こんばんは、紫栞です。
今回は荒木飛呂彦さんの『岸辺露伴は動かない』を簡単にご紹介。
『岸辺露伴は動かない』は日本を代表する漫画作品の一つで超長期連載されている『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部「ダイアモンドは砕けない」に登場する、スタンド能力者の漫画家・岸辺露伴(「だが断る」で有名な人)が物語りのナビゲーターを務める短編漫画集。
最近ジョジョのアニメシリーズを見返していたのと、今年2020年12月末に実写ドラマが放送されること、荒木さんの短編漫画を読んだことがなくって興味が湧いた・・・など、諸々の切っ掛けで今更ながらに読んでみたら非常に面白かったので、紹介しようじゃあないかと思った次第。
『ジョジョ奇妙な冒険』のスピンオフ作品ですので、もちろん『ジョジョの奇妙な冒険』を知っていた方が十二分に楽しめるのですけども、ジョジョのストーリーや魅力について逐一書いていたらとてもこのブログだけでは収まらない・・・と、いうか、新たに専門ブログを立ち上げなければならなくなるレベルなので(^_^;)ここでは割愛させて頂くのですが、この『岸辺露伴は動かない』は、岸辺露伴が「ヘブンス・ドアー」という、“生物を読み書きできる本のようにし、本になった対象の情報を読み取ったり、新たな事項を書き加えて行動を制限することができる”スタンド能力(超能力)を持っている事だけ分かっていれば、読むのに支障のないように描かれているので、最悪『ジョジョ奇妙な冒険』を全く読んだことがない人でも愉しめる短編集です。
スピンオフという要素がなくとも、短編として十分魅力のある作品集ですね。
2020年12月時点で2巻刊行されています。
1巻
●エピソード16 懺悔室
露伴がイタリアで取材中に教会の懺悔室で耳にした恐怖のお話。
●エピソード02 六壁坂
露伴が取材のために買った山で目にした「六壁坂」の妖怪話。
●エピソード05 富豪村
富豪ばかりが集まる外界から遮断された村に、露伴と編集者が訪れたときの出来事。
●エピソード06 密漁海岸
料理人・トリオに頼まれてクロアワビの密漁を手伝うことになった露伴だが――な、お話。
●岸辺露伴 グッチへ行く
通訳と共にフィレンツェ郊外にある『グッチの工房』を訪れた露伴。そこで祖母の形見であるグッチのバッグの修理を頼むが――な、お話。
2巻
●エピソード04 望月家のお月見
一族全員の命日が「中秋の名月」である望月家の、忙しい夜のお話。
●エピソード07 月曜日 天気-雨
打ち合わせに向かうため電車に乗ろうとする露伴だが、駅では「何か」おかしな事が起こっていて――な、お話。
●エピソード08 D・N・A
事故で夫を失った女性。数年後、彼女は「精子バンク」から提供を受けて娘を授かるが、その娘には色々と奇妙なところがあって――な、お話。
●エピソード09 ザ・ラン
モデルにスカウトされ、肉体を鍛え上げることに生活の全てを捧げるようになった男性。露伴はスポーツジムで彼とランニングマシンを使ったゲームをするが――な、お話。
※2022年3月に新作のエピソード10が出ました!詳しくはこちら↓
OVAだと今のところ「富豪村」「六壁坂」「懺悔室」「ザ・ラン」の4話、
ドラマはNHKで12月28日~12月30日の三夜連続で「富豪村」「くしゃがら」「D・N・A」の3話を放送予定。
「くしゃがら」は漫画ではなく、『岸辺露伴は叫ばない』という短編小説集に収録されている作品。書いているのは北國ばらっどさん。
ドラマの脚本は『ジョジョ奇妙な冒険』のアニメシリーズで脚本を担当している小林靖子さんがそのまま務めるそうです。これだけでとりあえず観てみようってなる・・・。
最初の「懺悔室」が雑誌に掲載されたのが1997年で、一番近年に描かれた「ザ・ラン」が2018年。掲載された年代が飛び飛びなので、作品によって絵柄の変化が結構あります。個人的に「六壁坂」のときの露伴先生の顔が好き。
コミックスだと荒木飛呂彦先生の解説が各話の後に書かれていて、そこもまた面白くって見所の一つです。
この目次を見て先ず気になるのはエピソードナンバーのバラバラさ加減だと思うのですが、調べてもどういった基準でナンバリングされているのか分からない。
そもそもまだシリーズ化が決まっていなかった最初の「懺悔室」からして“エピソード16”となっているので、単に「いっぱいエピソードがあるよ」ということなのかな?
