夜ふかし閑談

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ドクター・ホワイト 原作小説 3冊まとめてネタバレ紹介!

こんばんは、紫栞です。

今回は、樹林伸さんの『ドクター・ホワイト』のシリーズ三作品をまとめてご紹介。

ドクター・ホワイト 千里眼のカルテ (角川文庫)

 

ヒットメーカーが描く医療小説

【ドクター・ホワイト】は圧倒的な医療知識を持つ身元不明の謎の美少女・「白夜」が、その脅威の診断能力で次々と病を見抜き、命を救っていく医療小説のシリーズ。2022年1月にカンテレ・フジテレビ系でこの作品を原作とする連続TVドラマ放送が決定しています。


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作者は漫画原作者として有名な樹林伸さん。複数の名義で活動しているのでピンとこない人もいるかもしれないですが、金田一少年の事件簿』『探偵学園Q(天樹征丸名義)、『サイコメトラーEIJI』『クニミツの政』『シバトラ(安童夕馬名義)、GetBackers- 奪還屋-』(青樹佑夜名義)、BLOODY MONDAY(龍門諒名義)、神の雫(亜樹直名義)、などなど、“樹林伸”で調べると羅列されているヒット作の数に驚愕すること必至の、とにかく凄い人です。

元々は講談社の社員として漫画編集者をしていたので、“講談社のヒットメーカー”として有名でした。原作を手がけた漫画作品はすべて映像化されるみたいな勢いでしたね。1999年に講談社を退社し、作家として独立しているのですが、今でも講談社との関わりは強いです。

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漫画原作だけでなく、小説家としても作品も数冊刊行されていまして(漫画原作だけでも忙しいでしょうに、いつ書いてるんですかね・・・^^;)、今は【ドクター・ホワイト】も安東鵙さんによって漫画化されていますが、

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これは漫画の原作としてではなく小説作品として書かれているシリーズ。漫画原作を手がけたものは今まで散々ドラマ化されてきた樹林さんですが、小説作品がドラマ化されるのは今回が初なのだとか。

 

私は『金田一少年の事件簿』のファンで、樹林さん(天樹征丸)のノベライズも読んでいて若干親しみがあったので、今回ドラマ化されると聞いて読んでみました。

 

 

 

 

 

 

各本、あらすじ・解説

 

【ドクター・ホワイト】のシリーズは2021年12月現在で3冊刊行されています。

 

本に番号が書かれていないので間違いやすいかもしれないですが、やはり順番通りに読むのが大事なので要注意。

では、一冊ずつ刊行順にご紹介。※以下、ネタばれを含みます~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドクター・ホワイト 千里眼のカルテ』

 

 

霧に覆われた早朝の井の頭公園で、出版部の編集者・狩岡将貴は全裸に白衣のみを纏っている18~19歳ほどの少女と遭遇する。倒れた少女を、幼馴染みの高森麻里亜のいる高森総合病院へと運んだ将貴だったが、少女は目覚めても「白夜」と名前を名乗るのみで素性を一切明かさない。しかし突如、医者も驚くほどの医療知識と嗅覚で将貴の胃痛の原因を言い当ててみせた。その後も高森総合病院で白夜は次々と驚きの診断能力を発揮して誤診を指摘し、麻里亜の父である高森病院長の抜擢で診断協議チーム「CDT」のメンバーとなる。

経営危機のため、ベンチャー・キャピタル『JMA』が派遣してきた医師たちと衝突しながらも、「CDT」に持ち込まれる謎の病を白夜は解き明かしていく。彼女は一体何者なのか――?

