夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

ドラマ原作『ナオミとカナコ』 あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。

今回ご紹介するのは奥田英朗さんの『ナオミとカナコ』です。

ナオミとカナコ (幻冬舎文庫)

 

昨年、広末涼子内田有紀のダブル主演で実写ドラマ化されましたね。

 

ナオミとカナコ DVD-BOX

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私は、ドラマは・・・最初と最後だけ観ました(そういう見方しちゃうことあるよね?^_^;)

元々奥田英朗さんの作品は何冊か読んでいるんですが、ドラマが放送されるまでこの作品は未読でした。ドラマの第一話を観た後で気になって読んでみたのです。

結構ページ数ある本ですが、二日間ぐらいで一気読みしました(私は読むスピードは決して速い方ではありません)スリリングな展開でスピード感があり、一気に読むしか無いような本です。時間がある休みの日などに読むのがおすすめ。

 

あらすじ

直美は三十歳目前で独身、長らく恋人もいない。望まない職場で憂鬱な日々をすごしていた。そんなある日、大学の同級生で唯一の友人であり今は専業主婦になっていた加奈子が夫からDVを受けていることを知ってしまう。何とか加奈子を救おうとする直美だが妙案は浮かばず・・・追い詰められた二人が下した決断は、加奈子の夫を二人で殺すことだった。

「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」

このセリフは如何にもちょっとした思いつきをポロっと口に出してしまったといったセリフです。普通ならこの後「なんちゃって」と続きそうなものなのですが、知り合ったばかりの中国人の発言に妙な具合に元気づけられていたり、DV夫にソックリな人の出現が背中を押すような格好になり、殺害計画を具体的に考え出してしまうのです。そして実際に実行に移してしまう二人。

 

この小説は犯罪小説です。二人が殺人に手を染めるまでに至った経緯、計画を企てる算段、実行後次々と露わになる計画の綻び、そしてもう一度二人で下した決断は・・・

と、いったように二人の“DV男殺害計画”を読者は一緒になって追っていくのです。まるで自分も二人の共犯者になっているかのような気分を味わいながら。終盤は綱渡り的な場面の連続でハラハラドキドキですよ~。

『最悪』『邪魔』などに列なる“奥田ワールド”全開な本ですね。読者を登場人物の心境にシンクロさせてしまう書きっぷりは流石です。

 

読後、冷静に考えてみると、二人の計画は素人目で見てもかなりずさんだし、殺害に至る経緯が短絡的すぎるんじゃないか、普通の友人の為にそこまでするだろうか等々の疑問が湧いてくるのかと思われますが、読んでいる間は気にとめさせずにグイグイ結末まで完読させられてしまいます。

ん~でも、殺害動機とかって実際はそんな大仰な物でも無く、これくらいのテンションでいけてしまうんじゃないかなぁ~と思います。人が道を踏み外してしまうのはほんのささやかなきっかけというか。

この二人は殺害計画実行前は本当にただの友人。読んでいて大親友とかって感じも受けません。 直美は自分の母親が父親にDVを受けて続け、それをただ傍観するしか無かった過去を今度こそ払拭したい一心で加奈子に殺害を持ちかけたんじゃないだろうかと感じさせます。

しかし計画を立て、実行していく中で二人の仲は強固なものになっていき、運命を分かち合う親友・共犯者となる。

そして二人ともその事に満足しているんですね。終盤、どんなに追い詰められてもお互いを非難したり、殺害を後悔したりはしないのです。殺害前は直美が加奈子を引っ張っていくのですが、殺害後はその立場が逆転している所など、二人の“共犯関係”の深まりを追っていく過程もこの本の醍醐味だと思います。

 

読み終わった後「う~ん。この結末はドラマでやるのは厳しいんじゃ・・・」と思いましたが、ドラマ最終回観て案の定「・・・・・・さいですか」って感じでしたね(笑)まぁ今のご時世、しょうがないかと・・・ハッキリさせろ!ってな意見も結構あったみたいですけどね。

まぁ休みの日に没頭して読むには良い本です。如何でしょうか?

 

ではではまた~

 

ナオミとカナコ (幻冬舎文庫)

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ナオミとカナコ DVD-BOX

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