夜ふかし閑談

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『GOTH』映画・漫画・番外編のアレコレまとめ

こんばんは、紫栞です。

前回の記事で乙一さんの『GOTH』という小説作品について紹介したのですが、

 

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今回は『GOTH』を原作とする漫画・映画と、番外編『GOTHモリノヨル』についてのアレコレについてまとめて紹介したいと思います。

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では順番に紹介していくのですが、第一に言っておきたいのは、漫画版も映画も番外編も、本編の原作小説を読んでからにして欲しいということ。

原作は叙述トリックもののミステリ小説なので、“小説の状態”がやはり一番愉しめるものとなっています。映像ものを先に見てしまうと、原作のせっかくの仕掛けが半減してしまい、初読での驚きが永遠に味わえないものとなってしまうのですよ。

 

なので、これから紹介するものは原作小説を読み終えた状態で愉しんで欲しいと一読者として切に願うところであります。是非原作小説を先に・・・!

 

 

 

 

漫画

2003年刊行。コミックス全1巻。

大岩ケンヂさんによるコミカライズ作品で、リストカット事件」「暗黒系」「土」「記憶」の四話収録。

リストカット事件」「暗黒系」「土」の3話は比較的原作に忠実に漫画化されていますが、最終話にあたる「記憶」だけ前後編になっていて、原作の最終話である「声」の要素がミックスされたオリジナルストーリーになっています。

 

原作小説は全6編(※番外編を除く)ですが、「犬」だけが完全に漫画化されていないってことですね。ま、「犬」は内容が内容なので、漫画化は難しいのか(^_^;)。

 

この本は大岩ケンヂさんの初単行本作品で、この本が刊行された少し後に代表作のNHKにようこそ!を刊行しています。

コミックスに寄せたあとがきで乙一さんが「GOTHのコミカライズをしたことが汚点になるのではないか」と危惧されていますが、もちろんそんなことはない。乙一さんの原作もこのコミカライズも素晴らしいです。

 

キャラクター造形だけでなく、全体の作画雰囲気が原作小説の世界ピッタリに表現されていて、基本シリアスなところにクラスメイトとのやり取りやト書きのコミカルさが入るのがより乙一作品らしさが出ていて良い。主役の二人も原作よりは人間味があるキャラクター像になっていますね。あと、原作よりも少しエロくなっています。

 

私はこの漫画版だと「土」の描き方が凄く好きですね。「リストカット事件」は原作を読んだ時のゾッとする感じが半減されていて少し残念。原作と順番を変えて、「リストカット事件」を最初に持ってくるのは良いチョイスだと思いますけど。

乙一さんのユーモア溢れるあとがきもイチ押しポイントです。

 

 

映画

2008年12月公開。「僕」本郷奏多さん、森野夜高梨臨さんが演じています。

 

 

2005年から数年間、乙一作品が続けざまに映画化される流れがあったのですが、この映画もその只中での作品ですね。

私はこの映画化が決まる一~二年前に乙一にドはまりしまして、その時点で発表されている乙一作品は全部読み終わっている状態でした。『GOTH』は本の仕掛け的に映像化は無理だろうと思って期待していなかったので映画化と聞いてちょっと驚いた記憶。

 

そんな訳で『GOTH』を映画化するならなんてそれまで考えもしなかったのですが、「僕」役の本郷奏多さんに関しては監督も言っていたと思いますが、はまり役云々の前に、決定前から当時は他に適任が浮かばないといった感じだった。今だって浮かばないですけど。

なので、キャスト発表を聞いた時は「ですよね~」という納得が強かったですね。いざ映画を観てみたら、予想以上に怪しげで危険な色気全開だった。

 

でも今原作読み返してみると、雰囲気はともかく髪型以外の容姿の特徴は森野の方にすべて当てはまるなという気がしますね。ま、性別が違うんですけど。

 

高梨臨さんはこの映画がスクリーンデビュー作。後にテレビでよく観るようになったのですが、映画の時とはイメージが違っていてテレビ観ていても最初はなかなか気が付けなかった。『GOTH』では温度のない陶器みたいな美少女といった印象になっています。

 

二人とも大岩ケンヂさんの漫画版からそのまま抜け出してきたみたいで見た目の再現度が高いので、漫画版を読んだ後だと妙に感心するだろうと思いますね。

 

ストーリーは原作の「暗黒系」と「記憶」がミックスされたものに「リストカット事件」の要素が少し付け加えられているといったもの。

 

上手い具合にまとめられてはいるのですが、ストーリーを混ぜたためかホラーともミステリとも言い難いあやふやなものになっているなぁと。グロテスクさも控えめなので、ホラー・ミステリとして愉しませてくれる原作とは別物ですね。

