夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『さよならに反する現象』乙一が贈る”お別れに背く物語”5編

こんばんは、紫栞です。

今回は乙一さんの『さよならに反する現象』をご紹介。

さよならに反する現象 (角川書店単行本)

 

作家生活25周年

『さよならに反する現象』は2022年4月に刊行された短編小説集。

本の帯に“作家生活25周年を迎えた乙一が贈る”と書かれているように、節目の年だからなのかなんなのか、同時期に単行本3冊続けざまに出されてビビってしまった。

 

 

 

 

普段が全然出してくれない作家ってイメージですからね。それでも近年は映画との連動企画とかでまだ本出してくれていたなぁとは思いますけど。

 

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それで「またしばらく期間空くかな~」と油断していたぶんビビったというのもある。短編を得意とする作家さんなので、一冊の本としてまとまるまでに時間がかかるってことなのでしょうが。

ま、出費は痛いですけどファンとしては嬉しいです。角川の単行本は毎度装丁が凝っていて素敵だなぁと思う。作家生活25周年おめでとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各話・あらすじ感想

『さよならに反する現象』は五編収録。

 

●「そしてクマになる」

会社をリストラされ、妻子に内緒でクマの着ぐるみを着るアルバイトをする男性のお話。住宅展示場でのバイトの最中、“ある人”を目撃したことで疑心暗鬼に陥っていく。

主人公は穏やかな男性なのですが、どんどんと不穏で危うい心境になっていく過程が空恐ろしい。最後どうなっちゃうのかとハラハラしましたが、家族愛を感じられる終わり方で良かった。現実と虚構が曖昧になる話なのですが、この“レベル”がなんだかリアリティあるなぁと。

 

 

 

●「なごみ探偵おそ松さん・リターンズ」

イヤミの邸宅でカラ松の他殺体が発見される。犯人は誰なのか?ピリピリするイヤミ宅に場をなごませるだけの名探偵・おそ松さんが訪れる!

と、いった乙一らしいシュールで、ヘンテコで、絶妙におかしい短編小説。

私はおそ松さんに関しては幼少期に『天才バカボン』の再放送を観てのおぼろげな記憶がある程度なので、詳しい人はもっと楽しめるように書かれているのかもしれない。ま、無知でも十分楽しく読めましたけど。

シュールなだけでなく、驚きの真相と意外な解決も用意されています。

 

 

 

●「家政婦」

霊の通り道となっている場所に建っている有名作家の屋敷に家政婦として住み込みで働くことになった女性のお話。

“霊の通り道”ネタはオカルトものだと定番ですね。普通は怖がって長続きしないだろうところですが、ナイスミドルの作家とイケメンの息子を鑑賞する楽しみが勝って家政婦を続ける気の多い主人公が面白い。作中で「畳地獄」というボードゲームが出て来るのですが、実際にあるゲームらしいです。

主人公の性格がお気楽だからと油断していると足をすくわれる。個人的にはこの本の中では一番怖くて好きなお話でしたね。

 

 

●「フィルム」

星野源さんの「フィルム」という曲にインスパイアされて生まれたというショートショート


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本にはこの曲の歌詞が全部掲載されています。この歌詞と同様、辛さと喜びに溢れた人生そのものを感じさせるショートショートになっています。

 

 

 

●「悠川さんは写りたい」

部屋に引き籠もり、画像編集ソフトで作ったインチキ心霊写真を投稿することをひそかな楽しみにしている男性。ある日、合成に使用する素材写真を撮るためにカメラを持って町をうろついていたところ、本物の幽霊である女性・悠川さんに遭遇。取り憑かれ、成仏のために悠川さんの願いを叶えるべく協力することとなるが――な、お話。

いつも心霊写真を作っているのに、ガチの幽霊である悠川さんはカメラに写すことが出来ないため回りくどい苦労をするといった、「過去を引きずる男性と陽気な女子大生幽霊との交流ものかぁ~」と、ほんわかしていると、またも最後に小型爆弾を落される。

とはいえ、この手の交流ものはやはり読んでいて楽しくも切なくなりますね。

“そう思っていた時期が、僕にもありました”と、いきなり敬語で書かれている一文がなにやら不気味でゾッとしてしまった。多分杞憂なんでしょうけど。多分。

 

 

 

 

 

さよならに反する物語集

短編集というのは収録作品の一つを表題にしているものが多いですが、この本のタイトルである「さよならに反する現象」は収録作からとられたものではなく、本全体をまとめて付けられたタイトルとなっています。これは乙一さんの単行本では珍しいことですね。

 

タイトルの通り、この本に収録されている五編はいずれもお別れすべきところでそれに反する現象が描かれています。ストーリーも雰囲気もバラバラですが、“お別れに背く不可思議な現象”という部分が共通している物語集なのですね。

 

ホラー寄りになってはいますが、乙一作品特有のユーモア、シュールさ、切なさが一挙に味わえる短編集となっていますので、気になった方は是非。

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

『金田一少年の事件簿30th』1巻 高校生の金田一ふたたび!八咫烏村殺人事件

こんばんは、紫栞です。

今回は金田一少年の事件簿30th(1)』について感想を少し。

金田一少年の事件簿30th(1) (イブニングコミックス)

 

30周年記念

金田一少年の事件簿R』14巻で少年時代が終わり、

 

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金田一37歳の事件簿』

 

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へと移行した金田一少年の事件簿シリーズ】ですが、この度連載30周年記念ということで、17歳の高校生金田一が帰ってまいりました。今作はその新シリーズの1巻目です。

 

37歳のサラリーマンになっても金田一は相変わらずジッチャンの名にかけて事件の謎を解いていて、漫画としてはさほど代わり映えのないことになっているのですけれども。少年時代の金田一の活躍はもう読めないのかなぁ~と、ファンとしてはやはり淋しい思いもあったので、また“高校時代”の新作が読めて嬉しいです。

 

“R”で14冊出す前は「20周年記念シリーズ」をやっていたんですよねぇ。復活の連続でなんともゴチャゴチャしたことになっている【金田一少年の事件簿】ですけど※シリーズ全体の順番について、詳しくはこちら↓

 

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あれからまた十年が経って今度は30周年。ドラマもまたやっていますし、何やかんや凄い漫画ですよね。金田一少年の事件簿は。

 

 

今回は通常版と限定版での発売。通常版が赤で、

 

 

限定版は黄色ですね。

 

 

こちらの限定版、1650円で通常版の倍以上のお値段なのですが、何の違いがあるのかというと、30周年記念限定NFT(3Dカード)のギフトコード付きフルカラー小冊子『金田一NFTの事件簿』が付録でついてくるらしいです。内容は金田一たちが昨今話題の“NFT”とは何かを教えてくれるといったもので、小冊子の裏側には限定NFTが取得できるコードが掲載されているのだとか。

 

限定NFTは当時のトラウマ(笑)と思い出が蘇る「レジェンド怪人&名場面3Dカード」で全10種類。限定版1冊につき、全10種類のうち1種類をランダムに取得できちゃいます!