 

全4章。連作短編風味。各章でそれぞれ謎の病が出てきて、白夜が診断していくというストーリー。後の2冊は最初から文庫での刊行なのですが、この本には単行本もあります。

 

真っ白な肌をした美少女で名前以外はすべてが謎に包まれた白夜。彼女は豊富な医療知識と、常人よりも鋭い五感で驚異的な診断能力を発揮するが、他はてんで物知らず。一般常識どころか“外の世界”自体が初めてといった、まるで赤ん坊のような状態。将貴はそれが今まで外界とは遮断された環境で医療知識だけ教え込まれて育てられたからではないかと考える。警察に届けたら白夜が晒し者にされてしまうのではないかと危惧し、親戚の子ということにして妹と一緒に住んでいる実家でいったん引き取ることに。ちょっとお節介すぎるだろうって感じですが、ジャーナリストとして興味が湧いたのが半分ってことらしい。

 

あらすじを読んで皆が気になるのは、医師免許を持っていない十代の小娘である白夜が診断チームに入っていいのかってことだと思うのですが、医療行為をする訳ではなく助言するだけだから、大丈夫だということです。・・・ちょーと、どうなのソレってなりますが・・・ま、ここは流しておきましょう(^_^;)。

 

白夜もさることながら、治療困難な動脈瘤持ちの将貴の妹・晴汝、派遣医師たちとの対立、天才医師でありながら数年前に行方知れずとなった麻里亜の兄・高森勇気…などなど、色々と壮大というか、長くなりそうな要素が詰め込まれている。この巻はとりあえず白夜の特異性を示すための連作短編となっている印象で、これらの要素に関してはほぼ解らずじまいで終わっています。

 

 

 

 

 

『ドクター・ホワイト 神の診断』

 

白夜が「CDT」のメンバーとなって1年が経過。神がかった診断で次々に患者を救うなかで、白夜は医大受験を目指して日々勉強をしていた。そんな最中、以前白夜の診断と提案された治療法によって命を救われた患者・日比野カンナが妊娠。カンナは高森総合病院の産婦人科で妊娠検査を受けて通院していたが、3度目の来院の際に経腹エコーで確認したところ異常が発覚。卵巣妊娠していることと、癌に冒されていることが判明する。子供をどうしても産みたいというカンナの為、白夜は癌の三大治療法――手術、抗癌剤放射線、以外の治療法で癌に挑む。

一方で、将貴は1年前に麻里亜の兄・勇気から託された『Rh null』のメッセージから、白夜についての謎を追っていた。すると、意外な事実が次々と浮かび上がり――。

 

今巻は連作短編形式ではなく、カンナの癌治療と白夜の謎を追う長編となっています。

ちゃんと医者になることを決意し、受験のため勉強に励んでいる白夜。身元不明なのに戸籍はどうするんだろうというのが疑問だったのですが、記憶喪失者として就籍許可の申し立てをして戸籍を作成したらしい。

癌治療についてかなり詳しく、教科書そのまま読まされているような感じで書かれているのですが、民間治療を推して抗癌剤についてはかなり否定的な描かれ方をしているので、何だか意見が一方に偏ってしまっている気も。鵜呑みにしちゃうと危険なんじゃないかとか、別の問題が発生するのではとか思っちゃいますね。

 

白夜をどっかしらの施設から逃がしたのが行方不明だった麻里亜の兄・勇気だったことが分かり、将貴が勇気から『Rh null』と書かれたメモを受け取ったところで前巻は終わっていました。この『Rh null』は非常に珍しい血液型のことであるらしく、将貴は友人の刑事・奥村淳平や麻里亜とともにこの血液型の人間を調べ始める。樹林さんは珍しい血液型ネタが好きなのか、他作品にもよく出してきますね。

 

前巻で長くなりそうだった諸々の謎ですが、この巻で急ピッチにすべて明かされる。

ちょっとビックリするぐらいの勢いですが、本の説明に「完結」と書いてあるので、完結作として書いたということなのか。3冊目が発売されているので、実質完結作とはなっていないのですが。

当初の予定では白夜の謎はもっと引き延ばす予定だったのではと思われるんですけどね。何か都合があってこんなことになっているのでしょうか。1冊で纏め上げているのは流石ですけどね。その分、カンナの癌治療の方が終盤では添え物程度になってしまっているのが残念。

 

 

 

 

 

『ドクター・ホワイト 心の診療』

 

