夜ふかし閑談

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『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』スピンオフ!“あの“最終回その後~

こんばんは、紫栞です。

今回は、田中靖規さんの漫画作品サマータイムレンダ2026 未然事故物件』の感想を少し。

 

サマータイムレンダ2026 未然事故物件 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

こちら、2017年から2021年まで連載され、2022年にはアニメ化された漫画作品サマータイムレンダ』

 

www.yofukasikanndann.pink

 

のスピンオフ読み切り作品。

アニメ化前の2022年4月に発表されたものですね。アニメ放送に合わせて何か読み切りを~って依頼がきて、描かれたのが今作とのこと。

 

今作では、サマータイムレンダ』の最終回その後が描かれています。サマータイムレンダ』は2018年が舞台でしたが、この物語はタイトルの通り2026年。およそ8年後の物語ですね。

サマータイムレンダ』を知らなくとも読み切り漫画として十分愉しめるものとなっていますが、設定からして本編のネタバレ・・・と、いうか、本編の結末を推察しようと思えば出来なくもない(なんとも胡乱な言い方で申し訳ない^_^;)ので、本編漫画を読破、またはアニメ全話視聴済みの方に推奨する作品となっております。

 

私は『サマータイムレンダ』の本編漫画を読んでいないのですが、アニメ全話視聴後に「その後が描かれたスピンオフがある」と知って電子書籍で買ってみた次第です。

 

 

 

※以下、『サマータイムレンダ』のネタバレ含みますので注意~

 

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ

2026年春。飛び級東京大学に合格した16歳の南方波稲は、物件を探すべく和歌山から上京し、小説家の叔母・南方ひづると共に不動産屋を訪れた。

大学に近く、リノベーション済みの1LDKで2万5000円という破格の物件を見つけるが、不動産屋が言うには、この物件は事故物件ではないものの、築44年の間に100名以上の入居者が心霊現象に悩まされて半年持たずに引っ越してしまう“いわくつき物件”らしい。

興味を持った波稲とひづるは心霊現象を解明するべく、お試しで数日間この“心霊部屋”に二人で住むことを決めるが――。

 

 

スピンオフの主役は波稲(ハイネ)とひづる(小説家としてのペンネームは南雲竜之介)。

 

サマータイムレンダ』の最終回で島にはびこっていた「影」の存在は丸々無かったこととして世界が再構築され、ハイネはひづるの弟・南方竜之介の娘として転生(?)された訳でして、再構築前の世界ではほんの一時しか友人でいられなかったハイネとひづるが、この世界では姪っ子と叔母として良好な関係を築いています。

 

本編を知っていると、二人がこうやって仲良くしているだけで微笑ましいですね。作者の田中靖規さんも『サマータイムレンダ』ではあまり描けなかった二人の友人としての時間・普通の生活を描きたいという想いがあったようです。

 

まず驚くのが、波稲が映像記憶能力を持っており、16歳でありながら飛び級で東大の理学部物理学科に入学することになって、SNSのフォロワーが90万人いる・・・ってなスペシャル設定なところ。

なんでまたそんなことに・・・と、最初思いましたが、「でも、そういや元が“あの”ハイネだからなぁ」と納得。映像記憶能力があるって、言われてみれば“それっぽい”。再構成前の世界での能力を踏まえるとね。

 

南雲先生は小説家として順調にヒットを飛ばしているようです。相変わらず胸もデカイ。

 

波稲ですが、本編の『サマータイムレンダ』の最終回時点では黒髪でしたが、14歳の頃に表紙絵のような髪色になったということらしい。やっぱり何かよからぬ能力が・・・?今作の真相も再構築前の世界の名残なんじゃ・・・と、考えることも出来ますね。

 

 

「心霊現象の再現率100%」という部分に物理学好きとして興味を惹かれる二人。途中、「何で幽霊が64進数なんてもんでメッセージ伝えてくるんだよ。ヘンテコだなぁ」となりましたが、真相を知って納得。なるほど、理系の幽霊なのですね。

 

 

今作はジャンルとしてはサスペンスミステリとなるのでしょうか。事故物件を絡ませているのが今どき感。

 

舞台は島ではなく東京。「影」もまったく関係ない物語なので、作品雰囲気は『サマータイムレンダ』と大きく異なりますが、“タイムレンダ”しているのは共通していて、まったく違うのにスピンオフとして相応しいものになっています。“未然事故物件”ってタイトルも「なるほど」ですね。

 

それだけでなく、作中には所々『サマータイムレンダ』でのやり取りを思い出させるネタが仕込まれていて読んでいて楽しいです。

 

波稲とひづるは凄くスピンオフ向けのキャラクターですね。この二人が主役で、半田畔さんによる小説版も出ています。

 

 

欲をいえば、『サマータイムレンダ』の他の登場人物達のその後も少しは知りたかったですね。今作で登場するのもその後を知れるのも波稲とひづるの二人のみですから。他はひづるの弟であり、波稲の父である南方竜之介が電話口でちょいと出るのみ。

 

慎平と潮はもちろんですが、竜之介の奥さん(つまり波稲の母)がどんな人なのかとかも知りたかった。

でも、あんまり何でもかんでも描かれるよりはあの最終回で見せたままで終わらせておいた方が良いって気もしますね。

 

 

良質なスピンオフ作品となっていますので、『サマータイムレンダ』の漫画・アニメ観た方は是非。