夜ふかし閑談

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『虚構推理 逆襲と敗北の日』ネタバレ・感想 “あの人”と対面!その結末は?

こんばんは、紫栞です。

今回は城平京さんの『虚構推理 逆襲と敗北の日』の感想を少し。

虚構推理 逆襲と敗北の日 (講談社タイガ)

 

こちら、あやかし達の争い事の仲裁・解決、相談を受け、虚構を用いて人とあやかしの間を繋ぐ「知恵の神」である岩永琴子と、その恋人で、不死で未来決定能力を持つ“怪異を超えた怪異”である桜川九郎の二人が活躍する【虚構推理シリーズ】の小説版第五作目。

 

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2021年12月に発売されていたのですが、チェック不足で買い忘れていました。アニメの二期が始まる前にと慌てて購入。

前作は短編集でしたが、

 

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今作は長編です。長編はシリーズ一作目の『虚構推理』、三作目の『虚構推理 スリーピング・マーダー』に続いて三冊目ですね。

 

目次

 

第一章 見たのは何か

第二章 岩永琴子の逆襲と敗北(前編)

第三章 岩永琴子の逆襲と敗北(中篇)

第四章 岩永琴子の逆襲と敗北(後編)

第五章 知恵なす者の悪夢

 

の五章から成っています。

 

第一章「見たのは何か」は九郎の従姉で同じく未来決定能力と不死の力を持つ桜川六花がまだ岩永の屋敷に寄宿していた頃、六花に手を貸してもらって解決させた殺人事件を琴子が九郎に語るというもので序章というか前座のようなお話。

 

二章からの「岩永琴子の逆襲と敗北」はキリン(※神獣の麒麟ではなく首の長い“あの”キリン)の霊が山に現われたことで三人が転落死する事件が発生。その現場に居合わせ、キリンの霊と対峙して怪我をした男性を助けたのがなんと六花さんだとかで、警察署で琴子と九郎は六花さんと久しぶりの対面をすることに。

琴子と九郎から逃げ回るように行方をくらましていたのに、あっさりと二人の前に姿を現した六花さんの魂胆はいかに。警戒しつつも琴子はキリンの霊の仕業で起こった事件を“怪異のない事件”としておさめるべく虚構の推理を構築する――ってなストーリーですね。

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

酷い事件

第一作目の「鋼人七瀬」事件で黒幕として登場、シリーズの立ち位置としては一応敵対関係にある六花さんとの直接対面。短編の方ではちょこちょこと過去話などで登場していたんですけどね。通常の時間軸での対面はシリーズ初です。なので、当然ながら今作ではシリーズとして大きな変化がある物語となっていますよと。

 

事件の方は黄色くって首が長いあのキリンの幽霊が日本の山奥に出現するというヘンテコな設定が如何にもこのシリーズならではのおかしさといった感じ。しかし、設定はヘンテコでも今回は死者が三人出ているってことで内容は重たいです。

 

このシリーズは元々「真実を隠すために虚構の推理を披露する」という“アンチ推理小説”ともいえるものなのですが、謎の追究としてあるのは「動機」。

「見たのは何か」も「岩永琴子の逆襲と敗北」も動機の謎を導き出すには理解しがたい人間心理による発想の飛躍が必要になっています。

『スパイラル』の小説版の方でもこういった発想の飛躍が必要な動機が描かれていましたが、

 

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今作では犯人一人だけでなく事件関係者皆が非人道的で身勝手な考えによる行動をしているので「そんな思考に陥ってしまうこともあるかもしれない」と読者に思わせるのは無理があるかなと。思考の仕方もかなり回りくどくって無理矢理感漂う。

 

考えれば考えるほど酷い話で、胸糞悪い真相。牽制し合うのに疲れたから好きな人を皆で見殺しにしたとか「はぁ?」だし、そんなことしといて“挺身の栄誉”って何だよって感じ。あまりの自己陶酔っぷりに吐き気がする。気持ちが悪い。

 

 

 

 

苦しい関係

そんな訳でひたすら酷い事件なのですが、いつも通り怪異の事実を隠すため琴子は虚構の推理を披露することで思惑通りに人を動かし、事を収めています。

 

しかしながら、今回琴子が選んだ方法は人としての一線を越えるものでした。そこの部分を六花さんに指摘され、琴子は思わぬ取引に応じることとなる。こんなことに勝ちも負けもないだろうところですが、タイトルにあるように岩永琴子は敗北を喫するのです。

 

世の秩序を守るためにと「知恵の神」として時に厳しい判断を下してきた琴子ですが、今回は死者を出すことで事を収めた。

それがもっともスムーズで理にかなった手段であり、六花さんにつけいる隙を与えたくなかったとの思いもあってのことでしょうが、知恵を絞れば他にも方法があっただろうにこの選択を何の躊躇もなくしてしまうのは、やはり一般的には人の道に反している。

 

「神」としてふるまうならば人間性は捨てねばならない。

そして、「神」として秩序を守ろうとするならば、怪異を超えた怪異であり秩序からもっとも外れた存在である九郎も琴子は排除しなければならない。

 

琴子に悲壮感がないので忘れてしまいがちですが、十一歳であやかしに攫われて右眼と右足奪われて神様やらされているって、あんまりにもあんまりな境遇ですよね。今作はそんな、いつもはクローズアップされていないこのシリーズの救いのなさや前途多難っぷりがあらためて表面化。鋭くツッコまれています。

 

さらに、第五章の「知恵なす者の悪夢」ではなんとなくぼかされたままで謎となっていた部分、まったく“それ”っぽくない恋人同士である琴子と九郎、二人の心情も明らかになっています。

今までは恋人にしては九郎先輩があまりに素っ気なさ過ぎて「何で恋人になったんだ?」と疑問だったのですが、今作を読むとむしろ琴子の方が九郎先輩から愛情を示されても頑なに認めようとしていないのだというのがよく分かる描かれ方をされていて、九郎先輩が恋人になった理由も確りと明らかに。

 

「なんだよ、面倒くさい二人だな」という感じですが、これが本当に面倒くさくって(^_^;)。二人ともお互いに虚構で本音を覆い、建前とすることでどうにか一緒にいることが出来ているようです。愛情があるからこそ愛情を否定する虚構を用いなければならない関係・・・なんて厳しい現状なんだ。

 

 

 

 

前途多難

今作でシリーズは一区切りですね。第一部完といったところでしょうか。今度から六花さんと協力関係になるようなので、琴子と九郎先輩の二人体制から六花さんを交えての三人体制に移行なんですかね。

秩序を守る「神」と、秩序から外れた存在である二名。はたしてどのような結果が待ち受けているのやら。

 

片瀬茶柴さんによる漫画版ですと、この「岩永琴子の逆襲と敗北」のエピソードの後に小説版前作の短編集に収録されていた「雪女を斬る」をやっているようです。

 

 

来年、2023年1月にはアニメのseason2が放送予定ですし、シリーズの今後に注目ですね。

 

 

ではではまた~