・・・って、これ、読者の複数買いを狙っての商法なんだろうか。熱心に10種類集めようと思う人いるのかな?

私はストーリーさえ読めれば良い派でグッズも関心がないので通常版買いましたけど(^_^;)。

 

限定版は紙の単行本のみ。小冊子も限定NFTも描き下ろしではないとのこと。

 

“NFT”って何だと思って少し調べたんですけど、さっぱりわからなかった。昨今話題なのは確かみたいですけど。ま、私のようにわからない人のために小冊子で金田一たちが説明してくれるのでしょうが。

しかし、描き下ろしじゃないとはいったいどういうことなのか。じゃあどう説明してくれるってんだ?わからん・・・。

 

 

 

 

この巻に収録されているのは八咫烏村殺人事件」

あらすじ

高校生の金田一一七瀬美雪は、剣持警部に頼まれて6年前の弁護士失踪事件を調べるために2週間後にはダムの底に沈み廃村となる「八咫烏村」を訪れる。

村での最後の来客として残っている村民全員に歓迎され、村で何百年も続いてきた神事“八咫烏詣”に参加した金田一たちだったが、五重密室状態の社の中で村人の生首となって現われるという事件が発生。

八咫烏様の怒りに触れたため、身体を喰われて首だけになってしまったのだ」

「それならまだまだ死人が出るかもしれない」

と、八咫烏荘の女将が言う通りに不可能な状況でまた別の生首が――。

突然の崖崩れによって閉鎖されてしまった村の中で金田一は謎を解くべく奮闘する。

 

 

 

 

 

 

 

 

初っ端から森の中で武将が村人に嬲り殺しにあっているシーンで完全に八つ墓村のパロディ状態。

 

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八咫烏村殺人事件」という題字も昔の火サス風味となっているし、村での神事の最中に生首が発見されるとか、「呪いだ!」と宣う老婆が出て来るなど、横溝正史色が強い、なにやらコテコテでゴリゴリな事件内容となっています。

30周年記念だし、これぞ「金田一少年の事件簿だ!」なド定番でキタなという感じ。八咫烏ってのがまたなんともアレですね。

 

作品雰囲気もですが、剣持警部の旧友の頼みで村を訪れるという流れや“生首”など、「飛騨からくり屋敷殺人事件」を思い出す。

 

 

 

37歳の事件簿だと不在な美雪が当たり前に居る喜び。はじめちゃんが溌剌とちゃらんぽらんな高校生しているのも、剣持警部と一緒に行動するのも懐かしさが込み上げてきてなにやら嬉しい。37歳の方だと剣持警部退職しちゃっていますからね。

 

37歳の事件簿と同じイブニングでの連載なので、短期間でサクッと終わらせる感じの事件かと思っていたのですが、「八咫烏村殺人事件」はこの巻ではまだ折り返し地点状態なので次の巻丸々1冊使いそう。

 

この1巻の段階では第一の事件の五重密室と、第二の事件のアリバイ工作が謎として出て来ている訳ですが、第三の事件でも犯人は不可能犯罪の演出を用意してくれているようで。

 

事件も出揃ってないのでまだどうとも推測出来ない常態なのですが、五重密室とアリバイ工作の設定はややこしいものの、ぶっちゃけ、“首だけ”の状態ならなんとかなりそうな気が。

暗闇の中で「踏み外した」「鍵を落した」と言っていたのがヒントなのかな?首から下の身体をどうしたのかも気になるところ。

ま、首だけの状態にすることに意味があるトリックになっているのは間違いないと思います。

 

 

20周年記念シリーズは全5巻だったのですが、この30周年記念の方は何巻出すつもりなのですかね。でもやっぱり37歳の事件簿の方もありますし、「八咫烏村殺人事件」を終わらせて次の2巻目で終了でしょうか。37歳の事件簿に繋がるような描写が次の巻であったりすればテンションが上がるのですがねぇ。どうなのでしょう。

 

金田一少年の事件簿30th』2巻は2022年10月発売予定。金田一37歳の事件簿』と連ドラと、並行してファンとして愉しんでいきたいと思います。

 

 

ではではまた~

 

 

 

『いぬやしき』映画 ネタバレ・感想 ラストシーンについての考察

こんばんは、紫栞です。

今回は映画のいぬやしきについて感想を少し。

いぬやしき

 

こちらは奥浩哉さんの漫画作品が原作の映画。

 

 

ある日いきなり機械の身体になってしまった初老の男性と高校生男子が対決する物語で、(見た目が)さえないおじいさんの方がヒーローで、イケメン高校生の方が悪役という珍しい設定が漫画連載当初話題になっていたなぁと記憶していますが、私は漫画の方はチラホラひろい読みした事はあるもののほぼ未読。CGアクションが前面に押し出されている作品もさほど好んで観ないのですが、機会があって、2018年公開の映画ながら今更鑑賞した次第。

なので、私がこれから書くのはあくまで『いぬやしき』の映画にみについての感想となります。

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

序盤、犬屋敷(木梨憲武)が家族や会社に冷たく当たられる場面が延々続いて世代じゃなくとも割と気が滅入る。特に娘の麻里(三吉彩花)が何か強い怨みでもあるのかというレベルでいちいち怒り顔で接してくるのが理不尽。

同級生にも「厳しすぎない?」と言われているあたり、ありふれた思春期の男親への嫌悪感を越えた態度だと思うのですが、何でここまで嫌っているのかは描かれないのでモヤモヤする。

あと、家族に買った家を「小さい」とバカにされていますが、あの家十分デカイと思う。

 

ダメ押しのように病院で余命宣告までされた後、公園で途方に暮れていたらいきなりピッカーン!ドッカーン!で、身体が兵器に全振りした機械になる訳ですが、何故、誰が“そんな事をしたのか”は最後まで観ても解らずじまい。

画面見ているだけで撃たれるとか、水が動力源とかも普通に考えると大いに疑問で、十代の頃の私ならこういった謎は気になってしょうがなかったろう部分ですが、今はいい加減大人ですから、この映画はそういった謎の解明はあえて省いているのだとわかる。描きたいテーマは別にあるのだと。

 

とはいえ、劇中で「おそらく高度な知的生命体」ですましてしまっているのは「いや、そんな安直な・・・モルダーじゃあるまいし」と、思いましたけど(^_^;)。

 

