こんばんは、紫栞です。
今回は、京極夏彦作品の“本”ごとの時系列をまとめたいと思います。
京極夏彦作品は基本的にどの作品も同一世界線で描かれているため、シリーズや出版社の垣根を越えて事象や人物が繋がるように描かれています。
今まで各シリーズの刊行順や時系列などは当ブログでまとめてきましたが、
この数年の間にスピンオフ作品やシリーズ外作品が刊行され、京極作品全体の時系列が何やら複雑に入り組んできましたので、整理するために書き出してみようかと。ま、『鵼の碑』読んだら各シリーズの繋がりを噛み締めたくなったというのが第一にあるのですが・・・。
【巷説百物語シリーズ】やスピンオフ作品など、一冊に数編収録されていて舞台の年数が長期にわたっているものもありますが、今回はあくまで「本」ごとに、時系列順で並べていきます。
※全作品ではなく、現時点で繋がりがハッキリしている本を抜粋。以下、密接に繋がっている作品や登場する人物などネタバレあるので注意下さい。
年表
江戸時代
1824年(文政7年)~1826年(文政9年)
“双六売りの又市”から“御行の又市”になるまでの経緯が描かれる。
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1828年(文政11年)
●『嗤う伊右衛門』(江戸怪談シリーズ)
京極版「四谷怪談」。御行の又市が登場する。
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1829年(文政12年)
●『覘き小平次』(江戸怪談シリーズ)
『復讐奇談安積沼』と、これを元にした戯曲『生きてゐる小平次』を題材にした物語。御行の又市と事触れの治平が登場。
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18××年 ※正確な年数不明
●『数えずの井戸』(江戸怪談シリーズ)
京極版「皿屋敷」。御行の又市と四玉の徳次郎が登場。
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※この二冊は同時期での出来事。二冊の各編が時系列上で交互になっている。『続巷説百物語』の最終話「老人の火」だけ1844年(弘化元年)の出来事。
又市の朋輩である靄船の林蔵による仕掛け仕事が描かれる。関西が舞台。終盤で又市も登場。
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1845年(弘化2年)~1846年(弘化3年)
長耳の仲蔵による遠野地方での仕掛け仕事が描かれる。“八咫の烏”が登場。
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幕末
●『ヒトごろし』
新選組副長・土方歳三が主役の物語。『ヒトでなし』『今昔百鬼拾遺-鬼』と関係している。
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明治
1877年(明治10年)
老人になった山岡百介が、若者たちにかつての又市との体験談を話して聞かせるという構成になっている。過去話は主に1838年~1842年頃のもの。最終話の「風の神」が1877年初夏の出来事で、巷説百物語シリーズ内では時系列の最後で、“本当の終わり”。
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1892年(明治25年)~
●『書楼弔堂 破曉』(書楼弔堂シリーズ)
基本的に、この時代の著名人が弔堂に「探書」で訪れるといった連作短編のシリーズですが、最後に収録されている「未完」に中禅寺秋彦の祖父・輔が登場。
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1897年(明治30年)~
●『書楼弔堂 炎昼』(書楼弔堂シリーズ)
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1902年(明治35年)~
●『書楼弔堂 待宵』(書楼弔堂シリーズ)
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昭和
1950年(昭和25年)初夏~1951年(昭和26年)秋
●『今昔続百鬼-雲』
多々良勝五郎と沼上蓮次、二人の“妖怪馬鹿”が様々な事件に遭遇していく物語集。終盤には中禅寺秋彦が登場。三者の親交のきっかけとなった事件も描かれる。
実質、百鬼夜行シリーズのスピンオフ。
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1952年(昭和27年)
7月
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8月~10月
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11月
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1953年(昭和28年)
2月
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2月~4月
