夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

舞台『魍魎の匣』観てきたっ!感想

こんばんは、紫栞です。
記事タイトルの通り、舞台『魍魎の匣観てきました~!ので、自分用覚え書きも兼ねて感想をば。

 

2019年6月21日~6月30日まで東京・天王州 銀河劇場、2019年7月4日~7月7日まで神戸・AiiA2.5Theter kobeにて公演。

原作:京極夏彦魍魎の匣
脚本:畑雅文
演出:松崎史也

 

キャスト
中禅寺秋彦橘ケンチ
木場修太郎内田朝陽
関口巽高橋良輔
榎木津礼二郎-北園涼

鳥口守彦-高橋健介
中禅寺敦子-加藤里保菜
青木文蔵-舟木政秀
増岡則之-津田幹土德
里村絋市-中原敏宏
福本郁雄-小林賢祐

楠本頼子-平川結月
楠本君枝-坂井香奈美
柚木加菜子-井上音生
柚木陽子-紫吹淳
雨宮典匡-田口涼
須崎太郎-倉沢学
寺田兵衛-花王おさむ
寺田サト-新原ミナミ
久保竣交-吉川純広
美馬坂幸四郎-西岡德馬


※「福本郁雄」というのは原作の福本巡査のことですが、小説では下の名前が明記されていない人物だったのを、著者の京極さんが福本役の小林賢祐さんに「福本には下の名前がないので、京極先生につけてもらえるように頑張ります!」と言われて、その日の夜に「福本郁雄にします」と先生からお電話があったんだそうな。凄い話ですね(^^)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作ファン
ゴリゴリの京極夏彦ファンで特に百鬼夜行シリーズ】

 

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はこの世で一番好きな小説シリーズである私。

原作が好きすぎるせいかもしれませんが、今まで京極小説の映像化作品には「原作の内容をちゃんと表現してくれている」と感じられる作品にはお目にかかれずじまいで、こちらの記事でも書いた通り↓

 

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特に『魍魎の匣』は実写映画が最悪だったし、アニメも結構不満が残る出来だったしで、もう「原作が良すぎるから無理なんだ」と、自分を慰めて諦めの境地になっていました。
なので、今回の舞台化の情報を知ったときも最初は観に行こうかどうしようか地方在住者なのもあって悩んだんですよね。しかし、舞台は円盤化されない限り二度と観られないことが殆どだし、とりあえずは観ておかないと後々後悔するかも・・・と失礼ながら最初からだいぶハードルを下げた状態で観に行ったのですが、コレが予想を裏切る素晴らしい舞台でしたので、思いつくままに感想を少し(^o^)。

 

 

 

 

二時間
まず、ストーリーは原作通りで公演時間は二時間一〇分でした。


1000ページ越えでえらく複雑に事柄が絡み合った
魍魎の匣』を!
ストーリーを変えずに!
理解出来るように二時間で纏め上げる!!

もうそれだけで賞賛に値します。『魍魎の匣』の場合は。


観終わって何に一番驚いたって、二時間で原作の話を出来てしまったという点でした。「二時間で出来ちゃうんだ」っていう。


序盤は場面が目まぐるしく切り替わるし、セリフの応酬も早いので「原作知らない人ついてこられるのかな?」と若干思いましたが、舞台特有のライトやスクリーンなどを使った分りやすい演出と独自のテンポで途中からは飲まれてしまって気にする余裕がなくなりました。私はもちろん、一緒に観に行った先輩も原作内容は予め把握しているので、原作未読の人が実際どう思ったかはちょっと判らないですけどね。


時間の都合上、薔薇十字探偵社の和寅は登場シーンごとカット、中禅寺の細君・千鶴子さんは話しかけられる描写があるものの役者は使われず、原作だとエピローグ部分で登場する伊佐間は登場せずにセリフや役割は敦子に割り振られているという風に人物の省略・変更や、脅迫状の詳細がなかったりなどの事件内容の簡略化、細部・伏線が抜かれていたり、中禅寺のウンチク量が削減されていたりしますが(それでも一杯喋っていましたけどね)、二時間で分りやすくする纏めるために削るべきところを削り、必須で重要な部分を最大限に表現しているといった感じですね。


長大作なぶん、原作のコミカルな部分というのは映像化の際には無くされがちなんですが、今作ではちゃんとクスリと出来る部分もあって、そこら辺も原作雰囲気が良く表現されていたと思います。

 

 

 

 

登場人物達
浅学なもので舞台にも役者さんにも詳しくなくって、この舞台でもお名前を存じ上げていたのは内田朝陽さん、紫吹淳さん、西岡德馬さんのお三方ぐらいでした。

正直、このお三方のキャスティングも最初知ったときは「なんで?」と違和感あったんですが、いざ舞台を観てみると流石役者さんというかなんというか、ちゃんと声や身のこなしでキャラクターの雰囲気を表現されていて、すんなりと受け入れることが出来ました。

 

主演で中禅寺秋彦役の橘ケンチさんも知らなかったんですよね。「EXILEのお人?何故?」とか思ったのですが、最初に後悔された舞台のビジュアル写真がもの凄く中禅寺ぃぃぃだったので、何か期待が高まった(笑)。小畑健さんの絵のような

 

爆裂薔薇十字探偵 (講談社 MOOK)

爆裂薔薇十字探偵 (講談社 MOOK)

 

 

女性ファンが思い浮かべる絵姿そのままって感じ。

写真だけでなく、実際に動いているのを見てもそのままでしたね。和服が似合っていて良かった(重要)。御筥様退治の時のマジカルステップがキレキレで「流石EXILE・・・」ってなった(笑)。

