夜ふかし閑談

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『虚構推理 岩永琴子の密室』小説版第6弾!短編5編 あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。

今回は、城平京さんの『虚構推理短編集 岩永琴子の密室』の感想を少し。

虚構推理短編集 岩永琴子の密室 (講談社タイガ)

 

こちら、あやかし達の争い事の仲裁・解決、相談を受け、虚構を用いて人とあやかしの間を繋ぐ「知恵の神」である岩永琴子と、その恋人で、不死で未来決定能力を持つ“怪異を超えた怪異”である桜川九郎の二人が活躍する【虚構推理シリーズ】の小説版第六作目。

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一作目以降は月刊少年マガジンコミックス『虚構推理』の原作として描き下ろされていて、

 

 

今はアニメのseason2が放送中です。

 

 

 

前作の『虚構推理 逆襲と敗北の日』は長編でこのシリーズ的に大きな転機となる事件が描かれていましたが、

 

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今作は短編集。第二部始まりってことになるのでしょうが、このシリーズの日常といいますか、相変わらずあやかし達からの依頼を受けて虚構の推理を披露して場を収めるという通常運転で展開されております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目次

タイトルの通り(※広い意味でとらえれば)“密室”にまつわる短編五本収録。

 

 

●みだりに扉を開けるなかれ

自殺を装うため、密室トリックを用いて妻を殺害した男。しかし、殺された直後に幽霊となった妻によって密室の扉が開けられ、犯人の夫は疑心暗鬼に――な、お話。

 

別の依頼を片付けて帰路につく中での車内で、琴子が九郎に事件のあらましを聞かせるというもので、20ページほどの小話。

個人的に、幽霊が鍵を開けられるというのはちょっと納得がいかないですが・・・これで力を使ったせいで弱い地縛霊になったというフォロー(?)がされていますけど・・・。「う~ん」ですね。ま、このシリーズでは今更でしょうが。

この事件のせいで、あやかし達の間で鍵を開けて密室を台無しにするのが流行してしまう。

 

 

 

 

●鉄板前の眠り姫

昼営業終了前のお好み焼き屋に一人立ち寄った琴子。店主は店の雰囲気にまるで合わない娘に来店され、さらに鉄板前で眠りこけられて困惑する。九郎が琴子を回収しに現われるが、店主は九郎を怪しみ、あらぬ疑いをかけ始めて――ってなお話。

 

九郎先輩が変に九郎する話ですね。ページ数は30ページほど。

琴子の見た目が完全に幼女なのでそんなことになってしまう。あやかし関連で話せないことも多いので、説明に窮するんですね。

これだけだとコメディ小話みたいですが、終盤で思わぬ展開をする。

 

 

 

●かくてあらかじめ失われ・・・・・・

合い鍵を持っている被害者の元妻に罪を着せるため、“開けられて無駄になる”のが前提の密室トリックと“持ち去られる”のが前提の偽造遺書を仕掛けた犯人。目論見通りになったと最初は思っていた犯人だったが、実際は密室を開けたのがあやかし達だったため、事態は一般的には説明のつかない妙なことに。事態の収拾のため、琴子は被害者の娘・美矢乃に接触するが――ってなお話。

 

「みだりに扉を開けるなかれ」での弊害ともいえる事件。ページ数は90ページほどでこの本では長め。

前作での事件をきっかけに、協力体制となった六花さんが登場。琴子に対して結構親切で、敵対していたのが嘘のよう。前作での気づきで六花さんも琴子に同情的になっているのかもしれない。

終盤で解決のため協力していますが、これは別に未来決定能力を使う必要なかったのではという気がする。「念のため」と作中でも言っていましたが。

 

マンションの部屋が隣同士の男女の高校生というベタなラブコメみたいな設定に、ベタな推理小説そのままの家族の秘密。物語はそういった人間関係がメインですが、ベタなぶん予想はつきましたね。しかし、こんな親たち嫌だなぁ。

 

 

 

