夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

有栖川有栖『幻想運河』あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。
有栖川有栖さんの『幻想運河』を読んだので、感想を少し。

幻想運河 (実業之日本社文庫)

 

あらすじ
大阪――
警邏中の巡査は一人の不審な男に声をかける。男は三十歳前後、真ん中で分けた長めの髪を風になぶられながら、手中の新聞紙の包みをひどく思いつめた表情で凝視していた。大川、淀川、平野川、安治川・・・大阪を走る運河に、バラバラ死体の各部位を投棄して回っていたのだ。
巡査は強い調子で男に言う。
「一緒にきてもらおか」
男は真顔で訊き返した。
「どこへ?」

アムステルダム――
シナリオライター志望の恭司はアムステルダムの不思議な魅力に引き留められて、ずるずると不法滞在を続けていた。芸術家の正木兄弟、音楽家の水島、ビジネスマンの久能らと共にソフトドラッグを愛好する会に所属しながら甘美な時を過ごす毎日。
しかし或る日、運河から水島のバラバラ死体が発見される。
恭司には事件時に仲間とトリップしていたというアリバイがあるのだが・・・・・・。

 

 


水の都としての大阪とアムステルダムの共通項を軸にした作品。この共通項、若干無理やり感があるってな気が(^_^;)有栖川さんは大阪が大好きである!(笑)


この作品は最初実業之日本社から単行本で出され

 

幻想運河

幻想運河

 

 

講談社ノベルス

 

幻想運河 (講談社ノベルス)

幻想運河 (講談社ノベルス)

 

 

講談社文庫

 

幻想運河 (講談社文庫)

幻想運河 (講談社文庫)

 

 

そして今年2017年に里帰り的に実業之日本社文庫

 

幻想運河 (実業之日本社文庫)

幻想運河 (実業之日本社文庫)

 

 私は実業之日本社文庫版で読みましたが、実は「実業之日本社」からの本読むのって今回が初でした。

 

 

 

異色作
比較的シリーズもので有名な有栖川さんですが

 

www.yofukasikanndann.pink

 

 

www.yofukasikanndann.pink

 

この『幻想運河』はノンシリーズで、どこで称されているのかは定かではないが(笑)、有栖川さんの“裏ミステリベスト1”とか言われていた(らしい)。


確かにこの『幻想運河』が有栖川作品の中では“異色作”であることは間違いないです。


お話の主な舞台はアムステルダムなのですが、アムステルダム―オランダではソフトドラッグが違法ではなく、【コーヒーショップ】という名でソフトドラッグを供給する店が四百軒ほど存在するのだそうな。

なので、お話の中で主人公の恭司も正木兄弟らの「盆栽クラブ」に入会してソフトドラッグを楽しむ訳なんですが、ここら辺のドラッグで得られる幻覚作用の描写に力が入っているというか(文章のレイアウトとかも大分凝っていたり)怪奇小説じみた作中作(この作中作が良い味出してます)が間に挿入されていたりするので、お話は全体的に夢の中で漂っているような浮遊感があります。ボヤボヤっとしているというか。夢か現か。タイトルの通り『幻想運河』って感じですね。

 

 

本格ミステリ
“異色作”とはいえ、読んでいると「やっぱり有栖川さんだなぁ」との思いは端々でちらつきます。
お話にドラッグを絡ませると、どうしても暴力的で下世話な箇所、エログロやバイオレンスに走りがちですが、この『幻想運河』での幻覚シーンは確かに“イカれて”はいるのですが、どこか上品で綺麗です。登場人物達も表面的には皆常識的で健全に描かれています。エログロも無いですね。
水島のバラバラ死体が発見されるまでが結構長いのですが、そこからは「あ、いつもと毛色は違うけど、この本もやはり“本格ミステリ”なのね」と。
話の内容が内容なので、きっちりとしたトリックとか期待して無かったのですが、終盤に用意された謎解きは思いのほか本格ガチガチなトリックでちょっと驚きました。私はこのトリック、なんか好きです(笑)この舞台で、この筋でのものでないと出来ないトリックですね。やはり本格ミステリ書いている人の小説だなぁと。真面目ですね、やっぱり。

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動機・真相
よく、『有栖川作品は動機が難解だ』とか『そんなことで殺すか』とか言われたりしますが・・・。私は比較的、どれも納得・理解出来る動機だと思うんですけどね~(^^;)「そういうこともあると思うよ」みたいなね。

『朱色の研究』とかがそうですかね。↓

 

朱色の研究 (角川文庫)

朱色の研究 (角川文庫)

 

 

この『幻想運河』は動機や真相がぼかしてあってハッキリとした答えが提示されないまま終わってしまいます。犯人(と、思われる人物)はこれから起こることを幻視する能力を持っている・すくなくとも、自身はそう信じているのですが、どんな幻視を視て犯行に至ったのかは語らぬまま自殺してしまいます。そして終盤で“ある人物”もまた自殺してしまい真相は永久に闇の中に・・・。
自殺する前に“ある人物”が語る犯行動機の憶測はわかりやすく直ぐに頷けるものではないですが、まぁ・・・「そういうこともあると思うよ」ですね。個人的には納得出来ます。
こういう様々な箇所を宙ぶらりんにしたまま終わるのが、この『幻想運河』という作品には合っているのだと思います。夢か現か。

 

※このお話、少し『モロッコ水晶の謎』に通じているところもあるかも↓

 

モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)

モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)

 

 

 

最後
この作品は冒頭の大阪での導入部分とお話の大半をしめるアムステルダム、そして最後にまた大阪に戻って冒頭部分に繋がるようになっています。
最初の大阪パートとアムステルダムパートがどう繋がるのか最後までわからなくって疑問だらけだったのですが、読み切った後「ああ、そういう事だったのか」とストンと落ち着きました。

読後感はなんとも形容しがたい気持ちにさせるものですが、もの凄く綺麗なラストだとも感じます。


幻想的な気分に浸りたい方は是非。

 

幻想運河 (実業之日本社文庫)

幻想運河 (実業之日本社文庫)

 

 

 

幻想運河 (講談社文庫)

幻想運河 (講談社文庫)

 

 


ではではまた~

 

www.yofukasikanndann.pink