白夜の出生の秘密がすべて明らかになってから5年が経過。実習生として高森総合病院に戻ってきた白夜は、さっそく研修医に急性アルコール中毒と診断された老バーテンダーの誤診を指摘。誰かに故意に危険な薬を摂取させられた可能性に気がついき、白夜は患者に心当たりがないか問い質すが、彼は殺されかけたにもかかわらず、その人物をかばって頑なに口を閉ざす。本当のことを聞き出すため、白夜は彼の病室に何度も足を運び、患者の心に寄り添おうとする。やがて、薬剤を使ったどんでもない犯罪が明らかになっていくが――。

 

こちら、2021年12月に発売された新刊です。前2作よりページ数は少なめで270ページほど。長編ですが、すぐに読めてしまうボリュームですね。

白夜の空中で本をめくる動作や「それ、誤診です」という台詞などが“オキマリシーン”っぽく、ドラマ化を受けて書かれたのかなという印象。

5年経過したということで、白夜もだいぶ人間らしい感情を露わにしてきていまして、患者と心を通わせていくのがメインテーマとなっています。今巻では明確な犯罪行為が描かれるとあって、一番ミステリ色が強い作品となっていますね。前巻で白夜の謎はすべて明かされてしまっていますので、本編が終わってからの後日談感が強いかもしれないですが、ミステリ好きな私はこの巻が一番読んでいて馴染みやすかったですね。

 

 

 

 

以上、2021年12月現在で3冊刊行。

 

 

 

 

以下、さらにガッツリとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医療エンタメ

欧米ドラマの『Dr.HOUSE』を発端として、近年では診断にスポットを当てた医療ドラマも日本で多く放送されるようになってきました。

【ドクター・ホワイト】も謎の病気を解明する一話完結ものかと思っていましたが、今作はカスパー・ハウザーの逸話から着想を得られたSF的要素と診断医療が掛け合わされた、今までにない医療エンタメ小説となっています。

 

シリーズですが、本によって趣が異なるのも読んでいて面白いです。ドラマではどこまでやるのか気になるところですね。

 

2冊目の『神の診断』で、白夜は有名な資産家である海江田誠の娘・朝絵の体細胞から造られたクローンであることが判明。

難病のALSを患っている娘の朝絵をなんとかして治してやりたいと願っていた海江田に、正体不明の医療犯罪組織が接近。脳移植によって健康な身体を与えようという計画を組織にもちかけられ、海江田は誘惑に乗ってしまう。そうして大金を費やして造られた朝絵の身体のスペアが、胚ナンバー108号の白夜だったんですね。

麻里亜の兄で天才医師の高森勇気は、スカウトされてこの組織に関わってしまった人物。勇気は脳移植がおこなわれる前に白夜を逃がし、妹のいる高森総合病院に運ばれるよう仕向けた。「白夜に何かしたら、組織の秘密を公表する」と告げ、勇気は組織から逃亡を続けているという訳です。

 

この設定はカズオ・イシグロさんの小説『私を離さないで』を彷彿とさせますかね。

 

 

私が読んだのだと、島田荘司さんの作品でもこの手のテーマ扱っていたなぁ~と。島田さんのは臓器のみのクローンを造って売買しているって話でしたけど。

 

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近年はこんな感じの空恐ろしくグロテクスなテーマも多いですね。ま、医療が進歩しているからなのでしょうけど。

 

このような大掛かりな(?)要素を入れているため、小説ですと診断チームのメンバーの描写が浅めになってしまっているので、ドラマでは登場人物の掘り下げに期待したいですね。

 

後気になることとしては、将貴の白夜への恋心。インモラルだと感じつつも、惹かれてしまっていると。妹と白夜と三人で暮らしながら、密かに思いを募らせています。いまだに成就はしてないんですが。

個人的に、三十代男性が十代女子に恋するというのは「ちょっと・・・」と、なってしまう。特に白夜は特殊な環境で育ったせいで中身は赤ん坊同然だしねぇ(^_^;)。

 

犯罪医療組織に関しては世間への告発も逮捕も出来ていないし、勇気もいまだに逃げ続けている状態ですので、シリーズはまだ続くかもしれないですね。ドラマとともに、小説の今後にも期待したいと思います。

 

 

ではではまた~