夜ふかし閑談

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「カエル男 ふたたび」 ネタバレ・感想 あの衝撃ラストからの続きはいかに!?

こんばんは、紫栞です。
今回は中山七里さんの『連続殺人鬼カエル男 ふたたび』をご紹介。

連続殺人鬼カエル男ふたたび

2011年刊行の『連続殺人鬼カエル男』の続編です。

 

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

 

 

以下、あらすじも含めて前作のネタバレになるのでご注意下さい。

※前作『連続殺人鬼カエル男』の詳細についてはこちら↓

 

www.yofukasikanndann.pink

 

 

 


あらすじ
凄惨な殺害方法と、その遺体のそばにカエルに擬えた稚拙な犯行声明文を残す猟奇殺人犯「カエル男」が埼玉県飯能市を恐怖と混乱でパニックに陥れた「飯能市五十音順連続殺人事件」から十ヶ月後、この事件に深く関わっていた精神科医御前崎宗孝の自宅が爆破され、跡から御前崎教授と思われる遺体と「カエル男」による犯行声明文が発見される。
飯能市五十音順連続殺人事件」で最初に犯人として捕まった当真勝雄が退院してすぐの出来事であった。
果たして、これは当真の報復によるものなのか。
協力要請を受け、埼玉県警の渡瀬と古手川は捜査に乗り出すが、警察の必死の捜索にもかかわらず、当真勝雄の消息はまったく掴むことが出来ない。
そんな最中、さらなる五十音順殺人が次々と発生。さらには、医療刑務所に収監されていた有働さゆりにも新たな動きを起し――。
破裂・溶解・粉砕。「カエル男」が起す悪夢に渡瀬と古手川がふたたび挑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

ふたたび
『連続殺人鬼カエル男 ふたたび』という、そのまんまで長いタイトルの通り「カエル男」がまたも悪夢を繰り広げる続編です。

前作での終わり方が終わり方なので、続くのが意外なような、意外でないような~・・・ですが。ま、前作を読んだ人間にとってはやはり見逃せないですね。“アレ”の続きがあるとこられちゃ。

 

ミステリ小説のシリーズはどこから読んでも単体で楽しめるような作りになっているものも多いですが、今作は絶対に『連続殺人鬼カエル男』を先に読まないと駄目ですね。『ふたたび』の方から読んでしまうと、前作での衝撃も今作での面白さも色々と半減します。

洗脳がとけないままに退院した当真勝雄、「カエル男」として捕まった有働さゆり、二人を操って犯行をさせた首謀者であるにも関わらず、直接手を下した訳ではないので逮捕出来ずじまいだった御前崎宗孝教授。
三人や他事件関係者のその後が読めるのは勿論ですが、著者の別シリーズ作品である『贖罪の奏鳴曲』

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 の主要人物・御子柴礼司が有働さゆりの弁護士として今作にも登場していたりと、ファンには嬉しいサービスも。


私は単行本で読んだのですが、

 

連続殺人鬼カエル男ふたたび

連続殺人鬼カエル男ふたたび

 

 

文庫版ですと巻末に今までの中山七里作品の人物相関図が掲載されているようです。

 

連続殺人鬼カエル男ふたたび (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

連続殺人鬼カエル男ふたたび (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 

中山七里作品は出版社やシリーズをこえて登場人物が絡まり合っているらしいので、ファンにとっては整理するのにうってつけなのではないかと思います。

 

前作は古手川の単独行動が多く、有働親子とのやり取りや衝撃的な事が次々と起こる怒濤の展開で起伏が激しい作品でしたが、今作は割かしと淡々としていて、渡瀬と古手川の捜査過程が実直に描かれている印象です。
前作ほど展開の驚きというものはないんですけど、渡瀬&古手川コンビのやり取りは堪能出来ます。

前作から十ヶ月経ったという設定で、古手川もだいぶ上司慣れしたもよう。渡瀬の老獪さが読んでいて面白いですね。古手川がやっぱりタフすぎてビビる。前作で大怪我を負ったものの、左足(※原型が解らないほどの複雑骨折をした)を少し引きずる程度の後遺症しか残っていません。


あ、すごい。あんな大怪我したのに、もう傷跡も残ってない。古手川さんって頑丈なのね。いったいどんな身体してるのかしら」


と、作中で看護師さんにも言われています。
ホントおかしい。どうなっているのか古手川の身体は。しかも、今作でも懲りずに終盤で犯人とやり合って怪我を負っています。でももう、「古手川は不死身なんで大丈夫!」という変な安心感があるので、読んでいても全然ハラハラしない(^_^;)

 

あと、今作もグロ描写はてんこ盛りですので、人によっては注意が必要ですかね。

 

 

 

三十九条
前作は深刻な社会問題までもトリックの一要素として使っているところが秀逸な点だったのですが、今作はトリックのためとかでは無く、日本の司法制度の問題点について描くのがメインだという印象の作品になっています。

御前崎教授の娘と孫が殺された事件「松戸母子殺害事件」の詳細が明らかにされていますが、これはもう完全に光市母子殺害事件がモデルに使われていますね。殺害方法もそうですが、被害者の夫の反応や裁判での弁論なども『光市母子殺害事件』を強く連想させるものとなっています。

 

大きく違う点は、作中事件では御前崎教授の娘と孫を殺した犯人・古沢冬樹は弁護士の提案で詐病により刑法第三十九条を使って無罪となっていて、それで刑法第三十九条の可否について強く問われる構成となっているのですが、実際の『光市母子殺害事件』で大きく問われたのは死刑適用についてで、法廷では無期懲役か死刑かで長らく争われていました。最高裁で死刑確定されています。

