夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『金田一パパの事件簿』2巻 ネタバレ・感想 金田一親子最初の事件、終幕!

こんばんは、紫栞です。

今回は、金田一パパの事件簿』2巻の感想を少し。

 

金田一パパの事件簿(2) (コミックDAYSコミックス)

 

パパになって最初の事件、終幕

私立探偵をしつつ一児のパパとして育児に奮闘する金田一一(44)が、相も変わらず殺人事件に巻き込まれる『金田一パパの事件簿』第2巻、刊行であります。

 

・・・なんか、今回の表紙紛らわしくない?「次はだレ可名 暗イ暗人」ってのは作中に出て来る張り紙なのですが、タイトルの『金田一パパの事件簿』より字がでかいから何の本かぱっと見分からなくなる。まるでクイズ本みたいですよね。ま、ある意味クイズ本ではあるんですけれども。

 

今巻は、前巻からの『私立探偵殺人事件』編の解決までが収録されています。

 

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事件で巻を跨がずに終わるのは良いですね。

 

 

 

 

 

以下、ガッツリとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

予想通り!

前巻は「ジッチャンの名にかけて!」をかましたところで終わっていたので、今巻は改めて事件を見直しての調査からスタート。やっぱりこの事件は連続殺人ではなく、被害者一人で終わりのようです。

 

予想した通り、犯人は桜屋敷舞。やっぱり、襲われたのに助かった~って人は犯人って法則は揺るぎないようですな。

推理中、”途中までは計画的だった犯行が何かをきっかけに衝動的な犯行に切り替わったような”と出て来るので、桜屋敷舞が犯行時に負った怪我を誤魔化すために第二の事件演出したってやつか?って察しが付く。実際その通りなんですが。ずっと腕をおさえてるのも不自然すぎですしね。

 

やっぱり年齢が重要だったようで、桜屋敷は25年前に危険運転で家族を死なせた当時19歳の少年Aを長年探していて(※桜屋敷は現在38歳)、最近になって当時担当してくれた弁護士と再会し、その弁護士が口走った「加害者と同業」という言葉から少年Aを”現在44歳の男性で都内で探偵をしている”という条件で絞り込み、該当する四人を誘き出したという訳です。

さらには少年Aの親が日系ペルー人らしいとの情報から、アボカドのバッジで罠を仕掛けたと。アボガドはスペイン語で「弁護士」らしいよ。弁護士バッジって、偽物でも入手するの大変そうだけど・・・。

 

アリが角砂糖を少しずつ運んでいるのを見て九十九がすごい!と言っているのを見て金田一「困難の分割だ!」とヒントを得てトリックを解明するのですが・・・いや、お前「困難の分割」で今まで幾度も謎解明してきたやんけ。5年のブランクで忘れているのか?

近年、何回もトリックネタで「困難の分割」出してきている印象。作者の中で流行ってるんですかね?

 

そんな訳で密室トリックは「困難の分割」なんですけど、布団の真綿で蜘蛛の巣を偽装出来るってのは知らなかったので「へー」ってなりました。ドラマのセットとか蜘蛛の巣を綿で作るらしい。へー。

 

 

老けて見えるが実は44歳だった海東朔太郎桜屋敷に問い質されて「俺だってある意味被害者だ」「あんただってあの事故で多額の保険金手に入れただろ」と、まるで殺して欲しいかのような罵詈雑言を繰り出すバカっぷりですが、信じられないほど不用意すぎる弁護士といい、桜屋敷舞を殺人に誘導するための”誰かの”仕込みなんですかね?”誰か”って、ま、高遠さんしかいないですけど・・・。

 

今回は黒幕的なものが具体的に出て来る場面は無しでしたが、「この久しぶりの事件が”金田一一探偵事務所”をさらなる怪事件の舞台へといざなう恐怖の幕開け」らしいので、裏で色々操作されているのだと思います。

 

古我さんと鷹取さんは同業者として今後また出て来そうな気がする。実は黒幕側で化けてたとかもあり得ますけどね。

 

他のシリーズお馴染みキャラクターたちがまだ出て来ていないのですが、今後出て来てくれるのかな?2巻の段階でまったく出てこないのは意外でしたね。

 

 

最後に44歳の美雪もちゃんと登場しております。殺人事件に子供を巻き込むなと金田一に怒っている。

ごもっともです。六歳児に殺人現場は教育上よろしくないよ。

でも今後も親子で巻き込まれるのでしょうね。で、九十九くんが今回のようにヒントを与えてくれたり犯人をほだしてくれたりするんでしょう。

 

 

美雪が九十九の様子を見て高校時代の自分たちを思い出しているのが良いですね。

美雪ですが、九十九のことはツックン、金田一のことはいまだに”はじめちゃん”と呼んでいるようです。

子供の前で父親のことをはじめちゃんって呼んでいるのは現実だとどうかと思いますが、何歳になっても昔からの愛称のままで呼んでいるのもいいちゃいいのかもしらん。

 

 

 

次巻、第3巻は2026年冬頃発売予定。

【復讐のミイラ歌姫】編開幕とのこと。ミイラ歌姫って・・・・・・怪人名もネタ切れかしら。今更ではありますが。そりゃ30年以上やってたらアレか(^_^;)。

 

色々と今後に期待!

