夜ふかし閑談

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高遠遙一 登場・関連事件まとめ

こんばんは、紫栞です。
今回は【金田一少年の事件簿シリーズ】の「地獄の傀儡師」こと高遠遙一が登場する事件をまとめて御紹介したいと思います。

高遠少年の事件簿 (講談社コミックス)


地獄の傀儡師・高遠遙一とは
金田一少年の事件簿シリーズ】及び『金田一37歳の事件簿』内においての登場人物。母親を死に追いやった人物達を殺害する事件を起こし、金田一一に真相を看破され逮捕されるも脱獄。
その後、「地獄の傀儡師」として殺意を持つ人々を独自の嗅覚で見つけ出し、殺害を唆して殺人計画を提供するという犯罪コーディネーターを生業にして芸術犯罪を追求。
金田一一とは度々事件でわざわざ招待したり、偶然遭遇したりして、その度対立・挑発しあうが、お互いに能力を認めているので稀に共闘して事件を解決させることもあるといった典型的なライバル関係にある。
犯罪に手を染める前はマジシャンを目指して修行していた経験から、計画する犯罪内容にはマジック要素が盛込まれた物が多い。

 

 


では登場する作品を刊行順にご紹介。
以下、大いにネタバレを含みますのでご注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


第Ⅰ期
FILEシリーズ
ファイル15『魔術列車殺人事件』

 

高遠さんの初登場作で【金田一少年の事件簿シリーズ】のファンなら絶対に外せない1冊。私も特に好きな作品です。

高遠さんはこの時は「幻想魔術団」のマネージャーをしており(母親の死の真相を探るために潜り込んでいた)、立場を利用して魔術団のメンバーをマジックショウさながらの奇抜で大胆な計画を用いて3人を殺害。計画から実行まで全て自身で行った事件はコレのみで、この事件の段階では犯行理由は母親の復讐という私怨によるものです。
マネージャーとして気弱な人物を演じていたのが一転、解決編で金田一に犯人として指摘されると徐々に態度を豹変させるところが圧巻です。明らかにコレまでの犯人達とは一線を画す存在感。初読のときは通常運転で別段特別感もない事件と思っていたので、解決編を読んでいて「おおお」と興奮しました。

名言の、
「君と同じですよ金田一君!ただ僕は人を欺くことに快感を覚え――君はそれを見抜くことに“使命感”を感じているようですがね・・!」
や、
「血ノヨウニ紅イ薔薇」
とか、
「Good Lack!!」
など、オキマリのセリフもこの時点ですでに出て来ます。

ラストに母親である近宮玲子が仕掛けた罠に気が付いて身を引くところがまた良いですよね。
復讐が成就した直後、刑務所から脱獄します。

 


ファイル19『速水玲香誘拐殺人事件』

 

金田一に「犯罪コーディネーター」としての顔を見せる最初の事件。

この事件はFILEシリーズの最後で一端ここで一区切りなので(実際はコミックスのデザインをリニューアルさせただけなんですけどね)満を持して高遠さんを登場させた感じ。
高遠さんは変装して芸能プロダクションの社長秘書・小渕沢秀成として潜り込み、事件の経過を観察。最後の最後、駅の反対側のホームから金田一に電話をかけてくるまで正体は明かされませんが、怪人名が「道化人形」だったり、シルエット部分でマリオネットをいじっている場面があったり、途中で犯人が「血ノヨウニ紅イ薔薇」と言ったりなど、作中で色々と匂わせています。
犯行には直接手を貸しませんが、せっかくの計画を台無しにしたということで、自供中に犯人を自殺に見せかけて毒殺します。

 


Caseシリーズ


Case5(ファイル24)『露西亜人形殺人事件』

 

コミックスの著者のコメント欄で「原作者一押しの最高傑作がコレです」と当時天樹さんが仰っていた作品。

最高傑作かどうかはさておき、高遠さんを語る上では『魔術列車殺人事件』の次に外せない作品で重要です。
今作では高遠さんは金田一同様、暗号解読レースの助っ人として参加して事件に巻き込まれる立場で加害者側じゃありません。『速水玲香誘拐殺人事件』のときはあんなに完璧な変装をしていたのに、何故か今作ではいつもの恰好に仮面を被っているだけで隠す気ゼロ。奇術師のスカーレット・ローゼスというふざけた偽名を名乗り、金田一にもすぐに見破られます。

