夜ふかし閑談

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『仮面同窓会』 原作小説のネタバレ 読んだことを後悔する?衝撃のラスト!

こんばんは、紫栞です。
今回は雫井脩介さんの『仮面同窓会』をご紹介。

仮面同窓会 (幻冬舎文庫)

2019年6月1日から放送予定の連続ドラマの原作本です。

 

あらすじ
新谷洋輔はシステムキッチンメーカーの営業マン。営業成績のことで課長に小言を言われる毎日で二十六歳にして将来に希望も持てず、今の自分に何の期待もできない現状に鬱屈した思いを抱いていた。
最近になって偶然に再会し、ストーカーからピンチを救ったことで親しくなった高校時代の憧れの同級生・竹中美郷に誘われ、気が進まないながらも高校の同窓会に参加することに。
洋輔は高校時代、幼馴染みの皆川希一・大見和康・片岡八真人らと四人で連み、素行不良の季一に引きずられる形でいつも生活指導担当の体育教師・樫村貞茂に教育とは名ばかりの体罰を受けていた。同窓会に参加したことで季一らと久しぶりに再会。さらに樫村とも遭遇するが、自身が過去に痛めつけた生徒の顔も忘れ、意気揚々と老後生活を過ごしている様子の樫村の姿を目の当たりにし、洋輔は苛立ちを覚える。そこに季一・和康・八真人の三人から樫村への仕返しの計画を持ち掛けられた。拉致して懲らしめてスッキリしようという、イタズラ半分の計画だった。
最初は尻込みした洋輔だったが、今の自分の卑屈さは高校時代の樫村から受けた仕打ちのせいだと日頃から思い至りがちだった洋輔は「これを切っ掛けにして過去を精算し、新たな人生を切り開こう」と計画に参加することを決意する。四人はこの計画を「仮面同窓会」と称し、入念に計画の準備を進めていった。
そして決行当日、計画通りに樫村を拉致して痛めつけ、倉庫に置き去りにして立ち去る四人。なんとか無事終わったと思った洋輔だったが、翌日、樫村は何故か別の場所で溺死体となって発見された。
俺達の中の誰かが現場に戻り、樫村を殺したのか?
不信感が募り、互いに疑心暗鬼に陥っていく四人。明らかになっていく“秘密”に翻弄された末、待っていたのは驚愕の真相だった――。

 

 

 

 

 

 

疑心暗鬼サスペンス
私は雫井脩介さんの小説を読むのは検察側の罪人に続き二作目です。

 

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検察側の罪人』が非常に面白く読めたので、また別作品が映像化されると知って読んだ次第です。
雫井さんは色々なジャンルを書かれているとは知っていたのですが、今作『仮面同窓会』は『検察側の罪人』とはまったく毛色が違うもので「こんなジャンルも書かれるのか」と意外でした。
『仮面同窓会』は一つの事件によって友人であるはずの者たちが互いに不信感を募らせて“友情”のメッキが剥がれていく疑心暗鬼サスペンスでミステリ。読後感的には“イヤミス”の部類というかそれに近い印象ですね。
信じていた世界は壊れ、誰も、何も信じられなくなった挙げ句の衝撃の結末と、作中にあるいくつもの仕掛けで読者を色々と唖然とさせるミステリ小説となっています。

 

仮面同窓会 (幻冬舎文庫)

仮面同窓会 (幻冬舎文庫)

 

 

 

 

仮面同窓会 (幻冬舎文庫)

仮面同窓会 (幻冬舎文庫)

 

 

 

 

 

 

ドラマ
ドラマは東海テレビ・フジテレビ系での製作。「オトナの土ドラ」枠で6月1日より放送予定です。「オトナの土ドラ」枠といえば、前に同じく雫井作品の『火の粉』をやった枠ですね。

 

火の粉 DVD-BOX

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火の粉 (幻冬舎文庫)

火の粉 (幻冬舎文庫)

 

 

このブログでも紹介した『絶対正義』をやった枠でもありますし、

 

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イヤミス”をやりがちな枠の印象があるような。

 

キャスト
新谷洋輔溝端淳平
竹中美郷瀧本美織
皆川希一野岳
大見和康木村了
片岡八真人廣瀬智紀
樫村貞茂渡辺裕之
美郷のストーカー長井大
上原加奈子雛形あきこ

 

年齢など細かな設定は色々変更されていますが、一番大きく違う点は雛形あきこさんが演じられる「上原加奈子」ですね。原作には登場しないドラマオリジナルキャラクターで「金遣いが荒い上に男性関係も自由奔放な美人教師」らしいです。いかにも波乱がありそうですね。
公式サイトの相関図によると、樫村貞茂(渡辺裕之)と不倫関係で皆川希一(佐野岳)と男女の仲らしい。やっぱり波乱がありそう(^^;)この設定ごとドラマオリジナルですね。小説では樫村も希一も今現在の男女関係のいざこざとかは別に描写されていません。樫村なんてすぐ殺されちゃいますからね。

