こんばんは、紫栞です。
今回は乾くるみさんの『リピート』をご紹介したいと思います。
只今、読売テレビ・日本テレビ系で放送中の連続ドラマ『リピート』の原作本ですね。
実は私、この本ずっと前に買って読まずに放置していたのですが(そういう本が何冊もある・・・)、今回ドラマ化されると聞いてやっとこさ、読んでみました。
あらすじ
「今から約一時間後の午後四十五分に、地震が起きます。三宅島で震度四、東京は震度一です」
九月一日、日曜日の午後。大学生の毛利圭介のもとに見知らぬ男から、いきなりこのような奇妙な電話がかかってきた。不審に思いつつも、大して気にもとめなかった圭介だったが、一時間後、電話の男が告げていた通りの午後四十五分に地震が起きる。
驚愕する圭介のもとに、再び先ほどの男から電話がかかってくる。男は未来から来たと言い、時間旅行のゲストの一人としてあなたをお誘いしたい。詳しい説明は九月二十九日、横浜中華街にある《回龍亭》という店でするので、是非来て欲しいと告げる。
言われた通りに二十九日にその店に行ってみると、集まったのは九人の見知らぬ男女だった。皆、圭介と同じように地震予知の電話をうけ、ここに来るように言われたという。
地震予知電話の男は風間と名乗り、店に集まった皆を“現在の記憶を持ったまま十ヶ月前の自分に戻れる「リピート」”にお誘いしたいと提案する。
戸惑いつつも人生のやり直しに挑む男女達。しかし、「リピート」した先で一人、また一人と不審な死を遂げていき――。
タロット・シリーズ
この『リピート』は乾くるみさんの代表シリーズ【タロット・シリーズ】の内の一冊です。タロットカードの十番・運命の輪がモチーフになっていますね。
他に
●塔の断章(16番・塔)
●イニシエーション・ラブ(6番・恋人)
●セカンド・ラブ(2番・女教皇)
●嫉妬事件(3番・女帝)
が、あります。
『イニシエーション・ラブ』については前にこちらの記事でも少し触れましたね↓
タロット・シリーズに共通しているのは“天童太郎”という人物が必ず登場するところです。が、この天童さんが探偵役で活躍するようなミステリシリーズものではなく、各作品は完全に独立している作品で、ストーリーや人物に繋がりは一切ありません。“天童太郎”というキャラクターも連続しているものではないので、作品によって違う“天童さん”で、役割も異なります。主要人物でガッツリ登場するときもあれば、ほんのチョイ役でしか出て来ないことも。
『リピート』では主要人物としてかなり活躍していますね。ドラマだと主要三人の内の一人ですし。
原作小説の率直な感想
え~、正直言いますと、私的にはいまいちでしたかねー(^_^;)
肝心の時間旅行「リピート」をするまでが何だかやたら長いです。「どうしよう」「ああしよう」「いやでも」とか逡巡しまくって、図書館で調べ物など仕始めたり、ペテンを疑ったり、競馬の詳しい話が入ったりする始末。これらのシーンは後半で何か意味を持ってくるのかといったら別にそうでもない。前半は「この部分は必要なのか?」という疑問が常に付きまといます。さっさとその「リピート」とやらをしたらどうだ。と、イライラしてくる。
6章でやっと「リピート」をした後はドンドンとスリリングに展開していきます。アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』みたいな展開ですね。
しかし、主人公の圭介を筆頭に登場人物皆、そこまで好感を持てる人がいない(むしろ反感を抱くような人ばっか)ので何だかどう展開してもどうでもいいような気になってしまうんですね~。ハラハラドキドキ出来ない。
別に感情移入出来る人物がいない小説は沢山あるし、悪人ばっかでもかまいやしないのですが、読んでいて関心を寄せられないというのはちょっと。どうも人物が表面的にしか描かれていないような印象を受けます。