 

ではではまた~

 

 

 

 

 

 

『マスカレード・ライフ』あらすじ・感想 シリーズ第五弾 困惑の一冊

こんばんは、紫栞です。

今回は、東野圭吾さんの『マスカレード・ライフ』を読んだので感想を少し。

マスカレード・ライフ

 

テルマン新田

こちら、書き下ろし長編小説で【「マスカレード」シリーズ】の第五弾。

 

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このシリーズは刑事の新田浩介がホテルに潜入捜査をするというのが基本的な流れできていたのですが、シリーズ4作目『マスカレード・ゲーム』の最後で主人公の新田が訳あって警察を退職したのでシリーズもこれで終わりかと思われていたのですが、

 

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今度は新田がホテルマンとなってシリーズ再始動なようで。映画化されて知名度も上がったんで、なんとかシリーズを続けたいって出版社の意向なんですかね。

 

本のレビューを見ると新田がホテルマンになったことに驚いている人が多数いましたが、『マスカレード・ゲーム』の最終ページでちゃんと総支配人の藤木さんに専門の警備部門を新設するこちになったから警備部マネージャーをやってくれと誘われていますよ。ま、ちゃんと引き受けると断言はしていませんでしたが・・・。

 

なので、シリーズファンは続くにしてもホテルマンになってなんだろうなーと予想はついていたと思います。

 

 

舞台となるのは相も変わらずホテル・コルテシア東京。文学賞の選考会があるのだけども、候補者の一人が行方知れずで居所を掴めていない殺人事件の容疑者なんじゃないかってことで、受賞したら姿を現すだろうから、そこを待ちかまえて身柄を確保しようと警察の方で画策。つきましては、ホテル側の方も捜査にご協力お願い致します!

と、ま、こういう訳ですね。毎度のことですが。

 

「おい!コルテシア東京、何回事件の舞台になる気だよ!」ですけれども、今回は元々は別のホテルでする予定だった選考会を警察の方から出版社に働きかけてコルテシア東京に変えてもらったとのことなので、偶然ではないです。何回も警察の捜査に協力してもらっているし、元捜査一課警部の新田もいるしで他のホテルよりやりやすかろうと梓警部が発案したのだとか。迷惑な話だで・・・。

 

警部は前作の『マスカレード・ゲーム』に登場した捜査方法がちょっと強引な女性刑事さんですね。そんな経緯なので今作でも登場していまして出番も多いです。

後、頼れる老刑事だった能勢さんも出て来ます。定年退職して今は探偵事務所で所長代理をしているようで。相変わらず、新田に外部情報を教えに来てくれます。でも出番はそこまでないですかねー。

もちろん、山岸尚美も出て来ます。

 

今作での注目すべき人物は、新田のお父さんである新田克久ですね。八十歳近くですが現役の弁護士で、シアトルに法律事務所を構えている。(そういやそんな設定だったな・・・)

今回は日本で人と会う約束があるとかで、せっかくなら息子が働いてるホテルに泊まるかとコルテシア東京に来たそうです。

 

 

 

 

 

 

 

???

今作は、プロローグで新田の学生時代の出来事が描かれ、本編では文学賞選考会で容疑者を確保するための準備と事件捜査、同時進行でとある親子の話が描かれる構成となっております。

 

レビューですと評価が高いようですが、正直、私は困惑しきりでちゃんと感想を語れる本じゃないなと思ってしまいました。今までに読んだ東野圭吾作品の中ではワーストかもしれない。

 

まず、この構成が分からなくって。プロローグの出来事も、同時進行で描かれるメイン事件も親子の物語も、本当に三つとも何の関連もないんですよね。完全に独立した話なんですよ。なんでこの三つを一冊の本の中で描いているのかが分からない。

 

このシリーズでやる必要も感じられないし、事件の真相も推理する余地がほとんどなくってミステリとは言い難いし、文学賞選考会もただ皮肉って書きたかったとしか思えない。

親子の話を一番に書きたいのだろうなというのは伝わってくるのですが、当事者の心情描写がなくって事柄を述べているだけなので、”やたら重い内容の説明”って感じで感情移入が出来ない。

これは文学賞選考会絡みのメイン事件も同様なのですが。修羅場や涙涙の場面を描かれても感情移入出来てないので読んでいてシラけちゃうんですよね。

 

メイン事件の真相はとにかく無理がありすぎる。色々と「そうはならんでしょ」っていう・・・・・・。

動機も独りよがりで全然共感出来ない。大事に想っているならそんなことしないでしょ・・・これは親子の方もですけど。金の無心してたから何だって言うんだ。

 

シリーズの特徴であるはずの新田と尚美の掛け合いもほぼないですし、恋愛方面の進展はやめたみたいですし、新田がホテルマンになっているので潜入捜査の面白味もなくなっていますし。シリーズ自体もどうしたいんだか謎。

『マスカレード・ライフ』ってタイトルに繋げるにしても、もっと必然性を感じさせて欲しい。

 

総じて、何がしたいのか、何が言いたいのか分からない一冊。

 

ま、ちょっと散々な感想しか書けないのですけれども。シリーズの設定に無理が生じてるってことなんですかね。そもそも単発向きの設定で長期的シリーズにするのには向いてないんでないか。

 

しかしながら、上記したように世間での評価は高いようですので、私の読解力が足りないだけなのかも。また映画化されるかもしれないですし、私の愚痴だらけの意見で逆に気になったって方は是非。

 

 

ではではまた~

 

 

『推しの殺人』原作小説 ネタバレ・解説 アイドル三人の殺人隠蔽決死行

こんばんは、紫栞です。

今回は、遠藤かたるさんの『推しの殺人』をご紹介。

 

推しの殺人 (宝島社文庫)

 

 

あらすじ

大阪発の三人組アイドルグループ『ベイビー★スターライト』。もうじき結成四年目をむかえる地下アイドルだが、ランクは中の下で集客も売り上げも厳しく、横柄で高慢な事務所社長、人気格差によるメンバーの不仲、彼氏からDVを受けているセンターなど、様々な問題を抱えていた。

そんな最中、メンバーのひとりが事務所社長を殺害してしまう。「三人でアイドルをつづけたい」と、三人は事件を隠蔽することを決意。なんとかして秘密裏に死体を処理しようとするが――・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