●怪談・血まみれパイロ

落語調のお話。世に起こる怪異はすべて化け狸がやっていると信じている男が工事用の赤いコーンを蹴飛ばしたら、血まみれのコーンが毎夜アパートの部屋の前に現われるようになった。ある人物のアドバイスに従い、男は化け狸を捕まえようと罠を仕掛けるが――ってなお話。

 

いかにも一休みといった20ページほどの小話。依頼されれば、あやかしのために落語も描き下ろさなくてはいけないとは、“知恵の神”って本当に大変だなぁと。

「怪異や世に伝えられている妖怪は全部狸が化けたもの」ってのは、京極夏彦作の豆腐小僧双六道中ふりだし』で描かれた陰謀「妖怪総狸化計画」を思い出す・・・。

 
 
 

飛島椿の祖母・龍子は、政財界に多大な影響を持つ女性だった。しかし、50年前に夫の走太郎を喪ったのをきっかけに一線を退き、人前に出るときは喪に服して黒いベールをかぶるようになったという。

27歳になった椿の前に飛島家のかつての使用人の幽霊が現われ、「走太郎様が巻田孝江を確かに殺せたと奥様に納得させてくれ」と懇願される。どういうことか分らない椿が父の頼行に問い質すと、頼行は50年前に走太郎が起した殺人事件を一家で隠蔽した事実を椿に告白した。

頼行と話し合うも、未だにベールをかぶり続ける龍子の不安を取り除いてやることは自分たちには出来ないと判断し、使用人の霊にそう告げると、今度は「おひいさまにお力添えを願うのはいかがでしょう?」と提案される。

半信半疑ながらも椿は頼行と共に“おひいさま”と面会するが――ってなお話。

 

90ページほどのお話で、語り手は一貫して飛島椿。琴子サイドの視点がないので、この物語では琴子が“謎のゲスト”って感じ。

50年前に村で起こった事件で日本の古式ゆかしい本格ミステリ風味。説得のための提案が複数用意されているのはこのシリーズだからこそのもので“らしい”ですね。

作中でも言及されていますが、この物語はナサニエル・ホーソーンの短編小説『牧師の黒のベール』にたいしての解釈の一つを著者の城平さんなりに提示したものなんじゃないかと思います。

 

 

若干、状況や行動に不自然さがあるのが気になりますが、この黒のベールをかぶりつづける理由の解釈が空恐ろしくって良いですね。個人的に好みです。

最後のシメがちょっと物足りないですが、あえて読者に想像させるエンディングにしているのかと。この物語の場合はその方が良いのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、五編。

「かくてあらかじめ失われ・・・・・・」と「飛島家の殺人」がメインで、後は前フリや小話といったラインナップ。

全体的に、殺伐とした人間関係が描かれていたなという印象。特に、「夫婦って、結婚って何なんでしょうね・・・」と、なった。虚しい・・・。

前作で第一部が終わって第二部開幕なはずですが、短編集なだけあってシリーズとしての大きな動きは特になし。短編集だといつも九郎先輩の出番が少なくなりがちで、六花さんも協力するようになっているからかさらに印象が薄い気が。「鉄板前の眠り姫」での活躍で帳尻をとっているのか。

 

毎度のことながら、琴子にわざとらしい下ネタ言わせるのが個人的には好かない。下ネタは下ネタでも、なんというか“モロ”すぎて、ひたすら下品なんですよね。元々下ネタは下品なものと言われればそれまでなんですけど、種類(?)があるじゃないですか。

「カワイイ子がこんなこと言っちゃうんだぜ~」っていう著者の狙いがミエミエで、女性読者としては不快なんですよね。

なので、「飛島家の殺人」ではその下ネタ披露もなくって良かったなと。ホント、下ネタ要素要らないのになぁ・・・。

 

収録作品はどれもこのシリーズならではの内容になっていて良かったです。

作者もこの設定での物語作りにどんどん慣れてきているようで。各事件もですが、今後シリーズ全体をどうまとめ上げるかにも期待出来そうです。

 

今後も追っていきたいと思います。

 

 

ではではまた~