こんばんは、紫栞です。
今回は、映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』を観てきましたので、感想を少し。
こちら、2020年から始まっているNHKドラマシリーズの劇場版。このシリーズは今までにドラマが第4期で9話、劇場版が一作公開されていまして、今回は劇場版第2弾。全体でいうと11話目のエピソードとなります。
原作は一話完結型の短編シリーズでして、この実写シリーズでは順不同でやってきていたのですが、今回原作として使われているのは原作漫画の記念すべき第一作目。イタリア・ヴェネツィアの教会に取材に行った漫画家の岸辺露伴(高橋一生)が、取材の延長で懺悔室に入り込んで神父と勘違いされ、男の奇妙な罪の告白を聞くといったもの。
直近のドラマ「密漁海岸」
の最後で「イタリア取材・・・」と、ルーブルの時同様の泉くん(飯豊まりえ)による”匂わせ”台詞があったので、ファンの間では「次は懺悔室くるか!?」と囁かれていました。
しかして、「密漁海岸」放送後に出演者のお二人がご結婚されましたし、シリーズ自体続くのかって心配もあったのですが。昔は夫婦共演って結構あったんですけどね。昨今はとんと聞きませんから。
そんな心配を退け、今回もまた期待を裏切らずに”匂わせ”がキッチリと回収された訳ですが、なんせ原作の「懺悔室」は本当に露伴先生が話を聞いているだけで何もしない、”動かない”お話。どうやって2時間の映画にしているものか、興味津々で観に行ってきましたよ。
原作再現の前半
今回はオール・ヴェネツィア・ロケとのことで。最初っから露伴先生がヴェネツィアに居るところからスタート。本当に日本のシーンは一切なしですね。
個人的に、海外ロケといわれてもそんなにテンションは上がらないし、むしろ日本語以外の言語出て来て面倒だなと思ってしまったりもするタイプなのですが、ヴェネツィアの画がこの実写シリーズの雰囲気に合っていて良かったですね。建物や景観は素直に見応えありましたし、役者も変に浮かずに画に馴染んでいるなぁと。
この実写シリーズは本当に衣装と美術が優秀。観る度に思いますね。すべての実写作品で見習って欲しい。衣装とヘアメイクと美術って蔑ろにされがちですけど、観客を物語に入り込ませるためにもっと割合を占めて力を入れるべき!
それはそうと、今回の露伴先生のコートはめっちゃ重そうだなってなりましたけど。パンフレット読んでみたら、4~5㎏あるって書いてあった・・・(^_^;)。
前半は懺悔室で男が「幸運に襲われる呪い」について語るのが主となっています。つまり、原作漫画の部分ですね。後半で露伴先生がその男の呪いに巻き込まれる様が描かれる。後半の半分が映画でのオリジナル展開となっています。
登場人物が日本人にはなっていますが、前半は原作の忠実再現でファンを楽しませてくれます。原作再現ですと、やっぱり圧巻だったのはポップコーン対決のシーンですね。大東駿介さんが原作同様の鬼気迫る全力演技をしていまして、ポップコーンをぶちまけるところも画的にとても良い。撮影大変だっただろうな~ってのが滲み出ているシーンです。
舌が喋るシーンも最大限の再現をしていましたよ。娘は舌出してるだけでしたけど。(原作だと身体を乗っ取られた娘の様子がメチャ怖い)
そんな舌に喋らせるシーンに拘らんでも・・・でしたけど、これ、原作者の荒木先生からの譲れない要望だったらしい。荒木先生、そんなに舌に喋らせるのに拘りあったのか・・・。
浮浪者のソトバ(戸次重幸)ですが、汚れメイクと演技で最初誰か分かりませんでした。戸次さんはこの役の為に眉毛を脱色して火傷してしまったのだとか。
今回の映画、男性陣が皆ジョジョファンらしく、各自意気込みが凄かったですね。井浦新さんはめっちゃ”ジョジョ演技”をして下さってましたよ。あの、”あ”を強く発音するジョジョ特有の台詞回しね。
以下ネタバレ~
オリジナルの後半
観ながら、「こりゃ後半丸々オリジナルだぞ。どうするんだ」でしたが、映画では田宮にヘブンズ・ドアーを使って読んでしまった為に「幸福に襲われる呪い」に巻き込まれる。好奇心で動いちゃう先生らしい巻き込まれ方ですね。
