夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『ノイズ』映画 ネタバレ感想 絵日記と銃声の謎とは?

こんばんは、紫栞です。

今回は、映画『ノイズ』を観たので感想を少し。

 

ノイズ 通常版 DVD

 

こちら、2022年に劇場公開された日本映画。

2018年~2020年まで「グランドジャンプ」で連載された筒井哲也さんによる漫画作品『ノイズ noise』が原作。

 

 

映画化される漫画作品となると長期連載ものが多いですが(人気作だと連載期間が長くなるのは当然ですが、そのぶん、映画化となると編集・構成力が問われることとなる)、この原作漫画は手に取りやすいボリュームで全3巻。

 

AmazonPrimeの見放題対象作品になっていたので、観てみました。

 

 

公開当初にTVCM見て気になっていたのですよね。↓

 


www.youtube.com

 

私は原作漫画ほぼ未読です。映画公開当初に何話か無料になっていたのを読んだだけですね。

 

 

 

あらすじは、

愛知県のとある島。過疎化が進んでいたこの島では、泉圭太(藤原竜也)が栽培に成功した黒イチジクで島起こしをしようと活気に溢れていた。

そんな矢先、島に不審な男が現われる。家の敷地内に侵入し、怪しげな言動をする男に詰め寄った圭太は、突き飛ばした拍子に男を殺害してしまった。

島起こしの要である圭太が殺人を犯したとなれば、島の再興が頓挫してしまう。その場に居合わせた幼馴染みの猟師・田辺純(松山ケンイチ)と、島の駐在・守屋真一郎(神木隆之介)にそう説得された圭太は、三人で協力して事件を隠蔽することを決意するが――・・・。

 

と、いったもの。

 

藤原竜也さんと松山ケンイチさんという組み合わせといったらデスノート

 

 

映画のPRもお二方の15年ぶりの再共演を全面に出してのものでした。

とはいえ、関係性も役柄もまったく違うので、この映画を観ながら頭の中でかつての『デスノート』がちらつくなんてことは全然ないです。『デスノート』での松山ケンイチさんは漫画に寄せた印象的なメイクをしていたので見た目が違いますしね・・・。もちろん、お二人の演技に依るところが大きいのもあるでしょうが。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

やり切れてない

何もない孤立した島に来たヨソ者の男。死体を埋めてしまえば簡単に事件を隠蔽出来るだろうと算段していた幼馴染み三人ですが、ヨソ者の男の正体は元受刑者で、保護司を殺害して島をうろついているところだった。

消息不明になった二人を追って県警が島に来てしまったことで死体の処理が思ったように進められず、右往左往しているうちに事態は悪化していってしまうと。

 

村、町、島など、小さな共同体の中で起こる連鎖殺人や恐慌状態を描くパニック・サスペンスで、ミステリ的仕掛けもあるものかと思って観たのですが・・・どうも、私が期待していたものとは違いましたね。

 

全体的に、ストーリーが弱いといいますか。連鎖殺人もそこまで連鎖しないですし、島全体でパニックや暴動が起きる訳でもない。県警の刑事さん(永瀬正敏)が一人で興奮して怒鳴り散らしているだけで、ハラハラドキドキもしない。

最後の仕掛け・裏切り者に関しても、途中で何度も匂わせる描写があるし、他に候補者もいないので驚きはない。

 

そもそもの発端となる事件が、噛みつかれて突き飛ばしたら打ち所が悪くって死んじゃったという、殺人というよりほぼ事故と呼べるようなもので、「バレたらお終いだ」という緊迫感がさほどないんですよね。

その後に起こった出来事も、外野の二人が勝手にヤリ合ったって感じだし。バレちゃっても別に・・・って気がしてしまう。むしろ、正当防衛だったとさっさと白状してしまえばいいのに~って。

 

圭太が捕まってもそこまで長期間刑務所に入ることにはならないだろうし、イチジク栽培も別の人に引き継いでで大丈夫でしょうよ。現に、終盤のシーンでは妻の加奈(黒木華)が特に問題も無くイチジク栽培続けているみたいだったし。

 

もっと島全体でとんでもない、酷いことになる物語でどんでん返しがあるのだろうと思っていたので、

※こんな感じの↓

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肩透かしでしたね。

CMから受ける印象とは大分違う映画でした。

 

パニックものとしても、サスペンスとしても、ミステリとしても、“やり切れていない感”ですね。終わり方もスッキリしないし、疑問が残る。

 

 

 

 

 

 

 

 

絵日記と銃声

幼馴染みである純の画策により、圭太は逮捕されることとなりますが、捕まった後で圭太が言う「気づいていたのに見て見ぬふりをしていた」は分るんですけど、「信じてやってくれ」って罪をかぶっているのは納得出来ない。今まで苦しめてきたからおわびってこと?でも、陥れられて尚そんなことしてあげるのはなぁ・・・。

 

映画の最初に娘のえりなちゃんが書いた絵日記の文章が読み上げられ、終盤では文章と共に絵も出て来るのですが、この絵が何やら意味深。ひまわりと圭太達家族三人に加えて純も描かれている絵で、加奈が圭太に見せながら「覚えてる?」と聞くのですが・・・。これは、単純に幸せだった日常が一変してしまったことを哀しんでいるのか、それとも別に何かあるのか・・・。

 

ちょっと意図が解りにくいし、最初と最後に出して物語をまとめるのに、この絵日記はあまり相応しくないような気がする。唐突なんですよね。子供はこの映画では空気状態ですから。

純視点の何かを最初と最後で挿入しての方が良かったのではないかと思います。

 

 

出来が良く、自分が欲しいものすべてを持っている圭太に幼少から劣等感を抱いていた純。

予期せぬ殺人が起こり、この事態を利用して圭太を陥れることに成功しますが、圭太を排除したところで、圭太が持っていたものが自分のものになる訳ではないと突き付けられる。

残るのは真一郎を自殺に追い込んでしまった後悔と、親友を裏切った罪悪感だけ。

 

 

最後の銃声ですが、絵日記と同様に様々な考察がされているようですね。加奈とえりなを撃ったのだろうとか、自害したのだろうとか。

 

私は単に、あんな事があった後も前と同じ日常に戻って狩猟しているのを見せることで、悲愴感や焦燥感を示す演出なのだと思っただけだったのですが、状況としては自害したととる方が自然なのかも。真一郎も拳銃自殺しているし、墓参り後にそのまま・・・ってのは、如何にも“それっぽい”。

個人的に、加奈とえりなを殺害したなんてことはないと思います。と、いうか、思いたいですね。

 

 

 

 

演技の力

ストーリーは映画にするには弱いと感じてしまいますが、終盤の“わかりにくさ”を抜かせば、不穏さ漂う演出は悪くありません。

純の部屋のストーカーのような大量写真はいただけなかったですが。あれは本当に不要な演出だったと思う。

タイトルの「ノイズ」を町長(余貴美子)に言わせるのも何か無理矢理感あり。

 

 

この映画、なんといっても俳優さんたちが皆素晴らしいです。

藤原竜也さんと松山ケンイチさんはもちろんとして、思い詰めてしまう駐在・真一郎役の神木隆之介さん、リアルすぎる不快感と嫌悪感漂う受刑者・睦雄役の渡辺大さん、圭太の妻・加奈役の黒木華さんも素晴らしい。主要人物以外にも脇役で実力のある豪華なキャスティングがされていて、無茶な場面にも説得力を与えてくれています。

 

と、いいますか、役者さんの演技によって見応えのある映画に“ギリギリ”なれているのではないかと。

役者の力が無かったら相当酷い出来になっていたと思いますね。演技の重要さを改めて感じさせてくれる映画でした。

 

 

諸々含め、気になった方は是非。

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

『ゲームの名は誘拐』ネタバレ・解説 原作小説と映画の違い

こんばんは、紫栞です。

今回は、東野圭吾さんのゲームの名は誘拐をご紹介。

 

ゲームの名は誘拐 (光文社文庫)

 

あらすじ

腕利きの広告プランナーである佐久間駿介。金を稼ぎ、適当に女遊びをして順風満帆な日々を過していた彼だったが、ある日、手掛けてきた一大プロジェクトをクライアントの副社長・葛城勝俊の鶴の一声によって潰され、プロジェクトのリーダーからも外されてしまう。

屈辱感に満たされて酒に酔った佐久間は、出来心から直接会って問い質してやろうと葛城の屋敷へと出向く。葛城邸を前にして逡巡していると、若い女が屋敷から塀を跳び越えて抜け出す場面に遭遇した。

女は葛城勝俊の娘・樹理で、血の繋がりがない母や異母姉妹との折り合いが悪くて家出してきたのだという。

とりあえず樹理をなだめる佐久間だったが、翌日、会社を訪れた葛城と直接対面し、「私はゲームには些か自信がある」という言葉を聞いて葛城にゲームでの勝負を挑もうと決意する。

