夜ふかし閑談

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『ぼっけぇ、きょうてえ』4編 あらすじ・紹介 とても恐い!地方怪談 夏のオススメ本~⑰

こんばんは、紫栞です。

今回は、岩井志麻子さんの『ぼっけぇ、きょうてえ』をご紹介。

 

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

 

 

地方怪談

『ぼっけぇ、きょうてえ』は1999年刊行のホラー小説の短編集で、第6回ホラー小説大賞受賞作、山本周五郎賞受賞作。

刊行当初かなり話題になった本ですね。調べたら99年刊行だということに打ち震えている。あの話題になっていた時からそんなに経っているのか・・・。

大正時代の日本画家・甲斐荘楠音「横櫛」が表紙に使われているのが印象的で、インパクトのあるタイトル「ぼっけぇ、きょうてえ」は岡山の方言で「とても、怖い」という意味。

 

表題作である「ぼっけぇ、きょうてえ」は2006年にアメリカのテレビオムニバスシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」という世界のホラー映画監督13人を集めての映画企画にて、三池崇史監督で『インプリント~ぼっけぇ、きょうてえ』という題名で映像化されています。作者の岩井志麻子さんも女優として出演されているのだとか。しかも女郎を拷問する役。

題材がインモラル溢れすぎてて米国では放送自粛。日本の映倫審査では審査対象外でほとんどの映画館から一般上映拒否。・・・・・・どんだけだよって感じですが、ま、この作品を三池監督に撮らせたらそうなるのは必然なのかも。

今ではKADOKAWAチャンネルなどで観られるようです。

 

 

 

 

この短編集は4編収録。

大正時代や明治時代が舞台で、すべて岡山近辺での物語となっています。地方での時代的背景故の恐怖が岡山弁で効果的に描かれているのが特徴のホラー短編集ですね。

 

 

 

●ぼっけぇ、きょうてえ

岡山の遊郭。目や鼻が左のこめかみに向かって吊り上がっている醜女の女郎が客に乞われて己の身の上話を語る。

 

 

●密告函

明治三十四年。岡山県下でコレラ病が蔓延につき、伝染病予防の為に近隣に疑似患者や隠蔽者がいたら名前を投函するようにと”密告函”が村役場に設けられることに。

村役場に勤めていて密告函の管理担当者を命じられた弘三が主人公。密告函に村の者達が噂する祈祷師の娘の名前が投函されたことで弘三はあらぬ欲に駆られることとなる。

 

 

●あまぞわい

岡山市で酌婦をしていたところを見初められて竹内島の漁師の嫁になったユミ。なれない漁村での生活と、周りからは酌婦あがりだと蔑まれ夫からも役立たずと罵られ殴られる日々に嫌気がさしていたユミは、坊主頭の女の姿を度々目撃するようになる。

 

タイトルの「あまぞわい」は作中に出て来るお話で、”そわい”というのは海で潮が引いた時にだけあらわれる浅瀬や岩礁のこと。”あま”には「海女」と「尼」の二通りの謂われがあって、それぞれに伝えられている伝承が異なる。

 

 

●依って件の如し

明治半ばの岡山の北。数えで七つのシズは年の離れた兄の利吉と二人で暮らしている。他に身内はおらず、村人の大半には疎まれていた。シズと利吉の母が「牛と女が入ってはならない処」とされる”ツキノワ”で死んだことで村人に忌み嫌われていたのだ。シズはやがて真っ黒な牛の頭をした女を見るようになる。

 

タイトルにある「件」は妖怪の”くだん”のこと。半人半牛の姿をしていて、生まれてすぐに必ず的中する予言をしてすぐに死ぬとされる。そもそも、「件(くだん)の如し」という言葉自体がこの妖怪が由来とも言われているみたいですね。

 

 

 

 

 

 

恐てえよ

説明としては表題作の「ぼっけぇ、きょうてえ」が一番シンプルなのですが、一番インパクトがあるのもこの短編ですね。岡山弁が最も効果的に使われている短編だと思います。方言での語り口じゃないと魅力半減なのだろうなぁ。夜、寝る前に蒲団に入った状態で読むとより恐さ倍増でよろしいかと。

他の3編も台詞部分はすべて岡山弁ですので、人によっては読みにくいと感じるかもしれないですね。私はまったく苦になりませんでしたが。

 

全編にわたり、描かれるのは超常現象などの恐怖ではなく「人間の恐さ」です。

間引き、堕胎、奇形、売春、近親相姦・・・・・・と、反社会的な数々が明治・大正時代の閉鎖的地方での恐怖としてねっとりと忌まわしく語られる。特に恐いのが、この異常さが当時の地方では常識的に行われていたのだろうなと想像させるところですね。

 

単純に”恐い”というのではなく、人の業や哀しさを痛感させられる物語集となっておりますので、夏の夜に是非。

 

 

ではではまた~