犯罪小説~アイドルの場合~

『推しの殺人』は2024年に刊行された長編小説。第22回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作品「溺れる星くず」を改題・加筆修正したもので、今作が遠藤かたるさんのデビュー作です。

このミステリーがすごい!』大賞は刊行の際に人の関心を引きやすい分かりやすくてキャッチーなものに改題させることが多い印象ですが、

 

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巻末の紹介によると、この第22回の受賞作は三作とも改題しての刊行のようで。確かに改題後のタイトルの方が売れそうではありますが、どれも元のタイトルを見ると作者は熟考してつけたんだろうなぁと窺えるものばかりなので何とも言えない気分になる・・・。

 

今作の『推しの殺人』というタイトルですが、”推し”ってのはこの場合、周りにすすめたい・応援したい人物やキャラクターを表すファンが使う造語のことを指しているのでしょうが、この物語は終始アイドルのルイ視点で描かれていてファン視点での描写はないので、”推しの殺人”ってのはちょっと意味合いが異なるのでは?って気がしますが・・・ま、「推し文化」が根付いた現在ではインパクトのあるタイトルですよね。

 

このミス大賞は映像化される印象も強い賞。今作も2025年10月から読売テレビ日本テレビ系で連続ドラマ放送が決定しています。

 

www.ytv.co.jp

 

ドラマの公式ホームページをサラッと見ましたが、原作では聞き覚えのないキャラクターや設定が散見されますので、内容はだいぶ変えるのではないかと思います。原作は300ページちょいですからね、そのままでは連ドラにするのにはボリューム不足でしょうから、色々膨らませるのかと。

 

今作は内容的には殺人を隠蔽しようとする過程を当事者視点で描いたよくある犯罪小説。特徴的なのは殺人を犯したのがアイドルで、グループメンバーの皆で隠蔽工作するところ。

アイドルにはアイドルの苦悩がある。殺人の場合も然りってことで、地下アイドルという芸能業界と殺人の隠蔽に翻弄される女性たちの決死行が描かれます。

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人組女性アイドル

『ベイビー★スターライト』は結成当初は七人グループだったものの、メンバーの脱退と加入を繰り返して現在は三人組アイドルとして活動している。

この物語はおそらく2023年頃の設定で書かれているのだと思いますが、ベイビー★スターライトが結成された当時、事務所社長の羽浦はやり手として業界では一目置かれる存在で、事務所の景気も非常に良かった。しかし、コロナ禍の煽りを受けて一気に業績が悪化。事務所で多数手掛けていたアイドルグループは解散が相次ぎ、今ではベイビー★スターライトが唯一所属しているグループに。

 

 

メンバーは、ルイテルマイズミの三人。

 

主人公のルイはグループ結成当初からいる最古参メンバー。23歳で、すすめられるままオーディションを受け、流されるままにアイドルになり、今はやりがいをすっかり失って惰性で続けている状態。グループ四周年ライブを最後に、アイドルを引退しようと考えていた。

 

テルマはプロ意識の高い熱血で、キッパリとした性格。19歳で、かつてはグループセンターとして誇りを持ち、努力を怠らずにレッスンも人一倍し、パフォーマンスも最も優れていた。しかし、途中で加入したイズミにセンターを奪われ、不満を抱えていた。

 

イズミは大学生でテルマと同じく19歳。良いとこのお嬢さんで容姿端麗。ド素人でパフォーマンスも劣るがセンターに抜擢され、グループでは一番人気。しかし、彼氏からの暴力に悩まされていた。

 

 

テルマはイズミにキツく当たり、イズミがオドオドと受け答えるという不和状態。両者とも比較的良好な関係のルイが日々テルマの愚痴を聞かされながらなだめつつ、DVを受けているイズミの相談役になっているという・・・ま、無害そうなルイの存在で均衡が保たれている三人組という訳です。

事務所の経営不振による社長の転落っぷりも、グループの関係性も”ありがち”ですが、その分リアリティがある。

 

そんなお先真っ暗な三人組アイドル・ベイビー★スターライトですが、さらなる大問題が発生。イズミが社長を殺害してしまうのですね。

実は、イズミのDV彼氏ってのは社長のことで、別れ話を切り出したら逆上されて殴られ、過剰防衛で殺害してしまったと。

 

恋愛禁止とか言っといて所属アイドルと交際して挙げ句に暴力振るってるとか・・・もう最低じゃん!なんですけども。殺してしまった以上、罪に問われるのはイズミ。

イズミに呼び出され、最悪な事態に直面したルイとテルマはしかし、通報をせずに死体を一緒に処分して共犯者になる決意をする。

三人でアイドルをつづけるため。

 

テルマはイズミを嫌っていたし、ルイはアイドルを引退するつもりだったのに。仲間が犯した罪を前に一致団結するのですね。

 

 

 

 

 

女たちの呪縛と闘い

巻末でのコラムニスト・香山二三郎さんの解説によると、ルイとテルマという名前は映画『テルマ&ルイーズ』からとっているのではないかとのこと。

 

俺たちに明日はない』(ボニー&クライド)の女性版といわれる90年代アメリカン・ニューシネマの名作ですね。犯罪を犯した女性二人の逃走劇が描かれる犯罪映画ですので、意識してつけたのは間違いないかと。

 

桐野夏生『OUT』の地下アイドル版”というのも正にで、今作を読むとパート主婦仲間が一致団結して遺体を解体・証拠隠滅を図る、色々と生々しいストーリーが話題となった『OUT』を想起する人が多いと思います。こちらも今作を書く上ではぼ確実に影響を受けているでしょうね。

 

 

この二作と今作とで共通している点は、女たちが共謀して男を殺害し、罪を逃れようとするところ。殺害されるのはいずれも酷い男、女からさまざまなものを奪おうとする男です。