佐久間は樹理と結託して「誘拐ゲーム」を仕掛けるが――。

 

 

 

 

 

 

 

狂言誘拐

ゲームの名は誘拐』は、2002年に刊行された長編小説。2003年に藤木直人さんと仲間由紀恵さん出演で『g@me』(※ゲームと読む)というタイトルで映画化されていますので、

 

 

そちらの方で知っている人が多いですかね。とはいえ、映画も20年以上前なので覚えている人はあまりいないかもですが。しかし、2002年に刊行して2003年って・・・メチャはやな映像化ですね。東野圭吾だと日常茶飯事かもしれないですけど。

 

今度は2024年6月にWOWOWで連続ドラマ化されるとのことで、

 

www.wowow.co.jp

 

 

改めて原作小説を読んで、映画も観てみました。

 

 

タイトルや上記のあらすじからお分かりかと思いますが、今作は狂言誘拐もののミステリ。

連載時は『青春のデスマスク』というタイトルだったようですが、改題されて『ゲームの名は誘拐』になったようです。中身を読んだ後なら『青春のデスマスク』というタイトルが何を意図してつけられたものか分りますが、このタイトルだと内容を誤解する人が殆どでしょうから改題されたのは納得ですね。『ゲームの名は誘拐』というタイトルですと狂言誘拐ものなのだとすぐに分る。

 

映画だと『g@me』と改題されていて、これまた内容が分りにくいタイトルになっているのですけども。今度のWOWOWドラマでは『ゲームの名は誘拐』ってタイトルのままやってくれるようです。

 

狂言誘拐ものですと犯行手段に重きを置かれるミステリが多いですが、従来の狂言誘拐ものの面白さも踏まえつつ、東野圭吾作品らしい展開で驚かせてくれるミステリとなっています。

物語は一貫して佐久間の視点で描かれているので、犯罪小説としても愉しめるかと。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

気持ちが悪い

 

偶然樹理の家出に遭遇した事を利用し、佐久間は携帯電話やインターネット掲示板などを駆使して身代金三億円の奪取に成功。

樹理と金を分け合い、最後に樹理が誘拐犯に解放されたのを装って葛城邸に帰ることでこの狂言誘拐はリスク無く終了するはずでしたが、翌日になっても誘拐事件が報じられず、樹理が家に帰らずじまいであるらしいことを知って佐久間はにわかに不安になる。

数日経ってやっと誘拐事件が報じられますが、そこで佐久間は驚愕することに。テレビに映った葛城樹理の顔写真は、佐久間の前で樹理だと名乗っていた女とは別人だったのです。そしてさらに数日後には、葛城樹理が遺体で発見されたと報じられた・・・。

 

佐久間に樹理だと名乗っていた女の正体は、異母姉妹で樹理の妹である千春。

つまらない口論の末に勢いで姉の樹理を殺害してしまった千春は、動転して後先考えず館から抜け出した。そこに佐久間が接触してきて狂言誘拐を提案してきたので、千春はこっそりと父親の葛城勝俊に相談。葛城はこの事態を利用して娘が加害者であることを隠蔽し、あわよくば佐久間に罪をなすりつけようと画策した、と。

 

 

なんとも東野圭吾作品らしいどんでん返し展開ですが、序盤で「こいつ、妹の千春の方なのだろうな」と察してしまう人は多いだろうと思います。東野圭吾作品作品を読み慣れている人はもちろんですが、この手の犯人による一視点語りのミステリですと共犯者の素性を疑うのは定石ですからね。

 

ま、千春の方だとして、何故このようなまどろっこしいことをするのか、相手の目的が定かでないので気になってドンドン読み進めてしまうのですけども。

 

 

私の読み終わっての率直な感想は「気持ち悪い話だな」です。

 

男女で狂言誘拐計画ってことで、お約束的に犯行途中に二人は肉体関係を持ってしまうのですが、実は千春はその際に佐久間の精液と陰毛を採取。これを使って樹理の事件を強姦殺人に偽装する。

 

これのなにが気持ち悪いって、娘が男と肉体関係を持つことで採取してきたこれらを使って、娘の遺体に偽装を施し、ありもしない強姦を“態々”でっち上げて世間に晒す、葛城勝俊が気持ち悪い。

 

直接指示された訳ではないが、そうして欲しいのだろうなと父親が思っているのを察して、千春が自分の意思で佐久間と関係を持って採取したとのことですが、こんなものをやり取りする親子って気持ち悪い。

そもそも、自分を恨んでいる男と娘が二人きりで寝泊まりするのを許容するのも父親の感覚としておかしい。千春はまだ高校生ですよ?いつなにされるか分ったもんじゃないってのに。実際、ヤっちまっているし。

 

男の犯行だと印象づけたいって狙いなのでしょうが、強姦されたことにする必要なんてまったくないし。むしろ、好奇の目にさらされることになってマイナスだと思うし。

 

実の娘にこんなことやらせて、こんなものを受け取って、それを使って実の娘の遺体にこんな工作して。娘は強姦されたんですと世間に嘘のアピールをして。

 

 

父親として、本当に気持ちが悪い。理解しがたいし、虫酸が走る。

 

 

個人的に、真相のここの部分に大いに引っかかってしまって、物語やミステリの仕掛け云々は脇に追いやられて「気持ち悪い」に全部持って行かれてしまいました。

 

殺されて、家族は誰も悲しんでくれず、死後に父親の手でこんな屈辱的なことされて、樹理がひたすらに不憫です。

 

 

はて、ではこのまま佐久間は誘拐と強姦と殺人の罪を着せられてしまうのか――?

なのですが、狂言誘拐中、千春が佐久間の部屋で料理を作って運んでいる写真を切り札に、葛城と対峙して駆け引きする場面でこの物語は終わっています。

 

男女の狂言誘拐物語ではなく、佐久間と葛城とのゲームによる勝負として物語を締めている訳ですね。

 

 

 

 

映画 原作との違い

上記したように、この物語の主要人物たちは悪人ばかりです。作者の東野圭吾さんが「良い人が出てこない物語を作りたかった」らしく、このような仕上がりになっているようです。東野圭吾作品だと前に当ブログで紹介した『ダイイング・アイ』とかもそのようなコンセプトで描かれていましたかね。

 

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2003年の映画『g@me』では、エンタメとして観客が感情移入出来るようにと人物像が変更されています。

 

主要の三人とも、完全に悪人になりきれない人間味溢れる人物像になっていて、私が原作で嫌悪した強姦云々の偽装工作も丸々カット。大賛成ですよ、このカットは。

 

殺害された樹理は薬物中毒でいつも家族が手を焼かされる存在だったことになっており、ラリって刃物を手にした樹理が千春に襲いかかってきて、もみ合っていたら誤って刺してしまったという、正当防衛的なものとなっていて、千春に同情できるものとなっています。

樹理が薬物中毒だったことを隠したいがために葛城が佐久間を利用する計画を画策したと、原作とは別に理由付けもされている。

確かに、原作を読んでいても「こんな面倒くさいことする必要ある・・・?」と少し疑問ですからねぇ。しかし、警察に樹理の遺体を調べられれば薬物中毒だったことはバレてしまうんじゃ・・・?と、これはこれで疑問ですが。

 

三分の二まではほぼ原作通りのストーリーですが、そこから先が映画による完全オリジナル展開で、原作よりさらに二転三転のどんでん返しをしています。

ツッコミどころが多いし、ちょっとやり過ぎ感もありますが、原作を先に読んでいた人でも楽しめますし、原作よりも分りやすく葛城に一矢報いることが出来ていてスカッとする。

 

原作より恋愛要素が強くなっていて、ラストシーンも佐久間と千春の二人。なんだかんだ、佐久間と葛城とのシーンで締めている原作のラストは釈然としなさがやはりありますので、映画のラストの方が良いと思う人もいるかと。これはこれで取って付けた感ありますが・・・。

 

 

当時のスタイリッシュさ(?)を意識しての仕上がりだからか、今観ると演出や台詞回しなど色々とダサい。タイトルの『g@me』からして時代を感じますが(当時も子供心に「なんで@なんだよ」って困惑しましたけどね)、終盤の電話シーンの合成とか謎演出過ぎて笑ってしまう。一周回って斬新な面白さがありますよ。

 

藤木直人さんと仲間由紀恵さんの二人が美男美女で画は文句なく美しいです。特にこの当時の仲間さんが凄く綺麗でそれだけでも観る価値あり。

流石に、原作の高校生設定から大学生設定に変更されていますが。でも大学生設定も違和感ありますけどね・・・。

 

 

このように、映画は原作からはかなり変更されています。

 

小説の文庫版には佐久間役を演じた藤木直人さんによる文章が収録されていまして、藤木さんも最初に台本をもらった時、原作とかけ離れた内容に「こんなふうに変わってしまっていいんだろうか」と悩まれたようですが、記者会見で東野さんとお会いした際に「どうぞ気兼ねせずに思いっ切り演じて下さい」と言葉をかけられて気が楽になったとのこと。

