夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『犯人たちの事件簿 』4巻 金田一少年の事件簿外伝 ついに高遠さん登場!

こんばんは、紫栞です。
今回は金田一少年の事件簿シリーズのスピンオフ漫画金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(4)』をご紹介。

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(4) (週刊少年マガジンコミックス)


こちらの表紙絵はKC20巻のパロディ。

金田一少年の事件簿 魔術列車殺人事件 (講談社プラチナコミックス)

何だかいつも以上に金田一の顔の再現度が高いような・・・。もう4作目ですし、作者の船津さんも模写がどんどん上手くなってきていますね。


今回もいつも通り、不運にも金田一に出くわしてしまった犯人達の物語が展開される訳ですが、今作はついに「犯人総選挙」で1位に輝いた“地獄の傀儡師”が登場する「魔術列車殺人事件」が登場。

※「犯人総選挙」の詳細に関してはこちら↓

 

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他、『魔神遺跡殺人事件』『首吊り学園殺人事件』の2編も収録された【金田一少年の事件簿】ファンには必見の1冊になっております。

 

 

 

 


では以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ファイル9「魔術列車殺人事件」(本家ではファイル15)

 

金田一少年の事件簿File(15) (講談社漫画文庫)

金田一少年の事件簿File(15) (講談社漫画文庫)

 

 犯人:高遠遙一
作者の船津さんはやるつもりは無く、担当編集者にもそのように伝えていたにもかかわらず、犯人総選挙の企画のせいで描かざる終えなくなった地獄の傀儡師・高遠遙一。

・・・犯人総選挙なんてやったら1位はこうなるだろうことは目に見えて明らかな事なので、船津さんの言うとおり「これがマガジンのやり方か・・」ですね(^^;)
船津さんのやりたくなかった理由というのが「この漫画のコンセプトに反しているから」らしいのですが・・・そうですね、読んで納得しました。確かに高遠はこの漫画の醍醐味である“犯人の人知れぬ苦労”を描くことに反していますね。だって苦労しないんですもの。
なので、必然的に内容は事件状況へのツッコミが主になっています。
「魔術列車殺人事件」は私自身【金田一少年の事件簿】の数ある事件の中でも特にお気に入りで、幼少期には何度も繰り返し読んでおり、皆でお菓子食べる場面は何となく好きな箇所だったのですが、この漫画読んで「そういや殺人現場だったな、これ」と・・・(^^;)
金田一がリス使って助かろうとするのは私も当時子供ながらに疑問でしたね。助かった最終的な過程が省かれているのも可笑しいと思っていました。「結局どうやって助かったのさ」とね・・・。
あと、金田一が橋のレバー壊していたけど、これってその後どうしたのかな・・・とかも当時思っていました。結果オーライで犯人を絞り込むことに成功したけど、設備を壊しておいて直後にホテル側に報告しないの結構問題だと思うんだけど・・・(^^;)壊しといて「何をいけしゃあしゃあと・・・・!!」ですよね。

 

 

 

 

 

 

 


ファイル10「魔神遺跡殺人事件」(本家ではファイル18)

 

 犯人:西村弥
金田一も皆も犯人をあえて見逃したので有名な「魔神遺跡殺人事件」。横溝色全開で淫靡な雰囲気が漂い(さとうさんの絵もこの頃はキレキレで独特の色気があったのでエロティックでしたね~・・・)、ご都合主義すぎる超常現象が色々起こるのである意味でシリーズ史上もっともファンタジックな事件でもある。
最後の“忌まわしい記憶だけが上手いこと無くなる”というのもそうですが、港屋さんが呪いにおののいている最中に釣り鐘落ちてきて死んじゃうのは衝撃でした。もうここのシーンが強烈すぎて、この事件はここの印象ばっかり強いですね。しかもこれ本当にただの偶然だというのがまた・・・。弥生さんの「なんか死んだ」っていう感想は読者皆が思ったことだと思いますよ(笑)
本家だと“私は何も考える必要なかった「凶鳥様」の言いつけ通りに動いただけだから”と、弥生さんは言っていたのですが(病気で死にかけなのにあんなパワフルな犯行が出来たのも「凶鳥様」のおかげなんだよきっと)、『犯人たちの事件簿』ではここら辺のことは無視でしたね。まぁやるとオカルトちっくになって世界観が崩れるからアレなのかな・・・(^_^;)
「思う存分ジャットコースター・ロマンスして頂戴!」「リアルフェイスがラブソースウィートな真夜中のシャドーボーイね!!」に笑いました。出しちゃうのね、役者ネタも。

 

 

ファイル11「首吊り学園殺人事件」(本家ではファイル8)

 

金田一少年の事件簿File(8) (講談社漫画文庫)

金田一少年の事件簿File(8) (講談社漫画文庫)

 

 犯人:浅野遙子
中盤まで金田一がまんまと犯人の思惑通りに動いてしまったことで有名な「首吊り学園殺人事件」。【金田一少年の事件簿】の手にかかると予備校や試験まで陰惨な殺人事件の舞台装置になるのかって感じ。本家では8作目の事件で、色々なパターンやってみようみたいな、そんな意気込みを感じる作品ですが。
終盤の謎解きで事件関係者にテスト受けさせるのも変化球な展開。浅野さんも恐怖しているように、自作のテストまで作ってとんだエンターテイナーな金田一少年。犯人としてはかなり嫌な追い詰めかたですね、ほんと。
浅野さんが言う「この漫画・・鳥の死体出がち・・・・」と、いうのは度々地味に指摘されているような気が・・・。確かに今思いつくだけでも異人館村殺人事件」「蝋人形城殺人事件」「魔神遺跡殺人事件」・・・等ありますねぇ。気軽に雰囲気出せてトリックにも利用できる便利な小道具とでも思っているんでしょうか。普通に考えてかなりエグいですよね。犯人もモラルが悲鳴をあげますよねそりゃ。
運の良さの前には努力も無駄になるのが無情。

 

 

 

 


今作は高遠さんが登場するってことで注目の巻だったのですが、思っていたよりスンナリと、引き延ばすこともなく四話使って終わりでしたね。もっと特別感出すかと思っていたのですが・・・。やっぱり高遠さんを他の犯人と同列に扱うのは無理があるってことなのですね。
仰るとおり単体のスピンオフがあるくらいだし↓

 

 

 

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前巻で「金田一少年の殺人」、今巻では「魔術列車殺人事件」やってしまったので、なんだか終わりが分からなくなって来ましたね、この漫画も。
こうなったら第Ⅰ期・FILEシリーズの事件は全部やるのでしょうか?ファンとしては読んでいると事件を一つ一つ懐かしむことが出来て楽しいから全部やってもらっても良いくらいですが。
次巻は「黒死蝶殺人事件」「飛騨からくり屋敷殺人事件」「怪盗紳士の殺人」を収録予定で2019年春頃発売予定とのことです。次巻も必ず読みます!

