こんばんは、紫栞です。
今回は、島田荘司さんの『水上都市の冒険』を読んだので感想を少し。
中学生・御手洗潔の冒険
こちら、2026年7月に刊行された【御手洗潔シリーズ】の連作短編集。
時は昭和三十年代、高度成長期。中学生の御手洗潔少年が同級生の友人たちと共に横浜水路で起こる事件の謎に挑む少年探偵団ものです。
シリーズの探偵役である御手洗潔は1948年生まれ。このシリーズはリアルタイム進行ですので、2026年現在で御手洗は77歳。
・・・・・・と、改めて歳を数えるとびっくりしてしまいますが(^_^;)。まだまだ現役バリバリの天才で、昨年刊行された『伊根の龍神』でも颯爽と(本当に颯爽と)謎を解いてくれているので大丈夫なんですけれども。
当たり前にシリーズのメインキャラクターたちもだいぶ老成してしまっているので、達観しているといいますか、老境の寂しさみたいなものが付きまとう語り口にはなってしまう。リアルタイム進行ならしょうがないところではありますが。
あと、御手洗が終盤にポンッと出てきて答え言ってサッと帰って終わりとかね。ただ答えを言ってくれる人ポジションで終わってしまう場合が多い。御手洗の場合天才すぎて調査過程やシンキングタイムもほぼ無しで解明しちゃうし。
今作ではそんな天才すぎる老人・御手洗も中学生ということで、同級生と一緒に調査をしたり、大人たちに反発したり、自転車で忙しく動き回ったりと、少年らしい冒険をしているのが新鮮。昭和三十年代が舞台ですので、ノスタルジックな雰囲気も味わえる一冊となっています。
収録作品は、
●汐汲坂の殺人
●踊る人形
●火事マニア
●マジシャン御手洗くん
●歯磨きチューブの謎
の、五作品。
雑誌「メフィスト」から会員制読書クラブでの会員限定小説誌になった「メフィスト」で2025年~2026年の間に掲載されていたもので、最後に収録されている「歯磨きチューブの謎」は書き下ろし。
今回、新刊情報や「メフィスト」の会員案内のチラシと一緒にメフィスト賞受賞作一覧が書かれた栞が付いてきました。こういったおまけは嬉しいですね。電子書籍が急速に広まっている昨今ですが、紙の書籍ならではの嬉しさってのはやはり廃れない。新刊情報のチラシも見るの楽しいんですよね。
栞には受賞作71作が書かれていて、今まで何作か読んできているのですが、メフィスト賞は規格外のミステリが多くてやっぱ好きな賞だなーとなりました。またメフィスト賞受賞作を読みたいですね。
島田荘司の少年探偵団
上記したように今作は少年探偵団もの。
御手洗の他に、同級生の江口くん、鈴木えり子、犬のココアなどが主要メンバーとして出てきます。
主な語り手は江口くんで、御手洗と鈴木えり子との三人で巷で起こる事件の謎に挑んで調査したり刑事相手にやりあったりする。
語りての江口くんは水上生活者でして、エンジンがなく自力での移動が出来ない”ダルマ船”で父親と二人で生活をしている男の子。昭和初期にはこういった水上生活者がチラホラといたみたいですね。
中学校の皆は江口くんが水上生活者だと知って距離をとる子が大半だったが、御手洗は江口くんの船の家を気に入ってよく遊びに行っているという。
なんか、この頃から御手洗ですね。優秀で我が強いのだけれども、逆境に立たされていたり立場が弱い者に寄り添おうとする。その最たる存在が後に出会う石岡くんなんですけども。
中学の時の御手洗は女子大の理事長である叔母の元に居たという設定でして。これは過去作の短編でも書かれているんですけれども。この頃は叔母さんが身体を壊して治療中だったので、通いのお手伝いさんはいるけれども実質一人暮らし状態。なので、船にも気軽に遊びに来るし、中学生ながら自由がきく身なんですね。
通常の御手洗シリーズとは違って奇想天外なトリックなどはなく、殺人があるお話はあるものの事件はどれもライト。ミステリというよりは冒険活劇ですね。
横浜水路で江口くんのとこの船を拠点(?)としながら少年探偵団的活劇をしているのは古き良き児童文学的でありながら新鮮さがある。仲間とチームで事件調査しているのもまた新鮮で良いですね。ホント、御手洗ってばいっつも事件概要聞いたらすぐわかっちゃって説明して終わりだからさ・・・・・・。
登場する警察は徹底的に無能に描かれている。現在設定でこういった刑事を出されると違和感ありまくりですが、昭和三十年代が舞台なのでこの無能描写っぷりもノスタルジックで、もはや「こうでなくっちゃね!」感ある。
島田荘司作品だといつも気になるミソジニー描写もなくって良かったですよ。鈴木えり子も共感できる女の子でしたし。ま、女性は女性でも子供だと嫌な女風に描かないのはいつものことなんですけど。
ちょっと気になったのが、学校でのヒエラルキーが成績至上主義なとこですかね。とにかく成績が良ければ何でも許されるし優遇されるみたいな。御手洗くんはもちろん成績トップですので、これまた学校内外で自由がきく身だってことなのですが。
中学ぐらいだと運動神経とか容姿とかもヒエラルキーの要素に入るのではって思うんですけどね。学生の時って足が速い子がモテたりするじゃん?
ま、昭和三十年代の横浜の中学校がどうだったのか私には分かりませんが。
昭和三十年代を知っている、島田さんと同年代の人は懐かしさでより楽しめる本なのではないかと思いますね。システマチックで科学的な現在が舞台の小説に疲れた人にもオススメですよ。
この少年探偵団ものは続くのですかね。何だか続きそうな気もするし、それならそれで歓迎ではありますが。
いや、でも本編でさっさと御手洗に日本在住になってもらわんと困るってのもあるんですけど。御手洗も石岡くんも年齢が年齢だし・・・・・・。いい加減頼みますわ島田先生。
何はともあれ、今後もどんな御手洗でも追って行こうと思います。
ではではまた~







