夜ふかし閑談

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篠田節子『神鳥ーイビス』 あらすじ・感想 夏のオススメ本②~

こんばんは、紫栞です。

夏のオススメ本を紹介するシリーズ

 

www.yofukasikanndann.pink

 

第二弾は篠田節子さんの『神鳥―イビス』です。

神鳥(イビス) (集英社文庫)

 

こちら1993年に書かれた作品でして、だいぶ古いのですが・・・お話自体は年代関係なく読める内容です。

私は篠田節子さんの作品を読んだのはこの本が最初でした。なんで読んだのかというと、テレビ番組で「夏に読むのにオススメの小説」として紹介していたからです(笑)オススメに従って読んでみたら私的に大当たりで(^_^)気に入って篠田さんの別作品も続けて何作か読みました。なので、私もこの記事で紹介してみようとの所存です。

 

あらすじ

明治時代に活躍した女流画家、河野珠枝。若くして凄絶な自殺を遂げた彼女は死の直前に「朱鷺飛来図」という幻想画をこの世に残していた。 それから約百年後、この「朱鷺飛来図」が放つ妖しい魅力に魅せられた女性イラストレーターの谷口葉子とバイオレンス作家の美鈴慶一郎は、画の謎を探りだそうと珠枝の足跡を辿っていく。そうして辿り着いた山中で二人を待ち受けていたのは時空を超えた恐怖の異界だった――。

 

 

ちょっと異色のホラー小説ですね。面白いのは主役である葉子と美鈴の男女コンビ。

谷口葉子は紅毛碧眼の美少年・美少女を描かせれば右に出るものはいないといわれている人気イラストレーターだが、三十を過ぎて自身の作風に違和感を覚え始めている。

美鈴慶一郎は“二ページに一回、コルト45口径が炸裂して血しぶきがあがり、一章に一回女が強姦される話を書くハイパーバイオレンス作家”(どんなだ)だが、こちらも三十を目前にして自身の作品への将来の不安を感じている。

 

この二人が浮上のためのチャンスとして作品のモチーフに選んだのが河野珠枝であり「朱鷺飛来図」なんですね。

タフで潔癖な所のある葉子と俗物で下品な美鈴。この二人のやり取りがコミカルで、第一印象では最悪だった美鈴に対し、画の謎を追っていくなかで葉子がだんだん心を開いていく過程などは何だか少しラブコメちっく(美男美女じゃないんですがね)。

まず二人の設定が面白いですよね。ティーンの夢を描いているイラストレーターと過激なハイパーバイオレンス小説を書く作家って(二人とも自身の作品と人柄は一致してないんですが。そこもまた面白いところ)・・・真逆と言うか何とか・・・葉子も最初に美鈴本人にはっきりと小説の批判をしていますしね。初対面の売れっ子作家によう言うな~と感心します。

ホラーだと女性は儚げでか弱い感じに描かれがちですが、このお話の主人公の葉子は負けん気が強く、タフで思ったことははっきりと口にする性格で読んでて好感が持てます。

美鈴は序盤では軟派で下品でどうしようもねぇなって感じなんですが、お話が進むに連れてなかなか男気溢れる部分を発揮していくので「なんか、いいヤツじゃ~ん」と・・・。出だしが悪いぶん、ギャップルール的効果があるのかも知れないですが・・・もしくはジャイアン効果?(^_^;)

こんな具合に、コミカルで日常的なやり取りの場面が続くので読者はある意味油断(?)してしまうのですが、読み進んでいくうちにどんどん雲行きが怪しくなっていき、気がついたら時空を超えて恐怖の異界に。本書はすっかりしっかり立派なホラー小説に変貌します。

ほんと、読んでて「あら?いつの間に?」って感じなんですよ。終盤はもうホラーどっぷりです。「あれ?なんでこんな恐いことになってんだ?」と、読者も登場人物達同様に困惑してしまいます。

 

テレビ番組の紹介を観て読もうと思った大きなきっかけは、実は朱鷺が題材に選ばれているからです。私は新潟県民なので・・・朱鷺はなじみ深くって気になっちゃいますね。小説に朱鷺が出てくるってあんまり無いですし。お話の中の二人も“朱鷺といえば新潟”って思って新潟、佐渡と新幹線・船に乗ってやって来ます。ここら辺は地元民としては知っている場所が出てきて読んでいて楽しかったですが、この小説の本当の舞台は新潟ではなく奥多摩です。それというのも、珠枝が生きていた明治時代には朱鷺はまだ・・・・・・。

読み進めていくと朱鷺という鳥の歴史、意外な事実などを知ることが出来ます。私も読んでいて驚きました。

 

ホラー部分はまぁ大まかに言うとアレです、ヒッチコックの『バード』的恐さなんですが(突っついてくるんだよ・・・鳥が)。それだけではなく、恐さと同時に美しさも感じさせてくれます。珠枝が残した幻想画「朱鷺飛来図」同様、美しく、怪しく、人を惹きつけてやまない魔性のごとき恐怖が描かれているのです。

 

私はこの小説、ラストが凄く好きです。ホラー小説だと後味が悪いものが多いですが(その後味の悪さも含めてホラーなのでしょうが)、このお話は読後、じんわりと何かクルものがあります。ハンパなラストだと感じる人もいるかも知れませんが、私はこの場面で終わってくれて良かったな~と思いました(吊り橋効果最大限なお話とも感じますが・・・)

 

夏の夜長にどうでしょう・・・・・・?

 

 

 

 

ではではまた~

 

神鳥(イビス) (集英社文庫)

神鳥(イビス) (集英社文庫)