 

 

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ではではまた~

 

 

 

マスカレード・イブ 各話 あらすじ・感想 『マスカレード・ホテル』の前日譚4編~

 

こんばんは、紫栞です。
今回は東野圭吾さんの『マスカレード・イブ』をご紹介。

マスカレード・イブ (集英社文庫)

 

 

 

前回、こちらの↓記事でまとめた『マスカレード・ホテル』のシリーズ2作目。

 

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時間軸は『マスカレード・ホテル』での事件が起こる前、新田浩介と山岸尚美が出会う前のそれぞれの物語が四話収録された短編集。
この『マスカレード・イブ』は1作目の『マスカレード・ホテル』、3作目の『マスカレード・ナイト』

 

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とは異なり、単行本を経ずに最初から文庫で刊行されています。

 

目次
●それぞれの仮面
●ルーキー登場
●仮面と覆面
●マスカレード・イブ

の4話。

三話までは【小説すばる】に掲載されたもので、どのお話も60ページほど。表題作の4話目「マスカレード・イブ」は書き下ろしで少し長めの140ページ。

 

 

 

 

 

では順番に紹介

 

 

 

 

 

 

 


●それぞれの仮面
あらすじ
「ホテル・コルテシア東京」に入社して四年目、フロントクラークとしては新米の山岸尚美の前にかつての交際相手である宮原隆司が客としてやって来る。元野球選手のタレントのマネージャーとしてタレントと共にチェックインした宮原は、その日の夜になって「大変なことになったんだ」「君の助けがほしい」と、尚美を部屋に呼びつける。宮原の愛人がホテルの部屋で密会している最中に自殺を仄めかして姿を消したというのだ。半ば呆れつつも、事を内密に済ませたいという宮原の意向を受けて尚美は愛人の捜索を開始する。
そんな中、高価なルームサービスを次々と注文する客の存在から尚美はある推測をするのだが――。

 


前作『マスカレード・ホテル』で尚美が特殊なお客様の一例として話していた小話の詳細が語られるお話。
前作ではフロントクラークの鏡といわんばかりに完璧な接客・職業倫理を持つ生真面目な人物として描かれていた尚美ですが、このお話ではまだ新米ということで腹の中ではお客様に対して悪態をついている場面などもあり、接客業をしている人間的には親近感が湧きます(^^;)
しかし、「馴れ馴れしく呼ぶんじゃねぇよ」と心中で毒づいているのには驚きましたね。前作では表でも裏でも粗野な言葉遣いのない人物だったぶんギャップがありました。
最後の部分なのですが、散々振り回されたとはいえ、チャックアウト後にお客様に見抜いた真相を披露して事実を確認する行為はホテルの従業員としてどうかな?と思いました。お客様の人間性がどうであれ、従業員としては口出しすることじゃないし、差し出がましいよなぁと。結局糾弾するような形になって、不愉快な気分にさせてサヨナラ・・・。
まぁこのラストの方が読んでいてスカッとはするんですけどね。

 

 

●ルーキー登場
あらすじ
捜査一課に配属されたばかりの刑事・新田浩介は、ホワイトデーの夜に発生した実業家殺害事件の捜査に参加する。被害者は習慣にしていた夜中のジョギング中に殺害されており、現場には犯人が被害者を待ち伏せている間に吸ったと思われる5本の煙草の吸い殻が残されていた。部下からの受けがよく、取引先から恨まれている気配もなく、家庭を大事にしていた被害者には怨恨や痴情のもつれによる動機の線が浮上せずに捜査は行き詰まるが、新田は不意な思いつきから現場の偽装を見抜き、やがて犯人逮捕に辿り着いた。
しかし、新田は犯人の供述から“ある人物”の事件への関与を疑い始める――。


今度は新田が新米刑事だったころのお話。『マスカレード・ホテル』での新田も若さ溢れる感じでしたが、今作ではさらに若いですね。色々と。
お話の導入部分で、前作で語っていた元カノとのホテルでの朝支度の攻防が詳しく描かれています。しかし、言っちゃ悪いが馬鹿そうな女性と付き合っていたもんだ(笑)
お話としては普通の事件捜査でホテルも関係ないので、このシリーズでの特色は感じられません。新田が主役として活躍するだけ。新田のエリートっぷりが良くわかるお話ですね。
“素顔”と“仮面”ということでシリーズにこじつけているのですが、この真相はミステリとしては結構定番で新鮮味はあまりないですね。一話目とは違い、ラストはモヤモヤします。

 

 

 

 

 

 

●仮面と覆面
あらすじ
「ホテル・コルテシア東京」に男性五人組がチェックインする。どうやら彼らの目的は覆面女流作家・タチバナサクラであるらしい。タチバナサクラが「ホテル・コルテシア東京」に缶詰になるという情報を聞きつけ、熱狂的なファンである彼らは同じホテルに宿泊して張り込み、タチバナサクラに遭遇して素顔を見ようと目論んでいたのだ。
事情を察した尚美はタチバナサクラの担当編集者・望月に事態を知らせ、トラブルが起きないよう目を光らせるが、タチバナサクラとしてチェックインしたのは玉村薫という中年男性だった。望月からタチバナサクラは本当は中年の男性作家であり、この秘密は絶対に世間に知られるわけにはいかないといった諸事情を知らされた尚美は、どんな方法も辞さないファン五人組からタチバナサクラの秘密を守るべく奮闘するが、その一方で部屋に缶詰状態で小説を執筆しているはずの玉村が度々外出していることに引っ掛かりを覚えていた。

 

こちらは非常にホテルならではのお話。“覆面”“仮面”と、ホテルのシステムを利用している点など、このシリーズならでは感が強いですね。
オタク五人組の行動が怖いし本当に迷惑。でも実際このくらいのことするファンっているんでしょうね・・・。
最後まで読むとこの出来事も『マスカレード・ホテル』で小話として出て来ていたものだと気づく仕掛けになっています。

 

 

●マスカレード・イブ
あらすじ
開業したばかりの「ホテル・コルテシア大阪」に応援・教育係として数ヶ月勤務することになった尚美。フロントクラークの業務をこなす中、ある客たちの行動に興味を持ち、想像を巡らせる。
東京では大学教授の岡島孝雄が大学内で殺害される事件が発生。所轄の女性警官・穂積と共に捜査にあたった新田は、同じ学部の准教授・南原に目をつけ、南原のアリバイについての供述についての嘘を暴くが、南原は大阪のホテルに宿泊したことは認めるものの、なぜかホテル名や一緒に宿泊した女性については頑なに口を閉ざす。殺人の容疑をかけられているにもかかわらず、あくまで証言しない南原に新田は不審を抱く。
取調室での度重なる追求の末、南原はようやく宿泊先を白状する。その宿泊先とは「ホテル・コルテシア大阪」だった。


“イブ”とついているだけあって、トリックなど色々と『マスカレード・ホテル』の前段になっているお話。
新田と尚美が知らないうちに別事件で既に交差していたというのが良いですね。前作でも触れられていた新田の嗅覚の良さがこの作品でも生かされているのが上手くて唸りどころ。
エピローグで『マスカレード・ホテル』の事件の発端となる出来事が描かれていますので必見。

 

 

 補足の1冊

読んでみての全体の感想としては、シリーズ前作の長編『マスカレード・ホテル』の補足説明の短編集って感じですね。エピソードもそうですが、新田と尚美の人物設定も補足されて深まっています。
あと、何だか全編、騙されていることに気付かない愚かな男性が多く描かれていた印象。“仮面”をかぶるのは女性の方が上手だって事なんですかね(^^;)

どのお話も映像化しやすそうです。映画化はともかく、配信ドラマとかに向いてますかね。『マスカレード・ホテル』の映画公開の前後で何らかの形でこちらの短編集を映像化するかもなぁという気がするのですがどうでしょう?

 

前日譚なので時系列としては『マスカレード・ホテル』より先に読んでみた方が良いのか?と思ったりする人もいるかと思いますが、前作を読んでいないと分からない部分や面白さに気がつけない箇所もありますので、最初はやっぱり刊行順に読むのがオススメです。

 

 

『マスカレード・ホテル』を読んだら続けてこちらの短編集を是非。

 

 

 

 そして続編長編の『マスカレード・ナイト』へ!

