夜ふかし閑談

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京極夏彦【小説】『姑獲鳥の夏』(うぶめの夏)あらすじ・解説 夏のオススメ本~③

こんばんは、紫栞です。

夏のオススメ本を紹介するシリーズ

 

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第三弾は京極夏彦さんの『姑獲鳥の夏

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

 

私の大好きな百鬼夜行シリーズの記念すべき第一作目です。京極さんのデビュー作でもあります。色々な意味で衝撃をあたえてくれる一冊ですよ~。

 

あらすじ

「二十箇月もの間子供を身籠もっていることができると思うかい?」

昭和27年夏。小説家である関口巽は古本屋『京極堂』の店主・中禅寺秋彦のもとを訪れそう問いかけた。 東京・雑司ヶ谷の医院での奇怪な噂。娘は妊娠二十箇月たっても出産する気配がなく、その夫は一年半前に密室から失踪したという。妊娠している娘・梗子の姉である久遠寺涼子からの依頼もあり、失踪した夫・牧朗の捜索のため関口は探偵の榎木津礼二郎、雑誌編集者で中禅寺の妹でもある敦子と共に久遠寺医院へと足を踏み入れる。そこで待ち受けていたものは――。

時を同じくして、アパートの一室で女の変死体が発見される。その変死体はかつて久遠寺医院に勤めていた元看護師・澄江であった。澄江は生前、「久遠寺の娘が赤ん坊をさらって殺した」ともらしていたらしいのだが――。

二十箇月の妊娠、密室からの失踪、新生児連続誘拐、変死体・・・久遠寺医院を舞台に繰り広げられる数々の怪奇事件は呪いの仕業なのか? 古本屋の店主・神社の神主・陰陽師の三つの顔を持つ中禅寺秋彦が“憑き物落とし”をするべく、久遠寺医院に乗り込む。

「何、この家に巣くっている悪いモノ—そう、ウブメ退治に来たのです」

 

 

 

 

こうやってあらすじを書いてみるとホラーなんだか、ミステリーなんだか、よくわからないですね・・・。いかにも超自然的な力が出てきそうな舞台設定ではありますが、中禅寺曰く「そんな馬鹿馬鹿しい力は働かないよ」です。

まぁ作者の京極さんもミステリーや推理物と意識して書いたわけじゃないって言ってましたからね。講談社からの出版だったんでミステリーにカテゴリされたみたいな・・・講談社ノベルス版の方だと本の背表紙に「ミステリ・ルネッサンスと書かれています。「ミステリ・ルネッサンス」ってなんぞやって感じですが(^_^;)

う~ん、読んでみれば納得する・・・かな~?

 

百鬼夜行シリーズは基本的にどのお話を単体で読んでも楽しめる作りになってますが、やはり最初はこの『姑獲鳥の夏』を読むべきだと思います。シリーズの雰囲気や形式などこの一冊である程度示されていますからね。

特に関口巽のキャラクターを知る為には『姑獲鳥の夏』は必読です。

お話の語り手の関口巽ですが、序盤では「関口はこのお話でのワトスン的役割なのね」と読者に思わせといて・・・実は全然違うんだなコレが

 

この関口なんですが、鬱病・対人恐怖症・赤面症・多汗症などなどを患っていてなんとも忙しいことなんですが、くわえてどうもブレブレでボヤボヤな性格。人や環境に影響を受けやすく、流されやすい。すぐに妄想にふけったり、幻覚を見たりするような有様で、およそ“事件の正確で客観的な語り手を担うワトスン役”からはほど遠い人物です。

そしてお話が進むに連れて関口は事件の第三者ではなく当事者に・・・。この『姑獲鳥の夏』は実は関口巽が“主”のお話なのです。 事件を追ううち、関口自身がどっぷりと憑き物に憑かれてしまい、中禅寺は見るに見かねて重い腰を上げて憑き物落とししてくれるのさ~。やれやれ。そもそも、語り手が関口じゃなければあっという間に解明出来る真相ですしね・・・。 

 

シリーズ第一作目なので、関口以外のレギュラーキャラクターの個性はまだそこまで強く押し出されてないかな~と思います。(特に榎さんとか)しかし、中禅寺が骨壺に干菓子を入れて食ってるってのは、かなり悪趣味でぶっ飛んでるなとは思います(笑)

私は中禅寺が牧朗の日記読んで「なんて冗漫で、不明確な文章なんだ!」と怒り出すところがヤケにツボりました。なんだか可笑しい(笑)日記だよ?

 

真相部分や事件の解決に“憑き物落とし”を導入するなど、当時のミステリー界に旋風を巻き起こしたのは間違いない作品です。

真相部分がね、賛否両論なのは言うまでも無いですが・・・。私の友達はこれ読んで「こんなん、わかるか~!!」言ってました(^_^;)まぁ無理からぬ事よな・・・。

 

しかーし!お話の最初でちゃんと長い講釈をたれているので、読者に対してアンフェアだって事は無いと思いますよ(たぶん)

メインの真相以外の所もとにかくプロットが巧みで。読んでて唸っちゃいます。

姑獲鳥の夏』は2005年に実相寺昭雄監督で実写映画化されていますが、小説の方が解決編の場面は分かりやすく、感心・感動もひとしおだと思います。わりかし原作に忠実な映画なんですけどね。映像だと長台詞の部分とか頭に入ってきづらいかな。

 

この小説は“夏の日の目眩”みたいな小説ですね~。読んでいると読者は関口と共にブレブレ・ボヤボヤになってしまうのです。美しく、演出力の高い文章で普通の推理小説では味わえないような幻想的感覚をあたえてくれるのが魅力です。

 

 

夏の夜長にどうでしょう・・・?

 

 

 

ではではまた~

 

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

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