夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『連続殺人鬼カエル男 完結編』ネタバレ・解説 カエル男、終わりの物語

こんばんは、紫栞です。

今回は、中山七里さんの『連続殺人鬼カエル男 完結編』について、感想を少し。

連続殺人鬼カエル男 完結編

 

あらすじ

凄絶な殺害方法、稚拙な犯行声明文、五十音順で選ばれる被害者・・・世間を震撼させた連続殺人鬼カエル男事件。

犯人は逮捕されたものの、後に医療刑務所から脱走。事件を起しながら逃走を続けていた。

そんな折、刑法第39条の適用で無罪を勝ち取った”人権派弁護士”が殺害される事件が連続して発生。いずれも酸鼻を極める殺害方法、遺体の側には稚拙な犯行声明文が遺されていた。

カエル男が猟奇殺人を再開させたのか?埼玉県警捜査一課の渡瀬と古手川は捜査を開始するが―・・・。

 

 

 

 

 

 

みたび(でも、四部作)

こちら、連続猟奇殺人鬼・カエル男と埼玉県警捜査一課の渡瀬古手川コンビとの闘いが描かれる長編ミステリ小説シリーズの三作目。中山七里さんの”裏デビュー作”とも言われる『連続殺人鬼カエル男』、時を経ての完結編です。

※一作目、二作目について、詳しくはこちら↓

 

www.yofukasikanndann.pink

 

www.yofukasikanndann.pink

 

「カエル男」による悪夢”みたび”なんですけれども、ここで注意しなければならないのが、このシリーズが三部作ではなく四部作だという点です。

 

巻末に、

本作は四部作となり、以下の順におよみいただくことをおすすめいたします。

『連続殺人鬼カエル男』(宝島社)→『連続殺人鬼カエル男 ふたたび』(宝島社)→『嗤う淑女 二人』(実業之日本社)→本作

 

と、書いてある。

 

「カエル男」の方だけ読んでいる人からすると『嗤う淑女 二人』って何ぞ?となるところですよね。これは悪女ミステリの別シリーズ【嗤う淑女シリーズ】の三作目でして。「カエル男」の方の主要人物・有働さゆりが、こちらの方でも主要人物として登場。今作の前日譚ともいうべき物語で、確かに『嗤う淑女 二人』を読んでおかないと困惑するだろう記述が多々出て来る。

 

 

※【嗤う淑女シリーズ】について、詳しくはこちら↓

 

www.yofukasikanndann.pink

 

”本作は四部作となり”って・・・巻末で書かれても!ですよね。ちょっと不親切すぎますよ。帯とかにデカデカと書いといてくれないと。

 

そんな訳で要注意なんですけど、これがまた『嗤う淑女 二人』を楽しむ為にはというか理解する為には、やっぱり【嗤う淑女シリーズ】の一作目から読まないとダメな訳で・・・中山七里作品は他シリーズと繋がりまくるのが常とはいえ、読者としては難儀なことではある。

私もこの完結編を読むために頑張って【嗤う淑女シリーズ】三冊読みましたからね・・・。

 

それともちろん、有働さゆりの担当弁護士である【御子柴シリーズ】御子柴も登場しています。

www.yofukasikanndann.pink

 

こちらのシリーズのファンも必見の内容ですね。

 

 

 

 

 

以下、ガッツリとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刑法第39条

一作目『連続殺人鬼カエル男』で解離性同一性障害者である有働さゆりが犯人として捕まり医療刑務所行き

二作目『連続殺人鬼カエル男 ふたたび』で元凶とも言うべき御前崎教授が模倣事件を起して逮捕され、そのいざこざの中で有働さゆりが脱走して指名手配の身に

逃走しながら『嗤う淑女 二人』で蒲生美智留に依頼される形でテロのような大量殺戮をし、美智留に始末されそうになって決別。また一人で逃走継続へ。

 

と、いったのが今作までの一連の流れなのですが。

 

今作では”人権派弁護士”が狙われる連続殺人事件が発生。今回もまた良く考えつくなぁと言いたくなる残酷な、想像もしたくない殺害方法で「カエル男」は犯行を重ねていきます。

 

端から見ると被害者たちに接点はなく、名前の五十音順で無差別に選ばれ、殺されるというのが「カエル男」が世間を震撼させた要因なのですが、今回は刑法第39条の適用で無罪判決を勝ち取ったことがある弁護士ってことでターゲットが絞られているため一作目のような大パニックには陥りません。一作目のパニックはいくらなんでも行きすぎだって感じでしたけどね・・・。

 

かわりに世間で巻き起こるのが、心神喪失者の行為は罰しない」という刑法第39条の存在意義についての論争です。

 

容疑者である有働さゆりは解離性同一性障害者、殺された弁護士たちは被疑者の人権を尊重するべきだと刑法第39条を楯に無罪を主張して被害者遺族から恨まれていた。

 

一連の事件は刑法第39条によって引き起こされたものだということで、そもそも鑑定士によって結果が変わる精神鑑定を取り入れての刑法なんておかしいんじゃないのか、精神状態などの不確定要素が多いものは除外して”行為”のみを対象に罰するべきだろうという意見が多数出て、内閣で法改正が検討される事態にまで発展することに。