 

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※2022年に4作目も出ました!

 

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ではではまた~

マスカレード・ホテル 小説 あらすじ・感想 ホテルが舞台のミステリシリーズ開幕~

こんばんは、紫栞です。
今回は東野圭吾さんの『マスカレード・ホテル』について色々まとめて御紹介。

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

2019年1月18日公開予定の映画の原作本ですね。


あらすじ
都内で起きた3件の不可解な連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明。ただ1つ共通する点は事件現場に残された不可解な数列の暗号のみ。警視庁の捜査本部は暗号解読の結果、この暗号は次の殺害現場を予告するものであることをつきとめる。第3の殺害現場に残されていた暗号から、次の犯行現場は一流ホテル「ホテル・コルテシア東京」で起こると捜査本部は推測するが、現時点で予測できるのはこの犯行現場のみ。
第4の事件を未然に防ぐ為、捜査員を数名フロントスタッフやベルボーイに扮させてホテルに潜入させることになり、刑事の新田浩介は帰国子女で英語が堪能であるなどの理由からフロントスタッフに化けての潜入捜査員に選ばれる。
彼の教育係・補佐役として優秀なフロントクラークの山岸尚美が任命されるが、立場も職業倫理も異なる二人は衝突が多く、中々上手くいかない。
そんな中、「ホテル・コルテシア東京」には次から次へと怪しげな客たちが訪れる。はたして二人は真相にたどり着き、事件を未然に防ぐことが出来るのか?

 

 

 

 

 


ホテルが舞台のミステリ
東野圭吾さんはあまりにも売れ売れで、本屋で他の作家作品が追いやられた状態で東野圭吾作品が何冊も平積みされていたりするのを目にすると、何だか変な反発心が芽生えてしまうのですが、読むとやっぱり面白いので「チクショウ」って感じで悔しいですね(笑)


『マスカレード・ホテル』というタイトルから、パーティーシーンなどがある華やかなストーリーを想像していたのですが、予想に反し、お話の中で展開されるのは訪れる奇妙な客たちの意外な事情・目的をミステリ仕立てにした“一流ホテルが舞台の日常ミステリ”といった感じです。次々と怪しげな客たちが訪れ、その都度対応して解決していく中、並行して殺人事件の捜査が進捗していくといったストーリー。
タイトルにあるマスカレード(仮面舞踏会)は、“お客様”という仮面を被っている客たちを表しています。

 

 


モデル
高級ホテルの舞台裏を題材にしている物語ですので、普段は富裕層が泊まるようなホテルには縁が無い私には読んでいて新鮮なことばかりで楽しめました。書くにあたり、かなりの取材をされたのだろうなというのは読んでいてビシビシと伝わってきます。
気になるのは具体的にどこのホテルがモデルになっているのかですが、巻末に
“取材協力 ロイヤルパークホテル”
とあるので、主にモデルとして使われているのは東京日本橋のロイヤルパークホテルなのだと思われます。文庫本の表紙に使われている写真もロイヤルパークホテルの内観。

 

映像化作品で有名な『新参者』麒麟の翼』なども日本橋付近がお話の舞台でしたね。

 

新参者 (講談社文庫)

新参者 (講談社文庫)

 

 

 

麒麟の翼 (講談社文庫)

麒麟の翼 (講談社文庫)

 

 

 

シリーズ・順番
『マスカレード・ホテル』はシリーズもので、『マスカレード・ホテル』刊行後にこの事件の前日譚が描かれた2作目の『マスカレード・イブ』

 

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そして続編となる3作目の『マスカレード・ナイト』と続けて刊行されています。

 

 

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前日譚の『マスカレード・イブ』をあえて先に読んでみるのも楽しみ方としてアリでしょうけど、やっぱり刊行順に読むのが良いでしょうかね。『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』は文庫化されていますが、『マスカレード・ナイト』はまだ文庫化されていなません。映画の公開時期に合わせて発売するのでは・・・と、予想しているのですがどうでしょう?

 

 

 


映画
映画の監督は『HERO』やフジテレビ系ドラマでお馴染みの鈴木雅之さん。監督の今までの作品や予告映像を見た限りでは、原作よりもコミカルで軽快なタッチで描かれる映画になるのかな?と思います。

 

キャストは
新田浩介木村拓哉
山岸尚美長澤まさみ

小日向文世梶原善泉澤祐希、利根作寿英、石川恋、濱田岳前田敦子笹野高史、髙嶋政弘、菜々緒生瀬勝久宇梶剛士、橋本マナミ、田口浩正勝地涼松たか子鶴見辰吾篠井英介石橋凌渡部篤郎

と、そうそうたるメンバーなのですが。

 

主要二人以外は誰がどの役を演じるのか公式サイトを見ても現段階では明確にわかりません。予告映像から察するに、新田のバディである刑事の能勢さんが小日向文世さん、客の一人で花嫁の高山佳子前田敦子さんだというくらいですね、ハッキリわかるのは。


主演の木村拓哉さんですが、原作の新田は三十代の設定なので年齢がかなり離れています。
作品や人物設定によっては年齢の開きはさほど問題にならないものもありますが、今作はちょっと問題なのではないか?と、個人的には思いますね。
新田は優秀で早くに捜査一課の刑事になり、際立った成果をこれまでに上げてきた為、少しばかりプライドが高い人物。このプライドが高いが故の言動が、なんというか・・・若さ故、若いから許されるといったものの類いで、まぁそこらへんの成長もお話の中で描かれ、作品の魅力の1つになっているのですが、四十歳半ばで原作の新田と同じ言動をされたら結構イライラしちゃうと思うんですよね(^^;)大人げないというか。

映画では新田の設定は多少変えるのですかねぇ・・・予告映像を見た感じだと原作の設定のままって気がするのですが・・・どうなっているのでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

 


仮面
私自身、接客業をしている人間なのですが、今作のもう一人の主役・フロントクラークの山岸尚美の


“ルールはお客様が決めるもの。お客様がルールブックで、だからお客様はがルール違反を犯すことなどありえないし、私たちはそのルールに従わなければならない”


というホテルマンとしての基本姿勢には頭が下がります。とてもじゃないがこんな境地に達することは出来ないなぁ~と感服しますね。
“お客様がルールブック”との言葉は表面的に受け取ると「お客様は神様です」精神と同一のものかと思ってしまうところですが、単純にただハイハイとかしこまっていれば良いという訳ではなく、お話の中で描かれるのは「お客様を快適な気分にさせる」ということに特化したホテルマンとしての姿勢です。

 

「昔、先輩からこんなふうに教わりました。ホテルに来る人々は、お客様という仮面を被っている、絶対にそのことを忘れてはならない、と」
「ははぁ、仮面ですか」
「ホテルマンはお客様の素顔を想像しつつも、その仮面を尊重しなければなりません。決して、剥がそうと思ってはなりません。ある意味お客様は、仮面舞踏会を楽しむためにホテルに来ておられるのですから」

 

上記は尚美と新田のやり取り。
このお話の舞台はラグジュアリーな一流ホテルなのでなおのことですが、ホテルに泊まるという行為は大小ありつつも、日常から解き放たれた“いつもと違う自分”を一時楽しむ場。
刑事は素顔を暴いて仮面を剥がすのが仕事ですが、ホテルマンは仮面を尊重して素顔を鑑みながら、その上で相手を満足させることを考えねばならない。

刑事である新田とホテルクラークである尚美が衝突してしまうのは必然ですね。

 

