夜ふかし閑談

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映画『変な家』感想 怖い?ひどい?原作との根本的な違いを解説

こんばんは、紫栞です。

『変な家』の映画を観てきました!ので、今回はそれについての感想を少し。

 


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原作は2021年に刊行してからというもの、売れに売れている雨穴さんの同名小説。

 

雨穴さんはウェブライター、YouTuberなど、インターネットを中心に活動をしているホラー作家で、『変な家』は先にウェブサイトのオモコロでの記事、YouTubeチャンネルの動画が発表された後、完全版として出版された作品です。

 


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原作の『変な家』について、詳しくはこちら↓

 

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雨穴さんのことをよく知らない友達二人も漫画広告などで内容が気になっていたらしく、

 

映画に興味をそそられていて、なおかつ、私がオススメで「おせち動画」

 


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を見せたらノリで「じゃあ三人で映画観に行こうぜ!」ってなりまして。※おせち動画、本当にオススメです。

 

実質、雨穴さんファンの私に友達が付き合ってくれる形になった訳ですが・・・映画を観終わった後で、今回友達二人が付き合ってくれて本当に良かったと感謝しましたね。私一人じゃ、無理でした。そういう映画だった・・・・・・。

 

 

 

前評判

私が観たのは公開二週目の日曜日だったのですが、最初の週の時点で結構「賛否両論」「原作と違う」「怖い」等々の意見がネットで飛び交っておりました。

 

原作ありの映像化ものですと私は原作を先に読んでから観ることが大半なので、原作と違うだろうことも、原作にファンが多いものほど賛否が分かれるものだということも、もはや慣れっこ。

 

「ハイハイ、想定内ですよ」なんて、どっしり構えていたのですが、「怖い」という意見が多いのには「?」でした。

原作も怖いちゃぁ怖いですが、心霊現象が起こったり襲われたりするようなストーリーではないので、そんな皆がビビるようなものになっているとは思えないのだけど・・・と、困惑いたしました。

 

そして意外だったのが、公開初週の興行ランキングが1位発進だったこと。

お金がいっぱい使われている超スペクタクルではないし、派手さのない地味な邦画だし、失礼ながら豪華キャスト勢揃いっていう代物でもない。興行1位狙いの映画ではなかろうと思っていたため、驚きました。ホント失礼ですけど。

 

雨穴さんが人気なのはもちろんですが、『変な家』という作品に対して前々から興味を持っていた人が殊の外多いようで。私の友達もそうでしたけど、このタイトルとか間取り図での導入部分とか、「どんなお話なんだろう」って関心を引くのでしょうね。つくづく戦略が上手いなぁと改めて感服です。

 

 

読むのは比較的平気でも、映像でホラーを観るのは得意ではない私。

「え?怖いの?」と、少しビビりながらも「いやいや、でも私、原作読んで内容知ってるからね。大丈夫大丈夫」な~んて言っていたのですが・・・劇場で観終わって友達と口々に言ったのは「怖いじゃん!完全にホラー映画じゃん!」でした。

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレを含む感想となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

原作との違い

家の間取り図というわずかな手掛かりから考察をしていく過程が面白い書籍『変な家』。

行着く真相がゾッとする内容なので大きなくくりでいうならホラー小説で間違ってはいないのですが、“間取り図ミステリー”と銘打たれている通り、原作はあくまでミステリーが主軸です。

雨穴さんが描くのは「ホラーミステリー」。怖いのは怪奇現象などではなくって、恐ろしい事を企てる人間の情念と執念。

理論的に推理していった結果、人の悪意に触れる訳です。

 

雨穴さんは苦手意識がある人でも受け入れやすいようにと、書籍では図解を多用、文章表現はなるべく簡素にするなど、読書初心者向けの作品作りをされています。

YouTubeチャンネルのホラーミステリー動画では、映像や音声による脅かし・心霊現象・グロ表現といった、ホラーでの定番技法をあえて使わないことで、ホラーが苦手な人でも観やすいように、楽しめるようになっている。

 

 

で、映画はどうなっているかというと・・・。

 

ツメが剥がれるほど床をひっかくグロテクスな子供、長い髪を振り乱したやたら怖い顔の女、脅かす気満々のBGM、暗い画面、どう考えても行かない方が良い場所に単身乗り込んでいく主人公たち、襲いかかってくる“イッチマッテル”人々、解決したと見せかけてからの“終わってませんよ”なラスト。

 

原作ではあえてやっていなかったホラーの定番技法をすべて網羅するかのような、ド直球ホラーな映画に仕上がっている。

 

そんなですので、必然的に原作のミステリー部分はおざなりになっています。

肝心の間取り図からの考察がよく解らないし、そもそもさほど推理シーンがない。辻褄が合わない部分が多々あり、原作での入り組んだ箇所は簡素にされて、丸々省かれている事件もあり。真相も結末も違う。

 

 

原作ファンが「全然違う!」となるのも、ミステリーだと思って観に行ったらガチガチホラーで「思っていたのと違う!」となるのも、当然。

 

賛否が分かれるのは火を見るよりも明らかな代物。これは“あえて”なのですかね。原作の“あえて”の“あえて返し”なのかこれは。

 

原作と同じなのは、近代的ホラーから古典的日本ホラーへと移行するところぐらいですかね。

 

 

 

 

怖い!