東野圭吾さんは作品を発表した時点で自分の手からは離れるので、映像化は制作の方々にお任せするというスタンスなんですよね。

原作ありきの映像化は昨今何かと話題になる事柄ですが、作家さんによって意見は様々です。大事なのは制作側の姿勢、原作へのリスペクトだと個人的には思いますが。

 

 

今度のドラマは東野圭吾作品を何度も映像化しているWOWOWですし、

 

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この映画ほど大胆な変更はないのではと思うのですが、二時間もあれば十分なボリュームの原作を全4話の連続ドラマでやるようですので、設定やストーリーの細部を膨らませたりはするでしょうね。

20年前と携帯電話事情が激変しているので、身代金受け渡し方法も変更しないとダメだろうなぁ。

 

 

小説、映画、ドラマ。それぞれに面白さを見出してストーリーや時代の違いを楽しめる作品ですので、気になった方は是非。

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

『ミギとダリ』アニメ 感想・紹介 サスペンスミステリとシュールギャグの成長物語

こんばんは、紫栞です。

今回は、アニメ『ミギとダリ』を観たので感想を少し。

 

コロスコロスコロスコロスコロス

 

 

こちらは2017年から2021年まで連載されていた、佐野菜見さんによる同名漫画作品

 

 

を原作とするアニメで、2023年末のクールで放送されたもの。全13話。

 

アマプラの見放題対象だったのと、作画の雰囲気に惹かれて観てみました。原作は未読です。

 

 

あらすじ

舞台は1990年の神戸。オリゴン村在住の園山修洋子の老夫婦は、養護施設から秘鳥(ヒトリ)という少年を養子として迎え入れる。

しかし、秘鳥は実は双子の少年「ミギ」「ダリ」が入れ替わりながら演じている、“二人一役”で成り立っているものであった。

二人の目的はオリゴン村にいるはずである実母を殺した犯人を突き止め、復讐すること。園山家に引き取られるように画策して老夫婦に取り入ることに成功し、園山家を根城にしながら、二人は双子だという正体を隠してオリゴン村の村民達に探りを入れていくが――。

 

 

 

 

 

 

 

最初に誰もが多少困惑するのは舞台設定かと思います。アニメだと特に。

ミギとダリは金髪の美少年だし、村の景観も西洋の片田舎って感じなので、てっきり海外が舞台だと思ってしまうところですが、舞台は日本の神戸市北区。オリゴン村は架空の村ですが、アメリカ郊外を模しているニュータウンって設定なのですね。

 

神戸は60年代後半から80年代終わりまで外国人居留地がありましたので、西洋人や文化が混在しているってことかなどとも思ってしまいますが、登場人物は皆ゴリゴリの日本名ですので、西洋人っぽく見える人も、あくまで村のコンセプトに合わせてアメリカ風に振る舞っている日本人ってことのようです。洋子ママとかね。洋子ママが困惑の元なのよ・・・。

 

とはいえ、ミギとダリは正真正銘の金髪碧眼美少年で、実母も金髪で名前はメトリーなので、やはり外国人居留地があったことも設定に盛込まれているのでしょうけど。

でも、元孤児だとからかわれるシーンはあっても、髪の色などを揶揄されるシーンはないんですよね。日本なのにアメリカ風という独特の世界観自体が、漫画的ファンタジー設定なのかも。いずれ、今作では深く考える必要のないことなのですが。

 

 

舞台設定以上に困惑するのが、美麗な画による耽美な雰囲気の中で繰り出されるシュールなシーンの数々。

全く前情報無しで観ていると「何だこれ」なのですが、原作者の佐野菜見さんはこういったシュールギャグが持ち味の作家さんなのだそうで、

 

 

 

 

慣れてくるとこの独特さがクセになって面白い。クスクス笑ってしまいます。

 

とはいえ途中、ジャグだとしてもちょっと引いてしまうシーンもありますので(^_^;)、観る人を選ぶといいますか、好みがハッキリ分かれる作品ではあるでしょうね。

 

導入部分の一話二話で荒唐無稽なシュール展開がドンドンと描かれるので、この調子で事件についても真面目にはやらずにギャグ一辺倒でいくのかと思ってしまうのですが、これがちゃんと、サスペンスミステリ部分は想像以上に確りとしており、人物の成長や青春はことのほか爽やかに描かれ、決着しています。

 

シュールギャグとサスペンスミステリと青春ドラマ。諸々の“混然”を愉しむ作品ですね。

 

 

「オリゴン村」に何かあるのではというところからミステリ部分が展開されていきますが、この物語では描かれるのはほぼ「園山家」と一条家のみ。なので容疑者の推測も容易で、奇をてらった展開や度肝を抜かすようなどんでん返しなどはありません(あくまで“ミステリ部分は”ですけど)。どこか怖い、おどろおどろしい雰囲気で実直にサスペンスミステリを魅せてくれます。

 

綺麗にキチンと終わっていて申し分のない最終回ですが、兄弟として顔の相異に気がつかなかったのかという疑問と、一条英二の妹・華怜についての説明の不十分さは個人的に引っかかりましたね。

 

ま、そんな些細なこと、吹っ飛ぶぐらいの良い最終回だったので「ま、いっか」ではあるんですけど。

 

 

私はですね、サリーちゃんがとてもツボでしたね。あのミステリアスな容姿と男を手玉に取る立ち振る舞いが非常に好み。〇装なのが残念なくらいです。別の声優さんを使っているのかと思ったのですが、村瀬歩さんが演じ分けていらっしゃるのですね。全く違和感なく、キャラクターデザインにも合っている声で凄いなと感服いたしました。

 

おかしみ溢れる秋山や、誰よりも冷静な最年少・華怜ちゃんも好き。みっちゃんには色々と驚かされましたね。最終回でもあのようなご活躍をされるとは。

 

 

原作者の佐野菜見さんは癌で2023年8月に36歳の若さで他界されたため、2021年末に連載を終えた『ミギとダリ』が最後の漫画作品となりました。

このアニメは佐野さんが他界されてから2ヶ月後に放送開始というタイミングに。佐野さんは原作者としてギリギリまで制作に関わっていたそうで、最終回には追悼メッセージが出されました。フランス語なのでわからなかったのですが、佐野菜見さんを偲んで」と書かれていたようです。

 

『ミギとダリ』を書き切ってくれたことに感謝ですが、佐野先生の次回作がもう見られないというのは残念でなりません。

アニメ制作の方々も先生に完成品を見ていただくことが出来なかったのは無念だったろうと思います。そんな先生への想いもあって、このアニメは極上の仕上がりになったのでしょうね。

 

 

気になった方は是非。

 

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

 

 

【小市民シリーズ】4作品まとめ紹介 〈冬季〉とアニメ化前におさらい!青春スイーツミステリ

こんばんは、紫栞です。

今回は、米澤穂信さんの【小市民シリーズ】をご紹介。

 

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

 

小市民シリーズとは

【小市民シリーズ】は米澤穂信さん初期の代表作である2大青春ミステリ小説シリーズの内の一つ。※もう一つは【古典部シリーズ】ですね。

 

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シリーズ第一作が刊行されたのが2004年で、今からおよそ20年前。その語、2006年に二作目、2009年に三作目と続けて刊行されましたが、それ以降長らく音沙汰無し状態が続き、11年後の2020年に番外編の作品集発売。

 

やっとシリーズ再始動か!?と思いきや、また4年音沙汰無しだったのですが、なんと、2024年7月にこのシリーズを原作としたアニメ放映が決定

shoshimin-anime.com

 

そして、小説の方も本編の完全新作「冬季限定ボンボンショコラ事件」が4月に発売予定とのことで「やっとか~」と、一報を聞いて歓喜いたしました。

 

www.tsogen.co.jp

 

 

 

しかしながら、番外編の短編集はともかく、本編の三作品は15~20年前で内容をかなり忘れてしまっているので、改めて再読。記事にまとめつつ、今一度このシリーズについておさらいと考察をしてみたいと思います。

 

 

“恋愛関係にも依存関係にもない互恵関係にある”同級生、小鳩常悟朗と小佐内ゆきの二人が、高校生活を送る中で遭遇する些細だったりきな臭かったりする様々な謎・事件を、解いたり籠絡したりするシリーズ。

 

「互恵関係」とは聞き慣れない言葉ですが、意味は利益を与え合い、損をしない関係のこと。

 

小鳩常悟朗は並外れて推理力が高い男子。様々な事に首を突っ込んでは謎を解き、皆の前で披露するのに快感を覚えていましたが、中学時代にその気質のせいで痛い目に遭い、出しゃばることをしない、穏やかで慎ましい「小市民」を目指す。

 