 

 

見所
最初のうちは衝突を繰り返す二人ですが、仕事を共にする中で信頼や尊重、尊敬の意思が芽生えていき、打ち解けていきます。ここら辺の二人の関係性の変化はやはり読んでいて楽しい点です。続編では二人の関係がどうなっているのか気になるところですね。

個人的には新田と所轄のベテラン刑事・能勢さんとの信頼感の変化も好きな箇所です。能勢さん、凄くいい人なんですよ。だから途中で新田が能勢さんのことを軽視したりするのは読んでいてムカッとしてしまうのですが(^^;)まぁ、若さ故だろうと大目に見られますけどね・・・。

そしてもちろん、ミステリとしても面白いです。怪しい客が来て、その都度様々な方法で解決していくストーリー展開の只中で、実は確りと殺人事件についての伏線が散りばめられ、最後には綺麗に収束されて、気の利いた台詞で締めくくられる。
スカッと爽やかな読後感。流石のエンタメ作品です。


映画で気になられた方は是非読んでみては如何でしょうか。

 

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

 

 そして、こちらを読んだら次は『マスカレード・イブ』へ!

 

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 そして『マスカレード・ナイト』へ

 

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ではではまた~

水の中の犬 あらすじ・感想 映画化『アウト&アウト』の前日譚

こんばんは、紫栞です。
木内一裕さんの『水の中の犬』を読んだので感想を少し。

 

水の中の犬 (講談社文庫)


あらすじ
「あなたは、どうなることを望んでいますか?」
「あの男が死ぬことです」
探偵の元にやってきた一人の女性。彼女の望みは一人の男が「死ぬこと」。
交際相手の弟に軟禁の末暴行され、兄貴に知られたくなければ俺の女になれと脅迫とつきまといを受けていたのだ。
たしかに彼女の問題はその弟が死ななければ解決しないように思われた。辛い話を聞いてしまった者の責任として、探偵はこの解決しようのない依頼を引き受けるが、探っていった先に待ち構えていたのは底の見えない暴力と悪意だった。
それらは連鎖していき、やがて探偵自身の封印された記憶を解き放つ――。

 

 

 

 

 

ハードボイルド
『水の中の犬』は木内一裕さんの小説第2作目で前回当ブログでもまとめた『アウト&アウト』から続く元ヤクザの探偵・矢能が活躍するシリーズの前段に当たる作品です。読まなくても後続の作品は十分楽しめますが、読むと矢能や栞の事情がよくわかるし、シリーズへの愛着もより深くなるので読むべし。

※矢能シリーズ(仮)の順番などに関して、詳しくはこちら↓

 

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この『水の中の犬』は矢能が主役の『アウト&アウト』などのエンタメ色が強い作品雰囲気とはだいぶ異なり、ハードボイルド一直線でノワール小説ばりに暗くて重い内容ですが、コレはコレで別の面白さがある魅力的な作品です。

シリーズ3作目の『バードドッグ』の文庫版解説を読んで知ったのですが、この作品には前身となる著者の「きうちかずひろ」さんが撮った映画『鉄と鉛』があり、今作はこの映画の小説版ということらしいです。

  

鉄と鉛 STEEL&LEAD [DVD]

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「探偵」を渡瀬さんが演じているというのが納得。凄くピッタリだと思う。 

 

お話は
第一話 取るに足りない事件
第二話 死ぬ迄にやっておくべき二つの事
第三話 ヨハネスからの手紙
の、三話構成になっています。

お話は全て繋がっていて、描かれるのは“最悪の連鎖”。三話ともミステリアスな女性が探偵事務所に依頼に来るというハードボイルドの定番みたいな出だしで、情報屋、ヤクザ、麻薬常習者・・・と、これまた定番な人物や事柄が出て来る。
各話、終盤で明かされる真相は悪意と暴力に塗れていて、どれも読後の後味は良いものではありません。
ですが、ただ不愉快で虚しくさせるだけのお話かというとそんなことは無く、それだけではない“何か”が残る作品です。

 


探偵
主人公は元警察官で探偵の「私」。最後まで名前は明かされず、周りにも「探偵」としか呼ばれません。

今作ではこの探偵の「私」自体が一番の謎として描かれています。


口調は丁寧で思慮深く冷静、普通の倫理観も持ち合わせていて真人間そうに見えるのに、いきなりスイッチが入ったように思考はそっちのけでドンドンと行動的すぎる行動をとっていき、読者の気持ちが追いつかないままに早く展開するので「どうして」「なんで」と困惑します。
依頼に対しても「他人の為に何故そこまでするのか」と周りに理解されないほどの行動をし、その都度大怪我を負っているのですが、読んでいてもこの「探偵」はお人好しといったタイプじゃなさそうだし、正義感に駆られてとっている行動とも思えないので、ここもまたチグハグな印象をうける。

 

「お前はすぐに当事者になっちまう。いつだって自分の事件にしちまうんだ」

「お前は不運にもちょくちょく暴力沙汰に巻き込まれちまうって思ってんだろ?これは探偵って職業にゃ付き物だとか何とか言ってよ・・・・・・だけどそうじゃねぇ。いつだってお前が暴力を誘ってるんだ」

上記は二つとも情報屋のセリフ。


探偵である「私」は依頼人のためではなく、無意識のうちに自ら望んで危ない目に遭っている。実は自分のために行動しているんですね。

これらの「私」の謎は三話目のヨハネスからの手紙』で明らかになります。読者としては「ああ、そうだったのか」と、ストンと腑に落ちました。
が、自分の危なっかしい行為の理由がわかって落ち着くかと思いきや、「私」は理由がハッキリとしたことで行動をさらに加速させていきます。そして逃れようのない哀しい結末へと向かってしまうのです。

 

 

 

 

 

 

 

矢能
矢能が登場するのは二話目の『死ぬ迄にやっておくべき二つの事』からで、探偵を監視していたはずが行動を共にするうちにすっかり探偵の協力者になってしまう“なんか良いヤツ”で、二話の終盤には
「お前がくたばったら・・・・・・後は俺に任せろ」
とまで言ってくれる。
探偵は“後を託せる人間がいることは素晴らしいことだ”と嬉しく思い、三話目では命を狙われている小学生の「栞」を矢能に預けています。ほんの数日のつもりが~・・・で、続編の『アウト&アウト』に繋がる訳なんですけども。
エピローグで矢能は「私」のことを
「あいつは俺が知っている中でも最高の男だ」
と言い、新たに探偵事務所の主となる。

悲惨な出来事ばかりで哀しく辛い物語ですが、矢能が後を引き継いだこと、探偵が助けた「栞」が矢能と共に探偵事務所で日々を過ごしていること。“その日々を描いた続編があること”がこの物語の最大の救いになっています。
なので『水の中の犬』を読んだ後に『アウト&アウト』を読むと感慨もひとしおですね(^^)

 

 


最初に読むべき
私はこの小説の存在を知らず、続編の『アウト&アウト』を先に読んでしまったので、今作を読む前からある程度の結末は知っている状態でして。結末を知っていても面白く読めたは読めたのですが、やっぱり最初に『水の中の犬』を読んでいればもっと物語を純粋にハラハラしながら楽しめたろうし、感じ方も違ったろうな~と。


シリーズ番号などが表紙に明記されていないので、私のようにシリーズの途中から読んでしまう人、結構いるのではないかと思います。後から読むのももちろん良いですが、気が付いた人は是非飛ばさずに『アウト&アウト』の前にこの作品を読んで欲しいです。シリーズのことは抜きに、単体の作品として十分面白いですので是非是非。

 

水の中の犬 (講談社文庫)

水の中の犬 (講談社文庫)

 

 

 

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ではではまた~

『金田一37歳の事件簿 』2巻 ネタバレ “あの男”登場!美雪は!?

