こんばんは、紫栞です。
前回『金田一少年の事件簿』の記事を書いた流れで今回は島田荘司さんの『占星術殺人事件』を紹介しようかと。
「何で金田一少年からの流れでこの作品になるんだ?」と思われる方も「ああ、“アレ”ね・・・」と思われる方もいらっしゃることと思いますが・・・。
“アレ”とは『金田一少年の事件簿 FILE2 異人館村殺人事件』における“トリック流用問題”の事です。
一部の人の間では有名。まぁつまり『占星術殺人事件』のトリックが金田一少年の『異人館村殺人事件』にそのまま模倣されてるってんで作者の島田さんが抗議したり何なりしたという・・・おかげでドラマ版はDVDの方などがこの話だけ欠番になっていたりします(VHSの方だと入っているのかな?)
他に『オペラ座館殺人事件』はガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』から
『魔術列車殺人事件』はこれまた島田荘司の『奇想、天を動かす』から
トリック流用が指摘されてるんですが、異人館村殺人事件が一番“モロ”なパクリみたいですね。
島田さんの書くミステリーのトリックは奇抜で派手で漫画で使うには見栄えが良いから流用したくなるのかな~とも思いますが、ちょっと異人館村はパクリ度合いが強すぎましたね。抗議されてもしょうがないかな(^_^;)
実は私、この“トリック流用問題”当時全然知らなくって。最初に『占星術殺人事件』読んだとき途中から「おや?おやおや?コレ、金田一少年で似たような設定があったような・・・と、いうか同じだな。て、事はまさかトリックはああで、真相はこうか!?いや、でも最後まで読んだらひょっとして違うのかも!そうかも!」と、自身を無理やり奮い立たせて最後まで読みましたよ。・・・・・・まぁそんなささやかな希望は解決シーンの中盤で打ち砕かれるんですが(T_T)
この『占星術殺人事件』は島田さんのデビュー作で、代表作の御手洗シリーズの記念すべき第一作目なのですが・・・アノ~ちょっと・・・読みづらいんですよね(スミマセン・・・)だから余計にね、「苦労して読んだのに・・・」と、読み終わった直後は思ってしまった訳ですが。
読みづらい要因はいくつかあるんですが、まず初っぱなから梅沢平吉たるトチ狂った男の手記がまるで読者を試すかのようにドーンと載っておりまして、占星術の説明がクドクドと続き(御手洗いわく“電話帳を読まされたみたい”な)、複雑で人数が多い関係者相関図、図解と事件現場の説明・・・等々が読者を襲う!(笑) この小説が発表されたのが1981年なんですが、お話の中で扱う事件はそこからさらに40年以上前のもので、残された資料などを紐解きながら話が展開していくのも劇的な場面変化が乏しいため読み進めづらいです。
事件自体は奇々怪々でかなり劇的なんですがね。かなり猟奇的。
多少の読みづらさはありますが、この本はなんといってもトリックがこれでもかっ!ってくらいにいっぱい入っていまして、本格推理小説としてはかなり贅沢な本ですね。流用されたトリックはメイントリックなんですが(おい)、それ以外にも多数のトリックがふんだんに盛り込まれています。
私自身、読んでいて「こんなに一冊の本に惜しげも無く何個もビッグトリック入れちゃって良いの?大丈夫?」とか変な心配してしまいました(笑)例えるならハーゲンダッツアイスとゴディバのチョコ食べている合間に高野フルーツパーラーのマンゴーを召し上がるみたいな(私はそんな豪遊はしたことはないが)それぐらいの贅沢さです。
本格推理小説ファンは必ず満足する一冊ですね。これぞ本格!
今読み返してみると御手洗と石岡君のやりとりが面白いですね。このときは石岡君まだ強気だなぁ~。シリーズ第一作目ですが御手洗のキャラはこの時点でかなり出来上がっています。やはり皆が求めるのは変人御手洗よね!
途中、ホームズを皮肉ったツッコミがあるのも推理小説ファンには楽しめるところ。
そして最後の犯人の告白文は読んでいて壮絶です。
金田一少年を読む前の真っさらな気持ちで読みたかった・・・と、いう思いはやはり残るのですが(^^;)ミステリーファン的には必読書ですし、御手洗シリーズファン的にも外せない一冊であるのは間違いないので、たとえ金田一少年を読んでメイントリックがわかってしまっている状態でも読み飛ばさずに読んで欲しいです。
いろいろ書きましたが、実は私は金田一少年の異人館村も好きなんだぜ・・・終盤の犯人の心情描写とか・・・。だから気分的には複雑だけど、どっちもおすすめなんだ・・・!
とりあえず、どっちもまだ読んでない人は先に『占星術殺人事件』をお読み下さい。どっちも読んだものの意見としてはコレしか言えない。
ではではまた~