夜ふかし閑談

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『ノイズ』映画 ネタバレ感想 絵日記と銃声の謎とは?

こんばんは、紫栞です。

今回は、映画『ノイズ』を観たので感想を少し。

 

ノイズ 通常版 DVD

 

こちら、2022年に劇場公開された日本映画。

2018年~2020年まで「グランドジャンプ」で連載された筒井哲也さんによる漫画作品『ノイズ noise』が原作。

 

 

映画化される漫画作品となると長期連載ものが多いですが(人気作だと連載期間が長くなるのは当然ですが、そのぶん、映画化となると編集・構成力が問われることとなる)、この原作漫画は手に取りやすいボリュームで全3巻。

 

AmazonPrimeの見放題対象作品になっていたので、観てみました。

 

 

公開当初にTVCM見て気になっていたのですよね。↓

 


www.youtube.com

 

私は原作漫画ほぼ未読です。映画公開当初に何話か無料になっていたのを読んだだけですね。

 

 

 

あらすじは、

愛知県のとある島。過疎化が進んでいたこの島では、泉圭太(藤原竜也)が栽培に成功した黒イチジクで島起こしをしようと活気に溢れていた。

そんな矢先、島に不審な男が現われる。家の敷地内に侵入し、怪しげな言動をする男に詰め寄った圭太は、突き飛ばした拍子に男を殺害してしまった。

島起こしの要である圭太が殺人を犯したとなれば、島の再興が頓挫してしまう。その場に居合わせた幼馴染みの猟師・田辺純(松山ケンイチ)と、島の駐在・守屋真一郎(神木隆之介)にそう説得された圭太は、三人で協力して事件を隠蔽することを決意するが――・・・。

 

と、いったもの。

 

藤原竜也さんと松山ケンイチさんという組み合わせといったらデスノート

 

 

映画のPRもお二方の15年ぶりの再共演を全面に出してのものでした。

とはいえ、関係性も役柄もまったく違うので、この映画を観ながら頭の中でかつての『デスノート』がちらつくなんてことは全然ないです。『デスノート』での松山ケンイチさんは漫画に寄せた印象的なメイクをしていたので見た目が違いますしね・・・。もちろん、お二人の演技に依るところが大きいのもあるでしょうが。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

やり切れてない

何もない孤立した島に来たヨソ者の男。死体を埋めてしまえば簡単に事件を隠蔽出来るだろうと算段していた幼馴染み三人ですが、ヨソ者の男の正体は元受刑者で、保護司を殺害して島をうろついているところだった。

消息不明になった二人を追って県警が島に来てしまったことで死体の処理が思ったように進められず、右往左往しているうちに事態は悪化していってしまうと。

 

村、町、島など、小さな共同体の中で起こる連鎖殺人や恐慌状態を描くパニック・サスペンスで、ミステリ的仕掛けもあるものかと思って観たのですが・・・どうも、私が期待していたものとは違いましたね。

 

全体的に、ストーリーが弱いといいますか。連鎖殺人もそこまで連鎖しないですし、島全体でパニックや暴動が起きる訳でもない。県警の刑事さん(永瀬正敏)が一人で興奮して怒鳴り散らしているだけで、ハラハラドキドキもしない。

最後の仕掛け・裏切り者に関しても、途中で何度も匂わせる描写があるし、他に候補者もいないので驚きはない。

 

そもそもの発端となる事件が、噛みつかれて突き飛ばしたら打ち所が悪くって死んじゃったという、殺人というよりほぼ事故と呼べるようなもので、「バレたらお終いだ」という緊迫感がさほどないんですよね。

その後に起こった出来事も、外野の二人が勝手にヤリ合ったって感じだし。バレちゃっても別に・・・って気がしてしまう。むしろ、正当防衛だったとさっさと白状してしまえばいいのに~って。

 

圭太が捕まってもそこまで長期間刑務所に入ることにはならないだろうし、イチジク栽培も別の人に引き継いでで大丈夫でしょうよ。現に、終盤のシーンでは妻の加奈(黒木華)が特に問題も無くイチジク栽培続けているみたいだったし。