 

女は女というだけで理不尽に男から尊厳を奪われ、虐げられている。個人差はあれど、女性は潜在的に男性に対して不平と憤りを抱いている。

だから、男を殺害したと聞いた時に女は一致団結できるんですね。”奪おうとする男”は女にとって共通の敵。奪ったのは向こうで、取り返しただけで何故罪人として裁かれなくてはいけない!ってことです。

ラスボス的ポジションの河都が「女の敵」の象徴のような男として描かれているのも、男から受けている呪縛に抗う女たちの物語だと強調してるなと。

 

私も、人に暴力を振るう奴は殺されたって文句言えないと常々思っていまして。やっぱ女ですし、この手のお話ですと被疑者側を応援してしまいますね。

 

 

 

気づくまでの物語

終始ハラハラな展開が続きますが、三人の絆は深まって良好になり、アイドルとしてのパフォーマンスも向上、ファンからの評判も上がって・・・と、ベイビー★スターライトの活動は好転していく。

 

共犯者になったことでの結束がそうさせるのもあるのでしょうが、今作の場合は事件をきっかけに元々持っていたものに気がつく物語となっています。

 

”私たちは泥沼を這いずってきた。追い求めるものはもっと上に、高みにあるのだと思っていた。でも、本当は泥沼の中にもあった。泥沼でもがくなかで私たちはすでに手にしていた。ただ気づいていなかっただけだ。"

 

メンバーへの親愛も、応援してくれるファンも、アイドルとしての喜びも。元々持っていたのに取りこぼして見逃していた。殺人という大問題発生後に気がついたところで遅すぎるだろうではあるのでしょうし、さらなる罪を犯して事が露見するのは明らかだし、状況は絶望的なんですけども、「人殺しをする前に戻れれば・・・」といったたぐいの悔いがまったくない、悲壮感のない清々しい終わり方をしています。

良くないはずなんだけど「良かったね」ってなる読後感ですね。

 

 

帯には”待ち受けるどんでん返し!”と書かれていますが、良い人風だった河都が実は極悪人でしたってとこくらいでミステリ的な驚きはさほどないです。河都が悪い人なんだろうな~というのは読んでいて予想がつきましたしね。ここまでヤバイ奴だとは思わなかったですけど・・・(^_^;)。

 

アイドルを題材にしてはいますが、決定的な結末を描かない終わり方含め、王道の犯罪小説って感じですね。

 

このミス大賞受賞でのデビュー作って私が今まで読んできた中だとストーリー展開や描写など拙さが目立つものが多かったのですが、今作はデビュー作だとは思えない、全体的に完成度の高い作品です。

 

気になった方は是非。

 

 

 

ではではまた~

 

『星降り山荘の殺人』ネタバレ・解説 フェアで御丁寧、でも騙される!本格推理小説

こんばんは、紫栞です。

今回は、倉知淳さんの『星降り山荘の殺人』をご紹介。

 

新装版 星降り山荘の殺人 (講談社文庫)

 

あらすじ

後輩をかばって上司を殴ってしまったことで部署異動を命じられた広告代理店勤務の杉下和夫は、カルチャークリエイティブ部という芸能専門のまったく馴染みの無い部署に転属させられ、「スターウォッチャー」たる深遠な宇宙の深さと星空の美しさについて語るタレント文化人・星園詩朗のマネージャー見習いをすることになった。

 

和夫は早々に星園と共に埼玉の深い山の奥にある旧オートキャンプ場に出張に出かける。星園がこのキャンプ場を買い取った不動産開発会社社長からイメージキャラクターを依頼されての招待だったが、山荘には他にもUFO研究家、恋愛小説作家とその秘書、女子大生二人が招かれていた。

 

しかし翌朝になり、コテージの中で他殺死体が発見される。積雪に囲まれたコテージと管理事務所棟の間には三筋の足跡、さらにコテージの左横にはまるでミステリー・サークルのような渦巻き状の円形が描かれていて――。

 

 

 

 

 

 

 

懇切丁寧な(?)本格推理小説

『星降り山荘の殺人』は1996年に刊行された長編推理小説。1996年~1999年の間に講談社ノベルス、単行本、文庫と出版されまして、2017年には講談社文庫から新装版が出ています。

新装版とは言っても、活字が大きくなって読みやすくなっているだけで、内容の方は加筆修正はされていないようですので、旧版で読んでも差し支えは無いようです。今手に入れやすいのは新装版の方ですね。私も新装版の方で読みました。

 

私は定期的にクローズド・サークルものの本格推理小説を読みたくなる癖を持っていまして、今回は何を読もうかと思っていたところ、ミステリランキングなどで度々目にするこちらの名作を読んでみることにした次第です。

 

倉知淳さんの作品は大昔に短編集の『日曜の夜は出たくない』を友達に貰って読んだきりで正直文章や作品雰囲気は忘れていたのですが、ミステリとしての出来もさることながら、ユーモアあふれる文章で読んでいて面白く、楽しかったです。新装版の巻末にある倉知さんのあとがきもおかしみがあって良き。

 

倉知淳さんは前にタレントのカズレーザーさんが番組で好きな作家さんだと紹介していたので、それで知った人も多いですかね。私もリアルタイムでその放送を観た記憶がある~・・・と、思って調べてみたら、2016年に「アメトーーク!」の読書芸人企画でのことらしい。そんなに前なの・・・・・・(^_^;)。

 

うろ覚えですが、「凄い面白い作家さんなんだけど作品を滅多に出さないんだ」とか何とか言っていたような。けど当時のテレビの影響は絶大なようで、番組で紹介されて以降は短編などは割とコンスタントに書かれているようです。

 