中禅寺は原作ではもっと腰が重い人物なんですが、この舞台では尺の関係上初っ端から活動的な中禅寺ですね。声が見た目から想像するよりも高くって最初「ん?」となりましたが、後半で展開が切迫してくるとドスが利いてくるので気にならなくなる。

 

声といえば、加菜子頼子雨宮の役者さんたちの声がそれぞれ声優みたいというか、良い意味で現実味のない声で各場面の印象が強くなっていましたね。観ながら舞台役者さんはやっぱり一味違うなぁとか思っていたのですが、後でパンフレット読んで加菜子役と頼子役の役者さんは今回が初舞台だと知って驚きました。

 

今までの映像化作品だと事件内容に引っぱられるようにシリアスが全面に押し出されてしまってコミカルさが抜けてしまっていたので、榎木津の奇人っぷりや鳥口のひょうきんさが鳴りを潜めてしまっていたのですが、今作ではちゃんと出ていて長年の不満が解消されました。
もうホント、榎木津とかは「私はいつになったら陽気な榎木津が観られるのだろう・・・」とか長年思っていたのですが、今回の舞台で確りとすこぶる元気で、足の長い(重要)榎さんがようやく観られたな、と。「口外法度なんだよ」「こんにちは。弟子です」に大満足。

欲を言えば、原作にはもっと奇抜なセリフや行動があるので(ダットサンもどきをぶっ飛ばしたりとかね)それらもやって欲しかったところですが、まあ尺の関係上仕方ない(^^;)


鳥口は原作そのままの印象で凄く良かったですね。いろんな「うへえ」が聴けてこちらも満足。

 

関口は原作より社交的っぽそうでちょっと抜けてる人って印象に変わっていましたかね。映画で椎名桔平さんが演じた関口に近い感じ。

 

魍魎の匣

魍魎の匣

 

 

まぁあまり鬱々されても進行の妨げになりますしね。敦子青木も原作より若干陽気だったような。敦っちゃんが溌剌としていて可愛かった(^o^)。

 

 

 

 

 

 

 


小説世界
今回の舞台は、観ているとまるで小説世界の匣の中に入ってしまったかのような錯覚をさせてくれる舞台でした。
映画版やアニメ版では久保の狂気とかお話にとても重要なはずなのに蔑ろ気味というか、ちゃんと表現されていないと感じていたのですが、この舞台ではこれでもか!と“狂い”が表現されていました。終盤の匣に入ってからの久保の視点もそうですが、血で汚れて原稿が読めないのとかが演劇ならではの演出で魅してくれていましたね。


同じように、【百鬼夜行シリーズ】の最大の見せ場である中禅寺の憑物落としの場面で圧巻の言葉の応酬をそのままやってくれていて「そうそう、コレだよ」と嬉しくなりました。内容の省略はあるものの、ほぼ原作のセリフそのままでやってくれていたと思います。

ファンなので、もう聴いていて次のセリフが分かる状態なんですが、“頭に浮かぶセリフを、次の瞬間には役者さんが体現してくれる”というのがこんなに快感とは。アニメ版は憑物落としがやたらサラッとしていたのが一番の不満だったんですよね~。映画版はもう言わずもがな・・・。

 

しかし、やっぱり原作のセリフは素晴らしいなぁと性懲りも無く小説に惚れ直しました。

私が観に行ったのは公演二日目の昼だったのですが、小説の文庫本が既に売り切れていましたね。

 

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

 

 

皆私と同じで、舞台を観たら小説を読み返したい衝動に駆られたのだと思われ。
観客は驚異の女性率でしたね。ほぼほぼ女性でした。やはり【百鬼夜行シリーズ】は女性人気が高いのかと実感。役者さんのファンもいるんでしょうけど。年齢層はだいぶ広くって、「様々な世代に愛されてる~」と嬉しくなりました。

 

 

ポスターやパンフレットだと中禅寺以外の登場人物達が皆現代風の恰好になっていますが、公演ではちゃんと昭和当時の恰好です。憑物落としの着物もポスターだと紫になっていて姑獲鳥の夏の映画衣装を思い出して不安だったのですが、

 

姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション [DVD]

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舞台では確りと黒でした。やっぱりあの陰陽師衣装は黒じゃないとダメだと思うのよ・・・(^_^;)。

 

 

 


リスペクト
舞台化に関し、著者の京極さんからのコメントで「原作ファンが怒る場合、それは原作と変えたから怒るのではなく、作品がよろしくなかったから。作品が面白ければ、原作とどれだけ違っていようと文句はいわれない」と、いったことをおっしゃっていました。


これは確かにその通りで、作品としての完成度が高くて面白いものになっていれば、“原作”が“原案”になっていようと「コレはコレで良い」となるのは至極真っ当なことです。

このお言葉に一観客、一読者として付け加えさせて頂くなら、原作ファンが求めるものは制作者の原作へのリスペクトが感じられるかどうかだと思います。
原作に真摯に向き合ってくれたかどうかが大切で、とりあえずの“やっつけ仕事”みたいな作品にされると、ファンは大好きな原作を侮辱された気分になって怒るというのが大半かと。事実私がそうですし。

 

そういった点において、今回の舞台は原作へのリスペクトが大いに感じられるものになっていました。ゴリゴリの原作ファンである私を満足させてくれて、心から感謝です。シリーズ化希望!円盤化も。

 

7月7日にはニコニコ生放送で独占最速放送もされるそうなので、気になった方は是非是非。

 


ではではまた~

 

魍魎の匣(1)【電子百鬼夜行】

魍魎の匣(1)【電子百鬼夜行】

 

 

 

 

 

 

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