ヒーローは犬屋敷さんの方であるものの、観ているとやっぱり獅子神(佐藤健)サイドの方が気になる。

当時、獅子神を演じた佐藤健さんは二十代後半でしたので、最初に制服姿で出て来たときは「無理がある!!」ってなったんですけど、ま、役者の実年齢を知っているからそうなるのであって、知らなきゃ意外と大丈夫なのか・・・も・・・?ま、他の同級生役の方々も皆20代だったし。

獅子神は難役なので、未熟な役者さんじゃ駄目だった・・・というか、盛大に事故ることになったでしょうから、良いんじゃないかと。悪役っぷりもやはり格好良かったですし。

他の役者さんも含めこの配役で良かったと思います。木梨さんも芸人のイメージが強くてコントに見えるなんて意見もありましたが、私は気にならなかったですね。伊勢谷友介さんや生瀬勝久さんがすごいチョイ役で出演していてビックリしました。

 

 

犬屋敷と獅子神を繋ぐ役割をしている友達の安堂(本郷奏多)がすごいマトモでなにやら安心する。虐められて引き籠もっていたのによく擦れずに真っ当さを保てるもんだ。バンバン人が死んで悪意ばっか見せつけられる物語なので、こういう子いると無性に安心する。人としての当たり前の感情を思い出させてくれるというか。

 

一家惨殺をした事が発端となり、獅子神は追い詰められて最悪の殺人鬼に成り果ててしまう訳ですが、その肝心の一家惨殺をした理由がわからない。浮気して別の女と家庭を持っている父親を殺すのを思いとどまったのは母親(斉藤由貴)の想いを受けてのことだとは察することができるのですが、その後になんでまったく関係ない一家を殺しちゃうのか。

 

獅子神に告白してきて匿ってくれるクラスメイトの女子・渡辺(二階堂ふみ)の存在も唐突すぎて無理やりとってつけたように感じてしまう。

 

観ながら、多分原作の漫画では獅子神の感情描写はもっと丁寧で、渡辺も大変に重要な人物なのだろうなぁ~と。

こう感じさせてしまうのは映画として問題があるのでしょうが、原作漫画は全10巻あるとのことなので、説明不足になってしまうのは致し方ないことでしょうかね。

 

 

 

 

 

 

 

ラストシーンについて

と、思い返してみると気になるところは多々あるのですが、ラストシーンがすべてを払拭してくれるぐらい良くて個人的に満足しました。

単純なもんで、映像もので最後が良い、或は気に入ると作品全体が良かったような気分になる。終わりよければ何とやらってヤツですね。今回この記事を書こうと思ったのもこのラストシーンがあったためです。

 

本編は犬屋敷さんが娘の麻里に優しげな眼差しで見られながらお味噌汁を飲んでいるところで「いぬやしき」と映画のタイトルがバーンと画面に出てエンディングが流れるのですが(ところで犬屋敷さん、仕事は大丈夫なのか?サボりまくってたけど)、このエンディング、途中で止まって犬屋敷家とは別の場面が流れる。

 

なんでエンディング途中にシーンが差し込まれているのかなぁと最初疑問でしたが(せっかちな人はエンディング流れてすぐに退室したり、ディスク停止させちゃったりしますからねぇ・・・)、犬屋敷さんを主人公とする『いぬやしき』の物語はあそこで終了だからなのかなと。このラストシーンには犬屋敷さんは関係ないですからね。

 

で、その本当のラストシーンはというと、右腕(おそらく右脇腹も)失った状態の獅子神が、序盤でのシーンのように漫画雑誌を持って安堂の部屋を訪ねてくるといったもの。

 

「こわいか?」と聞く獅子神に、「こわいけどうれしい」と雑誌を受けとり、「生きてたんだね」という言葉の後に“良かった”とは続けないところが安堂の感情がせめぎ合っているのだと窺える。そんな姿に獅子神は「お前はかわらないな」と言ったんでしょう。

だからこそ、「友達だもん」と言う安堂の言葉も本心からのものだと獅子神は受け止められたのだろうなぁと。

安堂が目を離した隙に獅子神は消えてしまい、開け放たれたベランダの窓を切なそうな何とも言えない表情で見る安堂の姿でこの映画は終わっています。

 

 

獅子神が生きているラストなので続編があるのではないかとも噂されていたらしいのですが、私はこのラストだからこそ続編はないだろうという気がする。もう獅子神はあんな殺戮行為をしないだろうと確信が持てるラストになっていると思うので。

 

お二方の演技が良いのも相まって感動的なラストになっているのですが、このラスト、原作漫画とは全然違うものらしい。

漫画でも同じように殺戮を繰り返した後の獅子神が安堂の部屋を訪れる場面があるけれど、友達に会いに来ただけの獅子神に対し、安堂は酷い事を言って突き放してしまい(獅子神はそれだけの事してるので当然なのですが)、後になって獅子神がとった行動を知って後悔することになるのだとか。

 

映画のあのラストシーンは安堂の幻覚だったのでは?なんて説もあるらしいです。獅子神が部屋を立ち去る時に音がしないのはおかしいとかで。

漫画雑誌を受けとっていたし、幻覚ではないんじゃないかとは思うのですが、映画は原作漫画のifストーリーというか、一種のマルチエンディング的なものとして描いているのかもしれない。あの時こうしていたら・・・みたいな。

 

いぬやしき』は映画公開前の2017年にアニメ化されていて(アニメは概ね原作通りのストーリー)、

 

#3 安堂直行

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安堂直行のみアニメ版も実写映画版も同じ本郷奏多さんが演じているのですが、安堂くんだけ同じ俳優を起用しているのはそのためなのかもしれない・・・と、いうのは考えすぎか。

 

 

この映画が気になった方は是非、エンディング流れた後も少しお待ちいただいて、本当のラストシーンまで観てほしいと思います。

 

 

ではではまた~

 

『母性』湊かなえ あらすじ・ネタバレ感想 ”作家を辞めてもいい”渾身の小説!

