夜ふかし閑談

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『岸辺露伴は動かない』3巻 あらすじ・解説 嬉しい”逆影響”な原作漫画3編

こんばんは、紫栞です。

今回は、荒木飛呂彦さんの漫画作品岸辺露伴は動かない 3巻』の感想を少し。

 

岸辺露伴は動かない 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

ドラマや映画で話題の『岸辺露伴は動かない』ですが、こちらは2025年5月に刊行された原作漫画のコミックスです。

前巻の2巻が刊行されたのが2018年なので、およそ7年ぶりの新刊ですね。不定期発表の短編シリーズなのでこのようなことになる。

 

※1・2巻について、詳しくはこちら↓

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あまりよく調べないまま本屋に買いに行ったのですが、対象店舗ですとポストカードか栞の特典付きがあったみたいですね。私が買いに行った本屋さんでは栞の特典でした。最後の一冊だった・・・ラッキーッ!

 

3巻は、ホットサマー・マーサ『ドリッピング画法』ブルスケッタの三編収録。

1巻が五編、2巻が4編収録だったので少なく感じますが、そのぶん一編が長めです。今回も各話ごとに荒木先生の解説が載っていまして、そこも見所の一つ。荒木先生のコメントって、なんだか面白いんですよね。

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレ含む感想ですので注意~

 

 

 

 

 

 

 

ホットサマー・マーサに関しては前に当ブログで紹介したので割愛させて頂きますが↓

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『ドリッピング画法』は、泣きながら原稿を描いている露伴先生が編集者の泉京香に取材へ行った時に起こったエピソードを話して聞かせるオープニングになっています。

「絶望的に厭なエピソードで、もし読むなら覚悟をして欲しい」などと先生が言うので、オヤオヤオヤ・・・と戦々恐々してしまう。

 

で、次の場面から浮気相手と密会していたら娘を迎えに行く時間を過ぎてしまい、急いで車を走らせる女性の様子が描かれる。

旦那にバレることを怖れつつ、頭をグルグルさせながら急いでいたら、途中で後ろの車に異様な煽られかたをされて――・・・と、いうのが前半。後半で雰囲気も主役もガラッと変わる構成になってるお話。

解説で荒木さんが仰っていますが、この構成はヒッチコックの名作古典サスペンスホラー映画『サイコ』とほぼ同様なのだとか。(私は『サイコ』をちゃんと観たことがないので分からない・・・)意図して描いていた訳ではなく、半分以上描いてから気がついたらしい。荒木先生のホラー映画好きって、どの作品からも滲み出ていますよね。

 

前半部分のドライブシーンはイカレタ奴に追われる恐怖が巧みに描かれています。どういう風に露伴先生が取材に行った話と繋がるのかと不審に思いながら読んでいたところで、驚きの反転をする。

 

確かに鬱で絶望的なエピソードなのですが、最後の泉京香とBAKIN(露伴先生の飼い犬)のシーンがとても好き。露伴先生の担当編集が京香くんで本当に良かったと思わせてくれるエピソードです。

 

 

ブルスケッタは、ハワイ島にある持ち家で妙な音がすることに気がつくところから始まる。妙な女の子も出て来て、洒落にならないレベルで音に悩まされることに。

 

「新種の生物」もので、2巻に収録されている「月曜日天気-雨」と分類は同じ。人間を利用して種を繁栄させようとする点は1巻収録の「六壁坂」とも共通していますかね。”アレ”は妖怪って感じが強いですけど。

 

個人的に、「六壁坂」も「月曜日天気-雨」もシリーズの中で特に好きな作品で、この「ブルスケッタ」も面白かったです。スタンド能力もですが、荒木さんが描く”架空のもの”は斬新でありながらリアリティも感じられて巧みですね。

 

作中で窮地に陥っている先生が「ゲロ吐きながら9日なんてマジ付き合ったりしないからなッ!!」って言っているのがウケる。

 

タイトルが何故「ブルスケッタ」なのかはよく分からない。料理名ですよね。序盤で先生が作って、最後に女の子が食べてますけど。最初は気味が悪かった女の子も、最後のシーンではかわいく感じる。ま、まったくかわいくない方法で先生の所まで来てるのですが・・・健気ですけどね。

最後に御丁寧に『ブルスケッタ露伴風』のレシピが載っています。シャレオツで、材料見ただけで作るの断念してしまうな・・・私は(^_^;)。

 

 

 

 

 

コロナ禍、地球温暖化、生物進化と、荒木さんが仰っているように、今巻収録の三編は環境や社会性が組み込まれたストーリーになっていますね。露伴先生も苦悩したり涙を流したりと人間くさい部分が多く出ています。

アイディアの良さはもちろんですが、サスペンスホラーの魅せ方が今巻もピカイチ。読み応えのある短編集になっていますね。

 

実写版に荒木先生も影響を受けているようで、今まで原作では「富豪村」に登場したのみだった担当編集者の泉京香が今巻では三編すべてに登場していて、実写版同様にシリーズ主要人物に格上げされている感。やっぱり、実写版による一番の功績は”泉くん”よねぇ・・・。

 

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短編でのシリーズとはいえ、こういった定番キャラクターがいた方が楽しいし安心するので、これは嬉しい”逆影響”ですね。

実写版だと露伴先生は一貫して「泉くん」と呼んでいますが、漫画の方では差を付けるためか大体「京香くん」と呼んでいます。

 

 

泉京香もいて実写版ファンも取っ掛かりやすい短編集となっていますので、ドラマや映画は観たけど原作読んだことないよ~って方も是非。

 

 

 

ではではまた~