夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『東京二十三区女』ドラマの原作小説 あらすじ・考察

こんばんは、紫栞です。
今回は長江俊和さんの東京二十三区女』をご紹介。

東京二十三区女

 

2019年4月12日にWOWOWで放送開始予定の連続ドラマの原作本ですね。


上の画像は単行本の表紙のもの。私は単行本で読んだのですが、最初気がつかなかったんですけど、この絵、よくよく見ると怖い絵ですね。肩のところの手が・・・。
文庫版も刊行されています↓

 

 

 

こちらは地図みたいな表紙でイメージがガラッと変わっていますね。


あらすじ
フリーライターの原田璃々子は、東京二十三区のルポルタージュ企画を作り雑誌社に売り込みたいと東京二十三区を巡って取材をしている。だが、それはあくまで名目であり、璃々子が東京の各地を巡っている本当の目的は別にあった。そんな璃々子の取材に、大学で民俗学の講師をしていた先輩・島野仁はダラダラと文句を言いながらも同行してくる。
「自殺の名所」「処刑場」「有名な心霊スポット」・・・璃々子と島野の二人は東京二十三区を巡る中で様々な「東京の怪異」に遭遇していく。
「私が探している場所は、ここではありません」
東京の“いわくつき”の地ばかりを巡る彼女の本当の目的は何なのか。

 

 

 

 


東京の怪異
東京二十三区女』は東京二十三区に残されている伝承をテーマにしたホラーミステリー小説。

“東京の各地にある実際の伝承をテーマに描かれる物語”という説明書きに心引かれて読みました。都市伝説好きにとっては凄くワクワクする説明書きですよね(^^)
東京の各地を舞台に、それぞれの人物が遭遇する怪異話の連作短編集。それぞれ主人公は異なりますが、各話、フリーライター璃子が登場し、同行している元民俗学の講師・島野先輩が各地を訪れる度にその土地に伝わる伝承や血塗られた歴史のウンチクを披露。それこそ先生のように読者に解説してくれます。
璃々子はいわゆる“みえる人”。霊感が強く、霊の存在も当然信じている・・・と、いうか日常なんですが、島野先輩は霊現象完全否定派。と、いうことで、二人はいつも意見が対立しています。先輩は璃々子がオカルト記事を書きたのだと思っていますが、璃々子の真意は別にあり、それは本の最後のお話「品川区の女」で明らかにされるという流れ。
ただ“怖い話”というだけではなく、謎解きや驚くべき真相、どんでん返しがあったりとミステリ好きも読んでいて愉しめる仕掛けが随所に施されています。

 

目次
東京二十三区
板橋区の女
●渋谷区の女
●港区の女
江東区の女
●品川区の女

最初の「東京二十三区」は前口上のようなもので使われているのは2ページ。これの後にお話が5編収録されています。タイトルの全部に“女”とついていますが、実は全話女が主役という訳ではないので、読者としては何故タイトルが全て“女”で統一されているのか少し疑問ですね(特に港区とか)。まぁ全話女性が関係してはいますけど・・・。
どのお話も60ページ程の長さで読みやすいです。私は地方在住なので上京したときによく行く渋谷区ぐらいにしか馴染みはないですが、都内在住で出身者の人には身近な土地の秘められた過去が知れるというのは興味深さと共に恐怖も倍増するのではないかと思います。

 

 

 

ドラマ
4月12日からWOWOWで毎週金曜深夜0時から放送予定のドラマは、全6回とのこと。
監督・脚本は原作の著者である長江俊和さん自身が担当されるとのことなので、原作の世界観はバッチリ再現されるのだと保証されているようなものですね。
私は長江俊和さんの名前は今作で初めて知ったのですが、元々放送作家さんで「放送禁止」シリーズ

 

 

パラノーマル・アクティビティ第2章TOKYO/NIGHT」

  

パラノーマル・アクティビティ第2章/TOKYO NIGHT [DVD]

パラノーマル・アクティビティ第2章/TOKYO NIGHT [DVD]

 

 

などを手がけられているのだとか。これらの番組名はホラーに疎い私も聞き覚えがあります。著書も「出版禁止」

 

 

というホラー小説が代表作で有名らしいので、やっぱりホラーを中心に活動されている方なんですね。

 

キャスト
第1話「渋谷区の女」
倉科カナ
月船さらら
佐野史郎

 

第2話「江東区の女」
安達祐実
●上村歩未
クノ真季子
長谷川朝晴
鈴木砂羽

 

第3話「豊島区の女」
桜庭ななみ
●藤原季節
小日向文世

 

第4話「港区の女」
壇蜜
大西信満
竹中直人

 

第5話「板橋区の女」
中山美穂
マフィア梶田
浅川悠
小木茂光

 

第6話「品川区の女」
●島崎遙香
白州迅
山崎真実
●藤木由貴
岡山天音


お話ごとに主人公が異なりますので各話キャストはバラバラ。全話で登場するフリーライターの原田瑠璃子役は島崎遙香さん、島野先輩の役は岡山天音さん。
「6つの街、6つの恐怖、6人の女」という番組キャッチコピーと上記のキャストから、ドラマは原作とは異なり、全て女性の主人公に変更されているようです。まぁ、その方がタイトルと合致して自然ですからね。色々な女優さんの恐怖の演技が愉しめるのでしょう。

各話の順番も原作とは違いますが、もっとも気になるのは原作にはない「豊島区の女」ですね。著者である長江さんによると、『東京二十三区女』は続編を現在執筆中だとのことなので、「豊島区の女」は続編に収録されるお話なんでしょうか?それともドラマ用完全オリジナル?気になるところですね。

 

※2019年5月に続編が出ました!詳しくはこちら↓

 