こんばんは、紫栞です。

今回は湊かなえさんの『母性』をご紹介。

母性(新潮文庫)

 

あらすじ

県営住宅の中庭で、市内の県立高校に通う女子生徒(17)が倒れているのを、母親が見つけ、警察に通報した。4階にある自宅から転落したとして、警察は自殺と事故の両方で原因を詳しく調べている。

母親は「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて信じられません」と言葉を詰まらせた。

 

“私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました”――そうやって始まる母の手記と、漆黒の闇の中での娘の回想。

十一年前の台風の日、「美しい家」での一家三人での生活はある悲劇によって唐突に終わり、その悲劇によって母娘はすれ違い、捩れて更なる悲劇を生む。これは事故か、自殺か、それとも――。

 

 

 

 

 

 

渾身の書き下ろし

『母性』は2012年に刊行された長編小説。2022年秋にこの小説を原作とした映画が公開予定です。

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当時、単行本が発売されてすぐに買って読んだ記憶。あの頃は湊かなえさんの新作が発表されればすぐ購入していたんですよね。あんまりバンバン本出されるようになったのでそのうち追えなくなっちゃったんですけど・・・(^_^;)十年目にしての映画化で久しぶりに再読してみた次第です。

 

この本は作者の湊かなえさんが「これが書けたら、作家を辞めてもいい。その思いを込めたて書き上げました」という、渾身の書き下ろし小説。

湊さんは母娘の関係をよく作品に取り入れる作家さんなのですが、

 

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この『母性』では超直球でそれがテーマで書かれているとあって、作者の本領が発揮されまくりのシンプルな長編小説となっております。

 

 

 

 

母と娘

湊さんはこの本を書こうと思った経緯について、

「永遠に愛され、庇護される立場(娘)でありたい母親と、その母親から愛されたい娘の物語です。毒親でもなく、虐待でもなく、だけど大切なものが欠けた関係。それを、自分が母親と娘の両方の気持ちを持っているあいだに書きたいと、このテーマに挑みました」

と、映画化決定の際にコメントされています。

書き上げてから十年の月日が経ち、「今はもうどちらの気持ちも持っていません」とのこと。

母親であり娘である意識が混在しているほんのわずかな期間にのみ書けた小説ということですね。

 

この本は最初に女子高生が自宅の庭で倒れていたのが発見されたという新聞記事が出されており、各章、最初の新聞記事に疑問を持つ学校教員が視点の【母性について】、神父さま相手に文章を書いている母親(ルリ子)視点の【母の手記】、暗闇の中で今までの出来事を思い出している娘(清佳)視点の【娘の回想】という順番で展開していきます。※名前に関し、作中では終盤まで読者にわからないように書かれています。

 

学校教員による視点の今現在の時間軸である【母性について】は各章ほんの少し。ほぼ【母の手記】と【娘の回想】によって物語は構成されています。ルリ子の手記は結婚して娘を産むところから始まっており、【娘の回想】と並行して手記の中で回想しています。

母親からの視点の後に娘の視点が書かれることで、同じ出来事がまったく違う印象になる訳で、「人は、自分が見たいようにしか物事を見ていない」というのが浮き彫りになる空恐ろしい構成。

 

湊さんは“イヤミスの女王”で有名で、ミステリ要素が強い作品を書くのが特徴なのですが、今作はミステリかどうかといわれると結構微妙。トリックがあって云々というお話ではないですからね。

しかしながら、母と娘の謎・不思議を追求するというミステリ小説ということではあるのかとは思います。

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母性について

“永遠に愛され、庇護される立場(娘)でありたい母親と、その母親から愛されたい娘の物語

と、作者が仰っているように、この小説は親になりきれない未熟な母と、得られようもないものを求める娘、二人の女性の苦しいすれ違いの物語。

 

ルリ子は母親(清佳にとっては祖母)にべったりな人生を送ってきた女性。いつでも自分に無償の愛を与えてくれる母を盲目的に慕い、「どうすれば母が喜んでくれるか、褒めてもらえるか」を第一の行動理由にして生きてきた。母を尊ぶをこえてもはや宗教的に崇めているといっても過言ではない。

そんなルリ子なので、結婚相手も母のウケが良かった田所とあれよあれよと流れるままにしてしまう。清佳を出産するが、子育ての第一方針は“母が喜んでくれるような孫に育てること”。それで「貴方の育て方が良いのね」と褒めてもらいたい訳で。それでいて可愛がられている清佳を見て「母の愛はいつも私が独占していたのに・・・」と嫉妬する始末である。

 

この時点で子供を育てるには何かが致命的に足りないんですけれども。それでも母が生きていたうちは表面上親子として問題なく取り繕えていました。

高台にある洋風の家、庭に植えられた色とりどりの花、はしゃぐ娘、自分と一緒にリルケ詩集を暗唱しながら絵を描く夫・・・これぞ「美しい家」

って、端から聞いているとちょっと寒々しいというか、ハッキリ言って気持ち悪い家なのですが(^_^;)。これはルリ子の手記によるものなので、ちょっと変な方向に美化して盛ってあるらしい。【娘の回想】の方でそれらが少し明らかになっています。

 

しかし、台風の日に起こった土砂崩れによって母が命を落し、「美しい家」もなくなって田所の実家で暮らすこととなり状況は一変する。

 

田所の家は農家。お嬢さん育ちだったルリ子は義母に嫌みを言われながら無償でこき使われる日々になんとか耐えるなかで鬱憤が溜まっていき、この不幸はすべて娘の清佳のせいではないかと思い込むようになる。

台風の日の隠された真相が遺恨となり、度重なるタイミングの悪さやすれ違いがいやらがあってなのはもちろんですが、こんな思考になってしまう最大の原因は根本的に娘への“無償の愛”をルリ子が持てていないためです。

 

表面上は親として問題のないルリ子ですが、娘の清佳にはやはり自分が母に無条件で愛されている訳ではないというのが伝わってしまう訳で。いつもルリ子の顔色をうかがい、愛されよう、母を守ろうと奮闘するのですが、ルリ子から見ると清佳のそんな行動は“娘として可愛げのない姿”に見える。そうさせているのは自分であるにもかかわらず、です。

 

ルリ子は娘を愛そう愛そうと努めているのですが、「愛そう」と意識している時点でそれはもう“無償の愛”ではない。

「愛能う限り、娘を大切に育ててきました」それはなんて胡散臭い言葉であることか。

 

ルリ子に清佳が求める母性はない。“ない”ものを求めても不幸になるだけ。清佳はどん詰まりに追い込まれていくのです。

 

 

 

 

 

家族のリアル

回想の最後、父親の浮気を暴き、さらに祖母の死の真相を知らされた清佳は母に問い質す。その結果、ルリ子に首を絞められそうになった清佳は母の手を汚してはいけないと思い、自ら首を吊って命を絶とうとする。

 

この時点で、物語の最初に提示されていた新聞記事の内容は清佳の事ではないのだということが読者に明らかとなる。新聞記事の女子高生は「4階から飛び降りた」ということでしたからね。庭の木で首を吊ろうとした清佳とはまた別の子なのですよ。

 

そして、新聞記者を読んで「愛能う限り」という言葉に疑問を持った学校教員、各章の冒頭に挿入されている【母性について】の部分の語り手が成長した清佳であることが判明する。トリックというほどのものではないですが、ちょっとした読者への引っ掛けですね。ルリ子の手記が神父さま相手になっているのも、まるで刑務所で書いているかのように思わせるミスリードです。

