夜ふかし閑談

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小説「ルパンの娘」続編!『ルパンの帰還』ネタバレ・感想 華と数馬のその後~

こんばんは、紫栞です。
今回は横関大さんの『ルパンの娘』の続編『ルパンの帰還』をご紹介。

ルパンの帰還 (講談社文庫)

 

あらすじ
北条美雲は23歳の新人刑事。実家は京都の老舗探偵事務所であり、祖父は昭和のホームズと謳われ、父は平成のホームズと称されて、どちらも数々の難事件を解決した名探偵として名をはせている。
幼い頃から“探偵の英才教育”を受け続けて育ってきた美雲は、難事件を求めて警視庁警察官採用試験を受け合格。採用試験での満点合格、警察学校での成績トップ、加えて“名探偵”という家柄の良さ。諸々が考慮され、異例中の異例として初っ端から警視庁捜査一課へと配属されることに。
23歳と若く優秀。しかも飛び抜けて美人とあって、一課で注目を集める美雲。そんな彼女に教育係としてつくことになったのは、先祖代々警察一家のサラブレッド・桜庭数馬。
ある日、バディを組んだ二人が法務省のエリート官僚殺害事件を捜査している最中、保育園のバスがジャックされる事件が発生。そのバスには数馬の妻である華と、娘の杏が乗っていて――。
探偵一家と警察一家と泥棒一家。それぞれのサラブレッドが不可解なバスジャック事件と対峙する。果たしてその結末は?

 

 

 

 

 

 

続編
こちらは只今放送中の連続ドラマ『ルパンの娘』の続編でシリーズ第二弾。ドラマ化をうけてか2019年7月12日に刊行された文庫書き下ろし作品です。


前作がこれ以上ないくらいの大団円で綺麗に終わっていたので、

 

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作品としては単発ものの雰囲気が漂っていましたが、ドラマ化で話題を集めた為なのかなんなのか、この度新たなキャラクターを交えてシリーズ化させる運びになったようです。既にシリーズ第3弾が2019年9月に刊行予定となっているんだそうな。

 

『ルパンの帰還』は前作『ルパンの娘』での騒動からおよそ5年経過した設定。華と数馬は籍を入れていないものの、もうじき4歳になる一人娘・杏と共に家族三人でマンション住まいをしています。数馬は警視庁捜査一課でいまだに刑事を続けているのですが、そこに名探偵一家の娘・北条美雲が所属されてきて・・・――てな展開。


泥棒一家の娘と警察一家の息子だけでもお腹いっぱいなのに、コレに加えて今度は名探偵一家の娘。もうどんな末裔が現われても驚かないなって感じですね(^^;)。まぁ「ルパンときたらホームズも」というノリでしょうか。
書き下ろしのためか、急いで刊行されたせいか、読んでいると結構な誤字脱字が目立ちました。ドラマで話題になっているタイミングでシリーズ化だ!という気概が(?)伝わってきます。

 

 


北条美雲
今作から登場の北条美雲は老舗探偵事務所で名家の娘。

探偵というのは一般的には金品を受け取って人様の秘密を調査したり失せ物を探し出したりするのが主な仕事で、密かに、地味に遂行されるべき職業ですが、この北条家はミステリ界隈でお馴染みの名探偵“より”で作中では京都の格式ある名家的扱いを受けています。
実家からお目付役として「猿彦」たる手練れの老人が使わされていており、美雲のことを「お嬢」と呼んでいたりするので、探偵というよりは忍者というか密偵の一家という印象。情報屋として猿彦に捜査一課が追っている事件の調査をさせたりするので「それ、ちょっとズルイんじゃないか?」と思ったりしますが、“使える物は全て使う”というのを美雲は信条にしているからいいらしい。
名探偵の英才教育として幼少から海外のミステリ小説読破を義務付けられていたというのが可笑しい。その教育で出来上がるのは名探偵じゃなくって唯のミステリオタクでしょ(^^;)。
と、いう訳で色々とチグハグでヘンテコですが、この設定を開き直って楽しみましょうって趣向が前作から引き継がれています。


加えて美雲は23歳で超美人、優秀だけどドジッ子というキャラクターとしての特性が色々と詰まった人物で、数馬と華の両者を喰う勢い・・・と、いうか、もはや主役。9月に予定されているシリーズ第3弾のタイトルは『ホームズの娘』ですからね。

 

前作では数馬は庁内で“名探偵”と呼ばれている優秀な捜査官として描かれていましたが、今作では美雲に完全にお株を取られていますね。華も特に目立った活躍はしないので、美雲の印象がとにかく強い。個人的に前作から引き続き華と数馬には魅力をあまり感じられないので、そのせいもあるかもですが。華が相変わらず家族に対して煮え切らない態度をとっていてイライラします・・・。

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家族達
前作で泥棒一家と警察一家、どう考えても相容れないながらも両家の合意のもと華と数馬は結ばれて家族となった訳ですが、5年の月日が経ち、最初のうちは良好だった両家の関係は娘の杏が大きくなるに従って寒々としたものに。それというのも、杏の教育上、泥棒一家の三雲家を近づけさせるべきではないのではと桜庭家が思い始めたから。
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・・・・・・
え?そんな普通のこと言っちゃう?

