こんばんは、紫栞です。
本多孝好さんの『チェーン・ポイズン』読みました。簡単なあらすじと感想を少し。
あらすじ
「本当に死ぬ気なら、1年待ちませんか?1年頑張ったご褒美を差し上げます」
一年我慢すれば何の苦痛もない、煩わしさもない、一瞬で楽に眠るように死ねる手段をくれるとその人物は言った。死への憧れを抱いていた“私”にとって、それは決して悪い取引ではないように思われた――。
持田和夫、如月俊、高田章子、この三人の自殺に奇妙な共通点を見つけた雑誌記者・原田は独自で事件を追い始める。やがてたどり着いた真相とは。
お話は1年後に死ぬことを決めた30代女性の“その日まで”の視点と三人の自殺の謎を追う雑誌記者の視点とが交互になって描かれています。
私は本多孝好さんの本を読んだのはコレが初ですが、重たい主題をグイグイと引き込まれる文章で最後まで読ませてくれる面白い作品でした。
養護施設のボランティアを通じて女性の心境が変化していくってのは「ちょっとアリキタリだなぁ」とか最初の方思ってしまいましたが(すみません・・・)変化の過程が自然に、丁寧に書かれていて、最終的に読者としても感情移入してしまいました。園長の息子がわかりやすいヒール役で出てきますが、私は園長の方により怒りを感じてしまいましたね。うーん(-_-)結局身内かわいさが最後には勝ってしまうもので、それが自然なことなのかなぁとは思いますが・・・しかしアンタ、責任云々を人に説いておいてそりゃないだろ・・・ブツブツ。
ホスピスでの老人や院長とのやり取りが印象的ですね。「生」と「死」を真っ向から扱っているこの小説では欠かせない重要なシーンです。
この小説は『どんでん返し』で有名な作品みたいですね。かくいう私もその手の紹介ページを見て読んでみた次第なのですが。
読み終えての感想ですと、別に『どんでん返し』ん返しが無くっても十分面白い小説なのにな ~というのが正直なところです。
“1年後に死ぬことを決めた女性の「死」を迎える為の「生」”ってお話だけで十分と思わせてくれるぐらい、ミステリー以外の箇所が良い小説ですね。『どんでん返し』のところは「ああ、なるほどな」とは思いますが、この系統のミステリーを読み慣れている人にとってはそこまでの意外性はないんじゃないかと思います。
このお話は『眠るように楽に死ぬことが出来る毒薬』の存在によって起こる自殺の連鎖を描いたものです。
での真賀田四季のセリフ
「死を恐れている人はいません。死に至る生を恐れているのよ」
「苦しまないで死ねるなら、誰も死を恐れないでしょう?」
をとっさに連想しました。
“何の苦しみもない”“ただ飲むだけ”という特性が境界線上でふらついている人の背中を押してしまうんですね。
“毒が背中を押す”という部分では京極夏彦さんの『邪魅の雫』も連想しますね。
二冊ともオススメ。
ネタバレは避けますが、この『チェーン・ポイズン』は「死」ばかり見つめていた人間が「生」へ向かっていくお話です。読後感はかなり良質ですね。オススメ~(^_^)
上の文庫版の表紙、なんだか恐いですね(インパクトはありますが)私は単行本で読んだので今見て驚きました(笑)単行本の表紙の方が中身の作品雰囲気には合ってると思いますよ。
ではではまた~