因みに、「懺悔室」は編集部からの短編執筆依頼の際に「スピンオフ・外伝は絶対禁止」と言われていたのに、ドジャーンとやっちまったらしい。
大丈夫なのか、それで・・・って感じですが、こうしてスピンオフの短編集ができて、アニメになって、ドラマにもなったのだから結果オーライなのでしょうね。
「懺悔室」は『岸辺露伴は動かない』より先に刊行された短編集『死刑執行中脱獄進行中』にも収録されています。
この短編集もオススメ。
『ジョジョ奇妙な冒険』はバトル漫画ですが、この短編集はどれもホラー、サスペンス色が強く、“奇譚”という言葉がピッタリくる代物。ジョジョ自体もホラー、サスペンス、ミステリ、な要素がありますけどね。『岸辺露伴は動かない』は「敵」がいて戦うといったものではないということです。荒木さん版「世にも奇妙な物語り」。
私は特に「六壁坂」と「富豪村」と「月曜日 天気-雨」がお話としては好み。
解説で“「富豪村」の大きな収穫は、登場する女性編集者=泉京香のキャラクター。この女性に対し、ムカつきながら描きました。でもキャラとしては大好きで傑作の出来と自負します。”と、ありますが、今のところ漫画では「富豪村」以降にこの泉京香(名前は小説家の泉鏡花からとっているのだと思われる)は登場していません。
「密漁海岸」には『ジョジョ奇妙な冒険』4部に登場するトニオ・トラサルディーが、「D・N・A」には同じく4部に登場する山岸由花子がゲスト出演しています。
「密漁海岸」は「密漁します」「だから気に入った」のセリフのくだりがやりたくって描いたとのこと。これ、たしかに露伴は密漁に協力する義理は全くないんですよね。ただトニオさんの決意(?)が気に入ったので手伝うっていう。露伴の人となりが垣間見えるエピソードで良い。密漁は犯罪ですけどね。
「D・N・A」は掲載されたのが「別冊マーガレット」とあって、他と雰囲気が違ってロマンチックなお話。由花子さんの顔が4部のときと全然違う・・・。
「ザ・ラン」は「こういう筋肉バカっているよなぁ・・・」って感じで、一番現実的な恐怖のあるお話。
「岸辺露伴 グッチへ行く」はファッション雑誌「SPUR」に掲載された、『GUCCI』のバッグを題材にした漫画。この漫画では露伴と通訳の女性が着ているものは全てGUCCIの服。とても似合っている。
お話もさることながら、大胆な構図や服装が見所。コミックだとカラーでの収録ではないことが悔やまれる。荒木さんの絵はいつだってカラーで見たい。
と、思ったらカラー版もあるらしい↓
私は、短編は作者の力量が問われるものだと思っていて、今までの読書遍歴での経験上、“時代を超えて売れ続けている長編作家さんというのは、短編を描かせてもとんでもなく上手い”という方式が私の中ではあります。今回の『岸辺露伴は動かない』も期待を裏切らない短編作品たちでした。やっぱり天才は天才なのよ。
長編の『岸辺露伴 ルーブルへ行く』もあるらしいので今度はこちらを読んでみたい。
※買ったッ!読んだッ!詳しくはこちら↓
『岸辺露伴は動かない』、ジョジョを知らなくとも気後れせずに手に取ってみて欲しいです。
ではではまた~