夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

映画原作『暗黒女子』 あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。

今回は秋吉理香子さんの小説『暗黒女子』を紹介したいと思います。

暗黒女子 (双葉文庫)

ただいま公開中の映画『暗黒女子』の原作小説ですね。主演女優さんのあーだこーだで話題になっていたときにネットであらすじをちょっと拝見しまして、面白そうだと思い読んでみました。

 

あらすじ

名門女子校で全校生徒の憧れの存在であった女生徒、白石いつみが死んだ。一週間後、彼女が主催していた文学サークルで毎学期に一度の定例会“闇鍋会”が開催される。闇鍋会のルールに従って文学サークルのメンバー6人は各自一編ずつ自身が仕上げた小説を朗読していく。決められた小説のテーマは“前会長、白石いつみの死”―――。

 

この小説なのですが、近年よく耳にするようになったイヤミス(読後に嫌な後味をあたえるミステリー)に分類されるにまぁ相応しい小説です。映画の文句にも「イヤミスの傑作遂に映画化!」って書かれていますしね。しかし、別に不愉快な気分になるとかでは無く、いくとこまで行ってしまうダークさが突き抜けた、ある意味爽快な結末になっています。

舞台設定はまぁお耽美耽美。ミッション系の女子校、美しい女生徒達、コテコテのお嬢様言葉。直接の舞台になる文学サロンはバカラのシャンデリアだのベルベットのドレープカーテンだの猫足キャビネットだのゴブラン織りのソファだので彩られた煌びやかな部屋。だけどもここで何をするって“闇鍋会”をするってんですからもの凄くシュール。庶民がその場にいたら笑っちゃいそうな舞台設定ですが、このちぐはぐさが妙な不気味さと恐怖を作品全体に漂わせているのです。

ぶっちゃけイヤミスで闇鍋会とか嫌な予感しかしない。「いったい鍋に何を入れられてしまうんだー!」ですよね。まぁ想像しうる限りの最悪な物入れられてましたよ。やっぱそういった物入れてくるよねホラーだねって感じですよ。一番嫌な予想をど真ん中ぶち込んで来たなオイ。みたいな。

まぁこれもまたイヤミスの醍醐味なんですが。

本の構成は前説として開会のごあいさつがあり、その後順次一人ずつ自身が創作した“いつみの死”がテーマの小説を朗読していく運び―――なんですが、この朗読小説の内容が皆食い違っていてバラバラ。それぞれが異なる人物を犯人として名指ししていて、誰が嘘をついているのかわからず、皆が容疑者状態になってしまう。そして最後に朗読される小説で全ての事柄がつながり、真相が明らかになったと思った所で、、、最後の閉会のごあいさつに衝撃の結末が用意されている。

と、いった流れですね。

 

「証言」や「推理」では無く、小説を朗読するところが面白いところ。小説だと書き手は好きな箇所をピックアップ出来るし、幾らでも都合の良いように話しを作る事が出来る。そしてこの登場人物達なんですが、皆が皆やたら“自分は悪くない、正しいことをした”といった感情がにじみ出た小説を書いてきているんですね(特に高岡志夜の「天空の去勢」はやたら良い子ちゃんぶっていて読んでるとイライラする。クラスに居たら嫌われるタイプだろーなー) 結末まで読むと実は皆愚かな行いをしているのがわかる訳なんですが、この女生徒達は自分ではホントに正しいことをしているつもりなんですよね。名門女子校の特殊な閉鎖空間や思春期の危うさがそうさせているのです。

この小説は学園ミステリーの特性を最大限生かした小説だと思います。学生にとっては学校生活が世界の全て。生徒は自分の居場所や虚栄心を守る事に必死になっている。そんな日々の中“白石いつみ”というカリスマの登場で彼女達の世界は崩れ始めてしまう。だから皆がダマし合い、裏切を繰り広げてしまうのです。そう、彼女達は学校生活を守る為ならなんだってやってしまうのだ。

いや~大人になったらねぇ、何であんなつまらんことで追い詰めていたんだろうって往々にして思うんですけどね。しかし、思い込んでしまうのが思春期なのさ。

そしてこの思い込みが特に暴走してしまった人物が一人―――。

 

 正直言うと、イヤミス系の本読み慣れている人には結末はぼんやりとは予想出来ちゃうと思います。私自身そうでしたし。 それでも、終盤の伏線の回収は見事で、全てが符合していく様は爽快。ミステリーとしての読み応えは十分です。美しく、愚かで、たまらなく暗黒な思春期も楽しめますしね。 実写映画などで気になった人は読んでみてはいかがでしょうか。

ではではまた~