それを受けてなのか、2017年に刊行された『星降り山荘の殺人』の新装版文庫にはカズレーザーさんによる

「ど真ん中の変化球!!各章冒頭の注釈が丁寧かつ挑戦的に、そしてあくまでフェアに読者を欺く。」

と、紹介文の帯がついていたそうな。

 

”各章冒頭の注釈”とは何ぞや?なのですが、この本は各章の最初に「まず本編の主人公が登場する 主人公は語り手でありいわばワトソン役 つまり全ての情報を読者と共有する立場であり 事件の犯人では有り得ない」

てな具合に、章の内容を御丁寧に説明してくれる注釈がついているのですよね。ここではこれが描かれるよ、ここで事件が起きるよ、この推理は当たりだよ・・・などなど。

 

「そんなに説明してくれるの!?」な注釈でして、これが読んでいると新鮮で驚き。この本最大の特徴ですね。

 

 

 

 

 

 

 

以下ガッツリとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

フェアですよ

推理小説でこんな注釈が入るなんて、十中八九何かしらの仕掛けが施してあるのだろうと警戒してしまうところです。叙述トリックものを読み慣れている人ほど特に。

私も注釈には「うわ、絶対に読者騙そうとしてるわ」って最初っから注意を払って読んでいたのですが、どうも突き詰められず。見抜けないままに解決部分を読んで驚かされました。「やっぱりそういう”ダマシ”仕込んであるよねぇ」と、期待通りに気持ちよく騙されたなと。

 

今作での最大の仕掛けは、各章冒頭の注釈による探偵役の誤認です。

 

和夫は早速新しい仕事に出かける

そこで本編の探偵役が登場する

探偵役が事件に介入するのは無論偶然であり

事件の犯人では有り得ない

 

との注釈が二章目の冒頭で書かれているので、この章で登場する星園詩朗が探偵役で、事件の犯人でないのは確定だと読者は思ってしまう

その後、事件が発生して星園が読者が想像するところの探偵役的立ち回りで和夫を助手に犯人追求をし、終盤でこれまた推理物のお約束通りに皆の前で推理を披露しはじめるのですっかり信じてしまうのですが、推理披露の途中でどんでん返しが起こる。

 

恋愛小説作家・草吹あかねの秘書である早沢麻子が星園の推理を否定し、星園こそが犯人であると指摘・糾弾するのです。

実は探偵役は星園ではなく、早沢麻子の方なのですね。

 

おいおい、注釈で星園が探偵役で犯人じゃないって書いてあるのに!作者からの注釈で嘘をつくなんて推理小説でいうところのアンフェアってやつじゃないのか!

 

と、早合点して怒ってしまいそうなところですが、この注釈があった章を読み直してみるとちゃんと麻子が登場しているし、上記した注釈にも”星園が”探偵役だとは明記していないので、ちゃんと本当のことが書かれているんですよね。もちろん、他にも読み返すと様々なところに伏線が確り張られています。

 

懇切丁寧な注釈であるのに変りはない。むしろ、どこまでも読者に対してフェアな推理小説なのです。

 

さらに巧みなのが、星園が(偽の)推理披露の途中で語り手のワトソン役である和夫のことを犯人だと言い出すところですね。この手の叙述トリックものですと「語り手を疑え」ってのが定石なので、注釈もそのための仕掛けだったのか?と、読者も一瞬「え?まさか本当に和夫が犯人なの?」と誤解しそうになる。

これは叙述トリックものを読み慣れている人ほどそうで、かくいう私も注釈を出された段階から「”信用のならない語り手”じゃなかろうな?」と警戒していたので、信じちゃいそうになった。

それが語り手に対してのダマシではなく、探偵役の誤認ですよとこられてね。「うわ~やられたな~!」ですよ。まったく、お見事です。

 

そもそも、スターウォッチャーだとかふざけたこと言ってる奴が犯人だとは思わんじゃん?

 

 

 

 

 

絶妙なさじ加減

途中で星園が語っていた過去に故郷の村で起こった事件ってのがよくわからずじまいですが、全体的に非常に良くまとまった、絶妙なさじ加減の作品になっていると思います。

 

奇をてらいすぎていない叙述トリックと、適度などんでん返し、雪に囲まれた山荘での足跡とミステリー・サークルの謎や、ロジックでの犯人追求など、確り伝統的な本格推理ものとしての謎解きもあり、個性豊かな登場人物達とコミカルな語り口で楽しませてくれて。

推理物としてのトリックだけでなく、物語として細部まで色々なバランスが計算された作品ですね。

 

1996年の作品なので所々時代は感じますがそこもまた味わい深く。読みやすくてミステリ初心者にも玄人にもオススメの本格推理小説ですので是非。

 

 

 

ではではまた~

『黒い家』原作小説 ネタバレ・紹介 恐すぎる!!狂人ホラー 夏のオススメ本~⑱

こんばんは、紫栞です。

今回は、貴志祐介さんの『黒い家』をご紹介。

 

黒い家 (角川ホラー文庫)

 

あらすじ

大手生命保険会社の京都支店で死亡保険金の査定に日々忙しく追われていた若槻慎二はある日、保険加入者の菰田重徳に家に来るように要求された。

面識が無い顧客から名指しされたことを訝りながらも菰田家を訪れた若槻は、そこで菰田重徳の息子・和也の首吊り死体を発見する。発見時に一緒に居た重徳の不審な態度から若槻は保険金目当ての犯行だと確信するが、警察の捜査は進捗せず、そのため本社の方でも菰田家からの保険金請求を受けても調査中として保留の状態が続いた。

すると、重徳は「和也の保険金は下りたか」と毎日支社に来て若槻に催促するように。辟易し、業を煮やした若槻は独自調査に乗り出す。

すると、若槻の周りで次々と恐ろしい出来事が起こり―・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最狂ホラー本