 

作中では繰り返し「無責任に心神喪失の殺人者を擁護する世論」について書かれ、御前崎教授もその世論への怒りから前作の事件を引き起こした訳ですが、これが読んでいて個人的に少し疑問ですね。
現実には心神喪失の殺人者への擁護の声ってかなり少数派で、厳罰を望む声が大半というか。事件内容が残虐極まりないものだし、“無罪に賛同する多くの世論”ってちょっと考えにくいんですよね。皆そんなに人権派気取ってないでしょと思うし、精神障害者に対してやさしい世の中だとも思えない。

 

とはいえ、システムの不備こそが問題だという指摘は大いに頷けます。予算不足により医療施設に長らく置いておくことが出来ず、寛解状態かうやむやでも退院させ、その後は放置してしまう現状。

「凶悪犯罪が起こる度に心神喪失者等医療観察法を見直せという議論が再熱する。だが、抜本的な改正になることはない。劇的に変えてしまうにはあまりにセンシティブな問題だからだ」

問題だと解りつつもどうすることも出来ない。難しい問題で、非常に考えさせられるテーマですね。

 

 

 

 

 

 

以下がっつりとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ミステリとして
目次は
一・爆ぜる
二・溶かす
三・轢く
四・粉砕する
五・裁く

で、前作同様に五章での作りになっています。


一章で御前崎教授が爆死、二章で工場職員の佐藤尚久(さとうなおひさ)が硫酸プールに落ちて死亡、三章で出版社勤務の志保美純(しほみじゅん)が電車に轢かれて死亡、第四章で精神科医の末松健三が破砕機に巻き込まれて死亡・・・・。


と、いった具合に「カエル男」の犯行が繰り返される訳ですが、ア行が終わって次はカ行かと思いきや、カ行をすっ飛ばしてサ行に移ってのターゲット選びとなっています。※カ行が飛ばされるのなんだか納得いきませんが、どうもこうもしょうがないので納得するしかない。

 

今作『連続殺人鬼カエル男ふたたび』での「カエル男」は誰なのか。それは御前崎教授です。


御前崎教授は訪ねてきた当真勝雄をまず殺害。予め用意していた自分の身代わりとなる老人を殺し、自宅を爆破。自分が死んだと見せかけ、佐藤尚久の事故死、志保美純の自殺を現場に「カエル男」による犯行声明文を置くことによって「五十音順殺人」が再開されたかのように偽装。「松戸市母子殺害事件」で弁護士と結託して鑑定書を作成した精神科医の末松健三を殺害。娘と孫を殺した張本人・古沢冬樹が仮出所で医療刑務所から出て来たところを襲い、待ち構えていた警察に逮捕されます。

 

勝雄が犯人じゃないんだろうなというのは予想がつきますし、“顔が解らない死体は偽装”というのは本格推理小説のド定番ですし、硫酸プール落下と轢死は犯行声明文が発見されるのがやたらと遅いので後から置いただけだろうというのも読んでいて察しがつきます。
有働さゆりは途中まで医療刑務所にいたのだから、「カエル男」の名前を使って末松健三と古沢冬樹を狙う動機があるのはもう消去法で御前崎教授しかいない。

 

犯人もトリックも驚くものではないのもそうですが、チグハグに感じてしまうのは、前作で自らの手を汚さずに証拠も一切残さずに見事に犯行計画を遂行させた御前崎教授が、今作では全て自身で犯行を行うという“単純な殺人者”になってしまっているところです。

直接の犯行をしていなかったからこそ逮捕出来なかったという犯人としての特性が、あっさりと放棄されて酷く短絡的になってしまったような・・・いきなり馬鹿になってしまったように見える(^^;)。
渡瀬は教授が有働さゆりに外傷再体験セラピーを施した際に、施術者である教授自身が有働さゆりの狂気に影響されてしまったんじゃないかと言っていますが、ちょっとこじつけっぽいというか、後付け感は否めないですね。

 

そして、逃走中の御前崎教授に対面したホームレスの兵さん、警察に供述するときに「老人だった」と言わないの、どう考えても不自然ですね。フードを被っていて顔がよく見えなかったとはいえ・・・。
成人男性を軽々と持ち上げているし、格闘しても顔が見られるまで古手川に勝雄なんだと疑われないぐらいだし、教授は体力面がかなりお若いのだろうか。

 

 

 

 

みたび・・・?
そんなこんなで、エンタメミステリとしては前作を凌駕しているとは言い難いですが、司法制度の問題点やコンビでの捜査のやり取り、前作での登場人物達の後日談などは十分に愉しめますので、今作は読者サービスというか、前作で描ききれなかったことを補足する意図が強いのかな?とも思いました。

が、しかし。
今作でのラストは脱走した有働さゆりが、御前崎教授が取り逃がした一番の標的・古沢冬樹を殺害しようとしているところで終わっていて、その後古沢冬樹や有働さゆりがどうなったのかきちんと判らずじまいに終わっています。

この終わり方は前作を彷彿とさせるものですので、ひょっとしてまた続くのかなぁ~と。『連続殺人鬼カエル男』は三部作構成なのかもしれません。この第二弾がどこか消化不良なのもそのせい・・・・・・・かも。

 

『連続殺人鬼カエル男 みたび』

あるのでしょうか?
もしあるのだとしたら、その時はやはり読まねばなりますまい。悪夢には最後までお付き合いをしなくては。

 

ではではまた~

 

 

連続殺人鬼カエル男ふたたび (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

連続殺人鬼カエル男ふたたび (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 

 

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