金田一と“どっちが先に犯人を突き止めるか”の賭けをし、「自分が勝ったら犯人を殺す」と明言して「よし!二人の推理対決だ!」といった運びに。
が、最終的に犯人特定の為に金田一の提案した芝居にノリノリで応じてくれるし、犯人に同情したのか、自殺を止めて改心の言葉を投げかけてくれるし、金田一との約束を守ってくれるし、オマケにマジックも披露してくれるしで、結果的に金田一と協力して事件を解決させた形になっています。この事件ではやっている事だけ見るとかなりいい人っぽい(笑)。単純な殺人鬼ではない、高遠さんの人間味が垣間見られる作品ですね。今作では誰も殺傷せぬまま逃亡。
「私と君は決して交わることのない平行線―――だが平行線は交わりこそしないがいつも隣にある・・!」
の、お馴染みの平行線ウンヌン発言は今作のラストで出て来ます。以降、平行線平行線と事あるごとに発言するように。

 

 

短編集
明智警視の優雅なる事件簿
FILE4『幽霊ホテル殺人事件』

 

 こちらは明智警視が主役の短編集。

『魔術列車殺人事件』より2年前、明智さんのロサンゼルス時代に遭遇した事件で、高遠さんは謎の東洋人マジシャン「マスクマン」としてホテルのディナーショーに出て来ます。何故か演目が終わってプライベートで飲んでいるときまでマスクを被っています。この時はまだ素顔を隠す必要なんてないはずなのですが・・・。バーでマスク被って飲んでいたら目立ってしょうがないですよね(^^;)
手品で明智さんに事件解決のヒントを与えてくれます(いい人・・・)。『魔術列車殺人事件』で警視庁に挑戦状を送りつけてきたのは、この事件で明智さんを“観客の一人”として目を付けたからなんじゃないか、とのこと。まぁ実際は明智さん休暇中だったんだけど・・・。
明智さんは元々近宮玲子と親交があったし、明智さんも高遠さんと奇妙な縁があるんですねぇ。この後の事件でも何回か明智さんをガッツリ巻き込む計画を立てていますから、高遠さんにとっては明智さんも金田一と同等に意識する存在なんですね。
明智さん単独の短編集なので見逃されがちかも知れないですが、決死行への伏線が仕込まれていますので、このお話を先に読んでおいた方が決死行をより楽しめます。

 

 


Case7(ファイル26)『金田一少年の決死行』

 

Caseシリーズの最終事件で第Ⅰ期完結編。

完結編ということで色々と作者の気合いを感じる作品。トリックについては色々物議がありますけどね・・・(^_^;)
新聞広告で明智さんや金田一を誘き出すという方法なのですが、細やか過ぎてちょっとどうかと思ってしまいますね。海外だし。普通は「さあ行ってみよう!」とはならないんじゃ。
最後はやっぱりハッキリとした対立構造ってことで、高遠さんは今作では王道を行く悪役っぷりを発揮してくれます。実行犯のことを思ってちょっと黄昏れたりもしますけどね・・・。剣持警部に化けるところも完結編スペシャルを感じる。冒頭で一人殺しているのが思わぬ伏線になっています。
高遠さんはここで金田一に正式に敗北を認めてお縄に。その後、夏休み前の金田一の元に謎の手紙が届いて、金田一が自転車で旅に出るところで第Ⅰ期幕引き。さて、気になる手紙の主は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 


不定期連載
(ファイル27)『吸血鬼伝説殺人事件』

 

 前作から四年ぶりの作品。この時は金田一もまだ夏休み旅行続行中です。
高遠さんの姿は出て来ませんが、やはり第Ⅰ期最終回でのあの手紙は高遠さんからだったことが明かされます。新たな事件の「温床」になりかねない場所が書かれている手紙なんだそうな。

 


(ファイル29)『獄門塾殺人事件』

 

 久しぶりに高遠さんが本格的に登場する事件。

コレの直前の作品『オペラ座館第三の事件』のラストで高遠さんは脱獄済みです。脱獄後、金田一に送った手紙と同じ内容もものを明智さんに送っています。
「犯罪コーディネーター」として再始動で、塾講師の赤尾一葉というまたもや安易な偽名と、スケキヨみたいなゴムマスクを被っているだけという雑な変装(この頃は絵柄も雑ですね・・・)で関係者の中に紛れ込んでいます。
実行犯の一人を茎に毒が塗ってある薔薇を投げて殺害という、必殺仕事人みたいなことをやってのけています。

 


(ファイル31)『黒魔術殺人事件』

 

 「犯罪コーディネーター」続行中。

黒魔術師の黒瓜鬼門として潜入。また仮面被っています。いつもは最後まで変装のことはスルーなのに、今作では途中でちゃんと皆の前で正体を暴こうとする金田一。今作ではちゃっかり役者の代役を用意している高遠さん。ちなみにその役者さんは毒仕込まれて高遠さんに殺されちゃいます。今作では唯々非道な殺人鬼ですね。
この時の高遠さんなんですが、顔が・・顔が変・・・!ショッキングな崩壊っぷりです(T_T)中身も容姿も今までと違う・・・つまり別人!と、思いたいけど別人ではない(-_-)

 


(ファイル32)『剣持警部の殺人』

 

 少年法などがテーマの社会派な作品。

被害者達が外道過ぎて胸くそが悪くなるので、個人的には再読がキツい事件(^^;)。
今作では高遠さんのシナリオによる事件だということは最後でわかります。剣持警部が容疑者として追われるように仕組んだ模様。素顔のまま牧師に扮して少年院に通い、犯人を唆しています。大胆ですね・・・指名手配とは?