『黒い家』は1997年に刊行された長編ホラー小説。第4回日本ホラー小説大賞受賞作。

貴志祐介さんのデビューから二作目の長編で、『青い炎』『新世界より』『悪の教典』『鍵のかかった部屋など多数の有名作がある貴志祐介さんの作品の中でもかなり初期の代表作ですね。

 

保険金殺人がテーマの作品で超常現象や幽霊は一切無しの物語なのですが、「恐すぎる!」と、ホラー小説では必ず話題に上る作品。私自身も今まで読んだ本の中でどれが一番恐かったかと聞かれたら『黒い家』だと答えますね。ホント、とにかく恐いんですよ。

 

作者の貴志祐介さんは専業作家になる前に生命保険会社に勤めていたとのことで、保険会社の業務内容や保険金犯罪についてかなり詳細に描かれています。それによって物語に圧倒的なリアリティが生じている為、読んでいるととんでもなく恐ろしい訳です。

 

30年ほど前の作品ですので、今読むと時代は感じますけどね。保険制度や保険金犯罪などの在り方はこの数十年の間にかなり変わっているのではないかと。ま、「保険」を利用して金をせしめようっていう最終目的は変わらないのでしょうが。

 

1999年に実写映画化されていまして、この映画もまたかなりの有名作です。

 

 

私は観られていないのですが、原作とは内容が違うのだとか。でも映画は映画でメッチャ恐いらしい。2007年には韓国でリメイク版映画も制作されています。

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生命保険

 

生命保険とは、統計的思考を父に相互扶助の思想を母として生まれた、人生のリスクを減殺するためのシステムである。

断じて、人間の首にかけられた懸賞金などではないのだ。

 

と、あるように、生命保険というのは本来は人々に安心を与えるためのもの。しかし、”命を金に出来るシステム”だと捉える者たちがいる。

 

主人公の若槻は児童の首吊り死体の第一発見者にさせられて、重徳が生命保険欲しさに妻の連れ子を殺害したのだと確信。早く金をくれと毎日重徳にプレッシャーをかけられ、自宅にまで嫌がらせをされるようになりながらも警察に再三訴えたり独自調査をする。

それというのも、息子の和也の次は重徳の妻である幸子が命を狙われるのではないかと案じているからで。若槻は幼少期に兄が自殺をしていて、兄がいじめられているのを知っていたのに見殺しにしてしまったという罪悪感がいまだに若槻の中に根強くあるためなのですけれども。

 

実は、保険金をせしめるのに躍起になっているのは妻の幸子の方で、心配して警告の手紙などを出した若槻の行動はすべて裏目に出ることとなる。

 

そもそも、第一発見者として若槻が選ばれたのも「自殺で保険金は下りるか」と匿名で電話してきた幸子に若槻が自身の体験談を絡めて自殺を止めようとしたため。実際は、幸子は自分が自殺するってんではなく、息子を自殺に見せかけて殺したら保険金が下りるか聞きたかった訳ですが。

 

金のために実子を殺そうとしている幸子としては、残された遺族の気持ちが云々と説得しようとする若槻は滑稽で興味深く、利用できると目を付けたんですね。

 

 

 

 

 

 

人間として

若槻の健闘も虚しく、和也の保険金請求が正式に受理されると幸子の行動はエスカレート。夫の重徳の両腕を工場の裁断機で切断して保険金を請求。上手いこと受理されないとわかるとサイコパスの研究対象として接触してきた心理学者助手の金石、データ・サービスの交渉屋である三善を殺害。若槻を邪魔者と見做してターゲットにし、部屋に潜入、若槻の恋人・恵を攫い・・・・・・と、もはや保険金どうこうではない暴走殺人鬼っぷり。

 

この幸子のエスカレートしていく過程が本当に恐ろしいのですよね。終盤にかけてはモンスターとのバトルってな具合で、ホラーアクションものとしての読み応えもあります。

 

初読の時は、重徳の両腕切断でドン引きした記憶。その後は「狂人ってこういうことなんだ・・・」と、最終決着がつくまで戦慄し続けたものです。

 

 

まったくのとばっちりで恐ろしい目に遭った若槻の恋人である恵ですが、逞しいもので、菰田幸子をサイコパスの怪物扱いするようなことはあってはならないと若槻に主張する。

人格障害は育ちや環境によってなるもので、根っからの悪人はいない。本当に危険で邪悪なのは、自我を守るためにサイコパスなどと言って特定の人物を人間のカテゴリーから外そうとする人達だと。

 

ここまで人間離れした凄まじい描写しておいて、「菰田幸子は怪物」じゃないと主張されると読者としては若干、いや、だいぶ、戸惑ってしまいますが。もう本当に行動も倫理観も恐ろしいのですもの・・・(^_^;)。

 

この本では主人公の若槻が恵のこの信念を自分も信じようと決意して終わっていますが、作者の貴志祐介さんは他の作品でも度々サイコパスについて触れていまして、後の代表作である『悪の教典』では今作での恵の信念を全否定するような、生まれながらに他者への共感・良心が欠如したサイコパスが主人公です。

 

 

 

悪の教典』だと「サイコパスとは如何なるものか」が非常に丹念に描かれていまして、貴志祐介さんが長年取り組んできた題材なのだろうなと。

 

私個人としては恵の意見には概ね賛同ですし、環境要因による人格障害が殆どだろうとは思っています。サイコパスという言葉が濫用されるのも軽率で危険なことだと。

しかし、”生まれながらの悪人”というのも居るのだろうと思います。「そんなことない!根っから悪い人なんていない!」というのもまた、自身の理解が及ぶ範疇だけで物事を捉えようとする傲慢な姿勢だよなぁって。

 