ホームズ的“推理のひけらかし”ですね。ホームズは探偵だし、高機能社会不適合者として突っ走りますが、小鳩君は学生生活を送る少年。“ひけらかし”は学校というコミュニティでやられると鬱陶しいし不快なものだと気がついた思春期ボーイの小鳩君は、謎から回避して自分の気質を封印し、普通の学生として社会に適合しようと努める。

 

そんな小鳩君と中学三年生の時から互恵関係を結んでいるのが小佐内ゆき。彼女もまた特殊で厄介な気質を持ち合わせており、封印するべく「小市民」であろうとしている。

 

小鳩君と小佐内さんは目的を同じくする同志。何かから逃げたいときはお互いの存在を言い訳に使い、楯にする。二人一緒に行動することで助け合い、本来の気質が暴走しないように互いに見張り合う関係。

なんだけれども、頻繁に事件に遭遇してしまって・・・なかなか二人が目指すところの「小市民」にはなれないのでありました――・・・

 

こんな具合に、少し特殊な関係の男女コンビが織り成すミステリシリーズです。

 

また、小佐内さんが大のスイーツ好きという設定でして、美味しそうなスイーツ描写があるのもシリーズの特徴の一つ。本のタイトルには必ずお菓子の名称が含まれています。

 

青春×スイーツ×ミステリ

 

と、一見ライトなミステリですが、それだけではない米澤穂信作品特有のほろ苦さや毒っ気もちゃんとあるので必見。

 

主要二人の他にレギュラーで登場するのは小鳩常悟朗の馴染みで“まぎれもなく良いヤツ”、荒事に担ぎ出されがちな島健ぐらい。

 

基本的に、このシリーズは探偵役の小鳩常悟朗による一人称語りが主です。小佐内さんの心情は意図的に全く描かれておらず、得体の知れないミステリアスな存在として終始読者を惹きつけています。

 

 

 

 

 

 

 

 

シリーズ順番

では、刊行順にご紹介。

 

●「春期限定いちごタルト事件

 

目次

プロローグ

羊の着ぐるみ

For your eyes only

おいしいココアの作り方

はらふくるるわざ

孤狼の心

エピローグ

 

短編集。高校入学からの春の出来事・謎解き話が時系列順に描かれています。お話しはそれぞれ単体で楽しめるように描かれていますが、ところどころラストのお話への伏線が張られているので長編ともいえる構成。

 

 

●「夏期限定トロピカルパフェ事件

 

目次

序 章 まるで綿菓子のよう

第一章 シャルロットだけはぼくのもの

第二章 シェイク・ハーフ

第三章 激辛大盛り

第四章 おいで、キャンディをあげる

終 章 スイート・メモリー

 

長編。とはいえ、各章で謎解きが用意されているので連作短編風味。高校二年生になった二人の夏休み中の出来事が描かれる。

 

 

 

●「秋限定栗きんとん事件」

 

 

 

 

目次

第一章 おもいがけない秋

第二章 あたたかな冬

第三章 とまどう春

第四章 うたがわしい夏

第五章 真夏の夜

第六章 ふたたびの秋

 

長編。上下巻で今のところシリーズ最長の作品。描かれる次期も高校二年生の秋~三年生の秋までと、約一年間の出来事で最長時間となっています。

 

 

「巴里マカロンの謎」

 

収録作

巴里マカロンの謎

紐育チーズケーキの謎

伯林あげぱんの謎

花府シュークリームの謎

 

番外編で短編作品集。一作目~二作目までの作目までの間にあった謎解きエピソードが収録された一冊。各タイトルはクィーンの国名シリーズを意識したものですね。

この本については、詳しくはこちら↓

 

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以上。2024年2月現在で四冊。

 

 

 

 

以下、ネタバレ含みますので注意~

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の高校生活と互恵関係

このシリーズ、

 

春期限定いちごタルト事件」では高校一年の春、詐欺事件に関わって二人とも本来の気質が出てしまって反省。

夏期限定トロピカルパフェ事件」では高校二年の夏休み中、誘拐事件が起こり、その事件の真相をきっかけに小鳩君が小佐内さんに互恵関係解消を提案し、二人は別れることに。

「秋限定栗きんとん事件」では高校二年生の秋~高校三年生の秋までの約一年間、連続放火事件を追った末に二人は改めて互いの存在の必要性を再認識。ふたたび互恵関係を結ぶ。

 

大まかにはこういった流れになっております。

 

日常ミステリでありながら、詐欺・誘拐・放火と、どの本も最終的にはモロに犯罪絡みの事件に関わる「小市民」なはずの二人。

完全な日常ミステリである【古典部シリーズ】とは似ているようでまったく違うのですね。テイストとしては近年開始された【図書委員シリーズ】に近いかと思います。

 

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一作目でまず二人の関係がどんなものかを示し、二作目で片方がルール違反をしたために互恵関係が破綻して別れる、三作目で互いに別の人と一年間過した結果「あなたが、きみが、いまのところ最善の相棒」と気がついて関係修復。

 

このシリーズでテーマとして描かれるのはやはり“互恵関係”。高校生活を通して二人の関係性の変化を追っていく青春物語なのです。

 

学校ではいつも二人で行動しているため周囲にはカップルだと思われているし、そう思わせておいた方が言い訳に使うときに都合がいいのでそのままにしているが、あくまで利益ありきの関係で恋愛感情はないよ~という「互恵関係」。

 

しかし、放課後や休みの日にスイーツを二人で食べに行く場面などが頻発するので、読者的には最初からこの「互恵関係」って疑問なんですよね。「小市民」のスローガンも。

小鳩君の語りを読んでいても正直、よくわからないし。新手の中二病的といいますか、子供がひねくれた考えを持ち出して態々事態を小難しくしている印象。

 

三作目の「秋限定栗きんとん事件」でようやく、

 

”そうじゃない。必要なのは「小市民」の着ぐるみじゃない。

たったひとり、わかってくれるひとがそばにいれば充分なのだ、と。”

 

やっと気がつく訳ですが。

頭がいいのに、このシンプルな答えに行き着くのに三年間かかっている。ま、これが青春。思春期なんでしょうね。どんなに大人びていても子供は子供。

 

 

 

来る冬季!

「お!自覚もできたし、次が楽しみ!」と、読者がなったところで、上記したように、このシリーズは長らく音沙汰なし状態になっていました。ヤキモキさせられたというものです。

 

2024年、やっとやっとで「冬季限定ボンボンショコラ事件」が読める!

 

タイトルが春夏秋ときているため、読者の間ではずっと「冬季限定」がシリーズ最終作となるのだろうと言われてきました。しかし、特報の文章を読んでみると「最新作」「四部作〈冬〉」とは書かれているものの、「シリーズ完結」という文字は見当たらない。

ひょっとして、四部作刊行後にも同シリーズで何か予定しているのですかね?とりあえず、卒業までは必ず描かれると思うのですが。

 

一作目「春季限定いちごタルト事件」のラストで、小佐内さんが「自分に危害を加える人間を、謀をめぐらして完膚なきまでに叩き伏せることに快感を得る」という復讐大好き娘だと判明。

小市民を目指す同志でありつつも、謀っている側と謎を解く側で腹の探り合いをする状態になったりするのもこのシリーズの醍醐味。

そんな二人が小市民になるべく互恵関係を結んだのは中学三年生の時とのことですが、そのきっかけとなった過去の出来事の詳細については未だに双方明かされずじまいのまま。

「冬季限定ボンボンショコラ事件」ではそこら辺のことについても満を持して語られると思いますので、とても楽しみです。

※出ました!詳しくはこちら↓

 

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シリーズ開始が20年前ですので、読み返してみて結構時代を感じました。携帯電話はもちろんですが、学校や公共機関の運用とか。この20年で世の中大きく変わったなぁと再認識。

アニメの予告映像にはスマホが出てきているので現在設定にするようですが、割と原作から変更しなければいけない部分が多々出てくるのではないかと。

「夏季限定トロピカルパフェ事件」までのストーリーをやるようですが、それだとラストが・・・・・・どうするのでしょう。

あとタイトルも、まさか「小市民シリーズ」のままではないだろうと思うのですが・・・どうなのでしょう?

非常に気になるところ。アニメもどんな風になるのか楽しみですね。

 

 

どちらもワクワクしながら待ちたいと思います。

 

 

ではではまた~

 

 

 

 

 

 

『金田一37歳の事件簿』15巻 ネタバレ・感想 ロジカルな推理!リアル人狼との”読み合い”対決!