こんばんは、紫栞です。
金田一37歳の事件簿』2巻が発売されました。読んでみての感想や色々気になった点をまとめたいと思います。

金田一37歳の事件簿(2) (イブニングKC)

 

1巻と同様、今回も特装版と通常版での2形態での刊行ですね。1巻は青い方が通常版で赤い方が特装版でしたが、今回は逆。↓

 

 


前回からの先入観で間違えないように注意・・・まぁ帯の文句などでわかるとは思いますが。
今回の特装版には37歳の金田一一が勤める音羽ブラックPR社の「社員手帳風スケジュール帳」と、「キャラクター付箋」「クリアファイル3点セット」の付録付きで、お値段は1512円(通常版は680円)。

 

 

 

あらすじ
音羽ブラックPR社営業部主任・金田一一(37)は、高校時代に三度も殺人事件に巻き込まれた「歌島」に婚活ツアーの仕事で再び訪れることに。そして、やはり危惧していた通りにまたしても『オペラ座の怪人』になぞらえた殺人事件が発生してしまう。
ツアー客の一人、桜沢楓がチャペルから死体消失の後“ヴィーナスの鐘”で首を吊られて発見され、その後また、ツアー客の鈴木実がシャンデリアの下敷きとなって死んでしまう。
仕方なく謎を解くことを決意し、真相にたどり着いた金田一。高校時代と同じように容疑者達を集めて謎解きを開始しようとするも、犯人の罠によってかつてないピンチに見舞われてしまい――。
果たして二人を殺した殺人犯“第四のファントム”の正体とは。
そして、事件終了後に浮上する「あの男」の影――。

 

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~(犯人の名前も書いているので注意)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

収録内容ですが、前巻の『歌島リゾート殺人事件』編の完結までの7話分と、新章の『タワマンマダム殺人事件』編の1話収録。『歌島リゾート殺人事件』はほぼコミック二冊分使っての事件ということに。 

 

まずトリックや犯人なんですが、前回のこちらの記事で書いたことがほぼ当たってた。胸の黒子のことも(^^;)↓

 

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もうちょっと何かひねってくるかとも思っていたのですが・・・脇にボール挟んで脈を止めるトリックは古典中の古典ですからねぇ・・・(いつも思いますけど、死亡確認って普通脈より先に息してるかどうかみるよね)。やるにしてもコレですぐに犯人がわかってしまう状況設定は本格推理モノとしてどうかと。
胸の黒子は男性読者へのサービスとみせかけての伏線。どうでもいいことですが、麻生さんのあのデカイ胸は本物なんですかね?顔は整形してるってことですが・・・それにしても整形が偉大すぎる。

 

 

 

新鮮!笑える!だけど・・・
今回の解答編は新鮮でした。かなりギャグよりというか何というか・・・シルエット状態の犯人も今までになく喋りすぎですし。関係者集まってくれないから「犯人はこの中にいる!」って出来ないし。一ちゃんも「17歳のときと違う」とぼやいていますし。
ノリ的にはスピンオフの『犯人たちの事件簿』に近いですね。

 

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笑えるし面白いんですけど、本編の長編でやるのはどうなのかなと言う気もします。短編ならともかく。スピンオフがあるのだからこういったノリはそちらにお任せで良いのでは。

 

そして、今回の犯人“第四のファントム”、かなり下劣でしたね~。保険金殺人の常習犯で犯行は行き当たりばったり。殺害動機も「邪魔だったから」。


これも今までになく新鮮ではあるのですが・・・。シリーズの長年のファンとしては少し受け入れがたいところもあります。


金田一少年の事件簿』シリーズは本格推理もので情熱的なほどの緻密な犯行計画とリアリティは度外視した芝居かかった演出、並々ならぬ怨恨や複雑な事情がからんだ重すぎる犯行動機などが持ち味で、醍醐味で、こういったクラシカルな部分が他のミステリ漫画と一線を画すものとして位置づけられていた(はず)。

今作のような軽率でお粗末で軽薄な犯人には“第四のファントム”なんて怪人名を与えるのは納得がいかないっ!もうですね、歴代ファントムに謝って欲しいくらいですよ(-_-)みんなあんなに苦労して深刻に犯行に及んでいたのに・・・!

 

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37歳になったってことで作品も“近代化”なのかもしれませんが、個人的に昨今のサイコパスものを扱った作品には辟易することしばしばですし、そういったものは別の漫画作品で散々やっているのだから、このシリーズではする必要ないし、しないで欲しいというのが正直なところ。
今後はどうなんですかねぇ。こんな犯人ばっか出されたら嫌だなぁ~と思うのですが。

 

 

高遠さん
コミックスの帯やあらすじに「宿命のあの男」と書いてある。“あの男”とはもちろん地獄の傀儡師・高遠遙一さんその人である。
個人的に、「2巻でもう登場するのか~」って感じでした。もっと出し惜しみするかと思っていたので。


この2巻を読んでわかる事実としては、高遠さんは現在逮捕されて特別拘置室で死刑判決を待っている身だとのこと。ファンがいっぱいいて本の差し入れが全国から沢山くるらしい。
で、今回の事件の犯人・麻生早苗は高遠さんがスカウトして犯罪を仕込んだ弟子で「ゼウスのしもべアルテミス」と、ギリシャ神話の十二神にちなんで呼んでいたらしく、十二神というからには他にもよからぬ弟子が十人いるんじゃろ!と、金田一明智さんが推測して高遠さんがいる拘置所に訪ねに行く訳です。


と、いかにも漫画みたいな展開なんですけども(漫画だから良いんだけども)自分のこと“ゼウス”って呼ばせて、弟子に神の名前与えてって・・・新興宗教の教祖様みたいなことしていたってことでしょうか。最初は母親の復讐が目的で殺人を犯しただけだった人が何故こんな事に。

 

いずれにせよ、この“十二神”が今後『金田一37歳の事件簿』の主軸になるのでしょう。終盤、一ちゃんが
「冗談じゃねーぞ向こうはその気でもこっちはそーゆー気分じゃねっつーの」
と言っているのがジワジワくる(笑)
確かに37歳にもなってギリシャ神話だオリンポスの十二神だと言われても乗り気になれないかもしれない。

 

それにしても、麻生早苗が高遠さんの弟子とは・・・言っちゃ悪いけど、高遠さん見る目がないのでは?
麻生早苗みたいな下品な殺人犯は嫌っていそうなイメージがあったので何か意外・・・。まぁ「失望した」って言って人使って殺害するんですけど。こっちは別の意味で失望したって感じ(^^;)それとも何か深い考えがあってのことなんですかねぇ・・・。

 

はて、金田一と高遠さんは対面するのが20年ぶりらしいのですが、ここで疑問なのは高遠さんが逮捕されたのは何年前なのか?というところですね。対面するのが20年ぶりなら逮捕されたのも20年前か?と、なりそうですが、それだと27歳の麻生早苗をいつ弟子にしたのかという謎が出来てしまう。度々脱走を繰り返していた高遠さんが20年もおとなしく牢屋に入っていたというのも不自然ですよね。うーん・・・気になります。

 

 

 

 

 


美雪
美雪が・・・出て来ません。

1巻同様、金田一とライソで連絡とっているのみです。通話もなし。


高遠さんの登場が意外だったのは美雪より先に出て来たという点もあってなのですが・・・・・・と、いうか・・・

どういうことだっ。何故こんなに美雪を出し惜しみしている!?