『格新婦の理』(百鬼夜行シリーズ)
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3月~6月
●『塗仏の宴 宴の支度』(百鬼夜行シリーズ)
●『塗仏の宴 宴の始末』(百鬼夜行シリーズ)
※この本は二冊でワンセット。
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7月~初冬
●『百器徒然袋-雨』(百鬼夜行シリーズのスピンオフ)
探偵・榎木津礼二郎が主役のスピンオフ。三編収録で、『陰摩羅鬼の瑕』の前~『邪魅の雫』後と、時期がかぶっている。
7月
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8月~9月
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初冬~年末
●『百器徒然袋-風』
榎木津が主役のピンオフ第二弾。
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1954年(昭和29年)
2月
●『鵼の碑』(百鬼夜行シリーズ)
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3月
●『今昔百鬼拾遺 鬼』(百鬼夜行シリーズのスピンオフ)
中禅寺の妹・敦子と、『格新婦の理』に登場した女学生・呉美由紀の二人が主役のスピンオフ。※「鬼」「河童」「天狗」と、文庫がそれぞれ別の出版社で刊行されたが、後に三編全部がまとめられた『今昔百鬼拾遺-月』が刊行されている。
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夏
●『今昔百鬼拾遺 河童』(百鬼夜行シリーズのスピンオフ)
多々良勝五郎が登場。
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8月~10月
●『今昔百鬼拾遺 天狗』(百鬼夜行シリーズのスピンオフ)
『百器徒然袋-雨』の「鳴釜」に登場した篠宮美弥子がこちらでも登場。
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2006年(平成18年)
●『南極(人)』(単行本は『南極(人)』、ノベルス版は『南極(廉)』、文庫版は『南極。』)
八話収録のうちの一編、『こち亀』の30周年コラボ企画で書かれた「ぬらりひょんの褌」に、老人となった“とある方”が登場している。
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現在
●『ヒトでなし 金剛界の章』
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未来
2030年代
●『ルー=ガルー 忌避すべき狼』(ルー=ガルーシリーズ)
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●『ルー=ガルー2 インクブス×スクブス』(ルー=ガルーシリーズ)
以上。
繋がりがある作品を絵系列順に並べると、今のところはこんな感じ。
備考
大まかな流れは、
江戸時代の【巷説百物語シリーズ】→明治の【書楼弔堂シリーズ】→昭和の【百鬼夜行シリーズ】→未来の【ルー=ガルーシリーズ】
ですね。
間に【江戸怪談シリーズ】や『ヒトごろし』、スピンオフシリーズなどがあって複雑化されている。
特に、【巷説百物語シリーズ】は短編集なので各編それぞれ時期が入り組んでいます。【巷説百物語シリーズ】のより事件年表はこちら↓
こうやって時系列でまとめてみると、【百鬼夜行シリーズ】(京極堂シリーズ)はかなり短い頻度で事件が起こっているのだなとよく分りますね。一年の間にどんだけ妙な事件に関わっているんだ。
【百鬼夜行シリーズ】は上記した作品の他に、『姑獲鳥の夏』~『鵼の碑』までの事件関係者のサイドストーリー集『百鬼夜行-陰』『百鬼夜行-陽』があり、
繋がりを楽しむにはこの二冊も欠かせないものとなっています。重要。
特に、『ルー=ガルー 忌避すべき狼』は、必ず『百鬼夜行-陰』の「鬼一口」を読んでからで。
やはり見落としがちなのは『南極』に収録されている「ぬらりひょんの褌」ですかね。京極夏彦ファンは度肝を抜かれること必至なので、絶対に読んで欲しいところですが。
この本は丸々コメディに特化したギャグ小説集で、前作に同じ趣向で書かれた『どすこい(仮)』(単行本は『どすこい(仮)』、ノベルス版は『どすこい(安)』、文庫版は『どすこい。』)があり、そこに収録されている「すべてがデブになる」の登場キャラクターたちがもんだするのが主な内容。なので、『南極』を読むなら『どすこい』も読むべきではある。
京極夏彦のオススメ本では絶対に最初には選ばれない二冊ですが、京極世界にどっぷり浸かったマニアには必見の書なので是非。
【巷説百物語シリーズ】の完結作、【書楼弔堂シリーズ】の完結作、【百鬼夜行シリーズ】の次作と、今後も年表の間を埋めるような作品が予定されているらしいので、その都度更新していきたいと思います。
刊行順に読んだ後で時系列が気になった方は是非。
ではではまた~