こんばんは、紫栞です。
今回は米澤穂信さんの『巴里マカロンの謎』をご紹介。
11年ぶり!小市民シリーズ
『巴里(パリ)マカロンの謎』は米澤さんの青春ミステリシリーズ・【小市民シリーズ】の新作。1月末に刊行されていたようで、本屋で見かけて慌てて購入しました。【小市民シリーズ】は別シリーズ・【古典部シリーズ】
と同様に、“日常の謎もの”青春ミステリとして米澤さんの代表的シリーズの1つですが、2009年以降新作が刊行されていない状態で、ファンから新刊が待ち望まれていました。「米澤穂信といえば、小市民シリーズはどうなってるの?」と、いう会話が常というか。
今作『巴里マカロンの謎』は短編集となっています。【小市民シリーズ】は今までに第1作『春期限定いちごタルト事件』と第2作『夏期限定トロピカルパフェ事件』が短編の組み合わさった連作ミステリで、
第3弾『秋期限定栗きんとん事件』が長編ミステリ
と、大きく見れば3冊凡て長編といえるものだったのですが、今作はどれも単発ものの短編が収録された作品集となっています。
【小市民シリーズ】は春期、夏期、秋期と、小鳩くんと小佐内さん二人の学生生活を追う形で進行しており、次の冬期でシリーズは完結するとされています。次が完結作だということもあって注目を集めてきた訳ですが、今作は11年ぶりの新刊ではあるものの、完結作ではありません。なので安心(?)して下さい。
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今作では二人の高校1年の秋から冬の出来事が描かれています。なので、二人の互恵関係にまだ変化がなかった時、時系列としては第1作の『春期限定いちごタルト事件』の頃のお話ですね。
このシリーズは単行本の過程を踏まず、最初から文庫で刊行されるシリーズで、今作も文庫での刊行ですね。表紙も変わらずに片山若子さんのイラストですね。
収録作品は
●巴里(パリ)マカロンの謎
●紐育(ニューヨーク)チーズケーキの謎
●伯林(ベルリン)あげぱんの謎
●花府(フィレンツェ)シュークリームの謎
の、4編収録。
「巴里(パリ)マカロンの謎」「紐育(ニューヨーク)チーズケーキの謎」「伯林(ベルリン)あげぱんの謎」の3編は《ミステリーズ!》で2016年から2018年の間に掲載されたもので、最後の「花府(フィレンツェ)シュークリームの謎」は書き下ろし。
各作品、タイトルはエラリー・クイーンの国名シリーズに倣っていますね。そしてやはり、いずれもスィーツ絡みのお話。
「巴里マカロンの謎」はお店でマカロンを三個まで注文出来るティー&マカロンセットを頼んだのに、少し目を離した隙に小佐内さんの皿に4つ目の謎のマカロンが出現した謎を解き明かすお話。
普通なら何も考えず店員さんを呼ぼうとするところですが、小鳩くんと小佐内さんのコンビなので先の先まで見通した推理劇が繰り広げられています。読んでいる最中は何やら微笑ましい真相が隠されたミステリなのかな?と思っていたのですが、最終的に明かされる真実はビターテイスト。二人で知恵を出し合っての会話で謎が解き明かされていくのが良いですね。
「紐育チーズケーキの謎」は知り合いの子が中学の文化祭でやるカフェでニューヨークチーズケーキを出すので来てくれといわれて二人で赴き、そこで小佐内さんがCDを探していた男子生徒たちに連れて行かれる事態に。小鳩くんは伝言によってCDを隠したのは小佐内さんなのだと推理。小佐内さんが何処にCDを隠したのか突き止めようとするお話。
「CD、丈夫だな」というのが、真相を読んでの率直な感想(^_^;)。CDの強度に関して知識があったとしても、普通こんな隠し方しない。これが小佐内さんの恐ろしさということか・・・。最後、CDの顛末についてはあやふやなままですね。多分、小佐内さんの目論み通りになったのだろうとは思いますが。
「伯林あげぱんの謎」は新聞部でベルリン揚げぱんを使ったロシアンルーレットで辛子入りに当たった者が記事を書くというお遊びをしたのだが、揚げぱんを食べた4人全員が辛子入りではなかったと主張する不可解な事態に。偶然その場に居合わせた小鳩くんが堂島くんに頼まれて謎解きに挑戦するお話。
初っ端で“廊下で佇み、泣いている小佐内さん”という、とても穏やかならぬシーンがあるものの、このお話ではその後は一切小佐内さんが登場しません。小鳩くんが謎解きをする際に小佐内さんが近くにいなかったのは互恵関係を結んで以来初のことなんだとか。
新聞部ということで、シリーズお馴染みの堂島健吾くんが登場しています。このお話はヒントが大きいぶん、謎解きは難しくないですかね。
「花府シュークリームの謎」は「紐育チーズケーキの謎」でも登場した“中学生の知り合い”が、まったく身に覚えの無いことで学校から停学処分を受けてしまった謎を追究するお話。
収録されている4編のなかでは一番事件性が高いものとなっています。これは読んでいても全然解くことが出来なかったですね。盲点でした。確かに「ん?」とは思ったんですけど。
このようなタイトルですが、シュークリームはあんまり関係ないのではという気が。
このお話はお正月過ぎの設定で、小佐内さんはお雑煮を食べつつ、去年は散々でお菓子を心置きなく楽しむことが出来なかったと悔やんでいましたが、このお話の最後では御礼としてマカロン、チーズケーキ、揚げぱん、シュークリームと色とりどりのお菓子をもてなされていて非常にうらやましい事になっています。スィーツ好きにとってはまさに夢の話ですね(^o^)。
登場しない“ある人物”に対しては最後までモヤモヤした想いが残りますが、4編が綺麗にまとまったハッピーな終わり方で良かったです。
次作にも期待!
小鳩くんと小佐内さん二人の独特な会話雰囲気と、スィーツ絡みの謎解き。久しぶりに読んでなんとも懐かしく愉しむことが出来ました。
今作は高校1年の頃に遭遇した出来事という設定ですが、『秋期限定栗きんとん事件』の時二人は高校3年の秋を迎えていますので、“冬期限定”という完結編が出る前に作品集があと1冊か2冊は出るのかも知れません。そっちの方が自然な気もしますね。
なんにしろ、11年ぶりにシリーズ新作が読めて嬉しかったですね。短編集でも長編でも、次作をまた楽しみに待ちながら日々を過していきたいと思います。
ではではまた~