夜ふかし閑談

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『秘密season0』8巻〈悪戯〉感想・あらすじ ”ゲーム編”始動!

こんばんは、紫栞です。
今回は清水玲子さんの『秘密season0』8巻〈悪戯〉をご紹介。

秘密 season 0 8 (花とゆめCOMICSスペシャル)

あらすじ
2068年4月。小学校で給食の残りのパンに1個だけ辛子入りを混ぜて順に食べていくゲームをしていた女児のうちの一人・小岩瞳子が、その中にたまたま入っていたピーナッツパンによってアナフィラキシーショックをおこし死亡した。パンを識別出来る「袋」から出されて通常のパンとの区別がつかなかったために起こった、不幸な偶然が重なった事故。小さな子供達の、たわいのない“ただのゲーム”――。
小岩瞳子の父親・小岩国明は葬儀に参列したクラスメイトの会話を耳にし、娘は事故ではなくクラスメイトの三人の女児によって故意に殺害されたのではないかという疑いを持つようになり、「第九」に「MRIで娘の脳を調べてくれ」と駆け込んでくる。しかし、それから間もなく小岩国明は女児に刃物で襲いかかり、かけつけた警官に射殺されてしまった。
突然の娘の死に気が触れてしまった父親の奇行の末の出来事。
世間がそんな風に事件をとらえるなか、薪はこの一連の出来事に一昨年夏に大量殺人事件を起したカルト教団ストーンヘンジ」教祖・児玉良臣の10歳になる息子・須田光の関与を疑うが――。

 

 

 

 

 

 

 

やはりキタ
宝塚女優のような表紙絵。2019年7月5日に発売されました『秘密season0』8巻です。前シリーズ【秘密-トップ・シークレット】

 

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終了後に始まったこのSeason0ももう8冊目。7巻が発売されたのが2018年7月5日なので、ちょうど一年ぶりの刊行ですね。

 

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連載元の「メロディ」は偶数月刊行の雑誌なので1冊分が溜まるまでにどうしても一年ぐらいかかってしまうんですよね。年一の楽しみとして毎年慎重に(?)読んでいます。


基本的には1冊完結型でどの巻から読んでも楽しめる近未来警察ミステリであるこのシリーズですが、今作は5巻・6巻〈増殖〉で登場した須田光が再登場でお話の主軸になっておりますので、5巻・6巻を読んでから今作を読むことをオススメ。

 

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光君・・・やはり再登場しましたね。〈増殖〉の最後がかなり後味の悪い、恐い終わり方でしたのでね、須田光少年のその後の動向はまた話に関係してくるんだろうとは思っていましたが。
〈増殖〉で描かれたカルト教団の事件からおよそ一年が経過し、カルト教の総本山だった「つばき園」の元園児30人の子供達が入院治療・生活観察を経てそれぞれ保育園や学校に通い出しています。
この元園児達はいまだ須田光の洗脳下にあるのではないかと思われる危険因子達。世に放たれ、〈増殖〉の最後で薪さんたちが危惧していた出来事が―――?
てな訳で、悪戯(ゲーム)編始動の第8巻です。

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


コドモ
今回の事件タイトルは悪戯と書いて“ゲーム”と読ませているもの。子供の悪戯による犯罪が描かれています。
子供が尊いという意識は大人が当たり前のように持っている共通意識ですが、それと同じように、子供時代を経験した大人達は子供が残酷で恐ろしいということを知っている。人生経験を積んでいないがために時に軽はずみに、罪悪感もなく、平然と残酷なことをやってのける子供の恐ろしさを。
通常、子供の悪戯というのは「子供だから」という言葉で済ませられ、割り切られるものですが、死人が出たとなるとそれでは済まされない・・・ようでいて、悪戯をした当人・“子供”は表面的にはお咎めを受けないのが現在の日本での実情。結局、法治国家では幼児には罪を問えないので、周りの大人が責められることになる。管理体制が悪い、対応が悪いなどなど・・・。いじめ問題が起こると学校側に批判が集中するのがまさにって感じですが。本来は危害を加えた当事者が批判されるべきところが、“子供だから”公には責められない訳ですね。

 

法治国家で一番強いのは子供の犯罪者だ 彼等はいついかなる時も保護される」
「そして結局現場にいもしなかった「大人」が責任をとらされる」

 

今回の事件を起した三人の女児の狙いは担任教師を辞めさせること。そして、人を殺すことへの好奇心。死亡した小岩瞳子はそれのダシにされただけでした。しかも、当人達は反省や後悔を微塵もしておらず、実験が上手くいったという具合にクスクス笑っている・・・・。
あまりに酷い。
しかし、 “子供だから”罪に問うことも糾弾することも許されない。こんな状況では、娘を失った父親も気が狂おうというものです。

岡部さんはこの女児三人の犯罪行為にかなりのショックを受けていましたね。『秘密-トップ・シークレット』5巻「特別編」での

 

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子供とのやり取りからも分かるとおり、岡部さんは子供に対して希望を持っている側面が強いんですね。

 