 

www.yofukasikanndann.pink

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


単行本の帯には「あなたの街の秘密を、教えてあげる」とある通り、この本では日本人なら誰もが知っている場所の、知られざる過去が次々と作中で露わになります。

板橋区の女」では自殺の名所である団地や“縁切り榎”が。
「渋谷区の女」では、渋谷は川を地中に埋没させて出来た都市だということが。
「港区の女」では六本木の名前の由来や歴史が。
江東区の女」ではゴミの埋め立て地“夢の島”が。
「品川区の女」ではかつての処刑場、鈴ヶ森刑場が。

それぞれに、現状からはとても想像出来ないような平和な地が、実は陰惨な歴史を持っていることが作中で説明され、まるでその土地の歴史が引き起こしたかのような怪談話が描かれています。

「土地に残る怨念が怪異を招く」というのは怪談にはつきもので、もはや怪談と土地は不可分だとの見方もあったりしますが、よくよく考えてみると際限なく歴史を遡るならば、どこの土地にも陰惨な事柄があるのは当たり前なのではないかとも思えます。江戸時代は勿論ですが、日本は大戦での混乱も経験していますし、戦国時代には日本のそこらじゅうで大勢が不遇の死を遂げていた。どこの地にも“いわく”があるのは当然だとわかっていても、人は怪異と土地を繋げて考えたがるし、事件が起きれば起こった場所自体を「怖い」と感じる。

「だから言ったじゃないですか。今現実に起こっている事件の背後には全て、歴史の奥に封印した呪いや怨念が潜んでいると」

これは作中での璃々子のセリフ。
「そこまで言い切っちゃいますか・・・」と、思ってしまうところではありますが(^^;)完全に否定しきれないのもまた人の性質なんでしょうかね。

また、今作が突出しているところは「東京」という大都市の繁栄には葬り去ってきた歴史があるのだというところですね。私たちは何も知らずに浮かれて過ごしているのだなぁ~と痛感させられる訳です。

 

 


板橋区の女・ラスト
今作でやたらと気になるのは板橋区の女」のラスト、薫の夫が絵馬に残したメッセージの答えです。ハッキリと答えが明かされないままに終わっているのでモヤモヤします。
メッセージは
『妻には過去のゆか 憂い怒る怖い。かなし』
で、最後にはコレが全て平仮名になっている
『つまにはかこのゆか うれいいかるこわい。かなし』
と、いう一文が書かれています。

はい。私、初見ではまったく解らなかったので(^_^;)他の方の様々な意見を調べてみましたよ。

作中で璃々子と島野先輩が「暗号なんじゃないか」「『かなし』だけが句点で区切られ、ひらがなで書かれているのには何か意図があるのでは」と言っているので、このメッセージは暗号であり、『かなし』がこの暗号を解くためのキーであると考えるのが自然(な、はず)。
で、『かなし』は有名な「狸(“タ”抜き)の暗号」と同じく、「“か”無し」つまり、文から「か」を抜かして読む(主人公の名前が薫なので「“か”折る」と考えるという意見もありましたが、文にある『かなし』から導き出す方が自然だと思う)。

 

妻には過去のゆか 憂い怒る怖い。かなし
つまにはかこのゆか うれいいかるこわい。かなし
つまにはこのゆうれいいるこわい
妻には子の幽霊居る 怖い

と、いったメッセージになる。

文章としては「妻には子の幽霊居る 怖い」とした方が解りやすいと思うのですが、「か」の濁音は扱いが難しいので外したのでは・・・・・・と、まぁ調べてみて個人的に一番しっくりきたのはこの回答なのですが・・・でもどうでしょう?解いても少し不自然さを感じる文章になるので正解かどうか何とも言い難い。
ドラマでは回答が出て来るかもしれないので注目ですね。

 

 

 

 

島野仁
今作での大ネタ、「島野先輩が実は幽霊である」というのは、この系統の(?)本に馴染みのある読者なら割と早い段階で察しがつくと思います。璃々子が取材の予定を連絡している様子もない(するはずもない)のに、先輩がいつも取材に同行しているというのは不自然ですからね。直接的に匂わせているのは「港区の女」からで、最後の「品川区の女」でハッキリと明かされる。


「幽霊なんて信じない」とずっと言い続けている先輩が「幽霊」を実証する存在自体になっているというのは何とも皮肉で、璃々子としては非常にもどかしい状態でしょう。幽霊が幽霊なんていないと言っているんですからね。何をか言わんやってなものです。

璃々子が東京のいわくつきの地を巡っている本当の理由は、先輩の成仏のため。先輩の死には先輩が生前研究していた東京の歴史・事象が関係しているのではないかと考えているのですね。

「彼が死亡した日、あのコーポで何があったのか。私は考えました。本当に病死だったのか。それとも、禁忌に触れて呪い殺されたのか。もしくは実際に、何らかの方法で誰かに殺害されたのか。私は彼の死の真相を探るために、品川区の一帯を調べていました。その男性の魂は、成仏できずに私の周囲を彷徨っています。彼を成仏させるため、呪いの根源を求めて、古い史跡や火災現場など、死亡事故があった場所を巡っていたんです」

 

 

 

 

続編
今作では璃々子のこの“調べ物”は終わっていません。先輩の幽霊も、相変わらず東京の蘊蓄をたれながら璃々子の周囲を彷徨っています。

続編は只今執筆中とのことなので、次作に期待ですね。先輩の死の真相、成仏できるか否か、次作で解決するのかどうなのか・・・。東京は二十三区ありますし、上記したように、どの土地にも“いわく”はあるもの。ネタには事欠かなそうなので、ひょっとしたら2冊で終わらずに3冊4冊とシリーズ化するかも・・・?

どうでしょうか。次までのお楽しみですね(^^)

 

 

www.yofukasikanndann.pink

 

ではではまた~