夜ふかし閑談

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『ウォーターゲーム』感想 ”太陽は動かない”の【鷹野一彦シリーズ】完結!?

こんばんは、紫栞です。

今回は吉田修一さんの『ウォーターゲーム』をご紹介。

 

ウォーターゲーム (幻冬舎文庫)

 

あらすじ

福岡の相楽ダムが突如決壊。濁流が町を呑み込み、数百人の死者をだす大惨事となった。

このダム決壊は水道事業自由化の利権を勝ち取るために計画された爆破テロなのか?

産業スパイ組織「AN 通信」の鷹野一彦と田岡亮一は次のダム爆破を阻止するために奔走するが、事態は思わぬ事に・・・。

水道民営化の利権に群がる政治家や企業。金の匂いに敏感な人間たち。敵が味方に、味方が敵に。裏切りと騙しあいの果てに、この情報戦を制するのは誰か。

 

 

 

 

 

 

 

三部作完結

『ウォーターゲーム』は【鷹野一彦シリーズ】の三作目。

 

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2020年8月に文庫版と電子書籍が発売されました。

  

ウォーターゲーム (幻冬舎文庫)

ウォーターゲーム (幻冬舎文庫)

 

 

私は6月ぐらいに待ちきれなくって単行本を買ったのですが、

 

ウォーターゲーム

ウォーターゲーム

  • 作者:吉田 修一
  • 発売日: 2018/05/24
  • メディア: 単行本
 

 

二ヶ月後に文庫が発売されるとは。ま、よくあることですけども(^_^;)。

 

 

まったく知らないまま読んだのですが、スパイ大作戦なストーリーでエンタメ全開な【鷹野一彦シリーズ】、三部作だったようです

著者の吉田さんもインタビューで「一作目を書いている途中から三部作構想があった」と言っていますし、文庫版の説明書きにも「シリーズ三部作完結!」と、書いてある。

単行本の方では帯にも出版社の本紹介にもそんな文言はなかったんですけどねぇ・・・。読み終わってから知り、個人的には衝撃の事実でした。いやだ!終わらないで!

 

 

 

 

大集合 

シリーズ一作目『太陽は動かない』太陽光エネルギーの利権争いで鷹野31歳の死闘が、

 

太陽は動かない

太陽は動かない

 

 

二作目『森は知っている』では時間を遡り鷹野17歳のスパイ訓練と青春が描かれた訳ですが、

 

森は知っている (幻冬舎文庫)

森は知っている (幻冬舎文庫)

 

 

三作目の『ウォーターゲーム』では水事業自由化の利権争いで鷹野35歳の奮闘が描かれています。

35歳は鷹野が所属する組織「AN 通信」の定年の歳。定年間際でのこの事件、鷹野は一体どうなるのか!?な、お話。

三部作最後とあって、一作目に登場した田岡、デイビット・キム、アヤコ、風間、中尊寺とオールスター勢揃いで、鷹野の青春時代を描いた二作目とも密接な繋がりがあり、“あの人物”も登場していますので、前二作を読んでからこの『ウォーターゲーム』を読むことがオススメです。

 

あと、映画との連動企画で放送されたWOWOWオリジナルドラマ『太陽は動かない-THE ECLIPSEですが、『ウォーターゲーム』の一部ストーリーというか設定が使われていますね。小説とは違い、こちらのドラマは映画の前日譚として描かれているのでまったく別物ではありますが。

 

 

 

新聞連載との違い

そんなシリーズ完結作・『ウォーターゲーム』は北海道新聞東京新聞中日新聞西日本新聞で2015年12月~2016年11月まで連載されたもので、本にする際に加筆・修正されています。

それ自体は別に珍しいことでもないのですが、今作では修正で連載時に掲載された文章を大幅に削除しているようです。私の住んでいる地域の新聞では連載されていなかったので確り確認することは困難なのですが、どうやら『AN 通信』の諜報員が心臓に埋め込まれている爆弾のことやら登場人物の内面がじっくり書かれていた部分、それにまつわるエピソードなどが削除され大幅改稿されているのだとか。

この大幅改稿について、吉田さんは「(略)いつものスタイルのように、登場人物の内面をじっくりと書き込んでいった。けれど連載が終了したあと、すべてを読み返し、確信したのは、その書き方はこのシリーズにそぐわないものであるということでした」と、仰っています。

 

確かに、謎の組織の謎の諜報員というのはスパイもののエンターテイメント作品では“過去を持たない人物”として謎のベールに包まれていた方が楽しめるのかな?とは思いますし(このシリーズならアヤコとかデイビット・キムとか特にね)、改稿後のこの本は大変に面白く「これぞスパイもの!」といった感じですが、やっぱり残念というかもったいないというか、「改稿前のものも読みたいな~」と思ってしまいますね。吉田修一さんは人物の内面描写が抜群に上手い作家さんで有名ですし、鷹野の内面などがじっくり書かれているのならやっぱり知りたい・・・。

 

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

完結しないで!

大幅改稿したせいかもしれませんが、今作は読後「あ~面白かった!」と、なるものの、思い返してみると「あれ?そういえばアレやコレやは結局どうなった?」と、いう部分が多々あることに気づく。

 

鷹野はちゃんと「AN 通信」を定年したのか、爆弾は取ってもらえたのか、定年時の“お願い”は何を望んだのか、そもそも“お願い”って本当にかなえてもらえるのか。具合が悪そうだった風間さんの容態は今後も安心していいものなのか。新聞によって明るみにされた「AN 通信」の組織形態はどうなったのか・・・などなど。

 

新聞記事の北条は途中からまったく出て来ないし、虐待されていた女の子と真司のやり取りも、女の子を施設に預けて突如終わる。「なんの為にこのエピソードはあったのか?」、前半と後半で結構な違いがあり、前半で期待したような流れがブツ切りになっているのも気になるところ。(ま、これは本当に大幅改稿のせいかな・・・)

デイビット・キムは半ば隠居生活していますしね。最後は期待通りのところで来てくれてニヤリとしましたけど。期待を裏切らない男。

 

 

シリーズとして続きがあるからあまり結論づけていないのかと思ったのですが、「完結編だ」と知って、これじゃあちょっと完結編としては消化不良だなぁと。

 

『ウォーターゲーム』は主役の「これ、鷹野よりもアヤコの方が活躍しているのでは?」な印象(作者が峰不二子なアヤコが気にいちゃったからか?)。個人的にアヤコ好きなので嬉しかったですが、完結作ならもうちょっと鷹野メインなお話が良いのでは・・・とも思ってしまう。

 

“あの人物”再登場は胸熱な展開でしたが、ダム爆破で何百人も亡くなる大惨事を起こしているんだよなぁと思うと素直に「良かった」とならないし・・・。

 

う~ん。

 

ま、言い出すとグチグチした感じになってしまうのですが、一番強い気持ちとしては「鷹野や田岡の活躍をもっと読みたい!」と、いうことです。

3冊とも面白いし、登場人物に強い愛着が湧いてきたこの段階で完結してしまうのはどうしても惜しい。

続きじゃなくっても、スピンオフや何らかの形でもいいからまた鷹野たちに会いたいです!お願いします!終わらないで!

 

 

またこのシリーズの新作を読める日が来ることを祈っております。

 

 

 

ウォーターゲーム (幻冬舎文庫)

ウォーターゲーム (幻冬舎文庫)

 

 

 

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ではではまた~