 

もっと島全体でとんでもない、酷いことになる物語でどんでん返しがあるのだろうと思っていたので、

※こんな感じの↓

www.yofukasikanndann.pink

 

肩透かしでしたね。

CMから受ける印象とは大分違う映画でした。

 

パニックものとしても、サスペンスとしても、ミステリとしても、“やり切れていない感”ですね。終わり方もスッキリしないし、疑問が残る。

 

 

 

 

 

 

 

 

絵日記と銃声

幼馴染みである純の画策により、圭太は逮捕されることとなりますが、捕まった後で圭太が言う「気づいていたのに見て見ぬふりをしていた」は分るんですけど、「信じてやってくれ」って罪をかぶっているのは納得出来ない。今まで苦しめてきたからおわびってこと?でも、陥れられて尚そんなことしてあげるのはなぁ・・・。

 

映画の最初に娘のえりなちゃんが書いた絵日記の文章が読み上げられ、終盤では文章と共に絵も出て来るのですが、この絵が何やら意味深。ひまわりと圭太達家族三人に加えて純も描かれている絵で、加奈が圭太に見せながら「覚えてる?」と聞くのですが・・・。これは、単純に幸せだった日常が一変してしまったことを哀しんでいるのか、それとも別に何かあるのか・・・。

 

ちょっと意図が解りにくいし、最初と最後に出して物語をまとめるのに、この絵日記はあまり相応しくないような気がする。唐突なんですよね。子供はこの映画では空気状態ですから。

純視点の何かを最初と最後で挿入しての方が良かったのではないかと思います。

 

 

出来が良く、自分が欲しいものすべてを持っている圭太に幼少から劣等感を抱いていた純。

予期せぬ殺人が起こり、この事態を利用して圭太を陥れることに成功しますが、圭太を排除したところで、圭太が持っていたものが自分のものになる訳ではないと突き付けられる。

残るのは真一郎を自殺に追い込んでしまった後悔と、親友を裏切った罪悪感だけ。

 

 

最後の銃声ですが、絵日記と同様に様々な考察がされているようですね。加奈とえりなを撃ったのだろうとか、自害したのだろうとか。

 

私は単に、あんな事があった後も前と同じ日常に戻って狩猟しているのを見せることで、悲愴感や焦燥感を示す演出なのだと思っただけだったのですが、状況としては自害したととる方が自然なのかも。真一郎も拳銃自殺しているし、墓参り後にそのまま・・・ってのは、如何にも“それっぽい”。

個人的に、加奈とえりなを殺害したなんてことはないと思います。と、いうか、思いたいですね。

 

 

 

 

演技の力

ストーリーは映画にするには弱いと感じてしまいますが、終盤の“わかりにくさ”を抜かせば、不穏さ漂う演出は悪くありません。

純の部屋のストーカーのような大量写真はいただけなかったですが。あれは本当に不要な演出だったと思う。

タイトルの「ノイズ」を町長(余貴美子)に言わせるのも何か無理矢理感あり。

 

 

この映画、なんといっても俳優さんたちが皆素晴らしいです。

藤原竜也さんと松山ケンイチさんはもちろんとして、思い詰めてしまう駐在・真一郎役の神木隆之介さん、リアルすぎる不快感と嫌悪感漂う受刑者・睦雄役の渡辺大さん、圭太の妻・加奈役の黒木華さんも素晴らしい。主要人物以外にも脇役で実力のある豪華なキャスティングがされていて、無茶な場面にも説得力を与えてくれています。

 

と、いいますか、役者さんの演技によって見応えのある映画に“ギリギリ”なれているのではないかと。

役者の力が無かったら相当酷い出来になっていたと思いますね。演技の重要さを改めて感じさせてくれる映画でした。

 

 

諸々含め、気になった方は是非。

 

 

 

 

 

 

ではではまた~