出て来ないばかりか、一ちゃんはライソのメッセージ読んだ後空見上げて美雪のシルエット浮かべてるし。ヤメテ!空に浮かべないで!なんかザワザワするじゃんっ。

 

今回読んで、私、自分で思っていたよりも美雪のこと好きだったと実感しました(^^;)美雪が助手してくれないとやっぱりヤダ。いや、思っていたよりも『金田一少年の事件簿』が好きだったのだということも痛感しました。早く17歳のころの調子に戻って欲しいです。

 

 


何があったのか?
2巻を読んでも金田一「もう謎は解きたくない」と言っている理由はわからずじまいです。

 

もし また あんなことになったら――

や、回想だと思われる部分で

・・・金田一君・・・!――助けて!

 

と、思わせぶりなセリフがあるので、とにかく昔事件に関わっている最中に“何か”があったことは間違いなさそうです。
美雪を出し惜しみしているのはこの“何か”に深く関係しているからだろうとは思うのですが、金田一と美雪との連絡のやり取りが全て金田一の妄想だというのもあまりに突拍子がなさすぎて辻褄が合いませんし、美雪が生活に支障を来すような大怪我・ましてや死亡しているなどというのは考えにくい。

 

で、引っかかってくるのが“・・・金田一君・・・!――助けて!”の文章。
文面的にこのセリフを言ったのは女性だろうと思われるのですが、美雪は金田一君”とは呼ばないので、事件によって“何か”があった張本人はおそらく美雪以外の別の女性なのでは。
シリーズのレギュラーキャラクターの中で金田一のことを「金田一君」と呼ぶのは玲香ちゃんぐらいしか思い浮かびませんが・・・・・・しかし、レギュラーとかではないその事件のみの登場人物かもしれないので何とも言えませんね。玲香ちゃんもまだ出て来ていないので気になるところではあります。

 

 

 


気になる!
色々と思うところはありますが、今後どうなるのかかなり気になりますので読まずにはいられない。
3巻は『タワマンマダム殺人事件』の続き。1話目の雰囲気的に短めで一休みっぽい、高遠さんとか関係ない事件かな~と思うのですが、どうでしょう。3巻も美雪は登場しなさそうですかねぇ・・・。早く登場シーン見て安心したいんですけど・・・(^_^;)

 

何はともあれ、次巻も必ず読みます。3巻は2019年2月発売予定とのこと。心して待つ!

 

※3巻でました!詳しくはこちら↓

 

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ではではまた~

 

 

 

金田一37歳の事件簿(2) (イブニングKC)
 

 

アウト&アウト(アウトアンドアウト)映画の原作本 極道探偵の反撃が面白い!

こんばんは、紫栞です。
今回は木内一裕さんの『アウト&アウト』をご紹介。

アウト & アウト (講談社文庫)

2118年11月16日から全国ロードショーされる映画の原作本です。

 

あらすじ
矢能政男、46歳、独身。職業は探偵(見習い)。前歴は日本最大の暴力団・菱口組の最高幹部の側近をしていたヤクザ者。訳アリで小学校二年生の女の子・黒木栞の後見人をすることになり、ヤクザから足を洗って探偵を始めて八ヶ月。二人で暮らしているが、言動はヤクザ時代と変わらず粗暴なまま。まともに依頼を受けず、小学生の栞に説教をされる毎日を過ごしていた。

ある日、矢能の元に「ある人間を調べて欲しい」と依頼の電話がかかってくる。しかし、矢能が呼び出された場所に行ってみると、そこには依頼人の死体と「クリントン」の覆面を被って拳銃を持った若い男が。
図らずも目撃者となり、窮地に追い込まれた矢能。だが、覆面男は「しないですむ殺しはしないですませたい」と言い、持っていた拳銃の弾倉に矢能の指紋をつけ、これを“保険”として矢能と死体を置いて立ち去った。
知恵と機転で困難を上手く乗り越えたと達成感と高揚感に満たされる覆面男。これが周到に用意した殺人計画の大誤算になることも知らずに――。

人殺しの若造に嘗められたことに立腹した矢能は、独自のルートを駆使して反撃を開始する。

 

 

 

 

 

アウトだらけのエンタメ小説!
作者の木内一裕さんは小説家としては映画化された藁の楯

 

藁の楯 (講談社文庫)

藁の楯 (講談社文庫)

 

 

の作者として有名ですかね。漫画家でBE-BOP-HIGHSCHOOL

 

 

きうちかずひろと同一人物。


今作は『アウト&アウト』というタイトルの通り、登場するのは裏社会の情報屋、不良刑事、元弟分のヤクザ、死体の掃除屋・・・と、道から外れている者ばかり。そんな中でもひときわ毒っ気があるのが主人公の矢能。口では「もうヤクザじゃない」「カタギになった」と事あるごとに言いますが、見た目も言動も考え方もまんまヤクザの“ソレ”のまま。極道の道を歩いたまま「探偵」と名乗っているだけって感じで、とてもお近づきにはなりたくない人種・・・と、この設定だともうハードボイルド一直線なお話になりそうですが、ここに小学生の女の子・栞や、隠れ家に使いがてら時折様子を見に行っているお婆さんなどが出て来ることで作品雰囲気が中和されています。
お話としては“敵側”になる登場人物達も魅力的ですし、ストーリー展開も先がよめず、スピーディーで一気に引き込まれます。途中切なくさせる部分などがありつつ、決着のつけかたはこの作品ならではの痛快なものでコミカルさもあり「これぞエンタメ!」で、非常に楽しく、面白く読む事が出来ました。

 

 

前日譚・続編
この作品、私は映画化されるというので興味を持って読み始めたのですが、矢能と栞にはだいぶ込み入った事情や経緯があったみたいだけど詳しく書かれてないなぁ~と思ったら、ちゃんとこのお話の前日譚が描かれている『水の中の犬』という作品があるらしいと文庫版の野崎六助さんによる「解説」で知りました。

で、「面白かった~!続編ないのかな?」と思って調べてみたら続編も二冊刊行されているとのこと。勝手に単発ものだと思い込んでいたので、シリーズだと知って嬉しかったです(^^)

 

矢能シリーズ(で、良いのかな?)の順番は


『水の中の犬』

 

水の中の犬 (講談社文庫)

水の中の犬 (講談社文庫)

 

 


『アウト&アウト』

 

アウト & アウト (講談社文庫)

アウト & アウト (講談社文庫)

 

 


『バードドッグ』

 

バードドッグ

バードドッグ

 

 


『ドッグレース』

 

ドッグレース

ドッグレース

 

 


の、今のところ4作品。

矢能が主役になるのは今作の『アウト&アウト』からで、シリーズ第一作の『水の中の犬』では主役が異なり、矢能は脇で登場とのこと。
シリーズ4作目の『ドッグレース』は今年刊行されたばかりのようです。
私は『アウト&アウト』がだいぶ気に入ってしまったので、もうシリーズ全部読む事に決めて既に二冊買ってしまいました(^^;)落ち着いたら一気読みしようと意気込んでおります。

 

※読みました!詳しくはこちら↓

 

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映画
映画ですが、監督は「きうちかずひろ」さんです。つまり著者の木内一裕さん本人ですね。
お話を書いた本人が監督されるなら、原作と違うウンヌンとか諸々の文句は言いようもないってな気がしますね。だって御本人が撮っているのだもの。
しかし、漫画家で、小説家で、映画監督でって多彩な方ですね~。