真相部分も演出のせいなのか、そこまで驚きを感じる事が出来ません。読後、思い返してみるとよく考えられたアイディアだって気はするんですが・・・。
しかし、「リピート」前の“前説”が長いのは『リプレイ』
や他タイムトラベルものの名作へのオマージュ的意味合いがあるのかも知れません。私はSF小説あんまり読まない人間なので詳しいところはわかりませんが・・・(^_^;)
文庫版の大森望さんの解説を読んでいて思ったのですが、この『リピート』という小説はゲーム感覚で楽しんでもらうのが狙いで書かれているのかも。
十人の男女が時間旅行するというのはゲームの設定っぽいですし。それならキャラクターを掘り下げて書いていないのもわざとそのようにしているとも考えられます。
あと、他のタイムトラベルものとは違って、“タイムトラベルし続けることが出来た者が勝ち”といった方向にストーリーを持って行くのが斬新ですね。
原作とドラマとの違い
ドラマの第一話を観たのですが、時間旅行「リピート」の大まかな設定以外は原作とは違うところだらけですね。同じところの方が少ないぐらいに感じます。
まぁ、原作の設定の面白さを活かしつつ、他は大胆にいじって、各キャラクターを掘り下げた人間ドラマを描いた方が見応えのあるドラマになるかなと思います。
とりあえず、原作での長いくだりをすっ飛ばして、第一話でさっさと皆が「リピート」したのはストーリー展開として正解・・・って、いうか、「そうだよね、ここ飛ばすよね」って感じ(笑)
1番大きな違いは、主人公が毛利圭介(本郷奏多)から篠崎鮎美(貫地谷しほり)に変わっているところです。
原作はひたすら圭介視点で語られているので雰囲気はガラッと変わりますね。この篠崎さん、原作だと男に全力で寄っ掛かることしか考えていないような女性で、お話が進めば進むほど強引で打算的な面が目立ってくるので、人によってはかなりの嫌悪感を抱くかと思います。ちなみに、私は大っ嫌いです。「なんだぁ?この女」とか思う。まぁ良くも悪くも表面的にしか描かれていないので、腹立たしさが持続する訳ではないのですが。圭介もなかなかの最低野郎なので、どっちもどっちというのもある。
ドラマは各キャラクター、性格も設定も原作とは大幅に異なるので、原作のキャラクター像はドラマを観る上ではまったく当てにしない方がよさそうです。
原作では篠崎さんは司書じゃないし、恋人もいない設定で、特別おとなしい性格ってこともない。
圭介はバイト内容と由子(島崎遥香)という女性が出て来るのは同じですが、原作だと表面的には社交的な性格で、「リピート」仲間のまとめ役をしたりしますが、ドラマの圭介くんはそんなことしなさそう。社交性の欠片もないというか(笑)由子も原作ではあそこまでヤベー女ではないです。
天童さん(ゴリ)はまだ何とも言えないですが。でも天童さんは原作とはあんまり変えないかも。職業は違いますけどね。原作だとシナリオライター。
他に気になる違いは大森さん役を安達祐実がやっているところですかね。原作だとこの大森さんは男性なんですが。横沢さん(手塚理美)も男性。二人とも原作ではほぼ触れられないような脇役。
あと「リピート」仲間が一人少ないですね。池田さんがドラマだといないです。
このような変更からも、ドラマでは「リピート」仲間一人一人にスポットを当ててお話を展開していきそうな予感がしますね。特にラブストーリーを前面に押し出してになるのかな。原作だと表面的でどーでもいいラブストーリーしか展開されないですが(^^;)
原作の設定を使って、原作にはない“深み”がドラマでプラス出来れば、思いがけない良作に化けるかも知れません。ハラハラドキドキ感もドラマ演出の方が上手く表現されてエンタメ性が増すかも。
今後に期待ですね(^o^)
『リピート』みたいにSFとミステリが融合したお話が好きな方はこちらの小説とかもオススメ↓
ではではまた~