夜ふかし閑談

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マスカレード・ホテル 小説 あらすじ・感想 ホテルが舞台のミステリシリーズ開幕~

こんばんは、紫栞です。
今回は東野圭吾さんの『マスカレード・ホテル』について色々まとめて御紹介。

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

2019年1月18日公開予定の映画の原作本ですね。


あらすじ
都内で起きた3件の不可解な連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明。ただ1つ共通する点は事件現場に残された不可解な数列の暗号のみ。警視庁の捜査本部は暗号解読の結果、この暗号は次の殺害現場を予告するものであることをつきとめる。第3の殺害現場に残されていた暗号から、次の犯行現場は一流ホテル「ホテル・コルテシア東京」で起こると捜査本部は推測するが、現時点で予測できるのはこの犯行現場のみ。
第4の事件を未然に防ぐ為、捜査員を数名フロントスタッフやベルボーイに扮させてホテルに潜入させることになり、刑事の新田浩介は帰国子女で英語が堪能であるなどの理由からフロントスタッフに化けての潜入捜査員に選ばれる。
彼の教育係・補佐役として優秀なフロントクラークの山岸尚美が任命されるが、立場も職業倫理も異なる二人は衝突が多く、中々上手くいかない。
そんな中、「ホテル・コルテシア東京」には次から次へと怪しげな客たちが訪れる。はたして二人は真相にたどり着き、事件を未然に防ぐことが出来るのか?

 

 

 

 

 


ホテルが舞台のミステリ
東野圭吾さんはあまりにも売れ売れで、本屋で他の作家作品が追いやられた状態で東野圭吾作品が何冊も平積みされていたりするのを目にすると、何だか変な反発心が芽生えてしまうのですが、読むとやっぱり面白いので「チクショウ」って感じで悔しいですね(笑)


『マスカレード・ホテル』というタイトルから、パーティーシーンなどがある華やかなストーリーを想像していたのですが、予想に反し、お話の中で展開されるのは訪れる奇妙な客たちの意外な事情・目的をミステリ仕立てにした“一流ホテルが舞台の日常ミステリ”といった感じです。次々と怪しげな客たちが訪れ、その都度対応して解決していく中、並行して殺人事件の捜査が進捗していくといったストーリー。
タイトルにあるマスカレード(仮面舞踏会)は、“お客様”という仮面を被っている客たちを表しています。

 

 


モデル
高級ホテルの舞台裏を題材にしている物語ですので、普段は富裕層が泊まるようなホテルには縁が無い私には読んでいて新鮮なことばかりで楽しめました。書くにあたり、かなりの取材をされたのだろうなというのは読んでいてビシビシと伝わってきます。
気になるのは具体的にどこのホテルがモデルになっているのかですが、巻末に
“取材協力 ロイヤルパークホテル”
とあるので、主にモデルとして使われているのは東京日本橋のロイヤルパークホテルなのだと思われます。文庫本の表紙に使われている写真もロイヤルパークホテルの内観。

 

映像化作品で有名な『新参者』麒麟の翼』なども日本橋付近がお話の舞台でしたね。

 

新参者 (講談社文庫)

新参者 (講談社文庫)

 

 

 

麒麟の翼 (講談社文庫)

麒麟の翼 (講談社文庫)

 

 

 

シリーズ・順番
『マスカレード・ホテル』はシリーズもので、『マスカレード・ホテル』刊行後にこの事件の前日譚が描かれた2作目の『マスカレード・イブ』

 

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そして続編となる3作目の『マスカレード・ナイト』と続けて刊行されています。

 

 

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前日譚の『マスカレード・イブ』をあえて先に読んでみるのも楽しみ方としてアリでしょうけど、やっぱり刊行順に読むのが良いでしょうかね。『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』は文庫化されていますが、『マスカレード・ナイト』はまだ文庫化されていなません。映画の公開時期に合わせて発売するのでは・・・と、予想しているのですがどうでしょう?