ま、今作の菰田幸子が”人間として”狂っているのは間違いありません。『黒い家』は「人間」の恐怖が極限まで描かれている最狂ホラー小説ですので、まだまだ暑い日が続くこの最中に是非。

 

 

ではではまた~

 

 

 

 

 

 

『今際の国のアリス』最終回がひどい?ネタバレ・考察

こんばんは、紫栞です。

今回は、ドラマ今際の国のアリスについて感想を少し。

 


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こちら、麻生羽呂さんの漫画作品を原作としたNetflixの配信ドラマ。

 

2020年12月にシーズン1で8話、2022年12月にシーズン2で8話。2025年8月現在で16話配信されていて、来月の9月にはシーズン3が配信予定です。

 

内容は無職の落ちこぼれゲーマー青年・アリス(山崎賢人)が、友達二人と一緒に渋谷駅にいたところ停電が発生。外に出てみると、渋谷は自分たち以外に誰もいないもぬけの殻の街となっていた。

夜になったら突如明かりが灯り、電光掲示板に示された通りに雑居ビルに行った三人は訳の分からぬままあるゲームに参加することに。そこで、この世界で生きていく為には命懸けのゲームに参加してクリアし続けなければならないと知らされる――・・・。

 

と、ま、簡単にいうとSF設定のデスゲームものですね。

 

 

前に漫画の中でやっているゲームを実際にやってみようという動画配信の企画で、

 

www.yofukasikanndann.pink

 

この作品に出て来る「美人投票」(※ドラマ内では「てんびん」)をやっていたので、ドラマでこのゲーム部分も実写化されていると知り、それ目的で観てみた次第です。

 

美人投票」が知略と心理戦のゲームだったので『今際の国のアリス』自体も『カイジ』や『LIAR GAME』、『賭ケグルイ』のような頭を使うギャンブルものかと思っていたのですが、今作は”アリス”らしくトランプの札によってゲーム種類が分類されていて、ゴリゴリのパワー戦やひたすら精神的にクル裏切りの殺し合いなど様々。

 

色々なジャンルのデスゲームが描かれるので、飽きずに楽しむことが出来ます。アクションシーンは見応えがありますし、登場人物の背景も確り描かれていてヒューマンものとしても良作ですね。世間的にもドラマ作品として非常に評価が高いです。

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今際の際

なんか、『今際の国のアリス』をネットで検索すると「ひどい」「最終回」とサジェストで出て来る。

 

この物語はアリスたちが様々なデスゲームをしていくなかで、”この世界はいったい何で、何故アリスたちプレイヤーはこの世界に来たのか”という謎が並行して描かれる構成になっていまして、シーズン2の最終回にはゲームの最終決着もこの世界が”何なのか”も確り示してくれています。

 

最後のゲームをクリアしたアリス。国に残るか出て行くかの選択を迫られて出て行く方を選択したアリスが目を覚ましてみると、渋谷で救護活動を受けているところだった。

あの日、渋谷に隕石が落ちていた。あの世界に来たプレイヤーたちはその場に居合わせた人々で、生死の間を彷徨っていた数分間(※厳密にいうと心停止の1分間らしい)があの国での体験だった。

 

つまり、臨死体験中の「今際の際」での出来事だった訳ですね。

 

これが、ま、人によっては「夢オチじゃないか!」ってなるってことですかね。確かに、夢を見ていたようなものと言われればそうなんですけど。

 

私は「なるほどなぁ」というか、感心しましたけどね。タイトルの”今際の国のアリス”がそのまま物語そのものを表しているんだんなぁと。

タイトルですべてを示せている作品はそれだけでもう良作だという気がする(あくまで個人的見解ですけど)。しかも、最終回でわかるってのがまた良い。

 

 

それに、「今際の国」での生死や怪我がそのまま現実世界でも反映されているので、夢オチというのともまた違うんですよね。あくまで「今際の国」でのデスゲームをクリアしたからこそ現実世界で死にかけていた人々は生還出来たのですから。

言ってみれば、今際の際での生命力の闘いが具現化されたのがあの国でのデスゲームだったってことですよね。

 

ゲームといいつつ単純に殺し合いさせてるだけのようなものもあり、シーズン2で出て来るスペードのキングに至ってはゲームでも何でも無いただの一方的な襲撃で、知的に回避する方法も無いし、こんなのデスゲームもの作品としては駄目じゃないのかと観ている最中に何度も思ったのですが、プレイヤーたちが皆現実世界では命が風前の灯火状態だったのだとすると、どうしようも出来ない「死」といいますか、淘汰しようとする力ってことなのかと。そうだとすると、理不尽なのも当然なのか~と納得出来ましたね。

 

ニラギ(桜田)とか、火炎放射器で焼かれて銃で撃たれて殴られても生きていて「いやいや、何でコイツ死なねぇんだ?不死身か!?」ってなっていたんですけど(途中、こんなに満身創痍なのに女性を襲おうとする元気があるのビックリした)、生命力が強かったってことなのかと納得。真にタフネスなんですね・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次のシリーズ

上記したように今作は色々なジャンルのデスゲームが描かれていますが、私は知略や心理戦もののゲームを観るのが好きなので、チシヤ(村上虹郎)が出て来る「どくぼう」や「てんびん」がやっぱり好きですね。

このチシヤ、如何にも人気がありそうなキャラクターですよねぇ。せっかくのお医者さん設定が活かされなかったのは残念でしたが。怪我の治療して欲しい人いっぱいいたんだけど・・・。

 

個人的に、ウサギ役の土屋太鳳さんをはじめとして女性陣が皆良かったです。特にアン(三吉彩花)は”漫画的なバツグンの美女”って感じで、見ていて楽しかったです。私は原作漫画は未読なんですけどね。