とはいえ、原作とは別物だと割り切れば、ホラー映画として充分な面白さがあると思います。私はホラーに詳しくはないですが、ホラー好きが求めることを確りやっている映画だという印象を受けました。

実際、一緒に行った友達も「怖かったけど面白かった」と言っていましたしね。

 

 

原作は本当にテーブル囲んでお喋りしている場面でしか構成されていないので、原作ファンとしても愚直に再現するだけじゃ画的に耐えられない、映画としては地味すぎてダメだろうというのは分かるのですよ。

 

なので、説明が難しところは大胆にすっ飛ばし、ホラーとしてのエンタメに振り切ったのだろうと理解は出来る。実際、半端に煮え切らない感じでやるよりは潔くって良いのではないかと思います。

 

しかし、映画っていうのは2000円払って暗い箱の中で鑑賞する特別なものですからね。苦手な映像を二時間、お金払って足を運んで観るなんて物好きはまずいない。

ホラーは苦手な人が多いジャンルですから、ミステリーだと見せかけてガチホラーっていう騙し討ちはやはり不親切かと。事前に注意しておいて欲しいものです。

 

 

私も、序盤でいきなり怖い女の人が出て来て「えええ。何この怖い人。知らないんだけど」ってなって慌てましたよ。

人物設定やシチュエーションの違いは「フムフム、そう変えますか」と観ていたのですが、こんな怖い女の人に心当たりはマジでない。原作の何処の要素を探しても見当たらない。何が起こったのか、私は何の映画を観に来たのか!?ってなりました。

 

それ以降はもうずっとハラハラしっぱなし。原作を知っているのにこんなに終始ハラハラしながら予想も立てられずに観た映画は初めてかもしれません。

 

主人公の雨宮(間宮祥太郎)視点のカメラで暗いところを進むという演出も多くあり、お化け屋敷気分を味わわされました。これもホラーでは定番の演出なのでしょうが。私はホラー目的で観に来たんじゃないからさ・・・(^_^;)。

 

もはやなんでも怖く見えてくるといいますか。

 

出演している川栄李奈さん、前髪がやたら長くって最初は顔がほとんど見えない。これもまた得体の知れなさを演出するためのものなのでしょうけど(※ちなみに、原作だとこの人物はシュートヘア)。

「前髪切れよ」って終始思いながら観ていたのですが、この髪型が劇中に出て来る怖いお面に似ていて、観ているうちに川栄李奈さんの顔もなんだかお面に似ているように見えてきて、疑念が晴れた後も顔が怖く見える瞬間が何度もありました。もちろん、川栄李奈さんの顔を怖いなどと思ったことは今まで一度も無いのですが・・・。

 

とにかくお面が怖いんですよ。妙にリアルで精巧で。美術優秀だなとか変に感心しました。

雑なつくりである雨男の配信の時の仮面は雨穴さんを意識してのものでしょうけど、雨穴さんってよりもスクリームみたいで怖い。本来の雨穴さんは人格も含めてもっとカワイイです。

 

誰か分からないといえば、エンドロールで石坂浩二さんの名前があった時も「え!?どこに出てた?」と、なりました。問題の家のお祖父さん役ですね。髭とヘアスタイルでまったく分からなかった。

お祖母さん役を根岸季衣が演じているのも気が付かなかった。ひょっとしたら、私が怖がってちゃんと画面見てなかっただけなのかも知れませんが。

高嶋政伸さんは分からないなんてことはないですが、これまた前髪がウザいほど長い。

 

 

 

 

 

 

 

原作を読もう!

栗原さん役を佐藤二朗さんが演じているのですが、これが

「栗原さん」というより“ただの二郎さん”

なんですよね(^_^;)。せっかく容姿イメージが原作と近いので、もうちょっと「栗原さん」に寄せた演技をして欲しかった。

実は真っ先に浮かぶ不満点はそこだったりする。

 

映画の雨宮と栗原コンビは、これはこれで良かったです。雨穴さんの動画のように、コミカルなやり取りとかももっと見たかったところですが。最後コンビで締めてくれていたのは嬉しかった。

 

しかし、あの最後はおかしすぎましたね。

 

なんでアンタの家にそんなモノがあるのさ。関係ないのに。つーか、アパートでしょ、ここ。

 

このラストについて考察しようとしている人もいるようですが、しなくて良いと思いますよ。考察するような意味は無いでしょうから。

こういう終わり方、ホラーの定番なんでしょうかね。理屈に合わなくっても怖ければいい!みたいな(こんな断言をするとホラーファンに怒られるだろうか・・・)。それにしたっておかしいですが。ケーキ食べるとこ、見たかったなぁ・・・。

 

鑑賞後に冷静になってみると、最後だけじゃなくって、序盤からツッコミどころだらけなのですけど。

売り家なのに爪痕や血痕が残っていて、隠し通路もふさいでないとか。不動産屋さん何やってるの?と、いうか、爪痕や血痕があること自体が真相と照らし合わせるとおかしいし。

 

鑑賞後、ご飯食べながら友達と「アレがおかしい」「ここが変だと」と言い合いましたよ。「ち、違うんだ!原作は、もっと、え~と・・・」と、しどろもどろになった。別物すぎて説明が難しいのですよね。帰宅後、思わず原作丸々読み返しましたよ。

 

 

ホラー映画として割り切るなら出来は悪くないと思いますが、やはり原作ファンとしてはミステリー要素がこんなに薄まってしまっているのは不満です。

結末の喜江さん(斉藤由貴)に関してのどんでん返しも、原作は非常に入り組んでいるからやりにくかったのでしょうけど、やっぱり原作の方が好き。ゾッとして考察する余地が残るあの感じが。

 

 

不満はありますが、観た後に友達が「原作も読んでみたい」って言ってくれたので、結果的に御の字でした。原作普及に役立っているなら、映画化された意味もあるかと。

 

原作ファンとしてはこの映画で『変な家』を解った気になられちゃ困りますから、色々疑問に思った人は是非、是非原作を。

原作は怖くないし、ちゃんと“間取り図ミステリー”していますので、よろしく!

 

 

 

ではではまた~

 

 

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