こんばんは、紫栞です。
今回は乙一さんの『野良犬イギー』をご紹介。
ジョジョ3部の前日譚
こちら、荒木飛呂彦さんの漫画作品『ジョジョの奇妙な冒険』の第3部の前日譚を乙一さんが小説化してくれたという代物。
乙一さんは前にジョジョ4部のオリジナル長編小説を書いているのですが、
この度、3部の前日譚を書いてくれたと。
私はジョジョだと3部が一番好きなので、好きな小説家である乙一さんが3部の前日譚書いてくれるなんて夢のようですよ!って、なって値段も気にせず、詳細もさほど調べずに速攻で買いました。
この本で描かれるのは、イギ-とアヴドゥルの出会い。原作漫画のイギ-初登場の際に作中で「ニューヨークのノラ犬狩りにも決してつかまらなかったのをアヴドゥルが見つけてやっとの思いでつかまえたのだ」と、ジョセフが言っているのですが、そこら辺の詳細が描かれているという訳です。
表紙だけでなく、カバー裏にもイギーがいっぱい。挿絵も細々といっぱい入っているのですが、いずれも3部の漫画から引っ張ってきた絵で描き下ろしではありません。最後のページの絵が唯一描き下ろしかなって感じですが。でも違うかもしれない。
ページ数は160ページほど。しかし、挿絵がそこら中に入っているので文量はもっと少ない。サクッと読める小話って感じですね。
4部のオリジナル小説である『The Book』は結構な文量でストーリーも重厚、乙一らしいミステリ要素のあるよく練られた物語となっていましたが、こちらは特にミステリらしい仕掛けや捻りはなく、ストレートにイギーとアヴドゥルの出会いとスタンド勝負が描かれています。
100%ジョジョファンに向けて書かれている物語で、ハッキリ言って漫画を知らない人は愉しめないかなと。なので、乙一ファンだからって理由だけで買うのはやめておいた方が良いですかね。そんな人は「ジョジョ3部を全部読んでから出直してこいッ!」ってなるのが確実。
漫画だと犬であるイギーの視点で描かれるお話もありましたが(※ペットショップ戦)、今作はそのようなイギーの“心の声”の描写は無く、一貫してアヴドゥルの視点となっています。タイトルや装丁はイギーが全面に出されていますが、実質この物語の主人公はアヴドゥルですね。あとちょろっとジョセフが登場していますが、前日譚なので承太郎や花京院、ポルナレフは出て来ません。
この本ではアヴドゥルの生い立ちや内面が描写されています。だからこそ、アヴドゥルがイギーにどの様な感情を持って接していたのかが分るようになっているといいますか。
ジョジョの読者はアヴドゥルとイギーの顛末を知っている訳で、それを踏まえると切なくなってくるなぁと。アヴドゥルの両親の話とかは読んでいてしみじみと納得してしまいました。哀しいなぁ。
ムック本もあるよ
さて、読み終わった後気がついたのですが、今作は『JOJO magazine 2022 SPRING』に掲載されたものを単行本化したもののようです。
『JOJO magazine 2022 SPRING』たるムック本には、「岸辺露伴は動かない」の新作、アニメ関係者、俳優のインタビュー、真藤順丈さんの小説も掲載されているようです。お値段は紙媒体で1650円。そして、この単行本『野良犬イギー』も同じく1650円。
・・・え?このムック本を買った方が良かったんでない?
インタビューなどはともかく荒木先生の露伴の新作読めるしッ!
って、ことを知って今ちょっと微妙な気分になってしまっているのですが・・・。
単行本はムック本に掲載されたものを加筆・修正してあると巻末に書かれている一文で、なんとか自分の気持ちをなだめているのですけども(^_^;)。ま!良いんですよ。私は乙一さんの新作の単行本は必ず買ってきている人間ですから。
しかしながら、今から買おうとしている人には忠告じゃないですけど、同じ値段でプラスアルファもっと色々読めるムック本あるよという事は書いておこうと思います。吟味してから、ご購入をご検討下さい。
※結局ムック本も買いました。詳しくはこちら↓
ではではまた~