 

キャストは以下の通り
矢能政男遠藤憲一
黒木栞白鳥玉季
情報屋竹中直人
婆さん高畑淳子
池上数馬岩井拳士朗
北川理恵小宮有紗
鶴丸清彦要潤

公式サイトで写真つきで紹介されているのは上記の方々。


原作に出て来るヤクザの工藤篠木、警官の次三郎、池上数馬の師である堂島哲士なども小説では重要な登場人物達です。映画ではどうなっているのか気になるところ。

 

矢能は原作だと


ハンサムにはほど遠い顔立ちだが醜男とも懸け離れている。甘さのない顔だが男臭い顔というわけでもない。歳は四十代半ばだろう。アメリカの映画俳優ウィレム・デフォーに少し似ているように思った。マッチョではないがタフな男の顔だった。


と、ある。
イメージぴったり!と、いうか・・・私は読む前に主演キャストをすでに知っている状態だったので最初から遠藤さんのイメージで読んでしまったのですが・・・(^^;)いや、でもぴったりだと思う・・・。
原作の矢能は四十代半ばの設定なので、現在五十代後半の遠藤さんとは年齢がだいぶ異なる。うーん、でも強面は年齢不詳になりがちなので別に問題ないんですかね。
年齢で言うと、原作の婆さんは八十近い設定なので、こちらは逆に高畑さんだとだいぶ若いですね。

 

映画の公式サイトでの予告を見ると、かなりシリアスというかハードボイルドが強めの感じですね。小説の方は個人的主観としてはもうちょっとコミカルさがあるように思うのですが。まぁ観てみないことには何とも言えないですけど、コミカルさはなくさないで欲しいなぁ~と思います。

 


以下若干のネタバレ~

 

 

 

 

“どっちつかず”の魅力
この小説は
第一章 発端
第二章 もう一つの発端
第三章 追撃
第四章 さらに追撃
の、四つの章で成り立っています。


第一章の「発端」で矢能が事件を追うことになる発端が矢能視点で描かれ、第二章の「もう一つの発端」では矢能が殺人現場で鉢合わせた犯人の覆面男・池上数馬の殺人を起こす経緯が池上数馬視点で描かれます。
読者としては「あ、じゃあ三章と四章も矢能視点と数馬視点で交互なのかな?」と思ってしまうところですが、この予想はあっさりと良い意味で裏切られます。どのように展開するかは是非読んでお確かめ頂きたい(^^)

覆面男の数馬ですが、犯人なんですけども格好良くっていい男なんですよね。バックボーンも主人公かってくらいに確り描かれていて、第二章の前半を読んでいる間は本来の主役である矢能を失念してしまいそうな勢い。まぁ第二章の後半で矢能の圧倒的存在感を思い出すんですけども・・・。

矢能や数馬もそうですが、この小説では主要人物たちが悪人・善人と綺麗にわかれて描かれてはいません。お話としては敵側の堂島や鶴丸も、根っからの悪人という訳ではなく、様々な経緯の末の結果がこうなってしまったという感じ。諸悪の根源である鶴丸清彦も3年前の事件直前は改心の兆候を見せていたし、一応、罪悪感も持ち合わせていたようですし。弱いから流され捲くって駄目駄目でしょうもない男になっちゃって(-_-)この人間くささが登場人物達の魅力になっていますね。

 

唯一例外的な存在として描かれているのは栞ですね。子供だからというのもありますが、数馬が堂島との電話で「絶対に、私を騙さない相手」と言ったのが印象的でした。ここら辺の数馬の終盤シーンは切なくて哀しかったですね・・・。エピローグで少し救われましたが。

 


他、イチオシ!ポイント
栞ちゃんがカワイイ。小学二年生ですが、やたら聡明で大人びていて口が達者。それでいて、ちゃんと可愛げもある。
血も涙もないような危険人物の矢能ですが、栞のことを大事にしているのだけはどうやら本当らしく、強気に出られなっくって頭が上がりません。矢能と栞との会話は読んでいる分には完全に夫と女房の会話にしか思えなくって可笑しいです(^^)シリアスなシーンでのやり取りまで夫婦のようでさらに可笑しい。

個人的に無愛想男と子供のコンビが好きなので(ブラックジャックとか)、ここら辺のやりとりはドンピシャでした。私と同じく、こういったコンビが好きな方は是非。

 

ハードボイルド小説に苦手意識がある人も多いかと思いますが、栞ちゃんとのやり取りもあるせいか、ハードボイルドの主人公特有の男性作家的「こいつカッコイイだろ」感(好き勝手しているだけなのに女に言い寄られる・・・など^^;)が薄く、ヤクザなど裏世界とのやり取りもノワール小説程の暗さや重さが無く、娯楽小説としての側面が強めなので読みやすいと思います。
とにかくオススメ!ですので是非是非。

 

 

アウト & アウト (講談社文庫)

アウト & アウト (講談社文庫)

 

 


ではではまた~

 

 

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スマホを落しただけなのに 小説 あらすじ・感想 リアリティのあるホラー

こんばんは、紫栞です。
今回は志駕晃さんのスマホを落しただけなのに』をご紹介。

スマホを落としただけなのに (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

2118年11月上映予定の映画の原作本ですね。

 

あらすじ
なんでこんなことになってしまったのだろうか。
事の発端はスマホを落したことだった。
都内に住むOL・稲葉麻美は、ある日彼氏である富田誠のスマホに電話をかける。しかし、電話にでたのはハスキーボイスの知らない男だった。富田は泥酔してスマホをタクシーの中に落とし、そのスマホをこのハスキーボイスの男が拾ったのだという。
拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なクラッカー。富田のスマホの待ち受け画面に設定されていた麻美の姿と、電話でのやり取りで麻美のことが気に入った男は、富田のスマホから得た情報から麻美の個人情報を抜き出し、人間関係を監視し始め、SNSを介して罠を張り巡らしていく。
一方、神奈川の山中では身元不明の女性の遺体が次々と発見されて――。

 

 

 

 

 

 

50代の新人作家
この『スマホを落しただけなのに』は、第15回このミステリーがすごい!」大賞隠し球の『パスワード』を改題・加筆修正したもので、志駕晃さんのデビュー作。
隠し球”って何?って感じますが、最終選考まで残って大賞は逃したものの、編集部推薦で刊行したよ~ってなことらしいです。お節介で余計なお世話な個人的意見ですが、題名を『パスワード』から『スマホを落しただけなのに』に改題したのは大正解だと思います。与えるインパクトが全然違いますし、『スマホを落しただけなのに』という題名の方が作品にずっと合っていますね。『パスワード』だと本屋に並んでも広告を見てもあまり興味をそそられないんじゃないかと。

 

作者の志駕晃さんですが、1963年生まれでデビューしたときは既に50代。元ラジオディレクターで、今作はニッポン放送のエンターテインメント開発局長という要職に就きながらの執筆だったという異色の経歴の持ち主。
※2作目の『ちょっと一杯のはずだったのに』はラジオ業界が舞台の作品らしいです↓

 

 

SNSを利用しての犯罪という現代的な題材を扱っている作品なので、読む前は思い込みから若い作者を想像していたので以外でした。しかし、読んでみると胸のこと“おっぱい”とか、下着を“パンティー”と表記するところがなんか、あの、ソレっぽいので(笑)作者の経歴見て妙に納得しました(^_^;)

 