こんばんは、紫栞です。

今回は、金田一37歳の事件簿』15巻の感想を少し。

 

金田一37歳の事件簿(15) (イブニングコミックス)

 

今巻は1冊丸々、前巻からの人狼ゲーム殺人事件』が収録されています。

 

 

※前巻のあらすじ・詳細について、詳しくはこちら↓

 

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以下ガッツリとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前巻ではファンお待ちかねだった美雪がやっとこさ登場して湧きましたが、今巻はそんなことなどなかったかのように通常運転です。

ま、前巻で『人狼ゲーム殺人事件』が始まった瞬間からもうそうだったので、そこら辺は期待していなかったんですけども。でも、「一方、その頃・・・・・・」とかで美雪登場してくれるかなぁ~とかはちょっと期待していた・・・(^_^;)。

 

 

 

 

先読み対決

今巻は咲間みおりが二人目の被害者として発見されるところからスタート。

 

一人目の被害者・冬城楽人が殺害される事件は落雪で通路がふさがれたことによるアリバイトリックものでしたが、二つ目の事件は積雪量から目算したアリバイトリック。

 

発見時、死体の上にはかなりの雪が積もっていた。二時間半前に見に行ったときは何もなかったため、最初に見に行った後の三十分間ほどで犯行が行なわれたはずだけど・・・っていうアリバイものですね。

 

咲間みおりの遺体発見と同時に竜門峻平が行方知れずとなり、他メンバーは検証の結果、アリバイがないのは池上凛のみだということに。

 

とりあえず池上さんの行動制限をしつつ、失踪した竜門さんが犯人か、それとも何処かで殺されているのか、判らないままに皆で捜索開始。

 

黒シルエット犯人(リアル人狼)は竜門さんを犯人に仕立てて殺害し、自殺を偽装することで幕引きするベタすぎる目論見だった訳ですが、金田一の推理によってまだ息のある状態で竜門さんを雪の中から発見することが出来、第三の殺人を阻止することに成功。

犯人のベタベタな企みは打ち砕かれ、竜門さんを何としてでも殺害したい犯人と、阻止して犯人を突き止めたい金田一との“先の読み合い”対決となる。

 

読者としては、竜門さんが罪を着せられて死んでから「いや!犯人は別にいる!」って推理を披露するいつもの流れだろうと予想してしまうので、第三の殺人を阻止出来て後のこの対決は少し意表を突かれました。長年読んでいると、読者は“パターンの先読み”をしてしまうのですよねぇ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

シンプル

今作は派手な機械トリックを好むこの漫画シリーズにしては珍しく、論理的な筋道によって犯人を特定するロジックものとなっています。

 

ゲームマスターのヘンリーが入れ替わっていたというのはやはり予想通り。

犯人当てに関しては、被害者の冬城楽人だけがメンバーの中で唯一左利きだったということを見抜ければロジックで当てられるようになっている。名刺交換の場面をやたらわざとらしく画で見せていたのはそのせいですね。でも名刺って、基本両手で渡すものなんですけどね・・・。

前巻で「まだ物語の半分だから」と思い、犯人は男性だろう(入れ替わりの都合上)ぐらいで留めて真面目に推察もしていなかったんですけど、前巻の段階で犯人当てに必要な要素は既に出揃っていたのですね。毎度のことですが、もっとちゃんと読者として推理するべきだったなと反省。

 

殺人が起こる前のゲーム時に人狼のカードを持っていた人がそのまま「リアル人狼」だというのはシンプルで良いですね。

 

今回の事件はロジックものということで、トリックもいつもよりひねっていないというか、至ってシンプル。そのぶん、まとまりが良くなっていたと思います。ハデさはないですが、私は今回の事件結構好みです。

 

しかし途中、ウィーチューバ-の峰雪虹太金田一たちとで人工降雪機の話をしているのですが、種明かしの時に「死体の上に人工降雪機で大量の雪を降り積もらせた」と語り出されたのには「あ、そんなに“そのまま”なの・・・」と、逆に驚いた。もっとさりげないヒントに出来なかったものか。

 

寒波で降雪100%の予報が出ているなか長野の山奥に行くなんて「閉じ込められに行くようなもの」で、雪国の人間としては信じがたい危険行為だと前巻での感想ブログにも書きましたが、今巻での峰雪さんが動画のためにわざと屋根の落雪を受けたというエピソードは更にバカバカしい危険行為で怒りが湧きました。

 

あのね、雪国では屋根からの落雪で毎年何人も命を落しているんですよ!動画のウケ狙い目的でこんなことするのは超ド級のバカ者ですからね。雪国の人間に侮蔑の目を向けられて罵倒されますよ。私もしますよ。ダメ、絶対!

 

 

ロジックで事件を解き明かしていくのは良いものの、犯人との最後の“読み合い対決”で皆のペットボトルに睡眠薬を入れて・・・という方法を阻止しての決着はよろしくなかったですね。

別の事件で似たようなことしているものがあったし、謎解きの最中なのに皆で一斉にペットボトル飲料を飲み始めるのは唐突すぎて違和感アリアリでした。ここまできて犯人の姿をまたシルエットに戻すのも意味不明でしたし。

 

 

そんなこんなで、犯人はIT起業家の鬼屋敷剣だと判明するのですが、動機面は次巻に持ち越しとなっています。個人的には一つの事件であまり巻を跨がずに二冊でバシッと終わらせて欲しいところですが、尺の都合上どうしてもこうなってしまうのですかね。

 

四年前に鬼屋敷さんの娘さんが死んでしまって、それが今回の被害者三人の身勝手さのせいであるとのことのようですが。

次巻予告から察するに、雪道の中、娘さんを連れてどこかへ向かう途中に三人に妨害されて身動き取れなくなって、最終的には娘さんが死ぬ結果に・・・・・・って、ところでしょうか。

ま、読者的“パターンの先読み”は程々にしておきましょう。

 

 

次の16巻は、2024年初夏発売予定。

 

【首なしスキーヤー】編開幕と書かれているので、初夏発売ですが今作から引き続き冬事件もののようです。(しかし、“首なしスキーヤー”って・・・色々とアレですね^_^;)

次巻はちょっとでもいいので、美雪がまた出てくれると嬉しいですね。

 

また楽しみに待ちたいと思います。

 

 

ではではまた~

 

 

 

 

どんでん返し映画 5選 驚きの逆転!仕掛け映画の魅力と楽しみ方

こんばんは、紫栞です。

今回は私が今までに観た、結末で物語が驚きの逆転をする仕掛けもの映画、“どんでん返し映画”を5つ、まとめて紹介したいと思います。

 

以下、仕掛けのネタバレはしていませんが「どんでん返しもの」だと知ってしまうだけでネタバレはネタバレですので(本当は宣伝文句なども知らず、先入観なしに観るのがこの手の映画は1番楽しめる)、ご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

アザ-ズ

 

 

2001年製作のアメリカ・スペイン・フランスの映画。

第二次世界大戦終結直後の1945年が舞台で、出征した主人の帰還を待ちながら大邸宅で暮らす夫人と子供、三人の使用人が、様々な怪奇現象に見舞われていくホラーサスペンスストーリー。

 

二人の子供は重度の日光アレルギーで、館の中は常に暗闇に包まれている。そんな中で妙な物音・話し声が聞こえたり、物の位置が勝手に変わったりといった不気味な現象が起こるという、お化け屋敷的ホラー映画。とはいえ、グロい描写などはないのでホラーが苦手な人でも平気だと思います。

 

物語は三人の使用人を雇うところからスタートするのですが、この時点で既に怪しい会話がチラホラリ。もちろん伏線です。

主演はニコール・キッドマン。製作された2001年当時に夫だったトム・クルーズが製作総指揮で参加しているとかで「ほぉーん」って感じ。暗闇とシックな装いでニコール・キッドマンの美しさが際立っています。

 

 

 

 

シャッター・アイランド

 

シャッター アイランド (吹替版)

シャッター アイランド (吹替版)

  • レオナルド ディカプリオ
Amazon

 

2010年のアメリカ映画。

舞台は1954年。精神を病んでいる犯罪者ばかりを収容している島に、失踪女性の捜索のため相棒と共に訪れた連邦保安官のテディ。女性は「4の法則。67は誰?」という謎のメッセージを残して姿を消していた。精神疾患を患っている収容者たちに取り調べをしていくテディだったが、そのうちこの島で異様なことが行なわれているのではないかと疑問を持ち始める・・・・・・。

と、いったストーリー。

 

島という閉鎖空間で周りは精神疾患者ばかり、管理している者たちも明らかに何かを隠している様子でとても信用出来ない。得体の知れない島の中で心身ともに追い詰められていくサスペンス・ホラー風味の映画。謎のメッセージや島での企み事など、ミステリ要素でも惹きつけられる作品。

 

どんでん返しの仕掛けがあるものの、劇中で頻繁に心象風景や過去の出来事などが描写されているので気がつく人も多いかも。真相を知った後だと、ある意味とても怖い物語だと感じる。余韻が深く残る終わり方で、鑑賞後は複雑な心境にさせられます。

 

監督のマーティン・スコセッシと主演のレオナルド・ディカプリオがタッグを組んでいる映画は今作が4作品目。2023年に公開された『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でもディカプリオを主演に起用しています。6作品目のタッグ。よっぽど監督のお気に入り俳優のようです。

 

 

 

 