漫画版読んだ後だと、「土」もやって欲しかったなぁ~と。フェンス越しに犯人と対峙する場面、映画で見てみたかった。個人的に、一話ずつ区切られたオムニバス形式でも良かったのではとも思う。

 

あと、この映画ではストーリー的に関係無いのだから、主人公の名前はぼかして欲しかったですね。これから原作小説読もうって人に不親切だというか、配慮が足りないでしょう。

 

画にだいぶこだわりが窺える作品で、役者も映像も美術も美しいので、ホラー・ミステリといったエンタメ作品というよりは、絵画的というか、芸術性を愉しむ作品なのかなと思います。主役二人が原作よりクールな人物像になっているのも、美しさに特化するためかと。

 

しかし、アパート暮らしなのに森野のあの作り込まれた部屋にはちょっと笑ってしまいますけどね(^_^;)。あと、この犯人はアーティストだ云々の映画オリジナルの台詞は、あまりにも陳腐なので「僕」に言わせない方が良かったと思う。なんかゲンナリする。

 

原作ファンだけでなく、役者のファンも絶対に観るべき作品ですので是非。

 

 

それはそうと、実は『GOTH』はアメリカでも映画化企画が2007年に持ち上がったらしいのですが、その後今日に至るまで音沙汰なしです。

ま、アメリカの方はとりあえずつばを付けておくといいますか、権利だけさっさと手に入れたものの企画が頓挫するということがざらにあるようなので・・・。ある日いきなりアメリカ版やるよ!ってなこともなきにしもあらず。一応。

 

 

 

 

 

番外編『GOTHモリノヨル』

 

 

こちら、2008年の映画との連動企画で発売された本。

 

中身は乙一による6年ぶりの『GOTH』新作「GOTH番外編 森野は記念写真を撮りに行くの巻」が前半に80ページほど収録。本の後半は森野夜役を演じた高梨臨さんの写真集となっています。

 

80ページとはいえ、字が大きいので30分あれば読み終えてしまえる短さなんですけど。実はこれ、作者の乙一さんは“写真集の巻末のオマケ”のつもりで書いたものだったようです。乙一さんとしては映画に出演した高梨臨さんを被写体とした“森野夜の写真集”にそえる文章を寄稿したつもりが、いざ本が出来上がってみたら自分の小説の方がメイン扱いになっている仕上がりだったので、「話が違うじゃないか」となったらしい。

 

で、写真の方はというと、これがお世辞にも良い写真とはいえない。これで1600円+税というお値段だったことで当時だいぶ批判的な声があったようです。

“被写体の森野夜を殺人犯が撮っている”というコンセプトのため、わざと素人が撮ったような不出来な仕上がりの写真にしているとのことですが、そんなの説明されなきゃ分かりませんしね。同時収録されている話の内容に完全に合わせた写真という訳でもないし、購入者が文句を言いたくなるのも分かる。

 

私は当時、「6年ぶりのGOTHの新作」ってので舞い上がって値段なんて気にせずに即買ったんですけど。

書き下ろし小説の内容に満足したのでもの凄い不満を覚えたりはしなかったのですが、写真に関しては「何がしたいのかはなんとなく分かるけど、なんか中途半端だな~」と思いましたね。肝心の森野が死体のフリをしている写真がなく、ストーリーも見えてこない連写写真で意味不明なんですよね。なにやら変態的だなぁというのがつたわるだけ。

 

個人的に、森野だけで「僕」の写真がないのがガッカリだった。コンセプト的にしょうがないのでしょうけど。そんなコンセプト買った時は知らんし。これなら映画の場面写真を載せてくれた方がずっと嬉しかったですね。

 

2013年にこの本の小説部分のみを抜粋した文庫本が発売されたのですが、

 

 

この文庫版のあとがきで乙一さんはこのことで色々とがっかりしたり考えさせられたりして、諸々トラウマになって『GOTH』の続編を書かない理由にもなっていると書かれています。

ひょっとしたら続編が刊行される可能性があったということにまず読者としては驚き。これを知らされると「なんと罪深い本・・・!」ってなりますね。

 

文庫版あとがきでは乙一さんの『GOTHモリノヨル』への愚痴なんだか持ち上げているんだかな意見が細かく書かれていて、小説も微妙に加筆修正されているのでファンは必見です。

加筆修正されていると最近知って電子書籍で文庫版を買って読み比べてみたんですけど、個人的に私は最初の写真集版の文章の方が好きですね。気になる人は是非両方手に入れて読み比べてみて欲しいです。

 

 

しかし、GOTHの続編・・・・・・!なんとかトラウマを克服して書いてくれないものでしょうかねぇ・・・無理かも知れないですけど、微かな望みを抱いてしまうところ。お願いできないもんでしょうか(>_<)。

 

 

漫画、映画、番外編諸々。GOTHファンは是非。

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

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