん)についてのお話となっており、他のお話より3倍ほど長いです。

 


新感覚と王道と
“死者のデジタルデータの削除”という題材はなんとも現代的です。今のご時世パソコンに秘密を隠し持っている人も多いですからね。設定も頷けるなぁと。
要は「あの日記だけは誰にも見られたくない!」の、デジタル版ですよね。「アレを処分しないと死ぬに死ねない!」と、いうのを第三者に委託してやって貰えるビジネス。

しかし、パソコン上で操作するだけで削除できるのなら小説としてお話が広がらないし、ミステリにならないじゃん。って感じですが、このお話は依頼人が設定した一定期間、指定したデバイスが操作されないと『dele.LIFE(ディーリー・ドット・ライフ)』のパソコン(作中では「モグラ」と言われています)に信号が届いて削除依頼を実行する仕組みなんですが、たまたまの手違いでデバイスが操作されなかった場合、依頼人がまだ生きているにも関わらず削除してしまうと色々と問題が発生するので、確かな死亡確認をアナログでする必要がある。

この死亡確認の過程で思いがけない事件や真相に直面していく訳なんですね。ここら辺の設定が巧だなぁと思いますね。事件捜査以外で依頼人が死んでから動き出す仕事”というのもミステリの中では新鮮かと思われます。

現代的で新鮮な題材を扱ってはいますが、主要人物の二人、真柴祐太朗坂上圭司はコンビ・バディものの典型型です。

クールでビジネスライクな圭司と、喜怒哀楽がハッキリしていて情にもろい祐太朗。性格が真逆。知性派と行動派。静と動。これぞまさに王道ですね。
この作品では圭司が車椅子に乗っている設定なので、より静と動が強調されて感じられます。圭司は車椅子でも大立ち回りが出来る人間ですけどね。でも基本的には圭司の指示で祐太朗が動き回る形。お話の中でクールな圭司が祐太朗に影響受けたり、祐太朗が徐々に圭司に気を許すようになっていったり・・・・・・と、いったコンビものの醍醐味の展開もちゃんとしてくれます。

いやぁ、やっぱり王道は良いですよね(^^)

私はコンビものミステリが大好きでして、色々なパターンのものを観たり読んだりしているんですが、コンビものといえば「性格真逆の二人が、反発しつつも欠点を補い合う」これですっ!(笑)
『dele(ディーリー)』の二人も個人的に凄く好みで気に入りました。ギャグがいっぱいのどつき漫才してくれるって感じではないですが、少しクスっとするような掛け合いがあったりして面白かったです。コンビもの好きにはオススメ。

 


ドラマ
キャストは以下の通り


坂上圭司山田孝之
真柴祐太朗菅田将暉
坂上麻生久美子


坂上舞は圭司の姉で弁護士。「坂上法律事務所」の所長で『dele.LIFE(ディーリー・ドット・ライフ)』の信用保証を担っています。たまに顧客紹介もしたり。
小説版同様、ドラマも主要人物はこの三人のみで、他キャストは毎回ゲストという形だと思います。

さて、この『dele(ディーリー)』なのですが、いまこの記事で紹介している小説はドラマの原作本ではありません。
ドラマは小説版の作者である本多孝好さんが原案・パイロット脚本に初挑戦とのこと。ここで注目したいのが“原作”ではなく、“原案”となっているところですね。どうやら設定と主要キャラクターを引き継ぐだけで、各話のお話の内容は小説版とはまったく別物になるみたいです。


ドラマ制作でのお話が先にあって、そこから小説版を書いたということなんだそうな。小説は派生作品?って事なのですかね。ドラマ企画は何でも二年前からのプロジェクトなのだとか。制作側の気合いを感じますね!

 

そして、脚本も本多さんが一人で書かれるのではなく、金城一紀瀧本智行青島武渡辺雄介徳永富彦などの方々が各話担当されるのだとか。他、監督や音楽も著名な方々が担当されるそうです。
小説で描かれている設定を基盤として、1話完結の人間ドラマを描く形式のようです。完全に小説とドラマは別物で楽しむ作品のようですね。しかし、各話脚本家さんが違うってことですと1話ごとに結構雰囲気が変わるのかもしれないですね~。ドラマ制作的にも新しい試みらしいので、もはや違いを楽しむ趣向なのかな?
ここ近年、テレ朝は深夜枠のドラマ攻めていますよねぇ・・・・・・。

 

以下若干のネタバレ~

 

 

 

 


続編
が、あったら良いな~と思ってしまうのですが・・・・・・・。


うぅん。でも2でお話としては綺麗に終わっている感じなので無理かな・・・(-_-)

 

上記したように、読んでいて個人的に主要人物2人の事がかなり好きになってしまっていたので(^^;)『dele(ディーリー)2』での最終話の終わり方はせつなくて寂しくて・・・(T_T)

 

いつか遠くない未来に・・・・・・

 

の、その未来が見たいんですけど!と、なってしまう訳なんですが。
タイトルに“2”ってついているだけで、文庫の帯や裏表紙の説明書きにも“完結”とは書かれていないので少~し期待してしまうのですよ・・・・・・!もし続編が出るなら絶対に読みます!・・・でも、やっぱり無理かしら(^^;)

 

※続いてくれました!!詳しくはこちら↓

 

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最終話のお話、驚きの真相もさることながら、終盤の締め方は感動的で少しウルッと来ちゃいました。圭司との事はもちろんですが、祐太朗が妹との思い出を遙那と話しているシーンが切なかったですね。この会話部分に“記憶”と“記録”をめぐるお話である今作の“想い”が詰まっていると感じます。


そういえば、小説版には祐太朗の亡くなった妹の友人だった「遙那」が登場するのですが、ドラマでは登場するのでしょうか?公式サイトを見ても名前が見つからないのですが・・・。あと祐太朗が飼っている猫の「タマさん」も気になるところ。
登場しないとなると、ドラマでは祐太朗の妹のお話自体やらないのかもしれないですね。ストーリーはもう完全オリジナルなのかも。


小説とドラマはまったく別物だとしても、パラレル的感覚で楽しむ事が出来ると思います。ドラマとかもう一切関係なく、普通に小説単体で十分に面白い作品ですので、色々な方に読んで貰いたいですね~。特にヒューマン、ミステリ、コンビもの好きな人にオススメ。
“記録と記憶をめぐる物語”
是非是非。

 

dele (角川文庫)

dele (角川文庫)

 

 

 

dele2 (角川文庫)

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ではではまた~