自分の身代わりを立てることで一時はソトバに殺されるのをしのいだ田宮(中身は水尾)ですが、今度はソトバと身代わりにした水尾(中身は田宮)も加わって「娘が幸福の絶頂の時、お前に絶望を味合わせる」という呪いをかけられる。
元々の呪いは「お前が幸福の絶頂の時に絶望を味合わせてやる」ってものだったのが、”娘が絶頂の時”と、マイナーチェンジされたのですね。
その結果、娘のマリア(玉城ティナ)も幸運に襲われることとなり、田宮は自分が死にたくないが為に娘に”一番の幸福”を避けるように言い聞かせて育ててきた。
父を死なせる訳にはいかないと言いつけ通りにしてきたマリアでしたが、ロレンツォ(アンドレア・ベッラチッコ) と出会って結婚を決意。呪いは、マリアを”幸福の絶頂”であろう結婚へと向かわせようとする。
露伴はその”マリアを幸福の絶頂へ導く為の呪い”の手先として使われることとなり、自分可愛さに娘の結婚を何が何でも阻止しようとする田宮と対立することに。
”幸せが襲いかかってくる呪い”に関心を持ちつつも、どこか静観していた露伴先生ですが、幸福の呪いが自身の描いている漫画にまで及んでブチ切れ。ヘブンズ・ドアーを使ってとある仕掛けをする。
いやぁ、徹頭徹尾”らしい”ですねぇ。ブチ切れポイントも、宝くじ踏んづけて子供っぽく癇癪起すところも。いつもながら素晴らしいです。
泉くんも、「私なら、生きて絶望して欲しいなって」「今日が最高の日なんて決められないです。だって明日、もっと大きな幸せが来るかもしれませんもん」と、気づきを与える&最強っぷりを今回も発揮してくれています。強すぎる・・・!何も効かないじゃん。
シリーズを重ねるごとに泉くんの無敵っぷりと重要度は上がっていますねぇ。
幸福の呪い
この『懺悔室』というお話、「幸せすぎて怖い」という人間の感情、幸運との均衡を保つかのように不幸が訪れるのではないかという潜在的な恐怖を拡大させたような物語。
摩訶不思議な能力有りきの物語でありつつも、この映画では”呪いは受け手の気持ち次第”、”呪いをかけるのは自分自身”なのだという、根本的な「呪い」のあり方が描かれています。
なので、露伴は田宮の肉体にではなく、感情を突き動かす攻撃をすることで呪いを解除する。
オペラの〈リゴレット〉と掛け合わせての脚本はお見事ですが、「これで大丈夫なの・・・?」って疑問は正直ありますね。ま、田宮が”最大の絶望”を味わったので、今回の呪いは終了。とりあえず娘のマリアは”幸福に襲われる呪い”から解放されたってことでしょうか。
しかし、絶望して終わりでなく、この後田宮に「・・・・・・これで助かった、これで・・・」と言わせるところがこのシリーズだな~~といった感じ。
とてつもなく身勝手で悪人ではあるんだけど、娘のことを愛しているのは確かだからこその絶望。でも、結局我が身可愛さが勝つ。だから田宮自身の呪いはいつまでも解けない。でも、同時にそれは人間としてとてもたくましい生き方でもある。
原作の「怨霊に取り憑かれてもあきらめず孤独に人生を前向きに生きる男・・・彼は悪人だと思うがそこのところは尊敬できる・・・」に繋がるラストですね。
夫婦共演ということで、観ていて気になってしまうかな、作品に集中出来ないかも?という心配は少なからずありましたが、いざ観てみるとまったく気にならなかったです。安定と安心の露伴先生と泉くんでしたね。
しかし観終わってから改めて考えてみると、二人でカフェ行って、オペラ観に行って、教会行って、橋で景色見て・・・・・・って、まるでデートコースじゃね?
作中、イタリア人と何故か日本語で意思疎通が出来ていた泉くん。観ながらずっと「え?通じてる?え?」だったのですが、最後の最後に泉くんはやはりイタリア語がまったく分からないことが判明。
不可解ですが、これもまたマリアを結婚に導くために”幸運の呪い”が事が上手くいくように計らっていたってことでしょうか。こんな怒濤の幸運に晒されているのにさほど気にとめていない泉くん、やはり強い・・・!
観終わった後に「もう一度観たい!」ってなる映画でしたね。前回のルーブルは過去パートや時代劇パートがあって変化球的な映画でしたが、今作は本当に『岸辺露伴は動かない』を堪能出来る映画となっていて、ファンとしては大満足です。
気になった方は是非。
ではではまた~