 

 


20周年記念シリーズ
(ファイル37)『薔薇十字館殺人事件』

 

「地獄の傀儡師」宛に脅迫状が届いてお話が始まるという珍しいパターン。

しかも高遠さん、人を守るのは苦手だとかで条件出して言いくるめ、金田一を助っ人に連れて行こうとします。どういう神経してんだって感じですが、まぁ能力は認めているってことですかね。
今作ではなんとずっと素顔のまま。フラワーアレンジメントをしている遠山遙治と名乗って、金田一君と七瀬さんとは友人として昔から仲良くさせてもらっています」とか言っちゃう。
金田一と美雪と三人で事件捜査するのが新鮮すぎて面白い。息の合った捜査で美雪を呆れさせています。女子のスカートに手を突っ込むシーンが衝撃的。『露西亜人形殺人事件』に続き、ファンとしては外せない作品で、『露西亜人形殺人事件』同様に今作では誰も殺傷していません。
最後は金田一との約束を守って警察に出頭するも、間髪を入れずにすぐに脱獄。どこかの廃墟に向かっています。

今作では高遠さんに腹違いの兄弟である妹がいたことが発覚し、建築家だったらしき父親の謎(育ての父親とはまた別らしい)なども出て来て、ここから新章ともいうべき“高遠さん、自身のルーツ探し”が始まります。

 

 


金田一少年の事件簿R
(ファイル39)『亡霊校舎の殺人』

 

 「犯罪コーディネーター」再開。

ですが、父親が建てたと思しき建築物を探るルーツ探しの方が主な目的らしく、芸術犯罪への意気込みは薄いような(Rに入ってからは全部そんな感じ)。事件現場にはおらず、無線で実行犯とやり取りしています。解決編はモニターでワイン片手に観察していて、まるでテレビ視聴しているかのような気楽さ。ここで高遠さんは思いがけない資金を手にしています。使い道が気になるところ。

 

 


(ファイル41)『蟻地獄壕殺人事件』

 

「犯罪コーディネーター」続行中。ルーツ探しも続行中。
途中で高遠さんが絡んでいるとわかる事件ですが、今作もやっぱりルーツ探しが主で犯行計画にはさほど執着していないように感じる。珍しく本気の変装で巳月七生(男)という高校生の振りして紛れ込んでいます。終盤で、消去法で金田一に正体を見破られるも、ページが足りないのかというくらいに思いの外あっさり逃亡します。

 

 

(ファイル47)『金田一二三誘拐殺人事件』

 

 唐突に【金田一少年の事件簿】最後の事件。

第Ⅰ期最終回と比べるとまったく特別感がない事件なんですが、最後は最後。解決編で高遠さんが事件に関わっていたとわかる事件で若干後付けっぽい。詳しくはこちら↓

 

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Rになってからちょこちょこ登場していた「Caféふくろう」の店主が高遠さんだったことが最後に明かされます。

 

 

 

 

 

 

 

スピンオフ
『高遠少年の事件簿』

 

 遂に出た!な、高遠さん主役のスピンオフ。詳しくはこちら↓

 

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明智さんと高遠さんは出身高校が一緒。ここでもまた明智さんと高遠さんとの奇妙な縁が。

 

作者は違いますが、
『犯人たちの事件簿』4巻もついでに読むべし↓

 

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今後どうなる?
さて、順番に紹介した訳ですが、こうやって順に思い返してみると高遠さんも結構キャラクターとしてその時々で変動していることがわかりますね。
高遠さんが登場する事件ばかり集めて紹介しましたが、シリーズ全体での事件順番が気になる方はこちらをご参照ください↓

 

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第1期だの、短期集中連載だの、20周年記念シリーズだの、Rだので、ややっこしいですよね(^^;)

 

金田一少年の事件簿】の方では結局高遠さんの“自信のルーツ探し”がどうなったのかわからずじまいに終わっていますので、【金田一37歳の事件簿】で明かされるのかどうか気になるところ。2巻に長髪の白髪姿で登場しましたけどねぇ。どうも変なことになっているようですし・・・↓

 

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今後もやっぱり高遠さんから目が離せませんね!

 


ではではまた~