この悪戯(ゲーム)を指南したのもまた10歳の子供である須田光。薪さんたちは警察にとって一番厄介な“子供の犯罪者”と真っ向から対峙することとなります。

 

 

 

 


須田光
序盤は稀代の犯罪者・怪物として人間味なく描かれている光君ですが、話が展開してくるにつれ青木への執着が垣間見えるようになってきます。


「え?なんで青木に?」って感じですが、どうやら児玉良臣を撃って助けたのが青木だから、らしい。少なくとも光君は青木に自分は生かされたと思っているようです。
〈増殖〉では結局、児玉を撃ったのが青木か岡部さんか判らずじまいに終わっていたんですがねぇ・・・青木が撃ったということで良いんでしょうか?(6巻でも波多野はそう決めつけていたけど)でも光君がそう思い込んでいるだけかもしれないし・・・・・・う~ん、まだハッキリとしないですね(^^;)。

 

光君は「つばき園」の元園児・〈増殖〉の最後で弟を死なせた仲根みどりを使って青木の姪の舞ちゃんに接触させ、青木が里親申請するように誘導。里子として青木宅に入り込もうと画策し、青木宅の里子となるために現在の親代わりである神父を殺害までします。

 

助けられたことからの執着ですが、心臓の疾患が見付かり医者から自分が成人するのが難しいと知らされたこと、そして、今巻での終盤で青木に“希望あふるる言葉”かけられたことが決定的というか、拍車がかかったというか、余裕が無くなって暴走し始めているように見受けられます。
ここら辺の平静じゃ無い状態や過去に苦しんでいる様子などから「稀代の怪物」なのか、父親から被害を受けた「ただの10歳の子供」なのか、判別がつかなくなってきますね。まあ、どっちもなんじゃないかとは思いますが。


薪さんも青木に言われて先入観で光君を見ていたことに気がつき、青木の前でならごく当たり前に10歳の子供の「顔」を見せるかもしれないと”見張り”も兼ねて光君を里子として迎えるように言い渡します。
薪さんが青木に素直に非を認めるのはかなり珍しい。物にあたる癖はそのまんまで、スマホ壊しかけて電話の向こうの岡部さんを慌てさせた後ではありましたが(^_^;)。赤面している薪さんが可愛かったですね(^^)。
“「名前」が汚れる”と、福岡までわざわざ忠告するためだけに飛んでくるところが愛の深さを感じる。福岡に現われたときは青木に夢だと思われていましたからね。気持ちは分かる・・・薪さん現実味がない容姿してるから・・・。

 

〈悪戯〉編は今巻では終わりません。次巻に持ち越しで、今巻では光君が里子として青木宅に来たところで終わっています。

 

 

 

 

次巻はどうなる
今巻では不穏なシーンが作中挿入されています。

写真を握り締めて泣いている薪さんと、どこかのトイレに監禁されて助けを求めている舞ちゃんと思われる女の子。


不穏・・・この感じは前シリーズ『秘密トップ・シークレット』9巻の三好先生が殺されると見せかけてお姉さんが殺されたあの感じを思い出させますね。

 

新装版 秘密 THE TOP SECRET 9 (花とゆめCOMICS)

新装版 秘密 THE TOP SECRET 9 (花とゆめCOMICS)

 

 

誰かが死ぬ気配・・・順当に考えれば光君の青木への執着が、青木が子煩悩爆発させて可愛がっている舞ちゃんに牙をむくのかというところですが。秘密シリーズのことだからこれは引っかけで、本来は別の人物が本当の危機にさらされるのかもしれない・・・・・・・と、なると・・・・

・・・・・・・

・・・・

不吉、そして不安(-_-)。


「つばき園」跡地からは新たに切断された子供の頭蓋骨が発見されたりして、まだまだ「つばき園」には“秘密”がありそうですし、色々と気になりすぎます。


「こんな気になるところで終わり・・・次巻読めるの一年後なんでしょだって・・・」と、今巻を読み終わった後、絶望に苛まれました。

今巻は部下の波多野と山城の登場シーンが少なかったんですが、次巻はもうちょっと登場してくれるんじゃないかと思います。個人的な希望ですけど。〈増殖〉の事件で山城はかなりしんどい目に遭ったので、心身共にちゃんと回復しているのか気になるところ。
あと、今巻で初登場した臨床心理士スクールカウンセラー神原医師も次巻では話しに深く関わってきそうですね。いかにも“出来る女風”の先生ですが・・・こちらも気になるところ。


そんな訳で、続きが気になりすぎてどうしてくれるっ!てな8巻でした。


1冊完結型で慣れていると、いざお話が次巻持ち越しになったときの読者的ダメージが大きいですね。〈原罪〉や〈増殖〉は2冊使っての事件でしたけど、どちらも2冊同時刊行でしたからねぇ・・・。

 

 

 

 


今作は今まで以上に長いお話になるのかもしれません。タジクとかも絡んでくるのかもかも。


なにはともあれ、出来るだけ早い刊行を願って次巻待ち続けたいと思います。

※出ました!詳しくはこちら↓

 

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ではではまた~

 

 

 

 

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