こんばんは、紫栞です。
映画『去年の冬、きみと別れ』を観てきました~。
原作本の紹介はこちらの記事で書きましたが↓
今回は映画の感想や、実際に映画を観てわかった原作と映画との違いをまとめたいと思います。
映画の感想
率直な感想としましては、映画、良かったです。
“すべての人が罠にハマる。”
という触れ込みでの映画でしたが、原作を読んでいる人でも面白く観られるように上手くストーリーの作り替えがされていて「なるほど。そうきたか」って感じで唸り声。原作を未読の人よりかえって読んでいる人の方が、驚きやストーリー構成組み替えに感心するかも知れません。
もちろん未読の人は未読の人で、思い込みとか無しに純粋にストーリーを楽しめるから、真っさらな驚きがあって良いとも思いますけど。
役者さんの演技も皆さん印象深くって良かったです。良い役者と脚本が揃えば、良作は出来るのですよ。残念ながら揃っていない作品が多いですけどね・・・。
以下がっつりとネタバレ~
原作との違い
映画のキャストは以下の通りでしたが↓
●耶雲恭介(記者)―岩田剛典
●木原坂雄大(殺人事件の容疑者)―斎藤工
●松田百合子(耶雲の婚約者)―山本美月
●小林良樹(編集者)―北村一輝
●木原坂朱里(雄大の姉)―浅見れいな
●吉岡亜希子(被害者)―土村芳
実は、この公式サイトなどで書かれているキャスト紹介自体に、原作を読んだ人間への罠が仕込まれています。
原作での真相は
「吉本亜希子」の元交際相手である「編集者」が、彼女を死に追いやった木原坂兄弟に復讐するべく、偽物を用意して「小林百合子」として「朱里」を殺害、「雄大」にその罪をなすりつける――と、いう計画と実行の記録を“「編集者」がつくる本が好きだった”と言っていた「吉本亜希子」に捧げるべく、そして死刑になる「雄大」に真相を知らせて復讐を完結させるため、ライターの「僕」を利用して『小説』をつくった。
つまり、読者が読まされていたこの本『去年の冬、きみと別れ』が「編集者」がつくったその本でしたというのがお話のオチ。
なのですが。
原作では百合子の旧姓は「栗原」。上記のような“死人入れ替わり工作”をするために「編集者」と形だけの結婚をして(死体の身元確認を「編集者」が夫として確認すれば、天涯孤独の百合子の死の偽装が容易になるため)、「栗原百合子」から「小林百合子」になる。原作では解りやすく「編集者」が自身の名を名乗る場面がないのですが、この部分から「編集者」の名前・名字は“小林”なんだなとわかる訳です。
原作を読んだ人間はこの前知識があるので、映画で小林良樹(北村一輝)という役名の編集者が、原作で犯人にあたる「編集者」なのだろうと普通に考えてしまうのですが、これがミスリードでして(あくまで原作を読んだ人にはって話しですけど^^;)、実は原作での主人公「ライターの僕」にあたるのだと思わせていた記者の耶雲恭介(岩田剛典)の方が、原作での犯人「編集者」なんですね。
小林良樹は木原坂兄弟の強力者で、お話の後半では事件の謎を追求する役割となっています。
つまり、映画では原作の「ライターの僕」がしていた事件の追及を小林良樹がしており、犯人の「編集者」を記者の“ふり”をしていた耶雲恭介がしています。
このように小林良樹と耶雲恭介の二人の役割を入れ替え、さらに事件経過の時間軸を入れ替えることで観客を騙す仕掛けがされています。※時間軸の入れ替えを匂わせる伏線もちゃんとありまよ。
原作を読んだ人間はお話の中盤あたりでの小林良樹の部下のセリフ
「彼のプロフィール、まったくのでたらめでした。本名は中園恭介。一年前まで金沢の小さな出版社で書籍の編集者をやっていました」
で、この映画に施された仕掛けに気が付くかと思います。賢い人はもっと早い段階で解るかもですが。
この映画の見事な点は、大幅に改変していると見せ掛けて、人物二人の役割と時間軸の入れ替えを変えただけで大まかなストーリー自体は原作のままだというところだと思います。
私も映画観ている最中は「やっぱり、だいぶ改変してるな~」と思っていたのですが、真相部分を観終わった後は「あ、こんなに原作のままなんだ」と妙に感心しました。
小説ならではのトリックを、少しの工夫で映像でも驚ける仕掛けに進化させているのは凄いなぁと。しっかりと原作を尊重しつつ、映画ならではの見せ方の面白さが出来ている優れた映像化作品だと思います。
イニシャルの変更
原作では若干わかりにくかった献辞のイニシャル箇所ですが、映画ではわかりやすく変更されていましたね。映画では
二人のYKへ
そしてAYに捧ぐ
になっていました。
YKは木原坂雄大(斎藤工)と小林良樹。AYは吉岡亜希子(土村芳)ですね。
純愛?
映画の触れ込みには“純愛サスペンス”ともあります。犯人「編集者」の吉岡亜希子への思いをさして“純愛”と言っているのでしょうが、はたしてこれは純愛なんだろうか・・・とチト疑問に思ってしまうのが正直なところ。
原作では木原坂朱里(映画では浅見れいな)に
あなたは心配するために彼女を好きになったの。
と、核心を突くことを「編集者」に言うシーンがあるのですが、映画ではこのセリフが省かれていました。映画では盲目の吉岡亜希子を心配するあまりに四六時中観察するようになってしまった恭介は亜希子に別れを切り出されてしまう訳ですが、原作では「編集者」の行動はもっと執拗でストーカーじみたものでした。映画では“純愛”を強調するためか、軽めの描写になっていたと思います。
純愛ウンヌンはどう感じるかは人それぞれですかね。原作で朱里が言うセリフはもっともな事だとも感じます。相手への執拗なまでの愛情は結局のところ自己愛に通じているというか。個人的には原作の「編集者」も、映画の恭介も、犯行自体はただの自己満足なんじゃないかなぁと思いますが。復讐するにしても「彼女に捧げる」とか違うだろって感じ。
なにはともあれ、原作の
「去年の冬、きみと別れ、僕は化け物になることに決めた」
が映画でもしっかりと描かれていて良かった。
原作を読んだ人に是非観て欲しい映画でしたし、原作知らないで映画観た人は是非原作読んでみて欲しいです。映画観た後でも小説は小説でまた別の面白さや違いを楽しめると思います。「ほうほう、こうなってたのかい」って感じで(^^)
原作と映画、セットで味わって欲しい作品ですね。
ミステリやサスペンスが好きな人、気持ちよく騙されたい人にオススメです。
※原作のネタバレ記事はこちら↓
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ではではまた~