原作だと洋輔の三人称視点がお話の大半を占めていて、他登場人物たちの事情とかは最後の最後にやっと解るといった構成なのですが、公式サイトの相関図を見る限りドラマでは各登場人物の掘り下げがされるんじゃないかと予想出来ます。原作ではサラッとしか描かれていない大見和康(木村了)も設定が追加されそうですね。

あと、原作では方言で殆どの人物がやり取りしているのですが、ドラマではどうなるのかも少し気になりますね。

 

 

 

 

 

以下、ガッツリとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叙述ミステリ
叙述ミステリというのは「叙述ものだ」と言うこと自体がネタバレになるもんですが、

 

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今作『仮面同窓会』は叙述トリックが仕掛けられたお話になっています。


主人公の洋輔なんですが、序盤でいきなり姿の見えない「兄」と会話し始めるんですよね。あまりにも唐突で「何事だ」って感じになるんですが、読み進めていくと洋輔は小学校六年の時に兄を一人事故で亡くしているという事実が出て来て「ははぁ。洋輔は多重人格で“兄”の人格と会話しているのかぁ」と、思わせるように書かれています。
で、物語りの構成は洋輔の三人称視点でのパートの合間に“兄”と洋輔が会話するパート、さらに「俺」の一人称視点のパートが差し込まれるという形で進んでいきます。「俺」の一人称視点は洋輔の“兄”、つまり洋輔の別人格での視点のように描かれています。イコールで洋輔が別人格に切り替わっている間に樫村を殺害したのではないかという疑念を読者は持ち始める・・・。

 

が、もちろんこれがそのまんま真相な訳はないです。物語りの早い段階でこんな妖しい書き方をするからには、必ずそこに仕掛けがあってしかるべきでして。

 

実は実在していないかのように書かれていた“兄”は実在します。事故で死んだのは二番目の兄で、作中会話していたのは一番目の兄の方。なんと、洋輔の部屋の押し入れで長年引き籠もり生活をしていて、押し入れの中からマイクを使って洋輔と会話をしていたというオチ。


作中で兄が二人いるというのは事実として書かれていますので、もう一人の兄の方かというのは読んでいて結構思い至る人も多いんじゃないかと思います。私も察しがついていましたし。まさか押し入れ生活しながらマイクを通して会話しているとは思いませんでしたが。

この兄、正体が明かされる前は挑発的な発言が主でミステリアスな雰囲気を醸し出していたのですが、いざふすまが開けられて姿が露わになると、一転してハズレた発言ばかりするギャグテイストなキャラクターとなります。終盤は「兄えもん」とか呼ばれちゃってるし。しかし、作中は地獄そのものみたいな状況下なので、困惑するというか不気味・・・ブラックジョークのつもりなのか何なのか・・・著者が何を意図しているのか分からない(^_^;)とりあえず変です。

兄は洋輔の部屋から一歩も出てはいなかった。では事件を起したと思しき「俺」の一人称パートの「俺」とは誰なのか?叙述トリックが一つ明らかにされた後、さらなる謎が噴出します。

 

 

 

 

犯人
「俺」が誰なのか。それは美郷のストーカーである“謎の男”というのが正解。このストーカー男、何故か度々洋輔の前に現われて馴れ馴れしく話しかけてきていた妖しすぎる男。当然、犯人です。謎の妖しすぎる男が犯人なんですよ?そのまんまですよね。妖しすぎて逆に疑っていなかったのに犯人。虚を突かれるとはまさにこのこと。


で、このストーカー男、もちろん美郷と共謀しています。
首謀者は美郷で、洋輔に接触してきたのは洋輔と周辺の友人達、季一・和康・八真人の様子を探るためでした。目的は高校時代の友人・日比野真理に暴行を働いて自殺に追いやった人物の殺害。
ストーカー男は中学の時に父親と浮気相手を串刺しにしたということで「串刺しジョージ」と渾名付きで噂されていた張本人で“ヤバい奴”。真理の実の兄・日比野譲司。美郷の復讐計画に手を貸します。


美郷は洋輔とデートしている最中もわざわざ相手の気を悪くさせることを言ったり、ストーカー男と連絡を取り合っていることを洋輔に咎められたら逆ギレしたり・・・挙動がかなり不可解でした。もう美郷も洋輔の別人格の一人なんじゃないかとか思うくらいです。洋輔が疑われている状態を楽しんでいるような言動ばっかでしたからね。美郷が「ふーん」と言う度に読者としては神経に障って、もう謎すぎる女だったのですが、これもそのまま犯人。

 

スリードと見せかけてミスリードじゃない。ミステリ好きでひねって考える人ほど驚く感じですね。

 