 

なんというか、かなり拍子抜けしてしまいました。
いや、泥棒は犯罪で、犯罪者一家を子供の生活に関わらせるべきではないのは当たり前で常識的な考えですが、そんな当たり前のこと、二人が一緒になる前から分かりすぎるほど分かっていたでしょうに。こんな普通の常識を口にするなら反対し続ければよかったじゃない。それでも警察か?前作で出された結論は何だったのよ。

と、なんだかモヤモヤ。


“普通”を無視して覚悟の上で規格外の道を選んだ桜庭家だったと思っていたんですが。やはりいざ現実が押し寄せると・・・ってことでしょうか。
華と数馬が恋仲になるように画策したのは互いの祖父の巌と和一でしたが、今作ではまったく援護してくれません。巌はしょうがないといった態度だし(原因作っといて無責任なのでは)、和一にいたっては登場しませんし。

美雲が登場するせいか、前作では個性的な魅力を発揮してくれていた三雲家と桜庭家の面々の登場シーン自体が少ないですね。華の両親である尊と悦子は主役以上に活躍してくれますが、他の家族達は申し訳程度の登場で個性を発揮させてはくれていません。香さんとか、絶賛婚活中なのは分かりましたが(前作での先輩とはダメだったらしい)、とりあえず出しときましという申し訳程度のものでしたね。個人的に香さん好きなので、少しでも登場させてくれて嬉しかったですが。次作ではもっと登場させて欲しいですね。

 

 

 

 

帰還
今作は華と娘の杏バスジャック事件に巻き込まれるというのが主なストーリーですが、このバスジャック事件はとある人物を釈放させるのが隠された真の目的でした。
その“とある人物”というのは岩永礼子。殺人罪で30年間服役していた女性。しかし、これは買った戸籍の名前で本名は三雲玲。尊の三つ上の姉で、華にとっては叔母にあたる人物。

華は叔母の存在自体をまったく知らされていませんでしたが、玲は「三雲家の長い歴史の中でも最高の才能」と証された天才犯罪者。しかし、違法ドラッグの密売など三雲家の流儀に反することをし始め、殺人を犯したことが決定的となって三雲家から勘当。逃走中に警察官を撃って捕まり、30年間牢屋に入っていましたが、この度、刑務官を洗脳してバスジャック事件を起させて法務大臣を影で脅し、仮釈放の権利を得て出て来た途端に姿をくらまします。


天才犯罪者が帰ってきた。と、いうことで『ルパンの帰還』まぁルパンみたいに義賊の面は無さそうな叔母さんですが。

 

はい、非常に後付けくさい設定ですね(^^;)。稀代の犯罪者のわりには30年おとなしくムショに入っていたりだとか違和感があるのですが。シリーズ化させる為の追加設定でしょうからまぁしょうがない。

 

今作ではこの叔母である玲が行方不明なまま終わっており、バスジャック事件に姪である華を巻き込んだ目的は明かされずじまいになっています。尊や悦子、巌達は玲の存在を警戒してしばらく潜ることに。

 

 


新たな・・・?
叔母である三雲玲がなにをしようとしているのか気になるのは勿論ですが、それ以上に気になるのが今作のラストで華の兄・渉と対面した美雲が一目見ただけで渉こそが自分の“運命の相手”だと強く確信してしまうことです。美雲はかねてより運命の相手を見れば自身の名探偵の気質によって絶対に解るはずだと確信していて(なんだそりゃ)、その確信が渉を見た瞬間まあ“キタ”と。一目惚れなのか?これは?よくわかりませんが(^^;)。
そして次作、シリーズ第3弾の題名は『ホームズの娘』。また新たに名探偵一家の娘と泥棒一家の息子の「禁断の愛」が展開される!?


・・・のかどうかは定かではありませんが、かなり愉快なことになりそうですね(^o^)。

 

今作は大きな物語りの序章といった感じで、話的にも中途半端なので主要人物達がさほど活躍していませんが、次作では泥棒と警察、そして名探偵が各々見せ場を披露してくれるんじゃないかと思います。
色々と次作までのお楽しみということで。

 

ルパンの帰還 (講談社文庫)

ルパンの帰還 (講談社文庫)

 

 

 

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ではではまた~