9月に配信予定のシーズン3にもアンは出てくれるようなので楽しみです。

 


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このドラマ、上記したようにシーズン2でもう最終ゲームをクリアして現実世界に戻って伏線もタイトル回収もして物語として綺麗に完結しているので、シリーズ3をやるって知って「え?もうやることないのでは?」だったのですけども。実際、原作漫画の最終刊までの内容はシーズン2でやりきっているようですし。

 

どうもというか、やっぱりといいますか、シーズン3はドラマオリジナルでの内容となるようです。

オリジナルか・・・正直、少し不安ですけれども。シーズン2での終わりが綺麗だったぶん、蛇足にならなきゃいいんですけど。続編で台無しにされる作品ってありますよねぇ・・・。

原作漫画にも続編はあるようですが、内容は違うみたいですしね。

 

しかし、あそこからどの様に繋ぐのか非常に興味がありますし、やはり楽しみです。シーズン3も必ず観ます!

 

 

ではではまた~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぼっけぇ、きょうてえ』4編 あらすじ・紹介 とても恐い!地方怪談 夏のオススメ本~⑰

こんばんは、紫栞です。

今回は、岩井志麻子さんの『ぼっけぇ、きょうてえ』をご紹介。

 

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

 

 

地方怪談

『ぼっけぇ、きょうてえ』は1999年刊行のホラー小説の短編集で、第6回ホラー小説大賞受賞作、山本周五郎賞受賞作。

刊行当初かなり話題になった本ですね。調べたら99年刊行だということに打ち震えている。あの話題になっていた時からそんなに経っているのか・・・。

大正時代の日本画家・甲斐荘楠音「横櫛」が表紙に使われているのが印象的で、インパクトのあるタイトル「ぼっけぇ、きょうてえ」は岡山の方言で「とても、怖い」という意味。

 

表題作である「ぼっけぇ、きょうてえ」は2006年にアメリカのテレビオムニバスシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」という世界のホラー映画監督13人を集めての映画企画にて、三池崇史監督で『インプリント~ぼっけぇ、きょうてえ』という題名で映像化されています。作者の岩井志麻子さんも女優として出演されているのだとか。しかも女郎を拷問する役。

題材がインモラル溢れすぎてて米国では放送自粛。日本の映倫審査では審査対象外でほとんどの映画館から一般上映拒否。・・・・・・どんだけだよって感じですが、ま、この作品を三池監督に撮らせたらそうなるのは必然なのかも。

今ではKADOKAWAチャンネルなどで観られるようです。

 

 

 

 

この短編集は4編収録。

大正時代や明治時代が舞台で、すべて岡山近辺での物語となっています。地方での時代的背景故の恐怖が岡山弁で効果的に描かれているのが特徴のホラー短編集ですね。

 

 

 

●ぼっけぇ、きょうてえ

岡山の遊郭。目や鼻が左のこめかみに向かって吊り上がっている醜女の女郎が客に乞われて己の身の上話を語る。

 

 

●密告函

明治三十四年。岡山県下でコレラ病が蔓延につき、伝染病予防の為に近隣に疑似患者や隠蔽者がいたら名前を投函するようにと”密告函”が村役場に設けられることに。

村役場に勤めていて密告函の管理担当者を命じられた弘三が主人公。密告函に村の者達が噂する祈祷師の娘の名前が投函されたことで弘三はあらぬ欲に駆られることとなる。

 

 

●あまぞわい

岡山市で酌婦をしていたところを見初められて竹内島の漁師の嫁になったユミ。なれない漁村での生活と、周りからは酌婦あがりだと蔑まれ夫からも役立たずと罵られ殴られる日々に嫌気がさしていたユミは、坊主頭の女の姿を度々目撃するようになる。

 

タイトルの「あまぞわい」は作中に出て来るお話で、”そわい”というのは海で潮が引いた時にだけあらわれる浅瀬や岩礁のこと。”あま”には「海女」と「尼」の二通りの謂われがあって、それぞれに伝えられている伝承が異なる。

 

 

●依って件の如し

明治半ばの岡山の北。数えで七つのシズは年の離れた兄の利吉と二人で暮らしている。他に身内はおらず、村人の大半には疎まれていた。シズと利吉の母が「牛と女が入ってはならない処」とされる”ツキノワ”で死んだことで村人に忌み嫌われていたのだ。シズはやがて真っ黒な牛の頭をした女を見るようになる。

 

タイトルにある「件」は妖怪の”くだん”のこと。半人半牛の姿をしていて、生まれてすぐに必ず的中する予言をしてすぐに死ぬとされる。そもそも、「件(くだん)の如し」という言葉自体がこの妖怪が由来とも言われているみたいですね。

 

 

 

 

 

 

恐てえよ

説明としては表題作の「ぼっけぇ、きょうてえ」が一番シンプルなのですが、一番インパクトがあるのもこの短編ですね。岡山弁が最も効果的に使われている短編だと思います。方言での語り口じゃないと魅力半減なのだろうなぁ。夜、寝る前に蒲団に入った状態で読むとより恐さ倍増でよろしいかと。

他の3編も台詞部分はすべて岡山弁ですので、人によっては読みにくいと感じるかもしれないですね。私はまったく苦になりませんでしたが。

 

全編にわたり、描かれるのは超常現象などの恐怖ではなく「人間の恐さ」です。

間引き、堕胎、奇形、売春、近親相姦・・・・・・と、反社会的な数々が明治・大正時代の閉鎖的地方での恐怖としてねっとりと忌まわしく語られる。特に恐いのが、この異常さが当時の地方では常識的に行われていたのだろうなと想像させるところですね。

 

単純に”恐い”というのではなく、人の業や哀しさを痛感させられる物語集となっておりますので、夏の夜に是非。

 

 

ではではまた~