ユージュアル・サスペクツ

 

 

1995年のアメリカ映画。

マフィアの麻薬密輸に使われていたと思われる船が爆発・炎上し、焼き後から多数の遺体が発見された。事件はマフィアたちの抗争によるものだと推察され、関税局捜査官・クイヤンは事件で生き残った詐欺師・キントに尋問をする。

キントは事の発端、6週間前にニューヨークの警察署で銃器強奪事件の容疑者としてさせられた“面通し”で偶々知り合ったメンバー5人で犯罪計画を立案し、実行していったところから船爆破事件へと発展した経緯をクイヤンに語っていく・・・。

 

こんな感じに、キントの回想話によって全体が構成されている犯罪映画。話が進むにつれ、すべての黒幕であるとされる人物「カイザー・ソゼ」とは何者なのかという謎が主題になっていきます。

タイトルの「ユージュアル・サスペクツ」は“いつもの容疑者”という意味。ことある毎に警察の厄介になっている5人の犯罪常連者たちが、「カイザー・ソゼ」によってあれよあれよと深みに嵌まってしまう様が描かれる。

 

回想話には注意するべき点があり、この映画はその王道を真っ正面から描いています。王道だからこそ、物語と人物が様変わりする最後の瞬間がシビレる。気持ちよく「やられたよ!」となる映画ですね。

 

この映画、どんでん返し系ではかなりの有名作でして、お笑いのネタにもなっていたりしているそうな。「カイザー・ソゼ」で検索するだけで肝心要部分のネタバレをくらってしまうので、観る前に検索するのは絶対におやめ下さい。(ま、ここで紹介している映画は全部事前検索は要注意ですが・・・)

 

 

 

 

イニシエーション・ラブ

 

 

2015年公開の日本映画。

舞台は1980年代後半。大学生で恋愛経験のない鈴木は、代打で呼ばれた合コンで繭子と出逢い、恋に落ちる・・・・・・と、いう、タイトル通りのラブストーリー。

 

前半はウブな恋模様で交際に至るまでが、後半は鈴木の就職が決まって遠距離恋愛することとなる様子が描かれる、大きく二つに分けられた構成となっています。

 

乾くるみさんの原作小説が発売当時、「最後から二行目は絶対に先に読まないで!」「必ず二回読みたくなる本」とデカデカと広告に書かれ、著名人絶賛コメントの帯が付いたことも手伝ってか、どんでん返しものの話題作としてバカ売れしました。

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映像化不可能作品だと思われていたので、映画化すると聞いて「ええ!アレはどうするんだ!?」と読者は皆驚いたことでしょう。私もそうでした。

 

映画は独自設定を一つ追加することで仕掛けを成立させていましたね。「ほうほう、そう来るか」ってなりました。

この映画の良いところは、かなり丁寧に“答え合わせ”をしてくれるところ。コレ系の映画は伏線回収をあえて詳細にはせずに、符合点や考察を観た側に委ねるものが多いのですが、この映画ではラストの5分間で映像によるとても分りやすい答え合わせをしてくれる親切設定となっています。原作読んでよく解らなかったという人にこそオススメの映画。

 

80年代後半のファッションや音楽も見所。どんでん返しものでありながら、人死にや事件が起きないラブストーリーなのも特色ですね。

 

 

 

アヒルと鴨のコインロッカー

 

 

2007年公開の日本映画。

大学新入生の椎名は、引っ越してきたばかりのアパートで隣人の青年・河崎から初対面でいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけられる。夜の本屋から広辞苑一冊を盗み、失恋で落ち込んでいる外国人留学生にプレゼントするという、聞けば聞くほど意味の解らない誘いだったが、椎名は妙な具合にのせられて計画に協力することに。

本屋襲撃終了後、椎名は河崎の知り合いだというペットショップ店長の麗子から、二年前に起こった出来事を聞かされて――・・・。

 

と、一風変わったストーリー。

 

原作は伊坂幸太郎さんの傑作小説。叙述トリックもので有名な伊坂幸太郎作品のなかでも特に名作とされる初期の代表作です。

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伊坂作品の魅力がつまりにつまった傑作小説。さて、どんな風に映像化されているものかと原作ファンは不安にもなったことでしょうが、見事に伊坂ワールドを再現してくれている映画となっていまして、原作小説同様にこの映画も評価が高い作品です。

 

これまた原作を読んだ身としては「あの仕掛けはどうするんだ!?」と、なるところですが、この映画では変に凝らずに割と直球の表現方法がとられています。普通に考えると「アンフェア!」となりそうなところですが、演出と演技の良さで気にならない。むしろ感動する。

 

二時間でおさめるために原作から所々変更はありますが、いずれも映画ならこの方が良いと思える上手い変更です。

ラストシーンも場面は忠実に再現しているものの、原作とは“ある点”が大きく違うのですが、これはこれで非常に感慨深いものとなっていて良い。

 

小説と映画、両方愉しんで欲しい名作ですね。

 

 

 

 

 

 

以上、5選。

 

私は叙述系のどんでん返し仕掛けがある小説が好きなので、読んだ小説が映像化されるとなると気になって観てみるということが度々あります。小説の叙述トリックものは文章だからこそ出来る仕掛けですので、映像で原作での驚きをどう表現するのか、物語を知っているからこそ興味深いのですよね。

 

最近ですと、絶対に映像化不可能と謳われ続けてきた新本格ミステリの超名作『十角館の殺人』がドラマ化される

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との一報で、思わず「えっ!?」って声が出ました。Hulu独占なので、今の状況のままじゃ私は観られないんですけど・・・(^_^;)。

 

 

実写のどんでん返しは“視覚でとらえていたものに騙される快感”があり、通常とは違う創意工夫をしなくてはいけないので、脚本・演出・演技、それぞれの力量が一般的な映画より試されるものだと思います。ただ驚かせられれば成功というものではなく、物語としての魅力も大前提として必要ですしね。

 

一度観終わった後また最初から観て、鑑賞者が“答え合わせ”をし、別目線で観直すという独自の楽しみがあるのがどんでん返し映画。

何回も観て、観る度に“考える楽しさ”を味わって欲しいです。

 

ではではまた~

『鵼の碑』ネタバレ 登場人物、他シリーズとの繋がり、徹底解説!”化け物の幽霊”とは?

こんばんは、紫栞です。

今回は、京極夏彦さんの『鵼の碑』(ぬえのいしぶみ)について多少突っ込んだ内容紹介と解説をしたいと思います。

 

鵼の碑 【電子百鬼夜行】

 

あらすじ

昭和二十九年、二月。

劇の脚本を書くため日光榎木津ホテルに滞在している最中、メイドから殺人の記憶を打ち明けられて懊悩する作家・久住加壽夫。

失踪した勤め先の主人を捜して欲しいと薔薇十字探偵社に依頼した薬剤師・御厨富美。

二十年前に消えた三つの死体の行方を追うこととなった刑事・木場修太郎

発掘された古文書の鑑定と整理のため日光に滞在している学僧・築山公宣。

大叔父の遺品整理のために空き家となった診療所に訪れた病理学者・緑川佳乃。

 

二十年前の事故と遺体消失。十六年前の少女による殺人の記憶。示唆される幾つもの不審な出来事。そして何かを嗅ぎ回る公安・・・。

 

時を同じくしてそれぞれが日光に集い、縺れ合って“得体の知れない何か”が浮かび上がっていく。

果たしてこの日光で何が行なわれていたのか?皆に取り憑く“化け物の幽霊”。その正体とは――?

 

 

 

 

 

 

 

キメラ

『鵼の碑』は2023年9月に刊行された長編小説。百鬼夜行シリーズ】(京極堂シリーズ)、17年ぶりの新作です。

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2023年の私にとって最大の出来事はこの『鵼の碑』の発売でした。嬉しすぎて当ブログでも喜びを書き殴るだけの記事を何個かアップしましたが、

 

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今回はきちんと、『鵼の碑』の作品紹介とネタバレこみの感想や考察を書き上げて、この2023年を終えたいと思います。

 

 

『鵼の碑』は新書版(講談社ノベルス)と単行本版が同時発売でした。

 

 

 

京極夏彦さんは版が変わる度に文章がページをまたがないように加筆・修正するので有名な作家ですので、中身の違いが気になる人も多いかと思いますが、ノベルス版を大元として、単行本だと調節のため台詞や地の文が足されています。さりげなく、細かく、なんですけど。

ファン的には榎木津のトンキチな台詞が足されているのが注目ポイント。単行本はお値段の高い豪華版ですので、ちょっとした特典気分を味わえますよ。是非読み比べて欲しいですね。

 

 

タイトルにある「鵼」は、頭が猿、胴が狸、手脚は虎、尾は蛇だとかいう(※組み合わせは文献によって異なる)色々な動物が合わさった姿をしている怪鳥。キメラの如き化け物です。

 