酷すぎる
終盤で明かされる各人物たちの事情はどれもおぞましくって酷すぎるものです。胸が悪くなること請け合いですね。


事件が起きたことで疑心暗鬼になり、友情に亀裂が走るといった流れのようでいて、もはやそんないいものでもない。洋輔・季一・和康・八真人の四人の間には元々“友情”自体が無いのです

 

季一や和康は洋輔に「俺達三人にはお前とはない“鉄の結束”がある」とぬかします。
“鉄の結束”とは、六年前に日比野真理を三人で暴行したこと。さらに、その六年前に八真人が洋輔の二番目の兄・雅之を殺害した瞬間を季一が目撃したことで、季一は八真人の支配者となっていたこと。
犯罪行為によって自分たちは通常よりも強い結束が出来ているのだと。樫村を拉致する「仮面同窓会」計画も改めて自分たちの結束を確認するためで、今回は洋輔も巻き込んでやろうと誘い、計画したと季一は言います。


しかし、一緒に犯罪行為をすることで生まれるのは“友情”なんかではない。そこに生まれるのは我が身可愛さの自己保身と互いに弱みを握り合い、脅迫し合う損得勘定と打算。


それを“鉄の結束”などと酔いしれながら発言するのだから読んでいると唯々気持ち悪いです。真理への暴行もそうですが、八真人が洋輔の二番目の兄・雅之を殺害した理由も女性のスカートの中身の盗撮を知られたからで、殺される直前、雅之が八真人にさせようとしたことも猥雑だし、樫村は真理から季一らに暴行されたことを相談したら「俺にもやらせろ」だし。

 

もう色々とホント気持ち悪いしおぞましいし虫酸が走ります。女性としては特に(-_-)

 


主人公の洋輔は季一らのこれらの行為は知らなくって、まさにただ巻き込まれただけの人物なんですが、過去を暴力で精算しようとしたのがもう間違いだったのだということでしょう。八真人もそうですが。

 

つまずかずに生きていくのは不可能と言っていい。しかし、一つつまずくと、洋輔のような弱い人間は、つまらない傷を心に負い、なかなか癒えてくれない。前を歩こうとしても、それを引きずったままになる。歩くのを放棄するなら、真理のようにこの世から去るか、兄のように押し入れの住人となるしかない。
傷を治すため、つまずいたものに無理にけりをつけようとすると、往々にして大怪我をする。そうしていつの間にか、満身創痍になってしまう。

 

友人だと思っていた三人は知らないところでおぞましい行為をし、親友だと思っていた八真人は兄を殺害した罪悪感から友好的に接していただけだった。
実質、洋輔は三人と連んではいても“友人”ではなかった。三人にとっては何も知らずに“友人ぶっている”道化のようなものだったのだと知らされます。終盤、洋輔の信じていた世界は粉々になります。


あまりに憐れに思える洋輔ですが、しかし、洋輔にしてもあまり同情心とかは湧いてこないんですよね。友人、特に八真人は親友だと言っている割には随分と簡単に疑って一人で不信感募らせて見当違いな推論を他人に披露して・・・特に八真人に対して「親友」という言葉を何度も使うのが空々しくってイライラしました。相手のこと端から信じようともしてないくせに。流されまくっていて何もちゃんと見ようとしていない人物だと感じます。

 

真理のための復讐だと言っている美郷もしかり。終盤化けの皮が剥がれてからの美郷はどう見ても殺人を楽しんでいるようにしか見えなくって友情などそっちのけなんじゃないかという気がする。(ドラマ、原作通りにやるんだとしたら美郷役の瀧本美織さんの演技に必見です。豹変してかなり怖いことになる)譲司もしかり。

 

つまり、この物語りに“友情”は無い。共感できない、とち狂っていて気持ち悪い人物しか登場しない小説ですね。
タイトルに「仮面」とついているだけに、人間の裏の顔を描くのが主題の物語りなんだと思います。

 

 

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衝撃の!ラスト
私が読んだ幻冬舎文庫版には裏の説明書きに「衝撃のラストに二度騙される」とあります。
確かに衝撃ではあります。酷すぎて。
最後の数ページは「このまま終わったらどうしようもないぞ」ってな展開で「まだ何かあるんでしょ?」と身構えながら読んでいたのですが・・・・・・・何もないまま終わってしまいました。「えぇえ!ここで終わり!?」という、そういう意味で衝撃のラスト。

 

内容も黒すぎるし、叙述による仕掛けも無理矢理感があるので、人によっては読んだ事自体を後悔する小説かなと思いますが、先が気になってドンドン読ませる力というのがある小説ではありますので、イヤミス系統が好きな方は是非。

 

仮面同窓会 (幻冬舎文庫)

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仮面同窓会 (幻冬舎文庫)

仮面同窓会 (幻冬舎文庫)

 

 

ではではまた~

 

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