こんばんは、紫栞です。
高田崇史さんのQEDシリーズ『ベイカー街の問題』を読み終わりましたので簡単な感想をば。
『六歌仙の暗号』に続くシリーズ第三作目ですね。
あらすじ
棚旗奈々は偶然再会した大学の先輩・緑川友紀子に誘われ、桑原崇(通称、タタル)と共にシャーロキアンクラブ『ベイカー・ストリート・スモーカーズ』のパーティーに参加することに。しかし、パーティー内での寸劇の最中に『スモーカーズ』会員が惨殺されてしまう。殺された坂巻は謎の文字が書かれた紙切れを握り締めていた。この会では以前にも会員の女性が謎の死を遂げていたらしいのだが――。
そして、またしても『スモーカーズ』会員が殺される事件が発生。この連続殺人には「ホームズ譚」の解釈を巡る諍いが関係しているのか?
ダイイング・メッセージを解き明かしたとき、そこに現れる真相。ホームズに隠された秘密の先にあるもの・・・そして浮かび上がる殺人犯の正体。 タタルが連続殺人の謎、そして「ホームズの秘密」に迫る!
この本はシャーロック・ホームズが題材です。私はQEDシリーズはこの三作目までしかまだ読んでいないのですが、ちょっと調べたところによるとQEDシリーズは歴史上の謎解き(主に日本)がほとんどで、架空の人物で海外物の題材は珍しい・・・と、いうか“ホームズ”のみだそうです。なので、シリーズ内では異色作なのかな?
“うんちく小説”であるこのシリーズですが、読んでみた感想としては“ホームズ”について詳しくなれるというよりは“シャーロキアンの生態”について知ることが出来るって感じが強いですかね。
シャーロキアンって・・・ちょっと“あちら側”の、端から見たら“イッチャッテル”人達と見えるんですが(作中、奈々も戸惑いまくってましたしね)、まぁホームズ作品を楽しむための知的遊戯なんだよ~みたいな。奥が深すぎますね。
殺人事件の方なんですが、登場人物が少ないですね。最終的に残る容疑者が三人ですから。短編レベル。
読みやすいのですが、長編ならもうちょっと容疑者がいた方が読みごたえあるかなぁ~と思います。ここら辺が犯人当てには重点を置いていないのだという印象を少し受けてしまいますね。
しかし、解決編は途中でどんでん返しがあって「お?」とさせられ、面白かったです。だからこそ、もうちょっと人間関係複雑にしたり、伏線張ったりすればより楽しめたんじゃないかと思ってしまうのですが(^_^;)。
そして、この本でのメイン(もうそう言ってしまっていいでしょう)の“ホームズの謎”なんですが、本の中でホームズのどの部分が謎なのか、タタルさんが奈々に解説してくれます。
それによりますと・・・
●ホームズが『最後の事件』で姿を消す前と後では、まるっきり性格が変わってしまっている
●『最後の事件』と『空家事件』に関して、多くの矛盾点がある
大きく分けるとこの二点。
で、タタルさんが終盤「謎が解けた」言うわけですが・・・・・・
私の個人的な意見としては、この解明が真相だというのはちょっと強引だと思いますね。表面的な辻褄は合わせられるんでしょうけど・・・ワトスンの事侮りすぎじゃね?って感じ。だ、しぃ~……正直言うと、私は容認出来ません。ホームズ全巻読んだ身としてはね(^^;)
説としては面白いと思いますが。
“これが唯一の真相”と言うのでは無く、数ある説の中の一つとして楽しむって感じですかね。作中のシャーロキアン達もタタルさんの“謎の解明”を聞いても「そうだったのか!」的に感嘆している様子も無いですしね(奈々さえも素直にタタルさんの説受け入れてなさそうだし)。
実はシャーロキアン達の間では別に目新しい解釈でも無いらしい。まぁ世界中のシャーロキアンが日々研究している訳ですからねぇ。これぞ知的遊戯…。
ぶっちゃけ、普通に、まっとうに考えるなら『最後の事件』と『空家事件』で矛盾点が多いのは死んだ人生き返らせる為に無理矢理辻褄合わせたから結果的に無理が生じたって事だろうし、性格が変わったのは書いてなかった期間の間に作者の人生観などが変化したせいだろうって言いたくなっちゃいますが……
ま、シャーロキアン的にはそれはNGなんですね。コナン・ドイルが書いた文章とは考えないってのが大前提ですから。う~ん。知的遊戯…。
そう考えると、タタルさんって完全なシャーロキアンですね。お話の最中、ドイルの名前全く出しませんから。
シャーロック・ホームズのシリーズを完読している人が楽しめるのは勿論ですが(各章の題名がホームズ作品からとられてるのとかクスリとします)、ホームズ作品を全く知らない人がこの本読んだら「ホームズ読んでみたい」って気持ちにさせてくれる本だとも思います。
“知的遊戯”楽しんでみては如何でしょう。
ではではまた~