 

清佳が高校生の時に自殺未遂をして一命を取り留めた後、ルリ子との関係はとりあえず改善された。浮気した挙げ句、清佳が自殺未遂をしたことを知ってトンズラこいていた父は十二年経ってひょっこり戻ってきて、ルリ子に許してもらってまた一緒に住んでいる。施設に入った義母も頼れるのはもはやルリ子だけだということを悟り、優しく接するようになった。清佳は教員になり、高校時代に付き合っていた彼と結婚。今度出産を控えている――。

 

と、ま、何やら自殺未遂後にすべてが丸く収まったかのように描かれていますが、現在でもルリ子は母性を持たないままだし、あいかわらず「愛能う限り」とかのたまっているし、結局清佳が家や母と折り合いをつけられるようになったのは家を出たからではないかという気がする。そもそも清佳は自分のこと殺そうとした(と、清佳は思っている)母と関係修復なんて出来るのか?とか・・・。

ハッピーエンドとは言い難い、モヤモヤ感が残るラストとなっている。

 

自殺未遂の直前、清佳はルリ子に首を絞められそうになったと認識していますが、ルリ子は抱きしめようとしたと認識しているという矛盾点があるのですが、本当はどっちだったのかわからずじまいですしね。

最後が「ページ数足りないのか?」と言わんばかりの急速なまとめ方なので余計に釈然としない。(ま、この本は書き下ろしなんですけども)

 

しかし、これが家族のリアルなのかなと思います。歪んでいるのかもしれないけれども、「家族」として取り繕って形を成していく。桜庭一樹さんの『少女七竈と七人の可哀想な大人』でもありましたが、

 

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母娘というのは許す許さないの長くて終わらない旅なのかなぁと。

 

 

最初十年前に読んだ時、“褒められたい”という自分の願望ばかりが先に来る幼稚なルリ子に終始腹が立ってしょうがなかったのですが、今改めて読み直してみると清佳の回想にも疑わしいところが割とある。

結局二人とも自分の都合の良いようにしか見ていないってことなのでしょうね。なんだかんだいっても、ルリ子はルリ子で農家の嫁として確りと努めているのは間違いないし。

 

それにしても、ルリ子の「イヤよ、イヤ。私はお母さんを助けたいの。子どもなんてまた産めるじゃない」って言葉にはやはり酷い嫌悪感がありますが。

 

後、父親の田所もかなり酷かったなぁと。妻に家も義母も押し付けて浮気相手と逃げて、捨てられてにっちもさっちもいかなくなったんで十二年後に帰って来ましたって・・・なにそれ?

半端に良い部分もある父親で夫だったんで、なにやら余計に腹が立つ。これもまたリアルな家族の歪さということなのか・・・?

 

 

 

けして読んで気分が良くなる物語ではないのですが、湊かなえさんの筆力は存分に味わえますし、読んだ人それぞれに解釈して愉しめる小説だと思いますので、映画化などで気になった方は是非。

 

 

ではではまた~

 

 

 

『空の境界』順番・解説 わからない?難しい?盛大にこじらせてる〇〇小説

こんばんは、紫栞です。

今回は、奈須きのこさんの空の境界(からのきょうかい)について簡単にご紹介。

空の境界(上) (講談社文庫)

 

伝奇小説

空の境界』は奈須きのこさんによる長編伝奇小説。

元は1998年~1999年にかけて奈須きのこさんのホームページ「竹箒」に分割掲載されたものを、長編小説として2001年にコミック・マーケットで売り出された自費出版の同人小説。その後、2004年に講談社から一般書籍として刊行されたという当時としては異例の出版経緯を持つ小説作品で、劇場アニメ公開、コミカライズもされた伝説的な人気作です。

 

 

 

 

昏睡状態から目覚めた末に直死の魔眼という能力を得た少女・両儀式が奇怪な事件と対峙していく伝奇小説である今作。

 

かつて文芸雑誌「ファウスト」で編集者である太田克史さんが新伝綺という文言を提唱したとかで、商業本の裏にある説明には「“新伝綺”ムーブメントの到来を告げる傑作中の傑作」「“新伝綺”ムーブメントの起点にして頂点」「新伝綺ムーブメントを打ち立てた歴史的傑作」などと書かれていますが、浅学なもので「伝奇小説」と「新伝綺小説」の違いもよくわからないし、そもそも「伝奇小説」の定義もよくわかっていない私。

 

読んだきっかけは数年前にWOWOWでアニメが一挙無料放送されていた時に偶々チラ見して、本屋で講談社ノベルスから本が出ていることを知ってでした。私は京極夏彦ファンなもんで、ちょっと気になっただけのものでも講談社ノベルスで刊行されているのを見ると軽率に読みたくなってしまうんですよね。

 

作者の奈須さんも講談社ノベルスが大好きなんだそうで、自費出版した同人小説版はオマージュとして講談社ノベルスそっくりの装丁のものだったのだとか。その後本当に講談社ノベルスで刊行されたってんですから、凄い話ですよねぇ。

 

講談社ノベルスで上下2巻(もちろん段組)なのでかなりボリュームがある物語なのですが、伝奇小説というジャンルではあるものの、SFやミステリの要素もあって伝奇小説慣れしていない私でも面白く読めました。今回この記事を書くために再読したんですけど、再読すればするほど面白さが増す作品だと思います。

 

奈須きのこさんはノベルゲームの作者として有名な方。奈須さんによる月姫Fateシリーズ』などのノベルゲームとこの『空の境界』は世界線を同じくしているということで、これら他作との繋がりを楽しむのもまた醍醐味なようなのですが、私は本当にゲームをやらない人間でそっち方面はまったくの無知ですので、ここでは『空の境界』という作品にのみスポットを当てて紹介していきます。

 

 

 

 

 

順番

空の境界』は小説本としては講談社ノベルスから刊行された上下巻2冊

 

 

(※文庫版だと3冊)

 

 

と、後に講談社の子会社である星海社から刊行された未来福音

 

 

未来福音」の劇場アニメでの来場者特典として配布された「終末録音」も含めると、本としては3冊(文庫版なら4冊)、話数というか章の数でいうなら全部で10個あります。来場者特典として配布だった「終末録音」は、2018年に20周年記念版として発売された豪華版の単行本にのみ収録されています。

 

 

 

 

正当な読む順番は以下の通り↓

 

第一章「俯瞰風景」

第二章「殺人考察(前)」

第三章「痛覚残留」

第四章「伽藍の洞」

第五章「矛盾螺旋

第六章「忘却録音

第七章「殺人考察(後)」

終章 「空の境界

未来福音

終末録音

 

