夜ふかし閑談

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『マスカレード・ライフ』あらすじ・感想 シリーズ第五弾 困惑の一冊

こんばんは、紫栞です。

今回は、東野圭吾さんの『マスカレード・ライフ』を読んだので感想を少し。

マスカレード・ライフ

 

テルマン新田

こちら、書き下ろし長編小説で【「マスカレード」シリーズ】の第五弾。

 

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このシリーズは刑事の新田浩介がホテルに潜入捜査をするというのが基本的な流れできていたのですが、シリーズ4作目『マスカレード・ゲーム』の最後で主人公の新田が訳あって警察を退職したのでシリーズもこれで終わりかと思われていたのですが、

 

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今度は新田がホテルマンとなってシリーズ再始動なようで。映画化されて知名度も上がったんで、なんとかシリーズを続けたいって出版社の意向なんですかね。

 

本のレビューを見ると新田がホテルマンになったことに驚いている人が多数いましたが、『マスカレード・ゲーム』の最終ページでちゃんと総支配人の藤木さんに専門の警備部門を新設するこちになったから警備部マネージャーをやってくれと誘われていますよ。ま、ちゃんと引き受けると断言はしていませんでしたが・・・。

 

なので、シリーズファンは続くにしてもホテルマンになってなんだろうなーと予想はついていたと思います。

 

 

舞台となるのは相も変わらずホテル・コルテシア東京。文学賞の選考会があるのだけども、候補者の一人が行方知れずで居所を掴めていない殺人事件の容疑者なんじゃないかってことで、受賞したら姿を現すだろうから、そこを待ちかまえて身柄を確保しようと警察の方で画策。つきましては、ホテル側の方も捜査にご協力お願い致します!

と、ま、こういう訳ですね。毎度のことですが。

 

「おい!コルテシア東京、何回事件の舞台になる気だよ!」ですけれども、今回は元々は別のホテルでする予定だった選考会を警察の方から出版社に働きかけてコルテシア東京に変えてもらったとのことなので、偶然ではないです。何回も警察の捜査に協力してもらっているし、元捜査一課警部の新田もいるしで他のホテルよりやりやすかろうと梓警部が発案したのだとか。迷惑な話だで・・・。

 

警部は前作の『マスカレード・ゲーム』に登場した捜査方法がちょっと強引な女性刑事さんですね。そんな経緯なので今作でも登場していまして出番も多いです。

後、頼れる老刑事だった能勢さんも出て来ます。定年退職して今は探偵事務所で所長代理をしているようで。相変わらず、新田に外部情報を教えに来てくれます。でも出番はそこまでないですかねー。

もちろん、山岸尚美も出て来ます。

 

今作での注目すべき人物は、新田のお父さんである新田克久ですね。八十歳近くですが現役の弁護士で、シアトルに法律事務所を構えている。(そういやそんな設定だったな・・・)

今回は日本で人と会う約束があるとかで、せっかくなら息子が働いてるホテルに泊まるかとコルテシア東京に来たそうです。

 

 

 

 

 

 

 

???

今作は、プロローグで新田の学生時代の出来事が描かれ、本編では文学賞選考会で容疑者を確保するための準備と事件捜査、同時進行でとある親子の話が描かれる構成となっております。

 

レビューですと評価が高いようですが、正直、私は困惑しきりでちゃんと感想を語れる本じゃないなと思ってしまいました。今までに読んだ東野圭吾作品の中ではワーストかもしれない。

 

まず、この構成が分からなくって。プロローグの出来事も、同時進行で描かれるメイン事件も親子の物語も、本当に三つとも何の関連もないんですよね。完全に独立した話なんですよ。なんでこの三つを一冊の本の中で描いているのかが分からない。

 

このシリーズでやる必要も感じられないし、事件の真相も推理する余地がほとんどなくってミステリとは言い難いし、文学賞選考会もただ皮肉って書きたかったとしか思えない。

親子の話を一番に書きたいのだろうなというのは伝わってくるのですが、当事者の心情描写がなくって事柄を述べているだけなので、”やたら重い内容の説明”って感じで感情移入が出来ない。

これは文学賞選考会絡みのメイン事件も同様なのですが。修羅場や涙涙の場面を描かれても感情移入出来てないので読んでいてシラけちゃうんですよね。

 

メイン事件の真相はとにかく無理がありすぎる。色々と「そうはならんでしょ」っていう・・・・・・。

動機も独りよがりで全然共感出来ない。大事に想っているならそんなことしないでしょ・・・これは親子の方もですけど。金の無心してたから何だって言うんだ。

 

シリーズの特徴であるはずの新田と尚美の掛け合いもほぼないですし、恋愛方面の進展はやめたみたいですし、新田がホテルマンになっているので潜入捜査の面白味もなくなっていますし。シリーズ自体もどうしたいんだか謎。

『マスカレード・ライフ』ってタイトルに繋げるにしても、もっと必然性を感じさせて欲しい。

 

総じて、何がしたいのか、何が言いたいのか分からない一冊。

 

ま、ちょっと散々な感想しか書けないのですけれども。シリーズの設定に無理が生じてるってことなんですかね。そもそも単発向きの設定で長期的シリーズにするのには向いてないんでないか。

 

しかしながら、上記したように世間での評価は高いようですので、私の読解力が足りないだけなのかも。また映画化されるかもしれないですし、私の愚痴だらけの意見で逆に気になったって方は是非。

 

 

ではではまた~