 

刑法第39条はこのシリーズでずっと扱われてきたテーマですね。中山七里作品ではお馴染みの世間での論争描写が結構なページ割かれて描かれています。

 

シリーズをここまで読んできまして、その度に考えさせられてきましたけれども、やはりどうにも答えの出ない問題ですよね。

 

感情論でいうなら犯した罪には相応の罰が下されて欲しいと願うところですし、現実に私自身が被害者側の関係者だったら心神喪失で無罪なんて絶対に納得出来ないし許せないだろうと思う。

でも、じゃあ発生状況などを無視して行為に対する応報感情のままに罰するというのも法律のあり方としてどうなんだとも思いますし。

 

今回、完結編ということで法改正が真剣に検討されるまでになりますけど、本当に法改正されたかどうかは有耶無耶で終わっています。

おいおい、そこはっきりさせんかい!ってなるんですけど。ま、本の中で刑法第39条は廃止されましたってする訳にもいかないので濁したんですかね。

 

 

 

 

完結

最初の犠牲者の名前が烏森で「カ」、次が木嶋で「キ」なので、今回はカ行でのターゲット選びなのね~と思いきや、3人目が津万井で「ツ」で、カエル男が拘ってきたルールから外れたため、渡瀬と古手川は困惑する。

 

今作でのミステリ的謎は実はこれだけ。様々な証拠から犯人が逃走中のカエル男・有働さゆりであることは間違いないのに、何故いきなりルール破りをしたのか。

 

その後、二作目で三つの殺人を犯して現在拘置所暮らしの御前崎教授のところに有働さゆりからの手紙が届く。

御前崎教授は有働さゆりの元主治医で、さゆりが抑え込んでいた残虐なカエル男としての人格を引き出した人物。すべての元凶ってな人物なんですけれども、さゆりからの手紙には「最近、以前の病気が再発しましたが、いいお医者さまが見つからず難儀しています。やっぱり私を一番理解してくれるのは御前崎先生しかいないようです」と書かれていた。

あれだけひどいことされたのに御前崎に頼るなんて・・・と、有働さゆりに対して複雑な感情を抱く古手川は胸を痛めますが、手紙を読んだ御前崎教授は渡世と古手川を拘置所に呼びつけ、「ルールから外れた3番目の事件の現場を直接見たい。有働さゆりを一番理解しているのは自分だから絶対に何かわかるはずだ」と、拘置所から外に出して現場に連れて行けと要求する。

 

捜査が膠着状態となっていて少しの手掛かりでも欲しいと担当検事はこれを承諾。かくして、捜査班は御前崎教授を連れて3番目の事件現場に行くのですが、そこで御前崎教授はクロスボウで射殺されてしまう。

その後、有働さゆりは子供を人質にして公衆の面前に現われ、人質を守ろうとした古手川の手によって撃たれて死亡。

 

今回の一連の事件、有働さゆりの狙いはこれだったのですね。カエル男による連続殺人を起し、あえてルール破りをすることで御前崎教授を拘置所の外へ誘き出して殺害する。そして自分は警察官である古手川に撃たれて死ぬ。

 

『嗤う淑女 二人』で大量殺戮をした有働さゆり。その犯行によってより残虐性が増し、カエル男の人格に統合されかかっているのではと医療刑務所での担当精神科医も渡世も古手川も危惧していたのですが、実際はカエル男の方にではなく主人格である元ピアノ講師の”有働さゆり”の人格へ統合しかけていた。

統合の過程で自らの行いを激しく後悔したさゆりは、罪を償うためにカエル男の創造主である御前崎教授を殺し、自分は罪人として相応しく警察官に射殺されて死のうと考えた。できれば、浅からぬ縁のある古手川の手によって。

 

要するに、有働さゆりによる”自殺の画策”だった訳ですね。

 

一応理解は出来ますし、綺麗に終わっているとも思いますが、さゆりの心情変化が『嗤う淑女 二人』から読んでいても追いつけないというか、どうしてもいきなりの方向転換だという気がしてしまう。全然罪の意識を感じている描写とかなかったですからね。

 

終盤もやたらあっさりしていて、あっけなく死んで終わってしまったという印象なので、もっと濃い心情描写が欲しかったなぁと。御前崎教授の外出が許される展開も無理がありましたしね。

 

 

今作はどんでん返しミステリというよりは、カエル男・有働さゆりの完結物語ですね。やっぱり、こういう”終わり”しかないよなぁと。古手川や御子柴と同様に胸が痛むところではありますが。

 

それはそうと、【嗤う淑女シリーズ】の蒲生美智留の方も今作で何らかの形で結末を迎えるのだろうと思っていたのですが、まったく触れられず、登場もせずで肩透かしでした。蒲生美智留の物語はまだ終わらないって事なのでしょうか・・・。今後に期待。

 

 

正直、ちょっと物足りなさはありますが、確りとシリーズを最期まで見届けられて良かったです。この経験を経て古手川や御子柴がどのように変化・成長するのかもまた気になりますね。

 

今後も出来る範囲で中山七里作品を追っていこうと思います!

 

 

ではではまた~