夜ふかし閑談

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Cocco『ポロメリア』小説 解説・感想

こんばんは、紫栞です。

今回はCoccoの『ポロメリア』をご紹介。

ポロメリア

 

Coccoは歌手で、同じ『ポロメリア』というタイトルの歌もありますが、今回紹介するのは小説の方です。歌も凄く良いですよ~♪

 

ポロメリア

ポロメリア

 

 

 

この本は自伝的小説というか、私小説というか・・・いわゆる“物語”というよりは日記に近いような文章で、わかりやすい起承転結も無く、明確なオチがあるような本でも無いです。 常日頃エンタメ系の娯楽小説ばっかり読んでる私は普段ならまず手に取らない本なのですが、発売日当日に本屋に足を運び、嬉々として手に入れ、意気込んで読みました。何故かというと其れはもちろん、私がCoccoのファンだからです。今月の武道館ライヴにも行きます。今から楽しみ(^o^)

※他、Coccoの本のまとめはこちら↓

 

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この本はCocco自身の中学生のときの出来事が描かれていると思ってまず間違いないでしょう。自伝だと銘打っているわけでは無いし、人物の名前も変えられていますが、沖縄県那覇市に住んでいて祖父が琉球芝居の有名な役者さんという設定はそのままだし、お話の所々で今までにCoccoが音楽雑誌のインタビューなどで語ったエピソード・思想などに酷似した内容も出てきます。

 

 

 

 

この本の概要は“「私」が初の自殺未遂を決行するまでの一週間”です。と、いっても一週間前から自殺計画を考えていて云々・・・てな事では無く、主人公はいたって普通の日々を過ごしています。本の終盤で“ソレ(自殺衝動)”は突如としてやってくるのです。

日記のような内容の中に幼少期の回想シーンが入ったりするのでテーマがわかりづらく、内容も飛ぶので小説というよりは詩集を読んでいるような感覚ですかね。Coccoはエッセイ集何冊か出してますから(私は全冊持ってます)、ファン的には「いつもの詩集の長いバージョン」って感じ(身もふたもない言い方ですが・・・^_^;)。 

しかし、一応お話の中で一貫して描かれている事柄があります。それは“女”の事。

「女のくせに」「メスは“困る”」「あばずれ」「生理」

『男の子が生まれるまで終われないのが沖縄の嫁の務め』と作中出てきます。

主人公の由希子のうちは父親の親戚のなかで唯一男の子がいない。母親のお腹にいたときのエコー写真では男と診断された由希子は元々つけるつもりだった“恵太”という名前を中学生になった今でも親戚の集まりで呼ばれ、笑いのネタにされる。

母親は由希子に「あんたがお腹にいる時、エコー写真では男だったのよ!」「お腹の張り方も、絶対男だ、って皆言ってたのに」「そんなに男の子産んだ人が偉いわけ?ふん、なによ馬鹿にして!」などと言い続けているんですね。

母親の気持ちも分からないでは無いけども、言っちゃアカンだろですよね。これは。

“おまえが女でがっかりだ”と遠回しに言ってしまっていて、聞かされる子供の心中はかなり辛いだろうと。

そんな環境の中で、由希子は「いつか男になれるだろう」と無意識下で期待し続けていましたが、女だという決定的な証“初潮”がきてしまうのです。そして――。

 

 

 

 

 

「いつか男になれる」という思いはこの主人公(Cocco)の場合は一般的な性同一性障害のものとは違い、あくまで“期待に応えたい”一心からくるものでしょう。親の期待に応えたい。でも応えられない!生まれ持っての性別は努力で変えられるものでは無いのだから。これぞ絶望。

私が読んでいて印象的だったのは母親が由希子の友達の事を「お母さんそっくりの、男にだらしないお尻。見ればわかるわよ私」と得意気な顔をして陰口をいう所。

中学生の多感な時期に母親のこんなセリフ聞いたら一生のトラウマになるなぁ。しかも由希子は母親同士は仲良しだと思っていたわけだし。

あと去勢手術がかわいそうだっていって引き取った雌犬に何故か“ジョン”って男名つけるのも。このお母さんはいったい・・・?と思う。何か色々と軽率なのか。

 

小学生での喫煙、万引き、飼い犬への暴行シーンなどに嫌悪感を持つ人もいるみたいですが、暴力性などは誰しもが多かれ少なかれ持っているモノだし、この本を読んでCoccoの事を「サイテー」「嫌いになった」「歌もう聞きたくない」とか思うのはあまりに短絡的過ぎると感じますし、ファンとしてもそのようなコメントを見ると傷つくし悲しいです。

特に犬への暴行シーンに過剰反応する人多いみたいですけど、私はこのシーン、創作の部分が多いんじゃないかな~と思います。上記した“女性性への嫌悪”の象徴として描かれているのではないかと。犬の生理見て数時間後に由希子にも・・・というのはタイミング良すぎるしね。

 

Coccoの経歴やインタビューなどを読んだことない人には多少不親切な部分がある小説かなぁ~とは思いますが、一人の少女の葛藤のお話として興味が向いたら読んでみて欲しい一冊です。

 

 

ではではまた~

 

ポロメリア

ポロメリア

 

 

 

ポロメリア

ポロメリア

 

 

 

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