※追記。なんと、11月6日に『スマホを落しただけなのに』の続編が発売されたみたいです!続編があるようなお話だとは思ってなかったので意外・・・。詳しくはこちら↓

 

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SNSの恐怖
このミステリーがすごい!」からの出ですが、この作品はミステリー色というか推理小説的要素はさほどではないです。どちらかというとサスペンスでホラーって印象でしょうか。

お話はスマホの拾い主の男視点のAパート、麻美視点のBパート、捜査中の刑事二人のCパートの三つの視点で語られていきます。この視点の変化でスピーディーに読み進められ、先も気になって一気読みしてしまうといった感じ。

 

今やスマホは最も身近なツール。ネットも多くの人が日常的に利用するのが当たり前の時代です。肌身離さず持っているぶん、公共の場で落したり忘れたりする事も多い。この小説では最悪の人物にスマホを拾われてしまったことから始まる恐怖が全面に描かれていています。しかも、スマホを落したのは狙われることになる主人公ではなく、主人公の交際相手で、主人公に直接的な非はありません。まさに不運としか言いようがなく、平穏に過ごしていた人間が“知り合いがスマホを落した”という日常茶飯事的な事柄で人生をめちゃくちゃにされるというのは、誰にでも起こり得る状況なだけに現実的な恐ろしさがあります。
この本で取り上げられているのは主にフェイスブックですが、スマホに依存している生活、セキュリティの弱さ、システムの盲点・・・などなど。皆が無知なままに当たり前に利用しているスマホSNSは実は大きなリスクが伴うものなのだと嫌というほど痛感させられますね。

あと、どんなに親しい人物にもやっぱり裸の写真は撮らせちゃ駄目なんだなと思いました(^^;)

 

 

映画・キャスト
11月公開の映画は監督が『リング』シリーズ仄暗い水の底から』『クロユリ団地』などホラー映画で有名な中田秀夫さん。なので、やっぱり映画もミステリーよりホラーテイストよりのものになるのかな?と思います。

 

 

 

キャストは以下の通り
稲葉麻美北川景子
富田誠(麻美の彼氏)-田中圭
毒島徹(刑事)-原田泰造
加賀山学(刑事)-千葉雄大
浦野善治(インターネットセキュリティの専門家)-成田凌
小柳守(麻美の元同僚)-バカリズム
武井雄哉要潤
杉本加奈子高橋メアリージュン

 

キャストに関しては個人的には異論は無いです。刑事さん二人は本読んで想像していたのとちょっと違いますが、全体的に順当な感じ。


原作の麻美は綺麗な黒髪のストレートヘアの美女で、その特徴が元で狙われる設定。北川景子さんは茶髪のイメージが強いですが、予告動画などを見ると黒髪になっているので原作の設定に合わせたのだと思います。

原作だと武井は大学時代の先輩、加奈子は同大学出身の友人です。映画の公式サイトだと加奈子が「職場の同僚」となっていますね。びみょ~に変えていますが、お話の中での役割は大体同じだと思います。武井がプレイボーイの女好きなのも。

他、公式サイトですとサイバー犯罪者の大野俊也(酒井健太)、富田に言い寄る女性で天城千尋(筧美和子)と名前が出ていますが、この二人は映画オリジナルですね。


映画の予告映像を観ると麻美の交友関係は映画の方が原作より酷い事になっていそうな感じがしますが・・・どうなんでしょう。

 

 

 

 


以下若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



一気読み出来る面白い作品ではあるのですが、デビュー作だからというのもあるのでしょうけど、なんか色々と言いたい部分がチラホラあります(^^;)

 

サイコキラー
スマホの拾い主の男が、若い黒髪の女性ばかりを殺害しているサイコキラーだというのは物語の比較的早い段階で判明します。で、このサイコキラーの男、母親がネグレクトで自殺。女性に母性を求めて母親と同じ髪型をした女性を次々殺害していき、殺害時には被害者の腹部を滅多刺し。最後、逮捕された際には「見つけてくれてありがとう。このまま止めてくれなかったら、もっと女を殺さなければならなかった」と発言。
・・・・・・まるでプロファイリングものの典型を羅列しているような印象で、犯人視点での心情描写もそこまで突っ込んで書かれていませんし、何というか“プロフィール紹介をしているだけ”と感じてしまいます。
サイコキラーの内情が主の物語ではないってことなのでしょうけど、これならいっそ、犯人の生い立ちなどはまったく伏せたままで話しを進めて、最後に刑事さんにまとめて言わせるくらいでよかったんじゃないかなぁと。

 


男性の文章
主人公の稲葉麻美ですが、まず読んで思うのは、いかにも男性が想像する女性像だなぁと。人を見るときにいちいち打算的になっていたり、「女性ってこうだろ?」みたいな雰囲気を感じてしまいますね。文章も男性作家特有の匂いがプンプンします。特に“パンティー”の表記がね・・・(^^;)
そんな訳で、感情移入出来そうな、出来なさそうな微妙な主人公ですね。言動もなんだか一貫性がないような気がするし。

彼氏の富田は富田で純粋で良いヤツだとは思うのですが、終盤、犯人との取引に応じてせっかくの拘束を解いてしまうのには「馬鹿か?」となりましたね。反撃されるに決まっているのに・・・。

 



このミステリーがすごい!」大賞での選考で警察捜査の描写の甘さが指摘されているようですが、捜査描写もさることながら、気になるのは刑事二人が山中で話す話題の中に必要性がないものが多いような気がしてならないところです。

遺体発見現場で蛭だの猪だの熊だの、聞き込みした人が「くそ熱い中」って言ったりだの。ミステリー脳(笑)な人間としてはこの描写も何かの伏線か?結末に関係するのか?視点が三つにわかれているけど、まさか時間軸がズレているとか?と、色々勘ぐってしまうのですが、どの描写も特別結末には関係なく。大いに肩透かしをくらった感・・・まぁミステリー脳で読んでしまうとって話ですけど(^_^;)


しかし、じゃあこれらは何のための描写だったんですかね?読者を陽動するための確信的なものなのか。それともユーモアのつもりなのか。だとしたらユーモアだと気が付かれもしないってのはどうなんだ。

あと、アスペルガー症候群の話も出て来るのですが、これも何のために出してきたのかわかりませんね。個人的にはちょっと変わっているってだけで、すぐにアスペルガーだの何だの言い出す風潮って大っ嫌いなんですが。


結末
犯人なのですが、ちょっと解りやすすぎますね。一番怪しい人物がそのまま犯人で「あ、いいんだそれで」といった感じ。
で、終盤、お話は犯人特定よりも麻美の過去の謎がメインとなります。サイコキラーの犯人で引っ張りますが、実はお話のメイントリックはこっちなんですね。


一ひねりではありますが、上記したように、文面を読んでいるともっと大仕掛けや大どんでん返しが潜んでいるのかと期待してしまうので、この手のトリックが使われるミステリー小説を読み慣れている人にとっては物足りなさを感じてしまうかなぁと思います。
ホラー、ミステリー、パニック小説など様々な要素が入っているお話ですが、様々な要素が入っているために全体の描写が浅くなってしまっている印象。

 

個人的にはやはりミステリー小説としてよりも、ホラー小説として読むのがオススメですね。SNSを利用している人は特にリアルな恐怖を感じる事が出来ると思います。スマホSNS依存への問題提起的側面もあるので、日常的にSNSを利用する人にこそ読んで欲しい作品です。映画で気になった方は是非是非。

 

 

 

※漫画もある↓

 

 

 ※続編もね↓

 

 

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 ※第3弾もね↓

 

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ではではまた~