物語も「鵼」に習ってといいますか、本全体で「鵼」を表現しているといいますか、、の五パートでそれぞれに展開していき、その五パートが段々縺れて合わさって、“キナ臭い話”が浮かび上がるという構成になっています。

 

「蛇」ではメイドの桜田登和子に打ち明け話をされて右往左往する劇作家・久住加壽夫と、何故か一緒に右往左往することになった関口巽が、

「虎」では行方不明となった勤め先の主人・寒川秀巳の捜索を依頼した御厨富美と、探偵の益田龍一が、

「貍」では二十年前に起こった遺体消失事件を追うハメになった刑事の木場修太郎が、

「猨」では助勢を頼んだ史学科教授の助手・仁礼将雄、古書肆・中禅寺秋彦とともに古文書鑑定をする学僧・築山公宣が、

「鵺」では医者だった大叔父の遺品整理のために日光の村外れにある元診療所を訪れた病理学者・緑川佳乃が、

 

各パート、それぞれの視点で物語が展開されていき、収斂していく。(※語り手は青字の人物)

 

日光には榎木津礼二郎の兄・榎木津総一郎が経営する「日光榎木津ホテル」があり、中禅寺の仕事にくっついてくる形で榎木津と関口の三人でこのホテルに滞在しています。

総一郎さんは奇天烈な弟とは違ってごく普通の容姿をしていてマトモなのですが、頼りない言動のおかしみ溢れる人物。榎木津には「アニ」と呼ばれている。

 

中禅寺は仕事で来ているのでずっと古文書鑑定、関口はスランプで例によって暇を持て余し、久住さんと妙に意気投合して一緒にウジウジと“メイドの殺人記憶問題”に取り組むことに。(わざわざ面倒事に首を突っ込んで鬱々する、毎度毎度の懲りない関口)榎木津はテニスしたり乗馬したりで元気に遊びほうけています。(今回は本当にほぼほぼ遊んでいるだけ)

 

 

中禅寺の仕事にくっついて旅行に行くという流れは鉄鼠の檻を彷彿とさせますね。

 

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今作では他にも所々これまでの事件を思い出させる要素が盛込まれています。インタビューによると、これは意図的にそうされているそうな。17年ぶりなので、長年のファンに向けてのサービスってことでしょうか。

 

 

 

 

 

登場人物

木場以外、各パートの語り手は初登場の方ばかり。

語り手で木場!テンションが上がりましたね。木場は『塗仏の宴』以降、シリーズではチョイ役でしか登場していなかったので、ガッツリ登場は凄く久しぶり。やっぱり木場の語りは良いですねぇ。

榎木津が「おいこら四角」って言って闖入してくるのには読んでいて「キター!」と、ニヤニヤしてしまった。お互いに罵りあっているのに、総一郎さんも交えての幼馴染みエピソードを語り出すのが可笑しい。

 

益田は今作でもガッツリ登場。益田は本当に出番が多いキャラクターですね。スピンオフでもいっぱい登場するし。下僕筆頭だからでしょうか。

 

他、一段落のみの登場ですが青木鳥口和寅『格新婦の理』『百器徒然袋-風』などに登場した中華丼のイラストに似たお喋り娘・奈美木セツ邪魅の雫に登場した公安の郷島郡治、かつての木場の相棒だった長門さんと陰摩羅鬼の瑕で登場した伊庭さん(※伊庭さんはスピンオフの『今昔続百鬼-雲』にも登場しています)などが登場。

今作では長門さんが現場で念仏を唱えるようになった理由が明らかにされています。

 

過去作のキャラクターが数多く登場していまして、宮部みゆきさんは百鬼夜行アベンジャーズと称されたようですが、伊佐間屋とマチコが居ないので個人的にはアベンジャーズとは言い難い。伊佐間屋は話題の一つでは出て来ていましたけど。

 

後、『鉄鼠の檻』の時には連れてきていた奥方二人、千鶴子さんと雪絵さんも今回は不在。前は木場とセットで出がちだった猫目洞のお潤さんも登場はなし(お潤さん、『塗仏の宴』の一件の後どうしているのか気になるんですが・・・)。中禅寺の妹・敦子も不在。ま、敦子はこの間にスピンオフでご活躍だったからしょうがないですが。

 

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本当にアベンジャーズしていたのは『塗仏の宴』ですね。この時は本当に全員登場していた。

 

 

後、スピンオフですが『百器徒然袋』の二冊も。

 

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個人的に、久しぶりなので関口視点の語りを読みたかったなぁという気がする。シリーズファンとしては関口の語りが最も馴染み深いですからね。

饒舌な中禅寺に感化されて「最近は話をする努力をしている」ということで、久住さん相手に沢山お喋りしていますが。でもやっぱり中禅寺に後で一刀両断されているけどね・・・。

 

『鵼の碑』は刊行前に【百鬼夜行シリーズ】のアナザーストーリー集である百鬼夜行-陽』に前日譚の「墓の火」「蛇帯」が既に発表されていました。

 

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「墓の火」は御厨富美が捜している薬局の主人・寒川秀巳が主役で、「蛇帯」は今作で久住さんに“殺人の記憶話”をしたメイドの桜田登和子が主役。

別記事でも書きましたが、この二つのは『鵼の碑』を読む前に絶対に押さえておいて欲しいエピソードですので是非。

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

他作との繋がり

京極夏彦さんには【百鬼夜行シリーズ】の他にもう一つ代表的シリーズがあります。江戸時代後期を舞台にした巷説百物語シリーズ】ですね。

 

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京極夏彦作品は殆どの作品が同一世界線として描かれているので、これまでも『狂骨の夢』や『陰摩羅鬼の瑕』などで【巷説百物語シリーズ】との繋がりが示されていたのですが、今作での繋がり方は今までとの比ではありません。“モロ”です。

 

『鵼の碑』前に読んでおくべき本ってことで、当ブログで発売前に記事を書いたのですけれども↓

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今作を読んだ後ですと、絶対に読んでおくべき本は上記した『百鬼夜行-陽』収録の「墓の火」「蛇帯」の他に、

後巷説百物語

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と、『書楼弔堂 破曉』収録の「未完」

 

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が、特に今作での繋がりを知るには重要。どちらの本も明治時代が舞台で、江戸時代の【巷説百物語シリーズ】と昭和が舞台の【百鬼夜行シリーズ】との間を埋める要素があるものですね。

※本ごとの時系列について、詳しくはこちら↓

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『鵼の碑』を読む前に必ずチャックして欲しい本であるものの、それを言うと『鵼の碑』自体の重大なネタバレになってしまうので、読む前の人には言えないというジレンマ。

 

ま、『鵼の碑』の後でこの二冊を読んでも十分愉しめるので、『鵼の碑』読んだけどこの箇所よく分らなかった~って人は、これらの本も一緒に是非。

 

 

 

 

陰謀

話が進むにつれ、各パートそれぞれに別方向からとある「疑惑」に行着いていきます。

 

戦前、この日光の地で日本陸軍原子力兵器開発の秘密実験を行なっていたのではないか――と、いう。

 

荒唐無稽で“如何にも陰謀じみた”疑惑ですが、その疑惑を追っていた、知ってしまったために殺されたと思われる人物や、秘密警察が行なった隠蔽工作被爆が原因で亡くなったらしき遺体があったこと、不自然な土地の買収、探り回っている公安・・・・・・等々、疑惑を裏付けるようなもっともらしい事柄が次々に出て来て、皆この「陰謀」に取り憑かれてゆく。

 

皆日光に集結し、追ってきた事柄を共有していくのですが、その結果出来上がるのは“異なった複数の世間が絡み合っているような、奇妙な事件のキメラ“

 

キナ臭さばかりが増幅して、謎は深まる一方。いつまでも出口の見えない隘路に陥る。

 

 

「狸の胴に猿の頭だの蛇の尾っぽだのをくっ付けると、訳の解らない化け物になってしまうんですよ旦那。しかも、まるで関係のない鵼なんて名前で呼ばれてしまうことになる。いいですか、鵼なんて化け物は居ないんですよ。鵼のお話は、凡て化け物が退治された後に醸造されたものです。一度混ざってしまえばもう分離は難しい。化け物の鵼の話からは鵺は汲み取れない」

陰謀なんかないんですよ――と、中禅寺は木場に云った。

 

 

「鵼」は色々な動物が混ざりまくって訳の解らないものになってしまった化け物。見た目からは鳥の要素なんてまったくないのに「鵺に声が似ているから」って理由で「鵼」と呼ばれていますが、その似ているとされる鵺も実際には居ない鳥。

何処までも「空」「虚」な存在なんですね。

 

いろんな方向から情報を持ち寄った結果、ありもしない陰謀に翻弄されてしまうというのがこの『鵼の碑』という物語。

 

