夜ふかし閑談

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松本清張『点と線』 あらすじ・ドラマ・トリック~・・・諸々まとめ

こんばんは、紫栞です。
今更ながら松本清張『点と線』を読んだので少しまとめようかと思います。

点と線 (新潮文庫)

あらすじ
割烹料亭「小雪」の女中二人と「小雪」の常連客で機械工具商会を経営している安田辰郎の三人は、東京駅の13番線ホームから向かいの15番線ホームに同じ「小雪」の女中“お時”が男性と夜行特急列車【あさかぜ】に乗り込む姿を目撃する。
数日後、“お時”とその男性・佐山は香椎の海岸で情死体となって発見された。
博多の刑事・鳥飼は、佐山が持っていた車内食堂の受取証が“御一人様”になっていたことから情死事件に疑問を持ち、一人捜査を開始する。
佐山は現在捜査中の産業建設省汚職事件の関係者だった。汚職事件を追っていた本庁の刑事・三原は佐山の情死事件を調べに福岡署に訪れ、鳥飼と対面。
三原は事件を追ううち、13番線ホームから15番線ホームを見通せるのは、一日のうちでたったの四分しかないという事実を知り、目撃者の安田に疑いを持つが、安田には完璧なアリバイがあった。

 

 


社会派推理小説
『点と線』は昭和33年の作品で、松本清張推理小説としては初の長編連載。『点と線』とほぼ並行して『目の壁』も連載中だったみたいですが。

 

眼の壁 (新潮文庫)

眼の壁 (新潮文庫)

 

 

本格推理小説汚職事件などのリアリティを持ち込んだのが当時は斬新だった(らしい)です。『旅』雑誌に連載で、実在する列車や舞台を作中に登場させているのも当時の読者には読んでいて楽しかったのではないかと。
松本清張横溝正史などを筆頭とする「お化け屋敷」的本格推理小説に批判的だったのだそうな。現実的じゃないと。私は「お化け屋敷」的小説も好きですけどね~。非現実感を楽しむのも一興なのですよね、アレは。まぁ“色々な形の推理小説があってしかるべきだ”って事なのだと思います。
探偵小説界に“社会派”という新たなブームをもたらした有名作ですね。

 

 


映像化作品
『点と線』レベルの超有名作ともなると、読まないうちにトリックや真相を知ってしまっているってな状態が起こりますよね。私もそのうちの一人でして、読む前からお話のだいたいの筋とトリックはテレビなどを通して知っていたのです。

最初に観たのはNHKのドキュメンタリードラマ『点と線を追え!推理・松本清張の頭脳 4分間の空白・トリックの秘密とは?社会派推理小説はこうして生まれた』でした。観たのはかなり幼少の頃だったのでうろ覚えですが(^^;)面白かったと記憶しています。

 

次に2002年制作のアニメーション動画ドラマをBSでたまたま観て、

 

点と線/国鉄黄金期「点と線」のころ [DVD]

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ビートたけし主演のテレビドラマも観ました。

 

 アニメは一風変わった作りで主演二人の声を西田敏行緒形直人がやっていました。お二人とも声に味があって良かった(と、記憶している^^;)。


テレビドラマは一夜・二夜と2時間ずつわかれての放送で、わりかしとシンプルなお話の『点と線』をよくこんなに長い話に膨らまして作ったなとか思いましたね。推理ドラマというより人間ドラマの側面が強いです。

 

アニメもドラマも現在に直したりせずに、小説が書かれた当時の時代設定のままです。あの当時が舞台でないと成立しないお話ですからね・・・。

1958年の映画はさすがに観られてないです。

 

点と線 [DVD]

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以下がっつりとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空白の四分間
『点と線』にはアリバイ崩しの様々なトリックが出てきますが、その中でも魅力的で印象に残るトリックはなんと言っても、この〈空白の四分間〉。
しかし、このトリック、疑問点が多くて発売当初からミステリマニアの間で物議をかましてきたんだそうな。新潮文庫版で解説を書かれている平野謙さんもこのトリックの不備について指摘されています。

私の手持ちの小説、有栖川有栖の「学生アリスシリーズ」の短編集『江神二郎の洞察』に収録されている「四分間では短すぎる」の作中で

 

江神二郎の洞察 (創元推理文庫)

江神二郎の洞察 (創元推理文庫)

 

 

〈空白の四分間〉について「学生アリスシリーズ」の主要人物、信長さん(織田)とモチさん(望月)が議論している部分があるので、この部分を参考に疑問点を簡単に挙げてみると・・・

 

犯人は実際には深い仲ではない“お時”と佐山をさも情死行に旅だったように見せ掛けるため、〈空白の四分間〉を利用して二人が連れ立って列車に乗り込むのを女中二人に目撃させるのがトリックなのですが――

 

●問題の四分間に女中たちをホームにさりげなく誘導させるのが容易ではない


●四分間に“お時”と佐山を15番線ホームに立たせるのも難しい。どうやって二人をコントロールしたのか、作者はまったく書いていない


●女中たちは四時には店に出なければならない、とかいう設定になっているが、午後三時半から「晩飯」は早すぎる!(笑)


●四分間に“お時”、佐山、自分、女中が所定の位置に立たない限り、トリックは成立しない。そんな困難に挑まずとも、14番線ホームから女中に見送ってもらったほうが良かったのではないか?


●そもそも、偽装工作自体に意味が無い。二人の死体が発見された時点で地元の刑事達は即座に情死という見方をしたのだから。無用の工作をしたがために、かえって疑われる結果を招いたのではないか


などなど。いちいちごもっともなんですけれども(^_^;)

 

この「四分間では短すぎる」の作中でも言っていますが、このトリックは駄目でもともと。上手くいかなくとも、それで殺人計画が破綻するわけではないので、「やってみて、上手くいったらいいなぁ~」という、病床で時刻表を見ながら空想に浸るのが趣味だった犯人の、言わば“空想の延長のお遊び”だったのではないかと思います。上手くいって刑事に疑われてしまったのは結果論だと。


※「四分間では短すぎる」の作中では議論の最後にまた違った案を提示しています。そういう見方もあるか~って感じで面白いですよ。信長さんとモチさんのやり取りもコミカルで笑えます。もちろん他に収録されている短編も面白いです。オススメ(^_^)

 

江神二郎の洞察 (創元推理文庫)

江神二郎の洞察 (創元推理文庫)

 

 

※『点と線』文春文庫版だと解説を有栖川さんがしているみたいです。読みたい・・・

 

 

 

 

最後に
社会派推理小説ブームの先駆けと言われる作品ですが、汚職事件などのリアリティを書いている一方で、このようなファンタジックな雰囲気漂うトリックを用いているのが作品の魅力になっているのかな~と思います。
アリバイ崩しに重点を置かれて書いてある作品ですが、最後の三原が鳥飼に宛てて書いた手紙の中で明かされる真相は犯人の微妙な心理や状況など、想像すると空恐ろしいようなやるせないような気分にさせ、人間ドラマとしても面白く読めました。

『点と線』で登場する刑事、鳥飼と三原が再びアリバイ崩しに挑む続編『時間の習俗』という小説があるみたいですね。

 

時間の習俗 (新潮文庫)

時間の習俗 (新潮文庫)

 

 

こちらの作品も是非読んでみたいと思います。

 

 

ではではまた~