夜ふかし閑談

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『秘密ートップ・シークレット1999』(1巻収録)あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。

前回『秘密―トップ・シークレット』のまとめ記事を書きましたが

 

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今回はシリーズ最初のお話『秘密-トップ・シークレット1999』について少し。

 

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あらすじ

2055年アメリカ。第57代アメリカ大統領ジョン・B・リードが休暇中のヒルトン・ヘッドで死去した。数日後、読唇術の専門家ケビン・ルーミスの元に捜査官が協力依頼に訪れる。大統領は暗殺された可能性があり、事件の真相を究明するため試験的に“死んだ人間の脳の画”を見る捜査「MRI捜査」を初の試みとして行うのだが、MRI画像では音声の再現が出来ないので読唇術スペシャリストの協力が必要不可欠だという。

こうして「MRI捜査」に直接関わることになったケビンだったが、その捜査は「重大捜査」の名目で大統領の私生活を丸裸にするものだった。“秘密厳守”のはずの捜査内容も簡単に漏れていく中で捜査は核心へ迫る。そうして暴かれたのは大統領のある『秘密』だった――。

 

 

 

このお話は次の薪さんはじめ「第九」のメンバーが出てくる『秘密―トップ・シークレット2001』(このお話と共に1巻に収録されています)の五年前に起こった事件という設定です。舞台もアメリカだし、この時点では「第九」のだの字も出てきません。まったく日本の「第九」メンバーは関係していない事件ですね。

なので、友達にこの第1巻を貸すと「この話必要なの?何のために最初に入ってるの?」とか、なんとも身も蓋もない言われようをされるんですが(^_^;)まぁ確かに、シリーズ的には別に読み飛ばしても大きな支障は無いお話なんでしょうけど・・・しかし、折角なら読んでよと思います。単体のお話としての面白さは十分にあるのでね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ大統領暗殺事件で「MRI捜査」のような最先端科学を用いた捜査が初めて行われるというのは“如何にもありそうな話”と思えますね。大統領暗殺ぐらいの大事ならどんなに未知数な方法の捜査も行われるかも知れない・・・みたいな。

読唇術の専門家の視点でお話が語られるのも面白いところ。事件捜査や政治部分に対して関係の無い“まっさらな人間”が語り手なので、読者も客観的にお話を読むことが出来るのですね。「音声の再現が出来ない」ってのもリアルだと感じますよね。(ちなみに、「第九」での捜査で見ているモニターの映像には、読心術で読んだ字幕がついている設定) 

 

このお話は怪しすぎるにもほどがある、曰くありげな美青年マシュー・ハーヴェイがミスリード的役割を果たしています。コイツが何か画策したに違いないと見せかけて真相はまったく別の所にある・・・。

このマシュー、本名はロス・マコーレイといって、反体制武装組織のブレインだの刺客だのでFBIに追われる身なんだそうな。事件後、姿をくらましたまま捕まっていません。謎が色々と残る人物なので「今後の展開に関係するのか?」と思ってしまいますが、今のところシリーズ上では特に言及されていませんね。このまま触れずじまいかなぁ~と。もし関係してきたらそれはそれで面白いと思いますが・・・シリーズ10年以上やって何もナシだからなぁ・・・。友達に「マコーレイって薪さんと顔が似てるけど、肉親とかなの?」と驚きの質問をされたことがありますが、たんに『美形は皆似てしまう』ってだけだと思う(笑)

 

“修行僧じみた生活をしていた大統領”という設定も(読んでて、「こんなクリーンな大統領いないベ」とか思いましたが)驚きの真相を際立たせています。こういうお話の作りは凄くミステリーとして上手いなぁ~と感心しますね。

 

読み飛ばしても大きな支障は無いと上記しましたが、『秘密―トップ・シークレット』シリーズでの核となる基本前提やテーマはこの最初の話で大きく示されていると思います。

脳の映像はビデオとは違って個人の思想が反映されるとか。単純な“記録”を見るだけではなく、“感情”をも見てしまう捜査なんだよ~と。

あとはやっぱり『秘密』を巡ってのストーリー展開ですよね。『秘密』を守ること、『秘密』を暴くこと、その結果待っているモノ。

 

このお話ですが、なんともやり切れない結末ですよね。大統領はただ“見てた”だけですよ。なのにこんなことになっちゃって・・・。語り手のケビンが最後にとる選択もせつないと言うか何というか・・・(T_T)

 

何を見ているか、何を考えているか、それは個人の秘密の領域。

しかし、そんな領域も他人に土足で踏み荒らされる時代が来るかも知れない。

読者にそんな危機感を抱かせるお話ですね。

「取りあえず凶悪犯罪起こしたり、事件に巻き込まれたりしないように気を付けよう!」とか思ってしまう(^_^;) 思わずそんな無意味なことを考えてしまうほどに、非常にリアリティのある“怖さ”が描かれていますね。

 

 

そんなわけで、シリーズの導入部分として読むに越したことはないお話ですのでちゃんと読んで~(^o^)と言いたいのでした。

 

 

 

 

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ではではまた~