夜ふかし閑談

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『スイス時計の謎』小説 あらすじ・解説 火村シリーズ重要作で犯人当ての傑作!でも気になる点も?

こんばんは、紫栞です。

今回は、有栖川有栖さんのスイス時計の謎」をご紹介。

 

スイス時計の謎 〈国名シリーズ〉 (講談社文庫)

 

あらすじ

火村からの連絡で彼のフィールド・ワークに協力するべく殺人現場を訪れたアリス。自身のオフィスで後頭部を殴られて殺害された被害者は、アリスの高校時代の同級生・村越啓だった。

村越は事件当日、二年に一度開催している高校時代のサークル仲間との同窓会「リユニオン」に出席する予定だったという。このリユニオンのメンバーは記念品として揃いでスイス製の腕時計を購入しており、集まる際には皆その腕時計を着けて参加していたらしいのだが、村越の遺体にその腕時計はなかった。

現場の状況から、火村は同窓会に出席するために腕時計が必要だった犯人が、破損してしまった自分の腕時計の代わりに村越の腕時計を持ち去ったのではないかと推理するが——。

 

 

 

 

 

ドラマ化!

「スイス時計の謎」は【作家アリスシリーズ】(火村英生シリーズ)

 

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【国名シリーズ】

 

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の第七冊目『スイス時計の謎』

 

 

の表題作で、160ページ程の中編小説。

【国名シリーズ】の中でも特に人気のある作品でミステリとしての評価も高く、『名探偵傑作短篇集火村英生篇』にも収録されている。

 

 

過去にはドラマCD化もされています。

 

スイス時計の謎

スイス時計の謎

Amazon

 

この度、2026年4月にHuluでドラマ化されるとのことで、

 


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改めてこの中編のみに絞ってご紹介しようかと。

 

 

【作家アリスシリーズ】は2016年に日本テレビで『臨床犯罪学者 火村英生の推理』というタイトルで連続ドラマ化されていますが、

 

今回はHuluオリジナル作品とのことで、キャストやらなにやらを一新してのドラマ化ですね。

2016年の連ドラでは「スイス時計の謎」はやらなかったので、このエピソードは初の映像化です。

 

 

友達に「このキャスティング、ファン的にどうなの?」って聞かれましたが・・・。今回のはキャスト云々の前にまず先生のスタイリングどうした?って感じ(^_^;)。ちょっと尖った演出なのだろうか。友達には「ノーコメントで」って言ったんですけども。どうせHulu観れんし・・・。

 

正直、思っているものとは違いますけど。私、2016年の連ドラに納得がいっていなくて。あれは設定もだいぶ変更されていましたし、原作未読の人にこのドラマのイメージ持たれたら嫌だなと思っていたんですよ。ここ10年ほど。

なので、金田一耕助シリーズみたいに色々な役者さんに演じてもらってですね、イメージが固定化されないようになって欲しいなと。日本テレビ系列とはまた別の、関係ない局でドラマ化とかもして欲しいですね。単発ものでも良いので。で、いつかは原作に忠実なものも作って下さったら御の字ですけども。

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレ含みます~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロジックものの傑作

この「スイス時計の謎」はシンプルな犯人当てものです。アリバイ工作だの密室だのは一切なく、ロジックのみで五人の容疑者の中から火村が犯人を当てる。

一見地味なのですが、”犯人が被害者の腕時計を持ち去った”という事実だけから犯人を特定する推理の過程が見事でして、最終的に「イニシャルなしの腕時計をしている人物が犯人」という、「何でそうなる?」な結論なのですが、確かに考えを巡らせるとそういうことになってしまうというキツネにつままれたような真相。

 

個人的にこの作品で秀逸だと感じるところは、犯人が自分の腕時計を壊してしまった時点でもう何をしても犯人として指摘される結果から逃れる術がなかったというところ。

 

