夜ふかし閑談

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プリティが多すぎる 原作 あらすじ・感想 ドラマとはまったくの別物?

こんばんは、紫栞です。
今回は大崎梢さんの『プリティが多すぎる』をご紹介。

プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)

2118年10月18日から日本テレビ系でスタートする連続ドラマの原作本ですね。

 

あらすじ
新見佳孝は仙石出版に勤める新米編集者。新卒で入社後、「週間仙石」に配属され二年間、いつかは文芸部門の仕事をと夢見て頑張ってきた。しかし、春の異動で申し渡された部署は「ピピン編集部」。対象年齢中学生女子のローティーン向け月刊誌だった。
「プリティ、ポップ、ピュア、ピピン。女の子はPが好き」
チープでかわいい洋服やケバケバしい小物に溢れた編集部、くせ者揃いのスタッフや年下のモデル達。
まったく興味の持てない“カワイイ至上主義”の世界に放り込まれた男性編集者の悪戦苦闘の日々が始まる。

 

 

 

 

 

 

 


お仕事小説
ドラマ化されるのとファッション雑誌編集の舞台裏に興味があったので読んでみました。
上の画像は文庫の表紙ですが、私は単行本で読みました。単行本も6体の人形が出て来たりしてなかなか装丁が凝っています。あと、柔らかくて読みやすいです(^^)

 

プリティが多すぎる

プリティが多すぎる

 

 

読む前はてっきり10代後半~20代前半が対象年齢のファッション雑誌編集部が舞台だと思い込んでいたので、ローティーン向けと知って驚いた・・・と、いうか思っていたのと違った(^^;)勝手に勘違いしていただけなんですけど。
しかし、女子中学生が対象年齢の雑誌が舞台のお話ってのは珍しいですよね。この年齢の子達を相手にしているからこそのエピソードが描かれていて新鮮です。
大崎梢さんの作品を読むのは初めてなのですが、率直な感想としては非常に読みやすくってスイスイとページがめくれることと、6話構成で1話ごとに仕事上でのトラブルや編集者としての成長が描かれるので、非常に連ドラにしやすそうなお話だなぁと。
小説の各章は「PINK」「PRIDE」「POLICY」「PAPTY」「PINCH」「PRESENT」と、すべて頭文字が「P」でまとめられています。ドラマもサブタイトルはこの法則でまとめてくれるかな?と思うのですが、どうでしょう。

 

 


ドラマとの違い
ドラマのキャストは以下の通り
新見佳孝千葉雄大
佐藤利緒佐津川愛美
佐藤美枝子小林きな子
市之宮祐子矢島舞美
森野留美池端レイナ
レイ黒羽麻璃央
キヨラ長井短
美麗森山あすか
近松吾郎中尾明慶
三田村詩織堀内敬子
柏崎龍平杉本哲太

はい。あの、主人公はおいといて、原作通りなのは副編の佐藤美枝子さんぐらいで他は原作での容姿とは違いますね。

 

いえ、そもそも設定が原作とだいぶ違うので何とも言いがたいのですが。
まず大きな違いとしては、ピピン」がローティーン向け月刊誌から原宿系ファッション誌に変更されているところですね。
原作では女子中学生モデル達のこの年代のモデルならではの事情や葛藤がお話の中心となっているので、モデルの年齢が上がるとなると原作通りのお話の進め方はまず無理だと思います。ドラマの視聴者層に合わせて扱う系統を変えたってことですかね。

そして、主人公の佳孝の設定も週刊誌に配属されていた新米編集者から文芸編集部のエースという設定に。なので、近松柏崎の所属も文芸編集部に変更されています。
これはまぁ、文芸部のエースでエリート意識とプライドの高い男がいきなり女の子雑誌に異動のほうが話的にわかりやすいからですかね。強弱をつけやすいというか。確かに原作読んでいると、佳孝はまだ新米編集者のくせに馴染めない部署だからっていつまで心中でふて腐れているんだとかちょっと思うので、文芸部のエースだったという設定の方が説得力は出るかも知れないですね。
編集長の三田村が女性になっているのも、女性ばかりのところに男性一人という図の方がより困惑度合いが増すからだと思われます。

原宿のカリスマショップ定員で佳孝に何かとアドバイスするとかいう「レイ」なる人物はドラマオリジナルですね。

 

 

 

 

以下すこ~しネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


少女モデル達の裏側
この『プリティが多すぎる』なんですが、新米編集者の成長物語だと思いきや、年少モデル達のお話が多いというか大半を占めています。年少モデル達ならではの現場の雰囲気やオーディションの内容、未成年ならではの経済的問題やメーカーとの専属契約、モデルの知らないところで交わされる“大人の約束事”・・・などなど。
若干、少女だからってこんなにどのモデルも純粋で素直だろうかと疑問を感じてしまいうところはありますが(^^;)、小説的にはこの少女モデル達の裏側の部分を読めるところが特色になっていると思います。モデルの世界が描かれる物語は多いですが、“少女モデル”となるとまた事情が違ってくるのだなぁと驚きました。ありそうでなかった題材で面白かったです。

 

 

成長物語?
さて、少女モデル達の物語とは裏腹に、あまり興味をそそられないのが主人公・佳孝の編集者としての成長物語ですね。

モデル達の裏事情の方が積極的に描かれているからとゆうのもあるとは思いますが、どうも主人公に魅力を感じることが出来ないのが難点。最初の1章2章ぐらいでしたらまぁ、文芸部志望で“カワイイ”とは無縁な人生をおくってきた男子がローティーン向け月刊誌にいきなり配属されれば、馴染めずに腐ったりするのも必然だとは思いますが(そうでなくても女性特有の世界というのは男性の理解の範囲外でしょうからね)、お話が後半に入っても1章と同じような心持ちでグチグチするのは読んでいてしつこいというか、「まだそんな事言ってんのか」と思ってしまいますね。大手出版社勤務で新米なんだから贅沢言うなって気もしますし。最後まで読んでも「これ、成長してるのか・・・?」と疑問なまま終わってしまったなぁと。


しかしまぁ、主人公に感情移入出来ないのは私が女性で“カワイイ”が好きだからかもですが。やはり“カワイイ”という女性性を否定されるといい気がしないですからね。好きになれとは言いませんけど、否定ばっかりじゃなくって受け入れる姿勢をみせてくれたって良いじゃないの、と、文句言いたくなる(笑)

 

編集部の他の皆さんもあまり描かれていなくって残念な気がしますね。面白そうな人達が揃っているのに勿体ないような。同僚達とのあーだこうだって「お仕事小説」の醍醐味だと思うんですけど。

 

www.yofukasikanndann.pink

 

最後の6章に「ピピン」のファンである小説家の水科木乃が出て来るのですが、サラッと終わってしまって・・・もっと話膨らまして欲しかったです。(水科木乃はドラマにも登場するみたいですが。清水くるみさんが演じるみたいです)

終盤、佳孝のミスのせいで一人のモデルの前途が大きく変わってしまうトラブルが起こるものの、お話としては全体的にあまり盛り上がらないままだった印象を受けます。もっと強弱が欲しかったと物足りなさも感じてしまいますね。

 

 


ドラマに期待!
と、まぁ佳孝に負けないぐらいグチグチと書いてしまいましたが(^_^;)
でも何というか、幾らでも面白く出来る要素が詰まっているお話だと思います。ドラマでどの様に味付けされるのか楽しみですね。ドラマは原宿系ファッション誌が舞台で別物になるぶん、小説もドラマも個々に楽しめると思います。少女モデルの裏側に興味のある方は是非。

 

プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)

プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)

 

 


ではではまた~