夜ふかし閑談

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『病に至る恋』4編 あらすじ・感想 「恋に至る病」の補足的短編集

こんばんは、紫栞です。

今回は、斜線堂有紀さんの『病に至る恋』をご紹介。

 

病に至る恋 恋に至る病 (メディアワークス文庫)

 

補足的短編集

こちら、2020年に刊行されて2025年に映画化もされた長編小説『恋に至る病』に纏わるエピソードが描かれている短編集。

 

※詳しくはこちら↓

 

www.yofukasikanndann.pink

 

『恋に至る病』は、150人以上を死に追いやった自殺教唆ゲーム「ブルーモルフォ」の主催者である高校生・寄河景と、同級生である宮嶺との恋愛青春ミステリ小説。

この小説、化物である景の視点が全く描かれない構成になっているため、色々と考察の余地が残る描かれ方をしているのですよね。

読者の方でそれぞれに解釈してねってことか~と、ま、受け入れていたのですけども。

まさかこんな補足的な短編集を書き下ろしで出してくれるとは。似たタイトルだけど何だろうと最初に見つけた時は困惑しましたよ。

 

映画化されたことでの刊行かなとは思いますが。

 

恋に至る病

恋に至る病

  • 長尾謙杜
Amazon

 

映画、それこそ原作での疑問点を解消するような描写とかあるかな?と期待して観てみたんですけど。

全然ダメですね!圧倒的に説明不足でこれじゃあどういうことなのか分からないし、原作の意図も全く伝わらないしで、何だかふんわりと表面をなぞっただけの映画って感じ。

 

しかしまぁ、映画化のおかげでこの作品集が書かれて、読むことが出来たのは良かった。

今作は完全に『恋に至る病』を読んだ人でないと分からない短編集となっていますので、本編より先にこちらを読まないようにご注意下さい。

 

タイトルが似ているので、本編の『恋に至る病』を読もうとしてこちらを間違えて手に取ってしまう人もいるかもしれない・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目次

●病巣の繭

景が五歳の頃の様子が母親の累の視点で描かれる。五歳の時から既に化物の片鱗があったようで。こんな五歳児恐ろしすぎるのですけども。

母親の累はいたって普通の人間。内気で控えめで、だからこそ景の完璧な”愛くるしい子供”のふるまい、大人達を自然と操る様に言いようのない不安と恐怖を抱く。

この話ではっきりするのは、景が化物になったのは決して家庭環境などの所為ではなく、生まれつきのものだということですね。母親でさえも「止めれる人間」ではない事実が物悲しい。

 

 

●病に至る恋

景が作ったゲーム「ブルーモルフォ」のプレイヤーになってしまった男女の高校生二人が描かれる。

表題作で、収録作の中では一番読み応えのある短編です。本編の『恋に至る病』を読んだ人が皆抱くであろう「こんなゲームで本当に自殺に追い込めるの?」という疑問を解消といいますか、本編では描かれなかったゲームによってプレイヤーが追い込まれていく様子が丁寧に描かれています。

出てくる高校生男女二人が、ゲームによって奇妙な絆が生まれて仲良くなっていくのが読んでいて面白い。だからこそ辛い。

「ブルーモルフォ」は自殺教唆ゲームですからね・・・・・・。

 

 

●どこにでもある一日の話

景と宮嶺。二人のデートの様子が描かれる。

時系列としては景が宮嶺に自分が「ブルーモルフォ」の主催者だと告白した後で、”あの結末”に至る割と直前(?)です。

和やかなデートですが、景が人間としての自分を完全に脱ぎ捨てて怪物になる覚悟を決めている描写が所々に。だからこそ、「人間の自分を宮嶺に覚えていてもらう」為のデートという訳です。残酷なことをしなさる・・・・・・。

 

 

●バタフライエフェクト・シンドローム

こちらは”景がもし登校拒否をしていたら”というif話。小学校五年生の時という設定で、宮嶺が教師に頼まれて開校記念品を届けに景の家を訪れるというもの。

20ページほどの小話で、「自分は危険な人間だから自分自身を閉じ込めているんだ」との考えで学校に行かずに引きこもっている。

小学五年生がこんなこと言っているのは普通ならお笑いだが寄河景なんでね・・・・・・いや、でもやっぱりこんなこという小学生なんて、何かにかぶれちまったのか?って引いてしまうかな(^_^;)。

 

 

 

以上、四編。

 

 

 

本編の『恋に至る病』での最大の謎は、「景は宮嶺のことも駒の一つとしか思っていなかったのか、それともちゃんと愛していたのか」。これが本編を最後まで読んでもあやふやなまま終わる。

今回の短編集を読んでみて感じたことですが、景はやっぱり宮嶺のことは好きだったんだろうなと。と、いいますか・・・・・・化物の自分を受けいれて、見守って、止めてくれる人が欲しかったのかなぁと思いましたね。

そうだとすると、宮嶺は真の意味で景の期待に応えたとは言い難いのかな・・・うーん。

 

完全な答えは得られないですけど、寄河景という化物を知る一助となっている短編集ですので、『恋に至る病』を読んだ方は今作も是非。

 

 

ではではまた~