夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『グラスホッパー』『マリアビートル』殺し屋シリーズまとめ 最新作『AX』を読む前に~

こんばんは、紫栞です。
伊坂幸太郎さんの“殺し屋シリーズ”最新作『AX(アックス)』が発売されましたね。・・・って、発売されてから二ヶ月以上経っているのですが(^^;)最新作の紹介の前におさらいとして“殺し屋シリーズ”の前作グラスホッパー『マリアビートル』の2冊をまとめようかと。

 

“殺し屋シリーズ”とは
殺し屋ばっかり出て来る分類不能のエンターテインメント「殺し屋小説」。色々な殺し方をする「殺し屋」が数人登場し、対決していく様子が描かれます。いうなれば【殺し屋狂想曲】
殺し屋小説なので人が死ぬ場面が沢山出てきますが、読者に悲壮感を感じさせる間をあたえない疾走感溢れる怒濤のストーリー展開とどこか軽快な語り口が持ち味。
グラスホッパー』『マリアビートル』の長編2冊は数人の登場人物が交互に語り手を務める多視点の一人称でお話は構成されています(新刊の『AX』は連作短編で一人の殺し屋の一人称みたいです)。

数人の思惑が巧妙に交わっていく様がとにかくお見事。
殺し屋達には業界での屋号があり、各語り手の文が始まる前にその語り手の名前の判子が押されているのがシリーズで一貫しての本デザインの特徴ですね。
シリーズとはいえお話自体は独立したものなので、続編形式ではないです。各本単独でも十分面白く読める作りではありますが、前作での登場人物がチラッと出てきたり思わぬ繋がりがあったりするので順番に読むのがオススメ。


グラスホッパー

グラスホッパー (角川文庫)

あらすじ
妻を殺した男に復讐するためにその男の父親が経営する非合法な会社《令嬢》に入社した元教師の鈴木。しかし、鈴木の目の前で妻を殺した男は車に轢かれてしまう。どうやら〈押し屋〉と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。結果的に復讐を横取りされてしまった鈴木は《令嬢》の人間に命じられるまま〈押し屋〉の後を追う。そこで見たのは妻と幼い子供のいる温かい家庭だった。その光景に戸惑う鈴木に〈押し屋〉に敵を討とうとする《令嬢》からの電話がかかってくるのだが・・・――。
一方、偶然〈押し屋〉の“殺し”を目撃し過去の仕事のやり残しを精算しようとする自殺専門の殺し屋「鯨」、上司に一矢報いるため手柄を立てようと思い立ったナイフ使いの殺し屋「蟬」も〈押し屋〉を殺すべく居所を探し始める。

 

シリーズ第1作目。

タイトルの『グラスホッパー』はバッタって意味です

「鈴木」「鯨」「蟬」の三人が交互に語り手を務めています。皆の注目の的(笑)でお話のキーマンである〈押し屋〉の名前は「槿」(※『むくげ』ではなく『あさがお』と読みます)。槿は一人称の語りが無く、寡黙で考えが読めないミステリアスな人物として描かれおり、さほど喋ってないくせにお話の中で異様なほどの存在感を放っています。

「蟬」の由来は終始喋りまくってうるさいから。
「鯨」の由来は長身でデカイから。
鯨の“自殺専門”とはどういうことかというと、対象に語りかけて相手が自ら死を選ぶように仕向ける殺し方をするのです。直接手は下さないのですね。超自然的な力が働いているかのような方法で得体が知れず、不気味なところがお話に絶妙なアクセントを与えています。鯨の愛読書がドストエフスキーの『罪と罰』なところもなんとも。また、鯨には過去に殺した人間が見える幻覚症状に悩まされているという一面が。
蟬の上司・岩西に対しての複雑な思いや葛藤なども見所。もちろん鈴木の亡き妻への思いも。

 

非情な殺しの場面ばかりなのに読後感はどこかあたたかい作品ですね。

 

2015年に実写映画化されました↓

 

グラスホッパー スタンダード・エディション [DVD]

グラスホッパー スタンダード・エディション [DVD]

 

 

伊坂さんの別作品『魔王』と『グラスホッパー』を再構築した大須賀めぐみさんの漫画シリーズ『魔王 JUVENILE REMIX』もあります。

 

魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)

魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)

 

 同名のキャラクターが登場したりしているんだそうな。

 

 

マリアビートル

マリアビートル (角川文庫)

あらすじ
元殺し屋でアルコール依存症「木村」は幼い息子に重傷を負わせた狡猾な中学生「王子」に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線〈はやて〉に乗り込む。しかし、相手にしてやられてしまい・・・・・・。
同じ新幹線には取り返した人質と身代金を護送する二人組の殺し屋「蜜柑」檸檬。その身代金強奪を指示されたツキの無い殺し屋「七尾」も乗り合わせていた。
殺し屋ばかりを乗せた新幹線は北を目指して疾走する。
東京から盛岡間、2時間30分の【殺し屋狂想曲】の幕が開く――。

 

 

シリーズ2作目。

タイトルの『マリアビートル』は天道虫を表わしています。

登場人物の一人「七尾」は業界では「天道虫」と呼ばれているのです(ただし、本人はそう呼ばれるのが好きではない)真莉亜という女性から仕事の指示を受けています。七尾の“ツキが無い”部分がお話のキーになっていますね。

 

シリーズ第一弾の『グラスホッパー』より登場人物・語り手が増え、新幹線内での2時間30分という限られた空間・時間の中で登場人物の思惑が前作以上に複雑に絡み合い、スピード感溢れるストーリーが展開されます。
前作より、より一層エンターテインメントに特化した作品だと思います。個人的にはこの『マリアビートル』の方が好み。しかし、『グラスホッパー』の知名度に押されてあまり世間に知られていないような気がしますね・・・(^^;)『マリアビートル』も映画化されないのかな~。2018年2月に舞台化が決定しているみたいですけど。確かに舞台向きのお話だと思いますのでこの決定には凄く納得。


七尾と真莉亜の会話が好きです。檸檬と蜜柑のキャラクターややり取りも好き。


前作を読んでの経験から登場人物の半分ほどは死んでしまうとわかっていて、(悲しくなるので)あまり感情移入しないように気を付けてみても所詮無駄なあがき(笑)殺し屋だけど人間味溢れるキャラクター達に好感を持ってしまいます(殺し屋達に好感を持ってしまうのは前作も同様ですね)。

 

 

『マリアビートル』にはわかりやすいヒール役がいます。狡猾な中学生「王子」です。コイツが、もうね・・・もの凄い腹立つっ!!読んでてホント「早く死んでくれないか」と思う。今まで読んできた数ある小説の中でもトップクラスのムカツク悪役ですね。中学生の王子より殺し屋達の方が善良に思えてきてしまう不思議・・・。


で、この最高に腹の立つ狡猾な中学生・王子がどうなるのかですが・・・これが、最高にスカッとする結末が用意されています。ムカツキながらも最後まで読み続けて良かった~!と思いました(^_^)これぞエンタメ小説!

※ここら辺の詳細はこちらの記事でどうぞ↓ 

www.yofukasikanndann.pink

 

 

お話の要所要所で前作のキャラクターが数人登場します。やはり順番に読むのが一番シリーズを楽しめるかと

 

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

 

 

 

 この2作を読んだら次はシリーズ最新作の『AX(アックス)』をどうぞ~↓

 

 『AX(アックス)』のまとめ記事はこちら↓

 

www.yofukasikanndann.pink

 


ではではまた~