 

劇場アニメですと終章までは小説と同じく8作品この通りの章の順番で公開されているのですが、「未来福音」の前に未来福音extre chorus」という原作小説ではなく漫画版の方の小話集的なものが1本公開されています。

 

 

なので、来場者特典の「終末録音」はアニメ化していないものの、劇場アニメも全部で10作品ですね。

 

タイトルのせいでどちらを先に観ればいいのかわからなくなるかと思いますが、公開された順で「終章」の後は「未来福音extre chorus」「未来福音」の順で観るのがオススメです。話としてはどちらが先でも問題は無いのですが、未来福音」を最後に観た方がより感慨深くなりますので・・・。

 

劇場アニメは概ね原作に忠実なものとなっていますが、人形師で魔術師の蒼崎橙子のキャラクターデザインが原作とアニメでは大きく異なります(性格など中身は同じ)。最初にアニメ版をチラ見していたせいか、個人的にはアニメ版のデザインの方が好み。

 

 

 

 

 

時系列

さて、読む順番としては上記した通りで、最初は絶対にこの順番で読んで欲しいのはもちろんなのですが、『空の境界』は時系列が各章で入れ替えられていまして、これが読者やアニメ視聴者にとってはハッキリ言って非常にわかりにくい。

 

なので、自分用も兼ねて時系列をまとめてみます

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1995年

3月 

黒桐幹也が『両儀式』と出会う。

4月 

高校入学。高校で幹也は式と再会する。

9月 

観布子市内で猟奇連続殺人事件が発生。「殺人考察(前)」

 

1996年

2月 

式が事故により昏睡状態に。

 

 

1998年

3月 

幹也、高校を卒業。

4月 

幹也、大学に入学。

5月 

幹也、人形師の蒼崎橙子と知り合い、大学を辞めて橙子の事務所で働くことに。

 

6月 

式が昏睡から目覚める。「伽藍の洞」

7月 

無痛病で物体を曲げる能力を持つ浅上藤乃と式が対決。「痛覚残留」

8月 

幹也、未来視の少女・瀬尾静音と出会う。式、未来視の爆弾魔に命を狙われる。未来福音

9月 

霊体を操る余命僅かの入院患者・巫条霧絵と式が対決。「俯瞰風景」

11月

式、臙条巴と知り合い、小川マンションで荒耶宗蓮と対決。矛盾螺旋

 

 

1999年

1月 

式、令園女学院に潜入し事件調査。統一言語師・玄霧皐月と対決。忘却録音

2月 

式が幹也の前から姿を消す。それと同時に二年前の連続猟奇殺人事件が再開される。「殺人考察(後)」

3月 

雪降る夜、幹也は四年前と同じ場所で『両儀式』と再会する。空の境界

 

 

2010年

夏 未来福音 序」

 

 

 

つまり、時系列で各章を並べると・・・

 

第二章「殺人考察(前)」

第四章「伽藍の洞」

第三章「痛覚残留」

未来福音

第一章「俯瞰風景」

第五章「矛盾螺旋

第六章「忘却録音

第七章「殺人考察(後)」

終章「空の境界

未来福音 序」

 

ですね。

 

いったん物語が終了した後に書き下ろされた『未来福音』は本の中で2編に分かれていまして、未来福音」は1998年8月の出来事、「未来福音 序」は時間が一気に飛んで2010年の出来事です。“序”の方が後に起こった出来事ってことで、これまたややこしい。

 

だいたい、時系列を入れ替えることがこの物語にとってプラスに作用しているのかどうかは微妙なところ。個人的には解りにくくなっているだけでは?って気もする。

第一章の「俯瞰風景」とか、人物や状況説明もほぼされないからこれだけ読んでも(観ても)チンプンカンプンだし。「俯瞰風景」は式が男性だと思わせるような叙述トリック的な仕掛けが施されていますが、表紙絵や挿絵で女性だってまるわかりだし。

 

あと、来場者特典だった「終末録音」に関しては、実は私、読めていないので詳しくはわからないんですよね・・・(最近まで「終末録音」という書き下ろしがあることも知らなかったし^_^;)。今度20周年記念版を買って読みたいなぁと思っております。

 

 

 

 

純愛小説

空の境界』は両儀式黒桐幹也荒耶宗蓮の三人の物語。

簡単にいうと、魔術師・荒耶宗蓮が“ある目的”のため、「両義式」という“器”を手に入れるために自らが素質を見抜いた人物たちを刺客に仕立て上げ、式にちょっかいを出してくるというもの。

第五章の「矛盾螺旋」で荒耶宗蓮とは決着がつくのですが、その後に荒耶宗蓮の置き土産的なものの後始末がある。そんな一連の騒動に式と幹也、二人の物語が絡むといった具合ですね。

 

作者の奈須きのこさんは影響を受けた作家の一人として「京極夏彦」を挙げているのですが(それもあって京極夏彦ファンの私としては取っきやすく読みやすい)、『空の境界』は文章も内容も京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズ】に強く影響を受けているのが見て取れる。

 

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特に荒耶宗蓮関連の話は魍魎の匣とテーマが似通っていますかね。“境界”が云々という話も。『魍魎の匣』は“不思議なことなど何もない”話ですけど。

 

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伝奇小説部分や作中で語られている理屈など、深読みするとキリがない物語なのですが、私個人としてはこの本はもう式と幹也の純愛小説として読んでいました。

 

殺人衝動だとか、グロい猟奇殺人だとか、別人格だ、虚無だ、何だと、物騒で小難しいことをポエミーに思い詰めているんですけども、実際は単純に恋しているだけ。

 

特殊すぎる少女が、普通すぎて逆に普通じゃない少年に恋をした。今までの自分を見失ってしまいそうな想いに恐れをなし、遠ざけようとするのだけれども相手も熱烈で上手くいかず。殺したいほど好きなんだけれども、好きだから殺せない。好きで好きでたまらない!どうしたらいいの!?と、一人右往左往している、盛大にこじらせている面倒くさい純愛ラブストーリーが『空の境界』なんだ、と。

ま、しかし、そこが良い。

 

 

 

伝奇小説だったり、ミステリだったり、グロテスクだったり、ラブストーリーだったりと、人によって色々な愉しみかたが出来る作品ですので、小説もアニメも漫画も気になったなら是非。

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

『マスカレード・ゲーム』シリーズ4作目 これで完結?あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。

今回は東野圭吾さんの『マスカレード・ゲーム』について紹介と感想を少し。

マスカレード・ゲーム

 