もちろん、こんな空騒ぎをすることになってしまったのには理由がある。開戦前、内務省の特務機関所属でありながら反戦主義者の山辺唯継が、“あの”堂島静鎮と陸軍に対して原子力の危険性を知らしめて兵器開発を阻止させるために、同志を集めて日光の山で原子力兵器開発をしているように見せかける大規模な偽装工作「旭日爆弾開発計画」をしていたのです。

※堂島や山辺が分らないって人は、『塗仏の宴』をお読み下さい。詳しくはこちら↓

 

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土地を買い上げ、原子力研究をしていると軍に盛大にアピール。定期的な成果発表の度に「ほら、こんなに危ないんですよ」と示してみせるが、実際は何の開発も実験もしていない。

大掛かりな“ハリボテ計画”だったのですね。

(今作の発売延期理由の一つに震災も関係したと京極さんが仰っていましたが、原子力関連の題材だったからなんですね。確かに、あの時期に刊行していたらよろしくないことも言われただろうなと思う)

 

ハリボテはハリボテでも絶対にバレてはいけないハリボテ。微に入り細を穿ち、外面をもっともらしく装ったために、二十年も経ってこのような空騒ぎ事態を招くこととなったと。

まったく、まったくさぁ・・・山辺さん・・・・・・!まどろっこしいことしてくれたなぁ今回もよぉ!って感じですね(^_^;)。

 

そんなですので、今作はシリーズ史上最も“何も起こっていない”物語です。事件はどれも十五年以上前のことでとっくに時効だし、切羽詰まった事態でもないし、殺人や人死にも発生していない。

 

中禅寺は今回、ありもしない“幽霊の化け物”の憑物落としをしたのですね。

 

 

 

 

 

末裔たちの邂逅

公安の郷島さんがうろちょろしていたのも大戦の後始末のため。”戦前と云う死んだ化け物の幽霊を捕まえに”日光に来ていた。郷島さんがいることによって胡散臭さが倍増して、皆の混乱が強まったのですがね・・・。

 

しかし、郷島さん以上に怪しげな動きをしている者達が今作にはいました。山で暮らし、調査団の案内役をしたという老人・桐山勘作、行方不明となっていた寒川に接触していた仏師・笹村市雄、市雄の妹で桜田登和子に“殺人の記憶”を思い出させるきっかけを与えた笹村倫子

 

この三人が「何をしていやがるんでぇ」ってな具合に物語の端々で怪しげにチラホラリとしている。

 

よからぬことをしている黒幕的な者達か?と、なるところですが、実はこの三人は別シリーズの巷説百物語シリーズ】に登場する化物遣いの末裔

笹村市雄と倫子の兄妹は、『後巷説百物語』に登場する笹村与次郎小夜の孫にあたる。小夜は又市一味である山猫廻しのおぎんの孫。つまり笹村兄妹は末裔だということに。桐山勘作は山の民で、二人の育ての親なんですね。

 

笹村兄妹の両親は記者で、二十年前に件のハリボテ計画を探っていたら巻き込まれて諜報員に殺害されてしまった。

笹村兄妹と桐山勘作の三人は、両親の死の真相を探りつつ寒川秀巳や桜田登和子を牽制し、見守っていたのです。

 

後巷説百物語』でも、『書楼弔堂-破曉』での菅丘李山(山岡百介)の蔵書を中禅寺輔(※中禅寺秋彦の祖父)が引き取って云々のくだりでも小夜や与次郎の動向は描かれていなかったので、知れたのは今作が初。

 

百鬼夜行-陽』の「墓の火」で“笹村”って出て来た時点でピン来た人もいますかね?私は恥ずかしながら失念していましたよ・・・。今作の終盤で「笹村・・・笹村って・・・・・・あ、あああー!」って。

で、「与次郎!お前、小夜さんと結婚出来たんか!良かったね!」ってなりましたわ。

結構作中で頻繁に匂わせる描写されているのですけどね。「一白新報」とか、笹村与次郎って名前もちゃんと出て来ていますし、笹村兄妹の容姿も又市とおぎんを連想させるものです。

「目の縁がほんのり~」で、え?おぎん?ってなる。小夜もそうでしたが、おぎんの遺伝子強いですね・・・。

後巷説百物語』ではおぎんが誰の子供を産んだのか明確な記載がないのですが、市雄の容姿や言動を見ると、やはり又市との・・・・・・でしょうか。

 

 

憑物落としの終盤で三人が登場するシーンは、【巷説百物語シリーズ】の記念すべき一作目「小豆洗い」でのシーンを彷彿とさせてアツイ。

 

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そしてなにより、憑物落としの拝み屋と化物遣いの末裔の、時を経ての邂逅アツイ・・・!

 

京極夏彦作品を長年読んできたからこそ味わえる読書体験。感無量です。

 

 

 

 

化け物の幽霊

かつて、人々は不幸・不遇・悪しきものごとを化物妖怪の所為にして折り合いをつけていましたが、江戸時代を過ぎるとそういった化物妖怪の役割は薄れていき、今作の舞台である昭和二十九年の世では通用しなくなっている。

 

代わりに人々が飛びつくようになったのが、「陰謀論」。

納得いかないものの背後にはこんな秘密があるからですよ~と、それらしく語られると信じてしまうし、「陰謀論」は化物妖怪の所為にするよりは近代的で理知的と受け取られる。“理解し難い隠れた存在”の所為にしている点は同じだし、根拠のなさは化物妖怪と大差ないのですが。

 

「陰謀だと云ってしまえば、全部陰謀で片付いちまうだろうが」

慥かに、何だか判らないけれど気に入らないことは何もかも陰謀だと云う者は多い。陰謀の多くは何の憑拠もない。解らないからこそ陰謀だと云う理屈である。

 

ありもしない陰謀に翻弄される今作。

令和の今も陰謀論蔓延る世の中ですので、何やら暗示的ですね。京極さんのインタビューによると偶々らしいですが。そりゃ、物語の構想自体は17年前からあったはずですからね・・・。

 

化物遣いの末裔である市雄たちは、自分たちの作法で事態の改善を図りましたが、昭和の世ではかつての作法は虚しく、陰謀論に取り憑かれた寒川秀巳を救うことは出来なかった。他の取り憑かれた者たちも、中禅寺側の作法で祓われた。

 

「化け物は、もう死んだのです。もし――僕達があなたの仰るような者どもの末裔であったのだとするなら、そうなら、僕達は」

化け物の幽霊ですと市雄は云った。

 

 

化け物の幽霊は、もう居なくてもいい。そういう世になった。

 

「居なくてもいいんだな」

勘作はそう云った。

「はい」

「もう会えねえぜ」

「はい。僕は――少し淋しいですが」

「ふん。人は大体淋しいもんだろうよ」

 

今作は【巷説百物語シリーズ】の本当の最後ともとれますね。化け物が不要になって、幽霊のように残って、その幽霊も居なくてよくなった。

 

シリーズを追ってきた読者としてはとても淋しい。【巷説百物語シリーズ】は、いつも淋しいんですけど。そういうシリーズなんですよね。

 

最後の緑川さんの語りによる、

もう会えないけれど――。

生きていれば会えないこともないよ。

に、なんだか凄く救われる。

 

病理学者で、学生時代に中禅寺たちの知り合いだったという緑川佳乃さんは非常に興味深い人物。どうも、昔中禅寺のこと好きだったぽいんですよね。今後もシリーズに登場するんだろうなと思います。

他パートの語り手、関口と意気投合した奇特な久住さん、薬剤師の御厨さんと、信仰を見詰め直した築山さんも再登場の可能性あるなと。

 

寒川さんは行方知れずのままになりましたが、これで完全退場なのですかね。でもこのシリーズ、姑獲鳥の夏でトンズラさせた菅野を鉄鼠の檻で再登場させるなんてことをやってのけますからね・・・油断は出来ない。

寒川さんが病気で余命幾ばくもないというのは、まったく予想していなかったので驚きました。でも確かに、そう考えると色々な点が腑に落ちる。

御厨さんと寒川さん、再会して欲しかったですね。残念です。山辺のハリボテ計画、憎い・・・!

 

 

『鵼の碑』はシリーズ17年ぶりの新作などということになってしまいましたが、次作予定の『幽谷響の家』(やまびこのいえ)はそう間を開けずに刊行されるのではないかと思います。京極さん曰く、タイトルを決めると同時に内容も出来上がるらしいので。どういう頭してるんだって感じですが。もう、すぐ読みたい。すぐ。

 

今作は只今連載中の【巷説百物語シリーズ】最終作『終巷説百物語』を踏まえてのものでもあるでしょうから、そちらも大変楽しみです。

 

これまで私は、『鵼の碑』を読むのを心待ちにして過してきました。やっと念願の『鵼の碑』を読む事が出来てどうなったかというと、より一層に、京極夏彦作品を待望する思いが強まりましたね。これだから京極夏彦ファンはやめられない。

今後も新作を愉しみに待ちながら日々を邁進していきたいと思います。

 

 

 

 

ではではまた~