夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『近畿地方のある場所について』考察もしたくないほど怖い!夏のオススメ本~⑬

こんばんは、紫栞です。

今回は、背筋さんの近畿地方のある場所について』を読んだので感想を少し。

 

近畿地方のある場所について

 

2023年話題のホラー本

こちら、2023年1月~4月まで小説投稿サイトカクヨムにて連載されていたもので、書籍は同年の8月に刊行されました。

kakuyomu.jp

 

カクヨム】発のホラー小説ですと、当ブログでは前に芦花公園さんの『ほねがらみ』を紹介しましたが、

 

www.yofukasikanndann.pink

 

この『近畿地方のある場所について』も『ほねがらみ』同様にネットや口コミで話題になっての書籍化。世間が騒いでいるのが気になって、毎度の事ながら興味本位で読んでみた次第です。

 

あらすじはCMを見てもらうと分かりやすいのですが↓

 


www.youtube.com

 

 

ライターの私(背筋)は、新人編集者で友人の小沢くんに「オカルト雑誌の特集記事に協力して下さい」と依頼される。

初仕事で休刊したオカルト雑誌の別冊編集を任された彼は、雑誌のバックナンバーや資料、読者からの手紙などをあさっているうちに、“近畿地方のある場所”が共通する怪談が散見していることに気がつき、それをテーマに特集を組もうとしていた。

しかし、二人で調査と考察をしていた最中に小沢くんは「現地に行ってみようと思う」と言い残して消息を絶ってしまう。

私は小沢くんを捜す情報を募るため、これまでに調べた怪異や資料を“近畿地方のある場所について”と題して本にまとめていくが――。

 

 

 

 

 

 

 

ってことで、本には“近畿地方のある場所”が関わっていると思われる怪異体験談、ネット掲示板の書き込み、読者の手紙、過去のオカルト特集記事等々が幾つも収録されていて、合間合間に「私」(背筋)視点で小沢くんとのやり取りや考察が描かれるという構成。

 

バラバラの出来事が、読み進めていくと繋がっていって“恐ろしいもの”に行着くこととなる。

 

 

小野不由美さんの残穢

 

www.yofukasikanndann.pink

 

上記した『ほねがらみ』などと同じく、“まるで実話のように”描かれるモキュメンタリーホラーで、怖い話を収集していたら恐ろしい目にあうこととなる点も共通しています。ミステリー要素があるところも。

 

モキュメンタリーホラーだと、どうしてもパターンが決まってしまうのですかね。ミステリー要素があるのは読者を最後まで惹きつけるためか。

 

とはいえもちろん、各作品描き方やテイストは異なります。『近畿地方のある場所について』は、なんだか本当にオカルト雑誌の別冊版を読んでいる気分になる作りで、小説作品としての印象がかなり薄いため、より実話感が漂う一冊です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダメです

ネット普及のせいか、昨今の話題作ホラーはモキュメンタリーものが多い印象ですね。元々、ホラーというのは実話だという前提で語られる方がやっぱり怖いですし、怖い話を集めると怪に行き逢うといった設定のルーツは百物語などから来ているのかと思う。

どんなに時代が進もうと、ホラーってのは古臭い要素が含まれるものです。人間の本質が変わらないので、怖がるものも変わらないということでしょうか。

 

ホラーを映像で見るのは苦手ですが、文章でなら比較的平気な私。

今まで読んできたホラー小説、近年怖さレベルの指針にされたりする最凶ホラーと名高い『残穢』なども、鈍感なのか、読んでいる時はさほど怖さを感じなかったのですが(※後から何だか怖くなる)、この『近畿地方のある場所について』は怖かったですね。

 

「ジャンプ女」「戸から顔だけを出す男」など、想像するとダメでした。怪談なので、どの話もありきたりと言えばありきたりなのですが、どうもこの本はダメだった。

 

モキュメンタリーで全部創作だとは分かっているのですが、絶対に夜に一人では読みたくない本です。

 

伏線が凄いというミステリー要素に惹かれて購入したのですが、超常現象が前提なので話が繋がっていっても釈然としない気がしちゃいますし、なおかつ、伏線回収の面白さを感じる余裕が私にはなかったです。怖くって。

 

いつもは細部の繋がりや謎が気になる質なのですが、この作品に関してはもはや考察もしたくないと思わされました。

 

 

 

 

袋とじ

この書籍、最後の最後に読者にとどめを刺すものが待ちかまえています。「取材資料」と題した袋とじが巻末に付いているのです。

 

正直、一番恐怖した瞬間はこの袋とじに気がついた時でした。

これが、真っ黒なところに「取材資料」と白抜き文字で書かれていて見るからに怖い。しかも袋とじ。一方で、どうりで中古本が出回っていない訳だと納得した。

 

もう、戦慄して。封を切るのだいぶ躊躇しましたよ。こんなの絶対に怖いに決まっていますもの。ホラー書籍に袋とじって。

かなり恐る恐る、ビビりながら袋とじの中身を見ていったのですが・・・・・・やっぱり、やられましたよ、最後の“アレ”に。

 

知らない人にとってはなんてことないものなのだろうと思いますが、読んだ後に見ると何とも禍々しい。

もう見たくないですし、本を部屋に置いているのも嫌。燃やしたい。瞬間的にこの本をお焚き上げしたい衝動に駆られましたよ。

 

 

そんなわけで、怖くってあまり深く考えたくない感じになってしまったのですけども。

強いて言うなら、目次がないのは不便さを感じましたね。本は300ページほどのボリュームですが、10ページ以下の話が多数なので、目次がないと繋がりらしきものを見つけても振り返るのが大変。でも、これもある種恐怖の演出なのかも?

 

仕掛けに関しては、オカルトライターへの自身の勝手な思い込みを痛感させられました。何も明記されていないし、誘導する描写もないのに。いやはや、ダメですね。

 

ホラーが苦手な人にはオススメ出来ないですが、「とにかく怖いのが好き!」な人は是非。

 

 

見つけてくださってありがとうございます。

 

 

ではではまた~