あらすじ

「ホテル・コルテシア東京」での未遂事件から数年。

捜査一課の係長となった新田浩介は、入江悠人という青年が刺殺された事件の捜査をしていた。入江は十七歳のときに暴行によって人を死なせた過去を持っており、その事件で亡くなった被害者の母親・神谷良美が容疑者候補としてあがるが、神谷には完璧なアリバイがあり、捜査は行き詰まる。

そんな最中、都内で起こった別の殺人事件二件が同一犯である可能性が浮上。三つの殺人事件の共通点は、ナイフで正面から刺すという殺害方法。そして、どの被害者も過去に人を死なせる罪を犯していながらいずれも軽罰ですんでいること。

三つの班合同で捜査を進めてみると、各事件の容疑者である犯罪被害者遺族たちがそろいもそろってクリスマスに「ホテル・コルテシア東京」に宿泊予定であることが明らかに。事件を未然に防ぐべく、新田はまたもホテルマンとして潜入捜査をすることになるが――。

 

 

 

 

 

 

シリーズ4作目

『マスカレード・ゲーム』は2022年4月に刊行された長編小説で【マスカレードシリーズ】の4作目。

 

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刑事がホテルマンに扮して潜入捜査するという、高級ホテルを舞台に展開されるミステリシリーズであるこちら。今までに長編が2冊、短編集が1冊出ている訳ですが、

 

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正直、刑事がホテルに潜入捜査という特殊すぎる設定のため、こんなにシリーズとして続くとは思っていなかった。舞台もずっと同じコルテシア東京だし。

 

今回は三つの殺人事件の共通点から、仇討ち殺人をチームで行なっている、つまり、自分が殺したい相手を他のメンバーに殺してもらって完璧なアリバイを確保し、自分も他の人の標的を代わりに殺すという方法で犯行を重ねているのでは?と、警察が推測した矢先に容疑者たちが皆そろいもそろって同じ日に同じホテルに宿泊予約をしていることが判明。

 

奴らいったい何をする気なんだ!?会議?それとも新たな犯行?他の宿泊客の中にターゲットがいる?それとも4人目の仲間がいる?これは見張らないと!!

 

って、ことで、またもやコルテシア東京に捜査本部を設置。潜入捜査することに。

 

作中では“ローテーション殺人”と言っていますが、新田たちが推測しているのはいわば交換殺人のバリエーション版。

「交換殺人ものは前やったじゃん」とシリーズ読者としては思ってしまうところなので序盤からちょっとテンションが下がってしまいますが、そこは東野圭吾作品で【マスカレードシリーズ】ですから、ちゃんとそれだけではない意外な真相がラストには用意されているので御安心を。

 

前2作の長編では殺人事件捜査と並行してホテルならではの小事件が描かれていくという短編的要素が盛込まれていましたが、今作はシンプルな構成になっていてホテルの宿泊客が起す日常ミステリなどはなし。そっち方面はネタ切れということなのかもしれない・・・とか思ってしまったり。ま、同じホテルでばかり事件が起きそうになるってのがそもそも無理のある話ではありますからね(^_^;)。

 

新田の他に山岸能勢本宮、稲垣とシリーズお馴染みのメンバーが勢揃いなのがやはり読んでいて嬉しいところ。

本の帯には「シリーズ総決算」とあるのですが・・・“総決算”ってなんともボンヤリした謳い文句だなぁ・・・。

 

 

 

 

 

成長

シリーズ4作目となる今作ですが、前作の長編『マスカレード・ナイト』から数年が経った設定になっています。これが何年経っているのかが正確にはわからないままでして。作中で「何年も前のことだ」とか「なつかしい」とか言っているので結構経っているのは確かみたいですが。能勢さんも退職間近になっていますしね。

 

とにかく、シリーズ1作目では生意気でイキった若手刑事だった新田も四十代となり、警部に出世して捜査一課の係長に。1作目での荒ぶりはどこへやら。すっかり落ち着いた大人の男になっています。

 

今回はホテルでの潜入捜査をかき回す役回りとして、頭は切れるが強引で違法捜査も辞さない女警部・が新キャラクターとして登場しているのですが、ホテルに迷惑が掛かりかねない梓の遣り方に反発する新田の言動もうホテルマンのソレ。ホテルマンに扮することを甘く見ている梓警部はまるで1作目での新田の姿を見ているようであり、ホテルマンとしての(ホテルマンではないのだけれども)新田の成長を強く感じることが出来る。それにしても、ホテル内で制服着てソファでふんぞり返ったり仁王立ちしたりする梓警部はどうかしすぎだろうと思いますが。客商売なめてるでしょ。

 

しかし、梓警部がいるおかげでサブの謎解きがなくっても退屈せずに読み進められる。最終的には梓警部には梓警部なりの矜持があるのだとわかるのですが。でもちょっと人物設定が漫画っぽいというか、定型的過ぎる気がしましたかね。

 

 

ガリレオシリーズ】とかもそうですけど、

 

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作者は最近シリーズものの時間をリアルと差が無いように進めようとしているのですかね。私は東野圭吾作品をすべて読んでいる訳ではないのでわからないんですけども。時代と連動したストーリーを書きたいということなのか。主人公の成長を書きたいということなのか。

 

私個人としては、シリーズものの主人公がどんどん年取って丸くなっちゃうのってちょっと淋しいなぁと思ってしまうのですが。新田は部下にも捜査協力してくれているホテル側にもちゃんと気配りが出来る大人になっていて好ましいですけどね。1作目のときは「若いから許せる」みたいな人物像だった・・・。

 

 

前作のラストで栄転してロサンゼルスへと旅立っていった山岸尚美ですが、三度の潜入捜査で慣れている人間がいた方が良いだろうと一時的に東京に呼び戻されて登場。

正直、この登場のさせかたは結構無理がありましたかね。何年も経っているということなら少し前に異動で戻ってきていたってことで良かったんじゃって気がしますが・・・満を持して登場!感を出したかったのだろうか。

 

山岸さんは相変わらず真面目で有能なフロントクラークですが、ホテル従業員としてのお客様至上主義と事件を防ぐための警察の捜査との間で板挟みに。怒ったかと思ったらすぐに態度を軟化させてみせるなど、割とブレブレなところが気になる。ま、でも、山岸さんって毎度そうだったかも(^_^;)。

 

新田と山岸さんの関係性ですが、やはり仕事上の付き合い以上に発展させる気はなさそうですね。二人とも独身のままではあるみたいですが。

じゃあ何で1作目のラストに期待させる描写入れたんだって感じですけど。シリーズとして続けるにはくっつけると支障があるのですかね、やはり。

 

 

 

 

 

 

 

 

シリーズ完結?