「あなたは慎重に指紋を拭き取った。村越ビルに出入りするところを目撃されないように充分に注意も払った。間抜けなことは何もしていない。それなのに、犯人だと指摘されて面喰っているようですね。どこで自分はしくじったのだろう、と怪訝に思っているのなら、教えてあげましょう。村越さんと揉み合いになり、あなたの腕時計が机にぶつかってガラスが割れた時点で、すでに命運は尽きていたんです。不思議なものですね。その程度のアクシデントはどうとでも取り繕えそうに思えますが、そうじゃなかった。あなたがどれだけ知恵を絞ったとしても、逃れる術はなかったわけだ。(略)」

 

火村先生のこのセリフが痺れますな。容赦なく、理知的に、紳士的にぶった切っていくこの感じ。

まさに、「論理的です。・・・・・・悪魔的なまでに」ですね。今作では解決編での火村先生のカッコよさもファンの一押しポイントです。

 

 

 

 

矛盾

と、ま、カッコよくかましている火村先生ですが。これの直前のセリフがちょっと困惑もの。

 

「ええ、私も見たわけじゃない。しかし、イニシャルが刻まれていたことは論理的に確定しているんです。ローマ字で名前を彫ってはいないし、漢字や片仮名も使っていない。何故か?イニシャルがなかったり、それ以外のものが彫られていたなら、犯人は時計を現場に遺したはずだからです。持ち去る意味がないから。——そうでしょう?」

 

???

何が、「そうでしょう?」なん?

漢字や片仮名でも名前や個人を特定出来るものが彫ってあったなら、持ち去るしかないじゃん。何で絶対にイニシャルだって論理的に確定出来るの?

どんなに考えても解らない・・・この論理が・・・・・・。今回再読してまたグルグル考えてしまいましたよ。頭痛くなった。

 

私以外にもこのイニシャル断言に引っかかる人が多いようで、質問している方や色々考察している方がネットでチラホラしています。だよねだよね。

少し調べてみたところ、どうやらここの記述は単行本と文庫版で変更されているらしいのですが、先に出た講談社ノベルスの方だとイニシャルの断定はしていないのだとか。

 

 

後から出た文庫の方でこのように変更されていると。

 

ますますどういうことだ?

 

私が読んだのは文庫版で、上記した火村先生のセリフも文庫版のものなのですけれども。逆ならともかく、後から困惑するような記述をわざわざ付け足しているの?

・・・

・・・・・・

わからん。

 

ダメですね。どんなに考えても解らない。

別にこの部分は犯人当てロジックに支障が出るものではないのでいいちゃいいんですけど、論理的思考をせよという物語ですので気になってモヤモヤしてしまいます。うーん・・・・・・謎だ。

 

 

 

 

アリスのトラウマ

ミステリとしての評価が高い今作ですが、それだけでなく、シリーズ的にはとても重要なことがこの作品では描かれています。アリスのトラウマ話ですね。

 

アリスのトラウマってのは高校生の時に好きな同級生にラブレター渡したら、その日の夜にその子が「生きていてもつまらない」と思って自殺未遂をおこしたというもの。

※【作家アリスシリーズ】のトラウマ話に関して、詳しくはこちら↓

 

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凄いぜっつみょーなトラウマですよね。読むたびそう思うんですけど。

今作ではアリスの高校時代の同級生たちが事件関係者ということで、アリスも火村のフィールド・ワークに付き合いながらも胸中はザワザワしており、しばしばボーっとしてしまって火村に訝しがられています。この時は火村にもこの高校の時の話は言ってない時ですからね。

で、この事件関係者たちの口からクラス会した時の話が出まして、今”その子”はニューヨーク在住で、有栖川有栖の小説を読んだって言ってたぞと聞かされる。これを受けて、アリスは「励みになるね。勇気が湧いて、明日からも書いていけそうや」と、言う。

 

アリスの胸に残り続けていたこの出来事を吹っ切る大きな一歩となる事柄が描かれている。この後、『菩提樹荘の殺人』でまた完全に吹っ切って(火村に対して)強気モードになっていく訳でして。

とにかく、シリーズファンとしては外せない作品なのですよ。

 

 

二十年以上前の作品ですが、推理小説好きも、シリーズファンも、今一度是非。

 

 

ではではまた~