こんばんは、紫栞です。
前回の記事で森博嗣さんのXシリーズの完結編『ダマシ×ダマシ』について書きましたが
今回は壮大な森博嗣ワールド始まりのシリーズ【S&Mシリーズ】について紹介したいと思います。
S&Mシリーズとは?
森さんのデビュー作『すべてがFになる』から始まる一連のシリーズ。
国立N大学建築学科の助教授である犀川創平とその教え子で恩師の娘でもある西之園萌絵の二人が次々と起こる殺人事件を解明していく。シリーズ名の「S」と「M」は二人のファーストネームのイニシャルから取られています。「&」を抜かして言うと驚かれる・・・(笑)
シリーズの探偵役は犀川創平ですが、この犀川先生、非常に腰が重く事件への積極性はほぼ無い。なので、お話は常に萌絵の側からもたらされます。萌絵がわざわざ事件持ち込んできたり、巻き込まれたり・・・で、最終的に犀川先生がやむを得ず解明させるって感じですね。
コンビものだと探偵役じゃない方は凡庸・普遍的な人物として描かれがちですが(読者の側にたってと探偵役との対比とかでそうなる)この西之園萌絵はとんでもなく金持ちで優秀で美人。毎度の推理も八割方真相は見抜くのですが、詰めが甘いのか最後の最後は犀川先生のご厄介に。
超絶金持ちで美人。優秀でファンクラブまであったりする西之園萌絵ですが、犀川先生一筋で全くぶれません。「私と結婚して下さい」とプロポーズしてみたり、直接的すぎるアピールをするのですが、それをノラリクラリと躱し続ける犀川先生。しかし憎からず思っている様子ではある彼の胸中はいかに・・・
と、いった二人のやり取りもこのシリーズの醍醐味。この二人の関係性は【S&Mシリーズ】終了後も短編集や他シリーズで変化し続けます。
ドラマ
【S&Mシリーズ】は2014年に『すべてがFになる』の題名で連ドラ化されました。
キャストは
でしたね。
「キャストとキャラクターのイメージが違う!」という意見が多かったですが(原作ありの実写はみんなそうですけどね・・・)
はい。まぁ違いますよ。
私も萌絵はモデル風の派手な美人を想像していた・・・と、いうか原作にそう書いてあります。「髪が長い!」って意見も多かったですが、髪は原作の中でのばしたりしているんだけど・・・。
犀川先生は「かっこよすぎる!」「若すぎる!」って意見がネットでは多かったですが・・・みんなどんだけ犀川先生のことオヤジの醜男認定してるの?と、個人的には疑問。一応シリーズ開始時点では32歳なんだけど。それに作中に“モテそう”って言われている描写もあるし。私の中では犀川先生は『ぼ~としていてカッコイイわけではないが、なんとなく女にモテそうなタイプ』ってイメージなんだけどな~。まぁ原作だと萌絵と犀川の見た目が不釣り合いって設定だからかな。年齢差がね、もっと感じさせた方が良いとは思いました。
個人的に睦子叔母様が出てこなかったのが残念。結構強烈なキャラクターで面白いのですけどね。
肝心のお話の方は一つの事件を二週にわけて放送って形でしたね。原作の半分の話数しか出来てない。ドラマとしては割と真面目に作られていたと思うのですが、理系ミステリィの異名を持つ森博嗣作品はキャラクターの熱量が乏しく淡々とした場面や数学的分野のお話、哲学的な部分が多々あるので映像でやると上手く伝わらないのかなぁ~と。エンタメ的じゃないってことですかね。
連ドラじゃなくって『すべてがFになる』だけを映画とかでやった方が良かったのでは?とか思います。
刊行順
※ドラマで何話目にやったかも交えてご紹介。
1『すべてがFになる』
【S&Mシリーズ】どころか森博嗣ワールドはコレを読まないと何にも始まらない!絶対に必読!
ドラマでは5・6話目。最初にやった方が良かったのでは?何で中盤にしたのか謎。
2『冷たい密室と博士たち』
密室モノ。ドラマでは1・2話目。ちょっと密室の構造が複雑で文章で読むと上手く想像できなかったので、映像化されて助かった(笑)
3『笑わない数学者』
比較的王道の本格推理小説。森さん、今はもうこの手のお話書かないだろうなと思う。貴重。本格ファンにオススメ。
4『詩的私的ジャック』
如何にも森博嗣ミステリィっぽいお話。タイトル通り森さんお得意の詩もいっぱい出てきます。
5『封印再度』
このお話に登場する男の子、なんだか破綻していると思う。然るべき機関で診てもらった方が・・・。ドラマでは3・4話目。婚姻届の話やって欲しかったんだけどな(ええ、すごく)時期的に無理か~。混乱して取り乱している犀川先生は必見です。
6『幻惑の死と使途』
私、このお話好きです。お気に入り。ドラマでやって欲しかったな~。Gシリーズのメグミちゃん初登場。この時中学生ですね。
7『夏のレプリカ』
変化球的なお話。前作の『幻惑の死と使途』と平行しての構造で偶数章のみの表記ですね(『幻惑の死と使途』は奇数章のみ)。しかし、だからといって章ごとに交互に読むのは最初止めた方が良いです(笑)再読でお試しあれ。
8『今はもうない』
ある意味シリーズ最大の衝撃作。「8作目でこうくるかっ!」と。いつもの調子で読んでいると騙されます。
9『数奇にして模型』
ドラマでは7・8話目。コレ、ドラマでやるのか~とちょっと驚き。犯人像がちょっとアレなんでね(^_^;)女優さんにコスプレさせたかったのかな。
10『有限と微笑のパン』
シリーズ最長の最終巻。まさに最後にふさわしいお話。ドラマでは9話と最終回。最後の真賀田四季と犀川先生の会話が凄く好きなのですが、ドラマでは色々と残念な感じに(T_T)これじゃ伝わらん・・・。このシリーズ完結編は是非原作で!
以上、全10作。
アニメ
2015年にアニメ化もされました。こちらは『すべてがFになる』一つの事件を四季シリーズも交えて全11話かけて放送。
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率直な意見としては『もの凄く眠くなる作品』(笑)
原作に対して実直にやるとこうなるのね(^_^;)やっぱりエンタメ的じゃないんだなぁと痛感。一つの事件を11話使ってやるってのはどうしても間延びしちゃいますね。作品としては丁寧に描かれていて原作の雰囲気も表現されているし良いと思います。オープニングが好きでした。個人的にはキャラクター造形は実写ドラマ以上にもの申したい。特に萌絵・・・なんでああなる。
最後に(ならない)
今にして思うと、【S&Mシリーズ】は一番普通のシリーズ・・・なんて言うと語弊がありますが、個々の事件がしっかりと描かれた、推理小説の形態にそったシリーズでしたね。この後どんどんと一般的な推理小説の枠組みから離れて森さん独自の世界になりますから。その変化していく過程や繋がりが各シリーズを追っていく楽しみなのです。犀川先生や萌絵は他シリーズにもサブキャラクターとして登場しますし、絶対的に重要な真賀田四季も始まりはココですから。
やっぱり森博嗣ミステリィは【S&Mシリーズ】から・・・と、いうか『すべてがFになる』からなので!コレ絶対!!
壮大な森博嗣ワールド。まずはこのシリーズからご堪能下さい!
ではではまた~