事件の真相ですが、意外は意外なんですけど、東野圭吾作品だとその“意外性”がもはや想像通りなのでファンには驚きはないかなと思います。

 

前作もそうでしたが、詳細を犯人の独白で済ませるのは手抜き感がどうしても漂う。

「罪」「罰」「償い」といったものを事件のテーマにしているのなら、もっと踏み込んだ描写が欲しいところですね。

 

上記したように、単行本の帯に「シリーズ総決算」とある訳ですが、今作のラストはシリーズ完結を匂わせるようなものになっています。

能勢さんも退職だというし、登場人物達も皆結構な歳になったし、これで終わりなのかな~?なのですが、あくまで“匂わせ”に留まっているので、続けようと思えば続けられるように余地があるようにしている?

映像化もされているシリーズだしなぁ。大人の事情が出たらまた出来るようにしているのかと勘ぐってしまう。

 

今作のラストで新田の立場が変わっているので、続くとしたら今度は今までの警察の潜入捜査というのとはまた違うものになるでしょうから、それはそれで愉しそうですけどね。

 

今作も映画化されるかもですし、今後の動きに注目したいと思います。

 

シリーズファンや映画で好きになった人は是非。

 

 

 

 

ではではまた~

『金田一37歳の事件簿』12巻 ネタバレ・感想 恐怖!乱歩展での連続殺人

こんばんは、紫栞です。

今回は、金田一37歳の事件簿』12巻について感想を少し。

金田一37歳の事件簿(12) (イブニングコミックス)

 

コミックスの帯に連ドラ情報と、

 

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原作者の天樹征丸さんと歴代担当編集者たちによる金田一シリーズ連載30周年記念トークイベント『編集たちの事件簿』2022年5月21日14時からあるらしいのですが、帯の折り返し部分にQRコードがついていて、そこからとんだ人だけトークイベントのオンライン視聴が完全無料になるらしいです。リアルタイム配信とのことですが・・・アーカイブとかあるのかな・・・。

 

12巻は1冊丸々前巻

 

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からの続きである『殺人二十面相』収録。

 

あらすじ

池袋ハロウィンに合わせてミクサライブで開催される「江戸川乱歩展」のイベント運営を請け負うことになった音羽ブラックPR社の金田一一と葉山まりん。

会場でイベント責任者と打ち合わせをした際、金田一怪人二十面相の人形が“殺人二十面相”と書かれたカードを持っているのを発見。嫌な予感を感じつつもマスコミ関係者を集めての本番前の内覧会を行なうが、皆で案内通りに展示を見ていた最中にメンバーの一人が『赤い部屋』のアトラクションの中で殺害される事件が発生。死体がくわえていたカードには“殺人二十面相”の文字。その裏には「出入り口は閉ざされた 無理に出ようとすれば全員爆死する」と書かれていた。

出るに出られず、ビルに閉じこめられることとなってしまった内覧会メンバーたちは脱出方法を探るが、さらに第二第三の事件が発生して――。

 

 

 

 

以下、ネタバレ感想と考察~

 

 

 

 

 

 

 

前巻で

「東京は安心感があるよ・・・!」

「東京なら携帯の電波が繋がらないこともないし」

「突然の嵐で船が出なくて島に閉じこめられることもないし」

と、一ちゃんが言っていましたが、やはり東京も平気ではなく、携帯を通じなくさせる装置オンにされて圏外になるし、出入り口に爆弾仕掛けたとかで閉じ込められることとなる。

 

東京のど真ん中だけれども今回はクローズド・サークルもの。皆で一緒に乱歩展のアトラクションを見て廻っているなかで、一人ずつ消えていって他殺体で発見されていくという、お化け屋敷ツアー的なホラー展開が今までにない感じで面白い。このシリーズの長編だと数日かけての話が主なので、短時間の間に立て続けに三人殺されるというスピード感も珍しいですね。

江戸川乱歩展」の会場が舞台ってことで、江戸川乱歩の作品にまつわるお話も多いです。ミステリ評論家の青鬼蒼作先生が解説要員ですね。青鬼蒼作って名前、如何にも「乱歩が好きです!」って名前だなぁ。

 

提示されている謎は主に二つで、第一の事件の『赤い部屋』のアトラクションの一室に突如死体が出現したことと、第二の事件での蔵のアトラクション内での密室殺人

 

死体を突如出現させた謎に関しては、双眼鏡を覗いて云々といったアトラクションの性質を利用したものだろうと思われる。あの短時間で暗闇の中殺害して椅子に座らしてカード口にくわえさせて・・・というのは無理があるので、死体は最初からあの部屋の中にあったんのだろうと思うのですが・・・どうなんだろう?

ホチキスでとめられていた両面テープの切れ端が発見されているので、なんというかこう、双眼鏡を覗く部分にはっつけてあったとか?

仕事放棄した挙げ句に殺されることになってしまった船橋さんはこのトリックの“タネ”を見てしまったために殺されたんだと思われ。責任者なんですから、職務放棄はやめましょうね。だいたい、単独行動の方が絶対危ないのになんでバラバラになるかな・・・(-_-)。

 

“赤い部屋”っていわれると、この漫画シリーズのファンとしては異人館ホテル殺人事件』連想しちゃいますね。

 

 

あれも乱歩作品からの着想だったのかな?

 

 

蔵(アトラクション)での密室殺人ですが、裏が真っ黒く塗られたタペストリーが落ちていたってことなので、扉と扉の隙間にタペストリー持って犯人が隠れてったってことでしょうか。それだとまるっきり忍者みたいですけど。

 

そうなると、怪しいのはウェブデザイナー億野冴月とキャスターの魚森流菜子の二人。

 

魚森さんだと蔵で合流した時の「葉山さんたち五人はずっと一緒だったんですか?」という台詞が怪しいし、億野さんは黄金仮面が云々といった台詞と度々皆を誘導するような発言をしているのが怪しい。

 

 

やっぱりというかなんというか、この巻では事件はまだまだ終わらない。金田一「ジッチャンの名にかけて・・・!」と言ったところで次巻に続く!です。

 

動機面はこの巻の内容ではまったく見当がつかない。正体不明のアーティスト・亜良木壕も確実に犯行に絡んでいるのでしょうが、こちらもまだわかりませんね。諸々の事を考えると、次の巻もほぼ丸々この事件に使うのではないかと思います。

イブニング本誌では今“少年”の方の話を連載中らしいので、そちらとの兼ね合いもありますかね。次巻の収録がいかようになるか気になるところです。もちろん事件の真相も。

 

 

次巻、金田一37歳の事件簿』13巻は2022年6月発売予定とのこと。楽しみに待ちたいと思います。

 

 

ではではまた~