 

 

 


映画
映画の監督は『HERO』やフジテレビ系ドラマでお馴染みの鈴木雅之さん。監督の今までの作品や予告映像を見た限りでは、原作よりもコミカルで軽快なタッチで描かれる映画になるのかな?と思います。

 

キャストは
新田浩介木村拓哉
山岸尚美長澤まさみ

小日向文世梶原善泉澤祐希、利根作寿英、石川恋、濱田岳前田敦子笹野高史、髙嶋政弘、菜々緒生瀬勝久宇梶剛士、橋本マナミ、田口浩正勝地涼松たか子鶴見辰吾篠井英介石橋凌渡部篤郎

と、そうそうたるメンバーなのですが。

 

主要二人以外は誰がどの役を演じるのか公式サイトを見ても現段階では明確にわかりません。予告映像から察するに、新田のバディである刑事の能勢さんが小日向文世さん、客の一人で花嫁の高山佳子前田敦子さんだというくらいですね、ハッキリわかるのは。


主演の木村拓哉さんですが、原作の新田は三十代の設定なので年齢がかなり離れています。
作品や人物設定によっては年齢の開きはさほど問題にならないものもありますが、今作はちょっと問題なのではないか?と、個人的には思いますね。
新田は優秀で早くに捜査一課の刑事になり、際立った成果をこれまでに上げてきた為、少しばかりプライドが高い人物。このプライドが高いが故の言動が、なんというか・・・若さ故、若いから許されるといったものの類いで、まぁそこらへんの成長もお話の中で描かれ、作品の魅力の1つになっているのですが、四十歳半ばで原作の新田と同じ言動をされたら結構イライラしちゃうと思うんですよね(^^;)大人げないというか。

映画では新田の設定は多少変えるのですかねぇ・・・予告映像を見た感じだと原作の設定のままって気がするのですが・・・どうなっているのでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

 


仮面
私自身、接客業をしている人間なのですが、今作のもう一人の主役・フロントクラークの山岸尚美の


“ルールはお客様が決めるもの。お客様がルールブックで、だからお客様はがルール違反を犯すことなどありえないし、私たちはそのルールに従わなければならない”


というホテルマンとしての基本姿勢には頭が下がります。とてもじゃないがこんな境地に達することは出来ないなぁ~と感服しますね。
“お客様がルールブック”との言葉は表面的に受け取ると「お客様は神様です」精神と同一のものかと思ってしまうところですが、単純にただハイハイとかしこまっていれば良いという訳ではなく、お話の中で描かれるのは「お客様を快適な気分にさせる」ということに特化したホテルマンとしての姿勢です。

 

「昔、先輩からこんなふうに教わりました。ホテルに来る人々は、お客様という仮面を被っている、絶対にそのことを忘れてはならない、と」
「ははぁ、仮面ですか」
「ホテルマンはお客様の素顔を想像しつつも、その仮面を尊重しなければなりません。決して、剥がそうと思ってはなりません。ある意味お客様は、仮面舞踏会を楽しむためにホテルに来ておられるのですから」

 

上記は尚美と新田のやり取り。
このお話の舞台はラグジュアリーな一流ホテルなのでなおのことですが、ホテルに泊まるという行為は大小ありつつも、日常から解き放たれた“いつもと違う自分”を一時楽しむ場。
刑事は素顔を暴いて仮面を剥がすのが仕事ですが、ホテルマンは仮面を尊重して素顔を鑑みながら、その上で相手を満足させることを考えねばならない。

刑事である新田とホテルクラークである尚美が衝突してしまうのは必然ですね。

 

 

 

見所
最初のうちは衝突を繰り返す二人ですが、仕事を共にする中で信頼や尊重、尊敬の意思が芽生えていき、打ち解けていきます。ここら辺の二人の関係性の変化はやはり読んでいて楽しい点です。続編では二人の関係がどうなっているのか気になるところですね。

個人的には新田と所轄のベテラン刑事・能勢さんとの信頼感の変化も好きな箇所です。能勢さん、凄くいい人なんですよ。だから途中で新田が能勢さんのことを軽視したりするのは読んでいてムカッとしてしまうのですが(^^;)まぁ、若さ故だろうと大目に見られますけどね・・・。

そしてもちろん、ミステリとしても面白いです。怪しい客が来て、その都度様々な方法で解決していくストーリー展開の只中で、実は確りと殺人事件についての伏線が散りばめられ、最後には綺麗に収束されて、気の利いた台詞で締めくくられる。
スカッと爽やかな読後感。流石のエンタメ作品です。


映画で気になられた方は是非読んでみては如何でしょうか。

 

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

 

 そして、こちらを読んだら次は『マスカレード・イブ』へ!

 

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 そして『マスカレード・ナイト』へ

 

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ではではまた~